水溶性高分子溶液 (Na-PAA, MC, CMCなど) の遅い緩和機構に対し, 単純な非線形レオロジー模型を提案した。この模型はm種類の緩和機構の群よりなり, j番目のグループはxj, 個の同じMaxwell要素 (G
j0, η
j0) より構成されているものと仮定した。xjは応力に関する変数であり, 非線形性はxj, にだけ依存する。j番目の機構の緩和時間τ
jはτ
j0 (通常の定義による緩和時間) に常に等しい。この理由はτ
j=xjη
j0/xjG
j0=η
j0/G
j0=τ
j0であるからである。したがって, この模型においては, すべての機構の緩和は, あたかも見かけ上, 線型Maxwell型の緩和であるかのように進む。したがって, Tobolskyらの線形粘弾性理論である“Procedure X”が, 緩和時間の不連続分布を仮定するかぎりにおいては, 提案した模型に対して利用できるであろう。ここで研究した系に対して“Procedure X”を適用した結果はかなりうまくいった。この手続きによって算定したτ
m0~τ
m-20 (長時間側の三つの緩和時間) は非ニユートン流下のズリ速度に依存しない。また, η
m~η
m-2 (m~m
-2番目の機構の非ニユートン粘性) のズリ速度依存性および全粘性に対するη
m~η
m-2の相対的な寄与の変化は構造粘性という立場から合理的のように思われる。したがって, 提案した模型は一応承認してよいものと考えられる。提案した方法で計算した不連続分布関数G
j (=ηj/τ
j, j
m~j
m-2) 常法により動的データから求めた分布関数Hおよび連続分布を仮定して, 緩和曲線から計算した分布関数HRを比較した結果によれば, 緩和時間が長いほど, ズリ速度が大きいほど, その分布関数の低下はより著しく起こるものと考えられる。高分子溶融物の非線形応力緩和曲線もまた, ここで研究した溶液と同様に, 二三の指数曲線に分解できるので, 提案した模型はおそらくはかなり広い物質の種類に対して利用できるのではないかと思われる。
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