分子量の異なるポリ塩化ビニル, 単分散ポリスチレンなどの熱処理を行ない, 差動熱量計 (DSC) を用いて熱解析し, ガラス転移温度 (T
a) 付近の挙動を解明することを目的とした。ポリ塩化ビニル (
Mn=4.8×10
4-1.7×10
5), 単分散ポリスチレン (
Mw/M
n=1.02-1.06,
Mn=1.98×10
4-1.80×10
6) はそれぞれ, Tgeより低い温度で熱処理を行なうと処理温度に対応した熱転移が発生し, DSCサーモグラム上にダブルピーク (T
gh, T
gl) が見られるようになる。また, TgおよびTgよりやや高い温度で処理すると, 吸熱ピークは一つしか現われないが未処理に比べてピークの増大が見られる。DSCサーモグラム上に現われる吸熱ピークの変化について, 熱処理温度, 処理時間, 分子量, 昇温速度などの影響について検討し, 1) T
glはほぼ分子量によらず処理温度に対応して変化する。2) T
glは分子量が小さく, 分子量分布をもつ試料の方が発生しやすいが, 処理時間を適当に選べば, 単分散試料でも発生する。3) 異なった試料にはそれぞれT
glの発生に最適な処理時間がある。4) T
gh, T
ghの昇温速度依存性が異なり, 分子量の大小で昇温速度依存性が異なる。などの結果を得た。これらのことから, 同一非晶性高分子中にも異なったエンタルピーをもつガラス状態があること, およびダブルピークの存在は, それらが同一試料中に共存しているものと推定した。
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