高分子化學
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22 巻, 244 号
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  • 第8報スチレンの水溶液重合
    松本 恒隆, 越智 明宏
    1965 年 22 巻 244 号 p. 481-487
    発行日: 1965/08/25
    公開日: 2010/10/14
    ジャーナル フリー
    触媒として過硫酸カリを用い, 重合温度70あるいは80℃において, 水にほとんど溶解しないスチレンの水溶液重合を行ない, 次の事実を認めた。1) 重合初期では, 異なった直径の粒子が生成されるが, 重合後期では, 適度の直径を有する粒子だけが水相に残存し, 他のものはすべて沈殿する。2) 触媒濃度の減少とともに, 沈殿ポリマー量は減少し, 粒子の安定性は増加し, 均一な同じ直径を有する粒子が生成される。3) 実験した範囲内でのモノマー初濃度では, 重合時間28.5hrにおける重合率は, モノマー初濃度の増加とともに増加し, 極大値を経てから再び減少する。4) かきまぜ速度の増加につれて, 粒子径および重合度は減少する。以上の結果から, 過硫酸カリ濃度6.2×10-4mol/l, モノマー初濃度0.871mol/l, 重合温度70℃の条件で, 粒子径のそろった安定性の良い粒子の得られることがわかった。一方, 得られた粒子の電気易動度を測定して求められた1個の粒子表面上に存在する荷電数は, 1個のポリマー末端に2個の強酸イオンがあるとして, 重合度から計算された荷電数にほぼ等しい。このことから, 重合停止はカップリングであり, モノマーの重合を開始する触媒切片 (おそらく, ・SO4-) は, 粒子内部に浸入しえず, 表面に止まり, 粒子を安定化することを明らかにした。
  • 朱 眩暾, 北丸 竜三, 辻 和一郎
    1965 年 22 巻 244 号 p. 488-497
    発行日: 1965/08/25
    公開日: 2010/10/14
    ジャーナル フリー
    分子量ならびに結晶化度をおおはばに異にするポリプロピレン分別区分の静的, 動力学的性質を研究した。分別はケロシンーブチルセロソルブを溶媒一非溶媒系とするカラム法で行なった。一定溶媒濃度で温度を上昇させることにより結晶性による分別を, 一定温度で溶媒濃度を変えることにより分子量による分別を行なった。一般に分別区分の降伏強度, 切断強度, ヤング率は結晶化度に大きく依存するが, 切断伸度は結晶化度のみならず, 分子量にも依存性を示した。分別区分および未分別ポリプロピレンの溶融状態からの急冷物, そのアニーリング物, 徐冷したものの動的弾性率, 動的損失正切を振動リード法により温度-50~+120℃にわたって測定した。主として室温付近に認められるtanδの温度分散を中心に, その分子構造, 微細構造との関連性を研究した。十分アニーリングした分別区分については, 分散曲線における吸収は一般に結晶化度の増大とともに高さは低くなり幅は広くなる。また, tanδが極大値を示す温度Tαは高温側にずれる。一方, 熱履歴が粘弾性吸収に与える影響についての研究では, 溶融状態から急冷した試料では, それをアニーリングした試料よりもTαは高く, また幅広い吸収を示した。これらの実験結果は, 室温付近のtanδの分散が非晶領域の主鎖セグメントの大きなミクロブラウン運動に基因するとの, 一般に認められるような概念に基き, ある温度でのtanδの値が, その温度で運動を開始しうるセグメントの量に相応し, Tαはポリマーの微細構造によって受けるセグメント運動の拘束のされ方により左右され, 吸収幅はその拘束のされ方の多様性を示すという考え方によりうまく説明できる。
  • 朱 眩敬, 北丸 竜三, 辻 和一郎
    1965 年 22 巻 244 号 p. 498-504
    発行日: 1965/08/25
    公開日: 2010/10/14
    ジャーナル フリー
    溶融加圧成型して得たポリプロピレンフィルム (Avisun 1021) を, 25, 70℃および115℃で7~14倍に延伸した試料について, その動的弾性率および動的損失正切 (tanδ) の温度分散曲線を求め, いわゆるαa-吸収に与える延伸温度, 延伸倍率, および延伸物の熱処理時間の影響を調べた。tanδの吸収曲線において, 室温付近のtanδが極大を示す温度 (Tα) は延伸温度が低いほど, 延伸倍率が大きいほど, また延伸物の熱処理時間が短いほど高温側にずれ, 一方αa-吸収での極大値, 吸収の面積の大きさは一般に延伸温度が低いほど小さく, また延伸倍率が大きいほど, 熱処理時間が短いほど小さい値を示した。これらの場合いずれも120℃前後に認められると思われるtanδの吸収の大きさは, αa-吸収での極大値が小さいものほど大きい傾向を示すようである。以上のことからポリプロピレンフィルムの延伸物においては, 一般により低温で, より高倍率に延伸され, また熱処理時間の短いほど, αa-吸収の温度域で運動しうる非晶相のセグメントは少なく, セグメント運動が強く拘束されていることを示すと考えられる。この温度域で運動しえないセグメントは120℃前後の温度で, 結晶相になんらかの可動性が与えられて運動するようになると考えられる。
  • 第2報Barus効果
    上出 健二, 稲本 義彦, 大野 邦夫
    1965 年 22 巻 244 号 p. 505-512
    発行日: 1965/08/25
    公開日: 2012/02/20
    ジャーナル フリー
    前報 (高化, 22, 410 (1965)) と同一試料を用いて, 溶融ポリプロピレンの毛細管流動におけるBarus効果を検討した。高化フローテスターを利用し, 8個の異なる形状のストレートダイ (2l/d0=2~30, d0=0.045cm, l: ダイの長さ, d0: ダイの直径), および前報と同一のテーパーダイを利用した。2l/d0<20ではストレートダイのBarus効果はダイの形状に依存するが, 2l/d0≧30ではほぼ一定となる。テーパーダイのBarus効果はテーパー角θ<10°ではストレートダイとほぼ等しい。θ≧20°ではBarus効果はストレートダイよりも大きくなる。これまでに提出されたBarus効果の理論を検討し, ダイの導入部における一次元伸長変形に基く内部応力の毛細管中での緩和と毛細管中での分子鎖の配向とを考慮して〓を導いた。ここでSi: 毛細管出口における内部応力, S0: ダイ導入部での内部応力, t: ダイ通過時間, τ: 内部応力の緩和時間, E: 溶融物のヤング率, dmax: 押出物の最大直径, d0: ダイの直径, △: 配向効果の寄与である。ポリプロピレンでは配向効果が無視できず, △ はずり応力とともに直線的に増大する。内部応力の緩和時間τは10-2~10-1sec (押出速度: 6×10-3~5×10-2) でdlog Q/dlogτ=-1 (Q: 流出速度 (cm3/sec)) となる。
  • 山田 信夫, 岸 直行, 飯塚 博之
    1965 年 22 巻 244 号 p. 513-519
    発行日: 1965/08/25
    公開日: 2012/02/20
    ジャーナル フリー
    Mw/Mn≈3なる分子量分布をもったポリプロピレン試料について, 溶融粘度η (poise) のずれ応力依存性を極限粘度 [η](100cc/g) および絶対温度T (°K) の関数として表わすことを試みた。基礎式としてはDexterの式:〓を用いた。ゼロせん断溶融粘度η0 (poise) については,

    が得られ, パラメーターnおよびKについては, τ≦106dyne/cm2のずれ応力範囲において,

    が得られた。ただし, [η] はテトラリン溶媒中135℃における値である。さらに, これらの式を用いて, 一定のずれ応力における流動の見かけの活性化エネルギー△Eτのずれ応力依存性を調べた。△Eτはτ≈103dyne/cm2からτ≈105dyne/cm2にかけて増加し, その度合は [η] の小さいものほど大きい。
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