高分子化學
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24 巻, 267 号
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  • 第9報 ボリビニルアルコールの球晶
    坪井 清, 望月 隆仁
    1967 年 24 巻 267 号 p. 433-436
    発行日: 1967/07/25
    公開日: 2010/07/27
    ジャーナル フリー
    ポリビニルアルコール (PVA) の球晶の形成について検討し, トリエチレングリコールを用いてPVAを半溶融成膜すると, きれいな球晶の見られるフィルムが得られることを見出した。フローテスターで押し出した剛毛の切片観察においても, 明りょうなマルテーズクロスを示す球晶が見られた。コンベンセーターを用いて複屈折の方向をみると接線方向に複屈折が高く負の球晶であることを認めた。フィルムの薄い所では, 板状晶が多数重なった, いわゆるHedritesが見られた。PVAの球晶フィルムを次亜塩素酸ソーダ水溶液で酸化すると, 厚さ170Åの板状晶や板状晶が集まった約2μの分解物が得られた。PVAの球晶は単結晶状の板状晶からなりたっていると考えられる。
  • 第10報 ポリ酢酸ビニルの高温ケン化
    坪井 清, 望月 隆仁
    1967 年 24 巻 267 号 p. 437-440
    発行日: 1967/07/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    溶媒にトリエチレングリコールを用い, カセイソーダによりポリ酢酸ビニルを高温でケン化して, ポリビニルアルコール (PVA) の単結晶をつくった。165~180℃でヶン化した場合には, 数μ以下の塊状の沈殿物や周辺部に多くの粒子が付着した板状晶が得られた。その板状晶の電子線回折から分子鎖は結晶板面に垂直であり, 結晶の長さ方向が (101) 面に平行であることを認めた。185℃でケン化するとPVAのきれいな単結晶ができる。ポリ酢酸ビニルを高温ケン化すると, 分子鎖の折りたたみを起こしながら, 結晶化すると考えられる。
  • 第3報 ポリアクリル酸ナトリウム, メチルセルロース溶液などの遅い緩和機構に対するモデル的考察
    黒岩 城雄, 中村 亦夫
    1967 年 24 巻 267 号 p. 441-447
    発行日: 1967/07/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    水溶性高分子溶液 (Na-PAA, MC, CMCなど) の遅い緩和機構に対し, 単純な非線形レオロジー模型を提案した。この模型はm種類の緩和機構の群よりなり, j番目のグループはxj, 個の同じMaxwell要素 (Gj0, ηj0) より構成されているものと仮定した。xjは応力に関する変数であり, 非線形性はxj, にだけ依存する。j番目の機構の緩和時間τjはτj0 (通常の定義による緩和時間) に常に等しい。この理由はτj=xjηj0/xjGj0j0/Gj0j0であるからである。したがって, この模型においては, すべての機構の緩和は, あたかも見かけ上, 線型Maxwell型の緩和であるかのように進む。したがって, Tobolskyらの線形粘弾性理論である“Procedure X”が, 緩和時間の不連続分布を仮定するかぎりにおいては, 提案した模型に対して利用できるであろう。ここで研究した系に対して“Procedure X”を適用した結果はかなりうまくいった。この手続きによって算定したτm0~τm-20 (長時間側の三つの緩和時間) は非ニユートン流下のズリ速度に依存しない。また, ηm~ηm-2 (m~m-2番目の機構の非ニユートン粘性) のズリ速度依存性および全粘性に対するηm~ηm-2の相対的な寄与の変化は構造粘性という立場から合理的のように思われる。したがって, 提案した模型は一応承認してよいものと考えられる。提案した方法で計算した不連続分布関数Gj (=ηj/τj, jm~jm-2) 常法により動的データから求めた分布関数Hおよび連続分布を仮定して, 緩和曲線から計算した分布関数HRを比較した結果によれば, 緩和時間が長いほど, ズリ速度が大きいほど, その分布関数の低下はより著しく起こるものと考えられる。高分子溶融物の非線形応力緩和曲線もまた, ここで研究した溶液と同様に, 二三の指数曲線に分解できるので, 提案した模型はおそらくはかなり広い物質の種類に対して利用できるのではないかと思われる。
  • 末房 清, 物延 一男
    1967 年 24 巻 267 号 p. 448-451
    発行日: 1967/07/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    ポリエチレンの球晶は普通光学的に負であるとされている。本実験はガラス管の一部を加熱した温度勾配管を用いて, ポリエチレン球晶をフィルム面内に成長させ, 光学的に正の球晶の生成することを認めた。この正の球晶の生成する条件は試料面垂直温度勾配が大きく, 試料面の低温側に生成した結晶核が, その核を中心にしてしだいに等方的に成長するが, 垂直温度勾配の効果は試料面をしだいに傾斜させ, 頂点の弯曲した円錐形を形成する。この円錐形を構成するフィブリル傾斜は, 負の球晶に比較して著しく大きく, 偏光顕微鏡像が在来の負の球晶と異なる幾多の興味ある図形を示す。その分子鎖は球晶の半径方向に傾斜し, 光学的複屈折が正を示すものと推定した。本報告はこのような球晶の成長機構と結晶化条件との関係を考察した。
  • 帆足 興次, 望月 隆仁
    1967 年 24 巻 267 号 p. 452-458
    発行日: 1967/07/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    直鎖状ポリエチレンの120℃および126℃における等温結晶化過程を, DTA, ディラトメーターおよび広角X線回折により検討した。短時間結晶化させた試料では, DTAにおいて一つの吸熱ピークを示し, 結晶化時間の増大とともにディラトメーターに見られる結晶化過程に対応して, 二つの吸熱, Tm0 (高温側) およびTm1 (低温側) に分離する。吸熱Tm0のピーク温度は時間とともに高温側へ移行してほぼ一定値となり, 吸熱Tm1のそれは低温へ移行する。結晶化温度における広角X線回折の結果から, いずれの温度の結晶化過程においても, 生成する結晶の (110), (200) 面の面間隔に変化はなく, 吸熱Tm0の時間変化は微結晶の大きさの増大が主な原因であると結論した。また吸熱Tm0, Tm1の変化から, これら両吸熱ピークを示す結晶領域の生成過程について論じた。
  • 金子 六郎, 北崎 寧昭, 佐久間 健一
    1967 年 24 巻 267 号 p. 459-464
    発行日: 1967/07/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    高温屈折計によって融点以上の温度における結晶性高分子融液の屈折率を測定し, それを常温に外挿した値から無定形の屈折率を求め, Lorentz-Lorenzの式およびGladstone-Daleの式を用いて常温における無定形密度を決定した。用いた試料は高・中・低圧法ポリエチレン, ポリプロピレン, ポリブテン-1, PVA, PETおよびポリオキシメチレンで, いずれも再現性の良い値を得た。従来の文献値との一致も良好で, この方法が密度法による結晶化度測定の際, 必要な無定形密度の決定法として有用であることを確かめた。
  • 上出 健二, 藤井 清
    1967 年 24 巻 267 号 p. 465-471
    発行日: 1967/07/25
    公開日: 2010/07/27
    ジャーナル フリー
    比較的高分子量 (分子量2×104以上) のポリ-∈-カプロラクタム溶融物 (250℃) を102sec-1以上のずり速度で毛細管内を流動させて, その流動特性, 特に流動の非ニュートン性と末端効果を解析し, ずり速度と分子量の影響を調べた。その結果, ずり速度Dとずり応力τとの間にはベキ乗則が成立した。ベキの指数 (非ニュートン性パラメーター) N (≡∂D/∂τ) は分子量の増加につれて1.5→2.5まで向上した。末端補正係数νをBagley法によって求めた。νはlog Dに比例した。m-クレゾール (25℃) 溶液の固有粘度が1.4以上の試料ではνは無視できない。紡口導入部のテーパー角の圧損失を定量化した。導入部にテーパー (20~100°) がある紡口を流動する際, 流れはよりニュートン的になり, 全体の圧損失も減少する。結局, ポリ-∈-カプロラクタム溶融物でも, 分子量が大きければ, ポリオレフィン溶融物などと定性的には同じ流動特性をもつことが明らかにされた。
  • 依田 賢太郎
    1967 年 24 巻 267 号 p. 472-478
    発行日: 1967/07/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    各種の金属化合物を触媒として用いて, ビス-β-ヒドロキシエチルテレフタレートの重縮合によってポリエチレンテレフタレート (PET) を合成した。得られたPETの融点およびジエチレングリコール (DEG) 含有量は用いた触媒の種類によって異なり, PETの融点降下は主として副反応によって生成したDEG単位に基いている。さらに, PETのモデル化合物としてβ-ヒドロキシエチルベンゾエートの分解反応を調べた結果, PETの融点降下をもたらしているエーテル結合は主として次の2種類の反応によって生成しているものと推定される。
    1) 重縮合触媒から誘導されたBronsted酸によるアルコールの脱水縮合。
    2) PETの末端ヒドロキシエチルエステルの分解によって生成した活性基 (CH2 CH2 O) とアルコールとの付加反応。
  • 第4報 スチレンおよびα-メチルスチレンの重合
    山本 隆治, 今西 幸男, 東村 敏延
    1967 年 24 巻 267 号 p. 479-485
    発行日: 1967/07/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    イソブテンの高分子量ポリマーを与えるAl (O-sec-C4H9) 3/BF3/TiCl4触媒を用いてスチレンとα-メチルスチレンのカチオン重合を行なった。しかしこれら芳香族モノマーの重合では低分子量ポリマーしか得られず, ポリマーの分子量はTiCl4-トリクロル酢酸系で得たものより低かった。スチレンおよびα-メチルスチレンの重合速度に対するTi/Al比の影響を調べた。Al (O-sec-C4H9) 3/BF3コンプレックスはTiCl4の添加なしでこれらのモノマーの重合を開始した。TiCl4の添加量をふやすとα-メチルスチレンの重合速度は単調に増加したが, スチレンの重合速度はTi/Al≅ 0.2で最小値をとるように変化した。既報のイソブテンの結果を考え合わせてAl (O-sec-C4H9) 3/BF3/TiCl4触媒は少なくとも次の三つの触媒種を含むものと考えられる。Al (O-sec-C4H9) (OH) 2・2BF3 (Ti/Al=0), {Al (O-sec-C4H9) (OH) 2・2BF3} n・TiCl4 (Ti/Al=0~0.3), {Al (O-sec-C4H6) (OH) 2・2BF3} n・2TiCl4 {Al (O-sec-C4H9) (OH) 2・2BF3} n・TiCl4+TiCl4 (Ti/Al>0.3)
  • 第5報 イソブテンとスチレンのカチオン共重合
    山本 隆治, 今西 幸男, 東村 敏延
    1967 年 24 巻 267 号 p. 486-492
    発行日: 1967/07/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    Al (O-sec-C4H9) 3/BF3/TiCl4によるイソブテン (M1) とスチレン (M2) のカチオン共重合を行ない, モノマー反応性比に対するTi/Al比と重合温度の影響を調べた。その結果Ti/Al比の増加に伴いスチレンがコポリマー中に入りやすくなり, 温度の低下とともにイソブテンがコポリマー中に入りにくくなることが明らかになった。これらの実験事実は, Ti/Al比の大きい触媒ではスチレンによってTiCl4が解離してフリーとなり, そのTiCl4による共重合が起こりやすくなること, およびイソブテンカチオンとスチレオンカチオンの性質にかなりの差があることに基いて議論された。不均一触媒による共重合におけるイソブテンカチオンからスチレンモノマーへの交代移動反応は, -20℃および-78℃において均一触媒系に比べて起こりやすく, 低重合度のコポリマーが得られることがわかった。
  • 阪口 文雄, 辻 和一郎, 北丸 竜三
    1967 年 24 巻 267 号 p. 493-500
    発行日: 1967/07/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    ブテン-1, ペンテン-1, デセン-1, 4-メチル-1-ペンテンをコモノマーとする一連の3-メチル-1-ブテン共重合体をチグラー-ナッタ型触媒によって合成し, 得られた3-メチル-1-ブテン共重合体の分子および微細構造を明らかにすることにより, オレフィン共重合体の溶融結晶化物に認められるcocrystallizationについて考察した。すべての系にisomorphismの現象が成立し, 特にペンテン-1および4-メチル-1-ペンテンをコノマーとする系では, その程度の高いことが認められた。この現象が成立するためには必ずしもコモノマーがランダムな分布をする必要はなさそうであり, デセン-1のような立体障害が大きいと考えられるコモノマーでは結晶化単位として結晶格子に入るのが許されないまでも非晶欠陥として入りうることが推測できた。
  • 堀川 二朗, 谷本 重夫, 小田 良平
    1967 年 24 巻 267 号 p. 501-504
    発行日: 1967/07/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    ポリリン酸溶媒中で1, 2, 4-トリアミノベンゼンとジカルボン酸を縮合させて, ポリアミド-ベンゾイミダゾールを合成した。ジカルボン酸としてはイソフタル酸, テレフタル酸, アジピン酸, ピメリン酸, スベリン酸, アゼライン酸, セバシン酸, ジフェン酸およびピリジン-2, 6-ジカルボン酸を用いて行なった。得られたポリアミド-ベンゾイミダゾールの構造は, 5-ベンゾイルアミノ-2-フェニルベンゾイミダゾールをポリリン酸中で別に合成し, これをモデル化合物として比較検討することによりきめた。また, 熱安定性は在来のポリベンゾイミダゾールと同程度にすぐれており, 溶剤に対する溶解性はポリベンゾイミダゾールよりわずかに劣っていることが観察された。
  • 桜田 一郎, 大村 恭弘, 大森 昭夫, 坂口 康義
    1967 年 24 巻 267 号 p. 505-511
    発行日: 1967/07/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    異なる重合度をもつアクリル酸メチルポリマー, ポリアクリル酸から誘導したポリアクリル酸メチル, およびポリアクロレインをそれぞれポリアリルアルコールに還元し, これらをアセチル化によりポリ酢酸アリル (PAAc) に変えた。さらに, 酢酸アリルのラジカル重合および異なる重合条件で得られたアリルアルコールポリマーのアセチル化によって, 低重合度のPAAc試料を製造した。得られたPAAc試料をアセトン-水 (容積比で8: 2) 混合液中で, 水酸化カリウムを触媒に用いてケン化した。ケン化の初期速度定数はポリマーの重合度に依存したが, その後の段階における速度定数はすべての試料についてほぼ同じであった。PAAcのケン化反応におけるケン化の進行に伴う見かけの速度定数の増大, いわゆる反応加速効果は, ポリ酢酸ビニルのケン化反応のそれよりもずっと小さかった。これらの結果に対して少し議論した。
  • 鷲見 正雄, 野桜 俊一, 村橋 俊介
    1967 年 24 巻 267 号 p. 512-521
    発行日: 1967/07/25
    公開日: 2010/11/22
    ジャーナル フリー
    ジビニロキシジメチルシラン (DVOSi) は既報のモノビニロキシトリメチルシラン (VOSi) と同様にカチオン重合する。得られた重合体はMeOH-MeONaで加溶媒分解され, ポリビニルアルコール (PVA) を与える。DVOSiの場合, 環化重合の可能性が期待されたが, 重合挙動およびポリ (DVOSi) の重合率とペンダント二重結合量の関係から, トルエンあるいはニトロエタン中の重合は主としてビニル重合であり, 環化重合していないと推定された。PVAの立体規則性に及ぼすDVOSiのカチオン重合の諸条件, 触媒, 溶媒, 触媒濃度, モノマー濃度, 重合温度の影響を検討した。DVOSiの場合, 得られたPVAの立体規則性はVOSiの場合と非常に異なり, 重合条件の影響をほとんど受けず常にI≅H≫Sのtriad分布をもち, やや, イソタクトの多いアタクトである。これらのtriadの値はBoveyのσ-プロットにほぼのった。また, PVAの重合度は一般に低く, 重合条件による影響も少なかった。
  • 古江 正興, 野桜 俊一, 村橋 俊介
    1967 年 24 巻 267 号 p. 522-528
    発行日: 1967/07/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    ジメチルジビニロキシシランは炭素同族体と同様に次のようにラジカル開始剤により, 5員環, 6員環, 未反応ビニロキシ基からなる環化重合体を与える。モノマー濃度の減少に伴い, 分子内環化反応の割合は増加し, 環化反応に対する温度依存性より求めた, 5員環, 6員環生成の活性化エネルギーの差, および頻度因子の比はEc5-Ec6=2kcal/mol, Ac6/Ac5=0.7×10102であった。このポリマーは加溶媒分解で容易にPVAに誘導することができ5員環からは1, 2-グリコール結合が生成する。このようにして得られた1, 2-グリコール結合を30mol%含むPVAは通常のPVAと異なるIRスペクトルを800~1200cm-1の領域で示す。特に1090cm-1のνc-oの吸収は1060cm-1に移動する。立体規則性を知る目的でポリ酢酸ビニルに誘導しそのNMRスペクトルを検討したが, 1, 2-グリコールの存在による分解能の低下で明確な知見は得られなかった。
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