溶融加圧成型して得たポリプロピレンフィルム (Avisun 1021) を, 25, 70℃および115℃で7~14倍に延伸した試料について, その動的弾性率および動的損失正切 (tanδ) の温度分散曲線を求め, いわゆるα
a-吸収に与える延伸温度, 延伸倍率, および延伸物の熱処理時間の影響を調べた。tanδの吸収曲線において, 室温付近のtanδが極大を示す温度 (
Tα) は延伸温度が低いほど, 延伸倍率が大きいほど, また延伸物の熱処理時間が短いほど高温側にずれ, 一方α
a-吸収での極大値, 吸収の面積の大きさは一般に延伸温度が低いほど小さく, また延伸倍率が大きいほど, 熱処理時間が短いほど小さい値を示した。これらの場合いずれも120℃前後に認められると思われるtanδの吸収の大きさは, α
a-吸収での極大値が小さいものほど大きい傾向を示すようである。以上のことからポリプロピレンフィルムの延伸物においては, 一般により低温で, より高倍率に延伸され, また熱処理時間の短いほど, α
a-吸収の温度域で運動しうる非晶相のセグメントは少なく, セグメント運動が強く拘束されていることを示すと考えられる。この温度域で運動しえないセグメントは120℃前後の温度で, 結晶相になんらかの可動性が与えられて運動するようになると考えられる。
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