CMC溶液について測定したところによると, recoverable strainも粘度の場合と同様, ズリ速度を小-大-小と変化させるとヒステリシス・カーブを描く。揺変破壊前後のrecoverable strainを, 応力を同じ条件にして比較すると, 1.5~2.5%の範囲では破壊後, 減少を示すが, 3.5~4%の範囲では逆に増加する。濃度に関して2%付近でrecoverable strainは最も大きくなる。このような結果は, recovevablestrainを最大ならしめるような二次構造の最適値が存在することを推定させるものであろう。ωとγを等置して, 動的剛性
G'とrecoverable strainから計算した定常流下の剛性
Gを比較すると, 2.5~3.5%の濃度範囲で, 両者がよく一致, または, 類似のω (またはγ) 依存性を示す部分がある。また,
G'および
Gの濃度依存性はωまたはγとともにきわめて似た変化をする。これらの現象は, 微少変形の振動的外力によっても, 定常流の場合と同様なズリ破壊が起こるものと考えざるをえない。したがって, ズリ破壊は変形の大小ではなく, ズリ変形の頻度に依存するのであろうという推定がなりたつ。CMC溶液の場合, 流動弾性
Gの非フック性は構造破壊が主要な原因となっているもののようであり, また,
Gの濃度依存性がきわめて大きいことは, 他の高分子物質と溶存状態が非常に異なっていることを推定させる。揺変構造のレベル, ズリ速度および濃度を変えて, 定常流停止後の応力緩和を測定した。その結果, ズリ破壊によって緩和時間の分布が短時間側に集まってくることがわかった。流動弾性が大きいための条件は, 長い緩和時間の機構が存在するだけでは不十分で, 短い緩和時間の機構の存在密度があまり大きくないことが必要であろうと考えられた。単純なMaxwell-modelを仮定して, recoverable strainおよび, 応力緩和実験から, この仮想モデルの緩和時間を計算すると, 両者は, およそ一致した。しかし, このことは, あらゆる粘弾性体にあてはまる一般的現象とは考えられず, 他の試料について検討をすすめている。
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