高分子化學
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17 巻, 180 号
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  • 第5報ポリビニルアルコールの粘度分子量関係
    松本 昌一, 大柳 康治
    1960 年 17 巻 180 号 p. 191-196
    発行日: 1960/04/25
    公開日: 2010/12/22
    ジャーナル フリー
    さきに光散乱法で分子量を決定した低重合率未分別ポリ酢酸ビニル (PVAc) のケン化で得たポリビニルアルコール (PVA) 試料の粘度を測定し, PVAの粘度分子量関係を求めた。このような試料の再酢酸化PVAcとオリジナルなPVAcの分子量に差がないことを認めたので, PVAの分子重合度としてオリジナルなまたは再酢酸化したPVAcの分子重合度を使った。またアセトン系で重合した低重合率未分別PVAの末端カルボニル基定量により, 数平均分子量Mnを測定し〈Mw/Mn〉=2を確認した。PVA水溶液の極限粘度 [η] は, 数平均重合度が約1700以上の試料 (+30℃ 重合物) では速度勾配に依存することを認めたので, 速度勾配γ→0の [η]γ→0を求めた。[η] は30℃, ml/gで示す。低重合率未分別試料の粘度分子量関係は, [η] =4.28×10-2Mw0.64, [η] =4.80×10-1Pw0.64あるいは [η] =6.70×10-2Mn0.64, [η] =7.51×10-1Pn0.64く一致する。この関係式を完全均一分配の分別試料の粘度分子量関係へ換算し [η] =4.53×10-2M0.64, [η] =5.08×10-1P0.64なる関係を得た。見かけの [η] の速度勾配依存性を考察し, 速度勾配の0近くでは, 理論が要求するように [η] は一定値を示すが, 速度勾配γが増大するとともに試料の重合度が大きいほど [η] はより減少することを認めた。ある速度勾配における見かけの [η] γと, γ→0の [η] γ→0の比, [η] γ/[η] γ→0は, 理論から期待されるように<M×[η] γ→0×r>の積の関数であり, 両者をプロットすると分子量に無関係に一つの関係曲線が得られた。
  • 篠原 康夫
    1960 年 17 巻 180 号 p. 197-201
    発行日: 1960/04/25
    公開日: 2010/10/14
    ジャーナル フリー
    セルロースやナイロンなどの普通の繊維は, 放射線で照射しておいてからビニルモノマーまたはこれの溶液と共存させることにより容易にグラフト重合を生じうるが, 重合の際, 水またはメタノールを共存せしめることが有効である.転移点の高いビニルポリマーをグラフトした場合には, 繊維は一般にかたくなり, 低い場台には逆に柔らかくなる。その他, 強力や吸水性などについて述べる。
  • 第6報溶液粘度の測定 (その2)
    古谷 進, 本多 正和
    1960 年 17 巻 180 号 p. 202-206
    発行日: 1960/04/25
    公開日: 2010/10/14
    ジャーナル フリー
    ポリ三フッ化塩化エチレンの分子量と固有粘度の関係を求めた。三つの試料の溶液粘度を2, 5-dichlofobenzotrifluoride (溶媒1) とo-chlorobenzotrifluoride (溶媒2) を溶媒として, 130℃ で測定した。Ubbelohde型とFitz Simons型を改造した粘度計を用いた。溶媒1に対するWalshとKaufmanの式を用いて, 溶媒2に対する分子量・固有粘度式を次のように導いた。
  • 第8報未延伸テトロン繊維を曲げた場合の応力分布
    鈴木 恵
    1960 年 17 巻 180 号 p. 207-210
    発行日: 1960/04/25
    公開日: 2010/10/14
    ジャーナル フリー
    従来, 曲げられた糸中の構成繊維の応力は, 実際どのくらいになるか見出されていないので. 第7報にて未延伸ナイロンを使用して応力を求めたが, 本報では未延伸テトロンを対象として, 屈曲部の頂点の横断面および曲げられた繊維の長さ方向の応力分布を求めた。その結果, 曲率が小さいと内縁と外縁との応力は等しいが, 大きくなると内縁の応力は外縁の応力より大きくなり, 長さ方向の応力分布も繊維の種類, 曲率半径により異なることが判明した。
  • 第9報延伸繊維を曲げねじった場合の応力分布
    鈴木 恵
    1960 年 17 巻 180 号 p. 210-215
    発行日: 1960/04/25
    公開日: 2010/10/14
    ジャーナル フリー
    普通織物に使われている糸は延伸繊維で, 多少のよりがかかっているから, まっすぐ繊維を曲げねじって, 屈曲部の頂点の横断面の応力分布を実測した。その結果, 単純曲げ繊維の曲げ応力より曲げねじりのときの応力の方が小さいことがわかった。
  • 光散乱標準試料研究班
    1960 年 17 巻 180 号 p. 216-221
    発行日: 1960/04/25
    公開日: 2010/10/14
    ジャーナル フリー
    わが国における光散乱測定法による共通試料の測定結果を報告する。技術上いくつかの改善すべき点もあるが測定精度は十分信頼するに足るもののように思われる。
  • 第1報ガラス転移点および膨張係数に及ぼす影響
    植松 市太郎, 植松 淑子
    1960 年 17 巻 180 号 p. 222-226
    発行日: 1960/04/25
    公開日: 2010/10/14
    ジャーナル フリー
    ポリエチレンテレフタレートのガラス転移点ならびに膨張係数に対する結晶化度および結晶状態の影響を検討し, その結果, 結晶を橋かけ点と考えることにより, 結晶化度および結晶の大きさと転移点および膨張係数との関係を定量的に説明できることを明らかにした。
  • 桜田 一郎, 坂口 康義, 国領 四郎
    1960 年 17 巻 180 号 p. 227-230
    発行日: 1960/04/25
    公開日: 2010/10/14
    ジャーナル フリー
    重合度1620~660の分別ポリ安慰香酸ビニルのθ溶媒 (キシレン, 32.5℃) 中の [η] θを測定した。実験結果から, Floryの理論に従って, θ溶媒中における高分子の広がりの尺度である (r02/r02f) 1/2およびM0 [η] θ/P1/2を求めた。これらの値はポリ安息香酸ビニルにおいて各2.65および1.14であり, 従来報告されているすべてのビニルおよびビニリデン重合体の相当値よりも大きい。この事実は本重合体がかさ高い剛直な側鎖を有することにより理解できる。
  • アイソタクチックポリ-α, β, β-トリ重水素化スチレンおよびアイソタクチックポリ-p-重水素化スチレンを利用した研究
    田所 宏行, 北沢 亨, 野桜 俊一, 村橋 俊介
    1960 年 17 巻 180 号 p. 231-235
    発行日: 1960/04/25
    公開日: 2010/10/14
    ジャーナル フリー
    われわれは先に (1) アイソタクチックポリスチレン (IPS) およびその誘導体の赤外スペクトルにおける1364, 1314, 1297および1185cm-1のバンド (A) がこれらの物質のアイソタクチックならせん構造に密接に関係のあると考えられること, および (2) IPSの983cm-1のバンド (B) は結晶化によって著しく強度を増大することを報告した。これまでの実験結果より判断して, Aの4個のバンドはらせん状分子鎖の分子鎖内相互作用に起因し, 8は結晶領城内における分子鎖間相互作用に基くものであることを推論した。本研究ではIPSとその主鎖重水棄化物の混合試料 (モル比2: 8) についてスペクトルを測定し, Aのバンドが周囲を重水素化分子鎖で取り囲まれても影響を受けないことを認め, またIPSとそp-重水素化物の混合試料 (モル比2: 8) について測定したスペクトルではBのバンドが周囲をか重水棄化分子鎖で取り囲まれることにより著しく弱くなることを認めた。これらの実験事実は上記の推論の正しいことを立証するものであろう。
  • 第1報α-メチルスチレン
    今西 幸男, 東村 敏延, 岡村 誠三
    1960 年 17 巻 180 号 p. 236-244
    発行日: 1960/04/25
    公開日: 2010/10/14
    ジャーナル フリー
    カチオン重合における末端イオン対の性質と各素反応との関係を明らかにするため, BF3・O (C2H5) 2によるα-メチルスチレンの重合をいろいろの溶媒, 温度で行なってポリマーの重合度から各種速度定数比を求め, それらの値と溶媒の性質の関連を考察した。モノマー移動反応の速度定数比ktm/kpは溶媒の誘電率の増大とともに減少し, 誘電率が5~7で最小となってそれ以上誘電率をふやすと増大する傾向にある。自己停止反応の速度定数比kt'/kpは誘電率が6をこえると急激に増大し, 小さい誘電率の溶媒中では一定値に収斂する傾向にある。これらの速度定数比から以前に報告したα-メチルスチレンの重合の溶媒効果が, 説明でき, 重合溶媒の変化によるイオン対の性質の変化について理解できた。
  • 第2報 ポリスチレン, ポリメチルメタクリレート, 塩化ビニル
    河野 隆介
    1960 年 17 巻 180 号 p. 245-248
    発行日: 1960/04/25
    公開日: 2010/10/14
    ジャーナル フリー
    ポリメチルメタクリレート, ポリスチレン, 塩化ビニル中の超音波伝播速度および吸収を室温より190℃にわたって測定して, ずり粘弾性と体積粘弾性を調べた。ポリメチルメタクリレート, ポリスチレンでは複素剛性率と体積弾性率の実数部分の温度変化がいくぶん異なっており, 虚数部分の極大の温度も異なる。これに反して塩化ビニルでは, 各弾性率の実数部分の温度変化はほぼ同じで密度変化と密接に結びついており, 虚数部分の極大の温度も等しい。
  • 第4報 アルキルクロライド-酢酸ビニル系のケン化物の性能
    小西 光, 石束 哲男
    1960 年 17 巻 180 号 p. 249-256
    発行日: 1960/04/25
    公開日: 2010/10/14
    ジャーナル フリー
    アルキルクロライドー酢酸ビニル系のケン化物9種について第2報と同様な方法で界面活性剤としての評価を行なった。その結果, 分子量の小さいものが比較的良好である。アルキル基の大きさがあまり異ならないので, アルキル基については第2報の高級アルコール-酢酸ビニル系ほどには著しい差は認めにくい。しかしながら一般に高級アルコール系ケン化物よりは性能がすぐれている。
  • 第6報 二, 三の低級アルキルビニルエーテルの重合と生成ポリマーの性質
    東村 敏延, 須永 葉子, 岡村 誠三
    1960 年 17 巻 180 号 p. 257-262
    発行日: 1960/04/25
    公開日: 2010/10/14
    ジャーナル フリー
    ビニルイソブチルエーテルの低温カチオン重合での立体特異性ポリマーの生成と比較のために, ビニルn-プチル, i-プロピルおよびエチルエーテルの低温カチオン重合を行なった。この結果ビニルイソブチルエーテルの場合と同様にポリマーの結晶性はX線回折による方法と同時に, 沈殿温度またはヤング率で判定を行ないうることが認められ, 低モノマー濃度で比較的立体規則性の良いポリマーが得られることが明らかとなった。しかし類似の重合条件では, これら3種のモノマーはビニルイソブチルおよびメチルエーテルのポリマーのように大きい結晶性を示すポリマーは得られなかった。この原因がポリマーの立体規則性の程度の差によるものか, 同じ立体規則性を有するが側鎖の種類が異なるため結晶化の程度に差があるのかは明らかにすることができなかった。
  • 東村 敏延, 岡村 誠三
    1960 年 17 巻 180 号 p. 263-267
    発行日: 1960/04/25
    公開日: 2010/10/14
    ジャーナル フリー
    スチレンのFriedd-Crafts触媒による低温重合の可能性を検討した。塩化メチレンを溶媒としてモノマー濃度10vol%以上ではSnCl, およびTiCl4によって, 高収率でかなり重合度の大きいポリマーが得られることがわかった。n-ヘキサン, トルエンおよびクロロホルムなど非極性溶媒の添加は, 重合速度も生成ポリマーの重合度も低下する。塩化メチレン-SnCl4系で-78℃で重合して得たポリスチレンはクロルベンゼンにはほぼ完全に室温で溶解するが, メチルエチルケトン不溶の部分を生ずる。この難溶性ポリマーはトリクロル酢酸を共触媒とする場合およびTiCl4を触媒とする場合は生成せず, 塩化メチレンに適当量のn-ヘキサンを添加すると増加する。この溶解性の差異はポリマーの立体構造の差異に基くものと考えられるが, ここで得たポリマーについてはX線図的に確認されなかった。
  • 第1報 水膨潤ポリビニルアルコールのγ線照射によって生じる末端基について
    桜田 一郎, 松沢 秀二
    1960 年 17 巻 180 号 p. 268-272
    発行日: 1960/04/25
    公開日: 2010/10/14
    ジャーナル フリー
    2.5~3倍の水を含んだポリビニルアルコール (PVA) 皮膜に, 空気存在下でγ線を照射した。線量1.2×107rまでPVAの主鎖の切断がかなり支配的に起った。切断のG-価は6.7であった。切断により新たにカルボニル基とカルボキシル基が生じ, それらは照射線量の増加とともに増加した。一般にカルボニル基はカルボキシル基より多く生じ, 線量1.2×107rでは前者と後者の比は2:1であった。なお, これら官能基の和は全末端基の60~90%であった。これらの結果には空気中および水中に存在する酸素が大きな役割をなしていると考えられる。
  • 第1報 ポリビニルアルコール-ポリアクリル酸混合物の濃厚水溶液の二, 三の性質
    川上 博, 州嶋 憲治
    1960 年 17 巻 180 号 p. 273-278
    発行日: 1960/04/25
    公開日: 2010/10/14
    ジャーナル フリー
    ポリビニルアルコール (PVA) とポリアクリル酸 (PA) との混合紡糸に用いる紡糸原液の性状を明らかにする目的で, 濃度がそれぞれ15%のPVA水溶液とPA水溶液またはその各種ソーダ塩水溶液との混和性を調べるとともに, それらの混合水溶液の放置による粘度および状態の変化について種々検討を加え, 次の結果を得た。1) PVA水溶液と純PA水溶液とは混和性が良好で任意の割合において混和するが, PAにNaOHを添加してこれをソーダ塩に変化させたものの水溶液は, その中和度に応じてPVA水溶液との混和性が低下する。2) PVAとPAとの混合水溶液の放置による粘度の上昇はそれぞれの単独水溶液に比して大きく, 特に放置温度が高い場合や, あるいはHClを添加した場合には急速に粘度が上昇して短時間でゲル化するが, NaOHを添加した場合には高温放置におけるゲル化が遅くなる。3) 混合水溶液をHClの存在下に高温で放置すると, ゲル化に続いて離しょうが起る。4) 混合水溶液から生成したゲルは, 水に対しては160℃に加熱しても溶解しないが, NaOH水溶液に対しては煮沸するだけでかなり溶解する。以上の結果から混合水溶液のゲル化および離しょうはPVAの水酸基とPAのカルボキシル基との分子間エステル結合の形成に基くものと推定される。
  • 内藤 龍之介
    1960 年 17 巻 180 号 p. 279-284
    発行日: 1960/04/25
    公開日: 2010/10/14
    ジャーナル フリー
    ポリ酢酸ビニル (以下PVAcと略) 部分ケン化物水溶液の透明度が低い原因について検討するため, 含水メタノール系においてアルカリケン化法で作製した種々の部分ケン化試料水溶液の濁度-温度関係, あるいはNaCl水による沈殿曲線を求め, これより分子間の酢酸基組成の不均一性および分子内の酢酸基配列状態の不均一性について相対的な比較を行なう方法を提案し, 下記のごとき結果を得た。(1) ケン化反応に際してPVAc溶液と触媒 (アルカリ) 溶液との混合が不十分であると, 分子間の酢酸基組成が不均一となる。これは工業的な場合, 特に留意すべき点である。(2) PVAc溶液濃度は, 30%以下では生成する部分ケン化物の酢酸基の組成に影響を及ぼさない。(3) ケン化温度が高いほど, またケン化系の含水率が低いほど, 分子間の酢酸基組成および分子内の酢酸基配列状態ともに不均一となり, 水溶液の透明度が低下する原因となる。(4) 上の事実はケン化温度が高いほど, また含水率が低いほど, ケン化反応の加速現象が旺盛に起っていることを示すものと考えられる。
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