アジピン酸, セバシン酸, イソフタル酸から成る単位鎖を10mol%以下含むポリエチレンテレフタレートハアジペート (PET/PEA), ポリエチレンテレフタレートハセバケート (PET/PES), ポリエチレンテレフタレート/イソフタレート (PET/PEI) を合成し, 主として結晶性・配向性に着目してその繊維構造の変化を調べた。一次・二次転移温度の変化から重合体の評価を行ない, 繊維状とした後, 密度, 複屈折, 染着度の測定, X線解析による結晶配向度, 大周期などの算出を行なった。実験と考察の結果, 次の知見を得た。
1) 一次・二次転移温度の変化はそれぞれFlory, Gordon-Taylorの理論式に適応することが可能であり, その結果ランダムコポリマーの生成を裏書きする。2) 結晶性共重合ポリエステル繊維において第3成分単位鎖は結晶領域には含まれない。3) 繊維中にX線的にみた数十ないし数百A程度のvoidsはほとんど存在しない。4) PET/PEA, PET/PESではPET/PEIに比して第3成分単位鎖mol%の増大とともに結晶性の低下, 染色性の増大がより明りょうに現われる。PET/PESではPETを基準にしてこれからの偏移の増大 (大周期の短縮) が認められる。5) 延伸した繊維については, 全体としての配向度は共重合とともに一般に低下するが, 同一延伸条件では結晶配向度はほとんど変わらない。
抄録全体を表示