ポリプロピレンの115~145℃ における等温結晶化現象に及ぼす分子量と分子量分布の影響を, ディラトメトリーにより検討した。粘度平均分子量
Mv=1.8×10
3-5.0×10
4の範囲にある6種の解重合低分子量試料 [I],
Mv=1.1×10
5-7.4×10
5の範囲にある4種の分別試料 [II], 分布の幅と型 (対称型, 非対称型) を変えた4種のブレンド試料 (ただし,
Mw=1.8×10
5で同じ)[III], 3種の未分別物 (
Mw/Mn=2.7, 8.4, 38.0)[IV] を試料に用いた。[I] のタクチシティと結晶形とが [II] のそれと変わらないことは赤外吸収スペクトル, X線回折から確認した。log (-logθ) 対log
tプロット (θ: 未結晶分率,
t: 結晶化温度
Tに到達してからの時間) からパラメーター
n=3~3.5 (
T>135℃) を得た。これより結晶化はpredetermined nucleationで, 球晶生長により進むと結論された。(平衡結晶化度×1/2) になるに要する時間
t1/2の逆数を結晶化速度のパラメーターとすると, 結晶化速度は分子量とともに大きくなる。これはポリプロピレンではsupercoolingの影響が大きいためと考えられる。平衡結晶化度は分子量と逆の相関関係にある。分布がある場合, 結晶化速度は分布の型, 特に分布の非対称性できまる。log (
t1/2)
-1対
Tm2/
T (
Tm-
T)
2プロット (
Tm: 融点) は直線性を示す。このプロットより得られた界面自由エネルギーは5~6erg/cm
2で, ポリエチレン並みであった。立体規則性の低い試料の添加は結晶化速度に影響しない。
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