高分子化學
Online ISSN : 1884-8079
Print ISSN : 0023-2556
ISSN-L : 0023-2556
25 巻, 284 号
選択された号の論文の12件中1~12を表示しています
  • 第1報紡糸速度と紡出糸の二三の性質の関係
    高木 康夫, 樋口 富壮
    1968 年 25 巻 284 号 p. 769-774
    発行日: 1968/12/25
    公開日: 2010/10/14
    ジャーナル フリー
    ナイロン6繊維の溶融紡糸過程での配向の機構を調べるために, 500m/minから4400m/minまでの種々の速度で紡糸したフィラメント糸の二三の物性 (複屈折, X線回折, 密度, 沸とう水収縮率, タテ膨潤度) を測定し, 次のような結果を得た。
    1) X線的な結晶の配向度は比較的低速で急増し, 2000m/minですでに理想配向の80%以上になる。これに対し複屈折からみた全配向度は結晶配向度よりかなり低い。
    2) 沸とう水収縮率は最初負となり, 1500~2000m/minで極小を経たのち, 以後は紡糸速度とともに増加して平衡値に達する。
    3) タテ膨潤度は紡糸速度1500~2000m/minで極大となる。とくに, 2), 3) は延伸の中間段階で見られるこれら諸値の極値現象と類似しており, 紡糸過程においても, 延伸の中間段階 (倍率2~2.5) で生起するのと同様, 紡糸速度1500~2000という中間的な速度で最も不安定な構造になるものと考えられる。
  • 第11報アジド基を含むポリ塩化ビニルの性質とエラストマーとの反応
    森 邦夫, 田村 浩作, 中村 儀郎
    1968 年 25 巻 284 号 p. 775-780
    発行日: 1968/12/25
    公開日: 2010/10/14
    ジャーナル フリー
    PVCの側鎖塩素はアジ化ナトリウムを溶解した液体アンモニア, またはジメチルホルムアミド水溶液中でアジド基と置換してアジド基を含むPVC (I) となる。Iは加熱によって不溶, 不融性に転ずるが橋かけ反応の目安となる数平均橋かけ密度γの増加速度はlのアジド基含量の1乗に比例し, その活性化エネルギーは23~24kcal/molとなる。液状チオコール, ABSまたはMBS樹脂のようなエラストマーとIとの混練物は加熱によってIのアジド基の分解によって生ずるラジカルの作用により, これらエラストマーがIの橋かけ剤として反応し, 引張強度の低下を起こさずに伸度, 衝撃値のすぐれた橋かけPVCを与える。このような傾向はこれらのエラストマーとIを単に混練しただけの試料については認めることができず, Iの橋かけにあずかったエラストマーのソフトセグメントの特徴ある効果と考えられる。
  • 第4報高分子鎖のUnperturbed dimension決定の一つの試み
    上出 健二
    1968 年 25 巻 284 号 p. 781-787
    発行日: 1968/12/25
    公開日: 2010/10/14
    ジャーナル フリー
    固有粘度 [η] と分子量Mとの間に成立する, いわゆるMark-Houwink-桜田式 [η]=KmMaの係数Km, aは, 粘度式の適用分子量範囲が非常に広ければ, 高分子-溶媒の組合せに特有な定数とならない場合がある。この場合, 既報 (上出健二, 他: 高化, 20, 512 (1963), 21, 682 (1964), 23, 1 (1966) など) の粘度式の解析理論はそのままでは適用できない。そこで, 適用分子量範囲をより狭くいくつか変えて求めたMark-Houwink-桜田式の組合せを既報の理論で解析してunperturbed dimensionを評価する方法を提出した。この方法を用いてポリ酢酸ビニルおよびポリスチレン溶液の粘度デタを解析してunperturbed dimensionを決定し, 他の方法を用いて得られた値と比較した。
  • 第2報初濃度, 分別区分量, 再分別操作の分別効率に及ぼす影響
    上出 健二, 小川 勉, 松本 万亀子
    1968 年 25 巻 284 号 p. 788-802
    発行日: 1968/12/25
    公開日: 2010/10/14
    ジャーナル フリー
    逐次分別沈殿法を利用して重合度分別を実施する場合, 分別効率に及ぼす初濃度, 区分量 (区分の大きさ) および再分別操作の影響を検討した。Flory-Huggins理論を基礎にして最も確からしい分布 (数平均重合度xn=150) を持つ高分子試料を仮想的に電子計算機によって分別した。その結果, 初濃度を小さくすると (0.1%程度にまで), 分別データはSchulzの方法によって解析できる。前報 (上出, 他: 高化, 25, 440 (1968)) で提出した三角形近似法もかなり精度よく適用できる。分別区分の全体に対する重量分率を小さくすると, 分別区分の重合度分布はかえって広くなり, 区分量を無限に小さくするときに得られるxw/xn (ここで, xwは重量平均重合度) は1.62である。これはFloryの相対的分別効率のパラメーターでは説明できない。分別効率として, 高分子の濃厚相と希薄相への分配率のパラメーターσを利用する方がより合理的である。初濃度や分別区分量を変えて分別された第1区分の重合度分布の幅はσ で統一的に説明できる。再分別操作を実施すると, Schulzプロットは真の分布 (最も確からしい分布) により近づく。しかし, その一致の程度は, 再分別をしないもとの分別データを三角形近似法で解析した場合よりも悪い。結局, 分別効率を上げるためには初濃度を小さくするのが有効である。
  • 東出 福司, 金沢 淑子
    1968 年 25 巻 284 号 p. 803-808
    発行日: 1968/12/25
    公開日: 2010/10/14
    ジャーナル フリー
    フレーク状ガラスにメタクリル酸メチルをγ線照射グラフト重合させた。アルミノケイ酸塩ガラスフレークに対してのみ, MMAのグラフト重合が認められ, 特にそのガラスフレークを, 重クロム酸塩硫酸混液で前処理した場合に, 容易にグラフト重合が, 起こっている。グラフト重合体の検出はIRスペクトルの測定で行なった。アルカリケイ酸塩ガラスや, 無水ケイ酸に対しては, グラフト重合は見られなかった。グラフト重合体の検出されたものについては, 熱分解生成物をガスクロマトグラムで調べ, また加熱分解温度を測定して, グラフト重合体の性質を検討した。次に, グラフト重合反応の機構解明の手がかりを得るために, γ線照射によつて, フレークに生ずる活性種をESRで追求した。重クロム酸混液で前処理したアルミノケイ酸塩ガラスフレークにのみ顕著に現われる20.6Gの等間隔にある6本のhfsを有する共鳴吸収線は, 初め4個の酸素と配位して, 格子形成にあずかつていた4配位のアルミニウムが, 酸処理によって, 酸素を1個失ない, そこに捕捉された電子によるものと考えられた。この特徴的に現われたESR吸収線とグラフト重合反応の関係について検討した。
  • 第1報理論的研究
    大西 輝明, 田畑 米穂
    1968 年 25 巻 284 号 p. 809-816
    発行日: 1968/12/25
    公開日: 2010/10/14
    ジャーナル フリー
    放射線固相重合における分子量分布をpost重合と, in-source重合との両方について, 簡単な仮定をおいて計算した。この結果, 低分子量側に現われる分布極大は, 連鎖移動現象に基くものであることがわかった。post重合とin-source重合の分子量分布の相違が, 重合機構との関連において, 定性的に説明されうることを示した。
  • 第2報滴下法による酢酸ビニルの乳化重合
    藤井 光雄, 大塚 保治, 河野 巽
    1968 年 25 巻 284 号 p. 817-824
    発行日: 1968/12/25
    公開日: 2010/10/14
    ジャーナル フリー
    70℃の定温水槽中の酢酸ビニル (VAc) の乳化重合 (開始剤: 過硫酸カリ, 乳化剤: 日本油脂陰イオン界面活性剤ラピゾールB-80の固形分sodium dialkyl sulfosuccinate) において, VAcの2/3量, または全量を種々の速度で滴下して加える場合の反応系の温度変化曲線を解析した。また, 滴下開始の時期の影響についても検討した。VAc-H2O共沸混合物の還流が温度変化曲線に重要な影響を及ぼしているが, 滴下法では反応系に存在するVAc量が, VAcの全量を最初から加えてしまう場合に比して少ない状態でも還流が起こっている。反応系に存在するVAc量は, 滴下速度と重合速度の関係ならびに滴下時期に依存している。温度変化曲線を4種に分類したが, これから重合中の温度変化を少なくする方法などを明らかにした。
  • 井手 文雄, 長谷川 章
    1968 年 25 巻 284 号 p. 825-834
    発行日: 1968/12/25
    公開日: 2010/10/14
    ジャーナル フリー
    乳化重合によって合成したアクリル酸ブチル, またはアクリル酸エチルとメタクリル酸との共重合体エマルジョンを用いて, エマルジョン中でのイオン橋かけ反応について検討した。金属橋かけ剤として酢酸亜鉛を用い, 共重合体中に含有された亜鉛の定量, 赤外吸収スペクトルによるカルポキシレートの定量, および膨潤度からの橋かけ密度の算出などが, 橋かけ反応の確認および定量に用いられた。エマルジョン中での橋かけ反応はきわめて速く, かつ, 温度依存性も認められない。橋かけ剤濃度に比例して橋かけ密度は増加するが, 含有酸基の一倍当量程度で一定となる。メタクリル酸含量の増加に伴い, メタクリル酸がブロック的に存在するようになり, 橋かけ剤の反応率が低下してくる。また, 橋かけ度はエマルジョン中のポリマー粒子の大きさに従って増加するが, pHによる影響は少ない。膜の機械的性質は, 橋かけ剤濃度の増加に応じてヤング率および強度が増大し, 伸度は落ち, 一般的な橋かけ効果が顕著に認められる。
  • 第8報金属あるいは金属化合物と塩化水素を含む系によるイソブチルビニルエーテルのカチオン重合
    青木 修三, 中村 英之, 大津 隆行
    1968 年 25 巻 284 号 p. 835-839
    発行日: 1968/12/25
    公開日: 2010/10/14
    ジャーナル フリー
    イソブチルビニルエーテルをトルエン中0~30℃ で, 塩化水素といろいろな金属, 金属酸化物, 金属塩などを組み合わせた系を触媒として重合した。塩化水素はそれ単独では触媒活性を示さないが, 有機溶媒に不溶の固体第2成分を添加すると強力な触媒活性を示した。この触媒第2成分の活性の強さの定量的比較はできなかったが, Ni2O3が重合速度, 分子量ともに良い結果を与えるようであり, また粉末にしたガラスでさえも活性を有することが認められた。この触媒系にる重合開始は次式の機構によるものとして説明された。

    ここでMeは金属あるいは金属化合物など触媒第2成分を示す。この触媒第2成分はLewis酸に類似した挙動を示すわけであり, Cl-を吸着安定化して塩化水素のイオン解離を促進し, 開始反応 (重合反応) 速度を大にするとともに生成ポリマーカチオンとCl-の結合による停止反応を抑制して生成ポリマーの分子量を大きくするものと考えられる。
  • 第1報メタクリル酸メチル-ブタジエン共グラフトセルロースの合成と分析
    奈良 茂男, 松山 謙太郎
    1968 年 25 巻 284 号 p. 840-844
    発行日: 1968/12/25
    公開日: 2010/10/14
    ジャーナル フリー
    無触媒法により, セルロースへのMMA-ブタジエンの二元グラフト共重合を行なった。反応は, セルロース-水-MMA-ブタジエンの系で加熱かきまぜるだけで, グラフト重合が進行する。全単量体濃度10~20%のとき, 反応温度90℃, 単量体モル分率MMA/ブタジエンの値が30/70の状態のとき, グラフト率も最大で, かつMMAとブタジエンが交互共重合の形でグラフトする。反応時間が増加すると, 一様にグラフト率は上昇するが, グラフトポリマーの構造は単量体モル分率と反応温度の変化に対し一定である。反応の機構について, 拡散反応の取扱により, この反応が理解されることから, 拡散律速で進むこと, および反応の活性化エネルギーが36kal/molであることを知った。
  • 池村 糺
    1968 年 25 巻 284 号 p. 845-849
    発行日: 1968/12/25
    公開日: 2010/10/14
    ジャーナル フリー
    ノナメチレンポリ尿素とエチレンオキシド, プロピレンオキシドの反応を常圧液相, 加圧反応で行ない, エーテル結合量, 窒素分析の結果, アルカリと酸を比較すると酸は触媒効果が少なく, エーテル化の高い付加物を得るためにはノナメチレンポリ尿素の強い水素結合のため長時間反応を必要とする。X線回折によりEOはノナメチレンポリ尿素の非晶性部分にグラフトしているものと考えられる。吸湿率はノナメチレンポリ尿素よりやや高い値を示し, 溶融点はオキシエチル化度34.24%のもので191℃とかなり高い値を示した。溶解性はm-クレゾール, 硫酸に対しノナメチレンポリ尿素は溶解するが, 付加物は不溶で, フェノール (90%) アセトン溶液, 氷酢酸, 塩酸に対しノナメチレンポリ尿素は不溶であるが, 付加物は膨潤の挙動を示した。
  • 西 政治, 谷本 重夫, 小田 良平, 岡野 正弥
    1968 年 25 巻 284 号 p. 850-855
    発行日: 1968/12/25
    公開日: 2010/12/22
    ジャーナル フリー
    ヨウ化トリメチルフェニルアンモニウム触媒の存在下, アクリル酸に置換基の異なった数種の高級エポキシドを開環付加させた。得られたβ-オキシアルキルアクリレート類は, 2, 2'-アゾビスイソブチロニトリルを開始剤として重合させポリマーとした。これらのポリマーについては, 他の多くのポリアクリレートと比較して, 対溶剤性に特徴が認められた。すなわち, 水酸基を有するため, 低級アルコールなど親水性溶剤に易溶であった。また, エステル残基のかさ高い置換基, あるいは水酸基の水素結合による寄与で比較的融点の高いポリマーが得られた。さらに, 適当なポリマーを選び, その水酸基に着目して若干の化学反応も行なった。とくに, トリレンジイソシアナートによる橋かけでは強じんで耐溶剤性のすぐれた皮膜を得た。
feedback
Top