水溶液を, 酸素を十分除去してγ線照射すると, 橋かけ反応が起こり0.17g/100m
l以上の濃度ではゲル化する。このゲル化の限界濃度は従来報告された値よりかなり小さい。ゲル化に要する線量は低濃度ほど小さい。従来報告された0.4~0.5g/100m
lに極小値があり, それ以下の濃度で急に増大するという現象は認められなかった。これらの違いは, 酸素除去がより厳重であったためと思われる。ゲル化限界濃度から推算されるPVA分子 (重合度約1500) の作用半径は2×10
2Å程度であり, 粘度法, 拡散法で得られた値より大きい。エタノール, ジオキサン, フェノール, エチルアミンなどを容積で約0.1%添加するとゲル化は掬制され, 主鎖の分裂が見られた。エチルアミンを加えて照射したポリマーにはアミン分子が結合している。低濃度で照射すると初期に粘度が上昇して後低下し, 一見分裂反応のごとくみえるが, この溶液はKCl, Al (NO
3)
3などの塩により容易に塩折されるので, 橋かけの発達したミクロゲルが疎水性のコロイド状態になっていると結論される。また硫酸でも沈殿するがNa
2O
3, Na
2HPO
4などアルカリ性の塩およびアルカリでは沈殿しない。照射後の溶液をアルカリ性にすると黄色に呈色する。その吸収曲線には240, 290mμに吸収が見られる。光散乱の測定においても球状のミクロゲルの生成が結論された。
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