高分子化學
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26 巻, 285 号
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  • 山口 格, 波田 靖夫
    1969 年 26 巻 285 号 p. 1-9
    発行日: 1969/01/25
    公開日: 2010/10/14
    ジャーナル フリー
    トリメチルアミン中でスチレンーメタクリル酸メチルのアニオン共重合を行なった。触媒に金属ナトリウムあるいは金属カリウムなどのアルカリ金属を用いた場合に通常の均一系アニオン共重合の場合よりポリマー中に多量のスチレンが含まれてきた。コポリマー中に含まれるスチレン%と種々の共重合因子との関係を検討した。ポリマー中のスチレンの割合は仕込みモノマー中のスチレン%が増すほど, 転化率が低いほど, 重合温度が高いほど, そして触媒量が多いほど増大する。また, 金属ナトリウム, カリウム, セシウムを触媒にしたときの方がリチウムの場合よりスチレンは多く含まれる。これらの結果から重合機構についても若干の検討を行なった。
  • 第1報 無水マレイン酸-酢酸ビニル共重合体の熱安定性
    松井 修一, 相田 博
    1969 年 26 巻 285 号 p. 10-16
    発行日: 1969/01/25
    公開日: 2010/10/14
    ジャーナル フリー
    窒素および空気流動下における無水マレイン酸一酢酸ビニル共重合体の熱安定性を検討した。150℃ を越すと共重合体は崩壊し始める。主な揮発性物質は酢酸であって重量減少にほぼ等しい。一次反応を仮定して重量減少 (脱酢酸反応) に関する活性化エネルギーを算出すると、窒素中で42.6kcal/mol空気中で28.4kcal/molであって空気中の酸素により脱酢酸反応が促進される。加熱試料を分析すると, 二重結合, 橋かけ結合の形成が認められ, これらは空気中より窒素中で容易に生じる。空気中ではエポキシ基が生ずるが, 窒素中では形成されない。これらの結果を考慮して初期崩壊機構を推察した。
  • 第13報ポリーレーチロシン水溶液の機械的変性
    近藤 慶之, 早川 忠男, 呉 祐吉
    1969 年 26 巻 285 号 p. 17-20
    発行日: 1969/01/25
    公開日: 2010/10/14
    ジャーナル フリー
    ポリーLーチロシソ水溶液に, 摩擦, かきまぜ, 振とうなどの “ずり応力” を加えて, いわゆる機械的変性を起こす現象を定性的に観察した。pH9.9~10.7のポリーLーチロシソ水溶液に “ずり応力” を加えると, ポリーLーチロシンは白だくを伴って凝固析出することが認められた。凝固析出したポリーL-チロシンのIRスベクトルは1630cm-1にアミド1の吸収を示し, また, X線写真は面間距離4.6A近傍に強いデパイシェラー環が観測されることから, 析出したポリーLーチρ シンはβ 構造であることが認められた。ポリーL-チロシソ水溶液の機械的変性のメカニズムは, ポリーLーグルタミン酸水溶液の場合と同様に, α-helixにcoil構造をもって水溶液中に存在するときに, “ずり応力” が加えられて, β 構造に転移して析出してくるものと考えられる。
  • 第2報高分子膜の帯電性の評価について
    佐々木 寛治
    1969 年 26 巻 285 号 p. 21-30
    発行日: 1969/01/25
    公開日: 2010/10/14
    ジャーナル フリー
    前報に述ベた電荷分布測定装置を用い, 摩擦による発生電気量のみを測定して試料の帯電に関する特性値を得る方法について研究した。摩擦帯電曲線の解析から第1回摩擦帯電量が特性値としての意味をもつことが明らかとなり, その値の統計的性質の観測, および測定に関する影響因子の分散分析によって測定法としての指針を得た。すなわち, 摩擦垂直荷重を変えて第1回摩擦帯電量を測定し, その摩擦垂直荷重依存性でこの帯電量を割った値をその物質の帯電特性を示す “見かけの帯電性” として定義した。さらに見かけの帯電性は真実帯電性と見かけの接触面積に対する真実接触面積比の積であることが考察でき, この真実接触面積比を仮定することによって真実帯電性の値が推定できた。ポリプロピレン膜の帯電性に及ぼす摩擦材料の影響を検討した結果, 摩擦材料によってこの帯電性は約104倍の差があることが得られた。
  • メルトフラクチャ吐出物の形状に与える押出条件の影響について
    水谷 茂, 荒井 肇
    1969 年 26 巻 285 号 p. 31-38
    発行日: 1969/01/25
    公開日: 2010/10/14
    ジャーナル フリー
    ナイロン6溶融物のメルトフラクチャについて, 特にメルトフラクチャ吐出物の形状と押出条件の関係について検討した。メルトフラクチャは一定のずり応力範囲内で発生し, 発生範囲は重合度によって異なる。メルトフラクチャ吐出物の形状は, ずり応力, ずり速度, 口金流入角, 口金孔径に影響され, メルトフラクチャ吐出物のネジ山の高さが最大になるずり応力値が存在する。メルトフラクチャ発生時の溶融物の流動挙動は次のとおりであると推定される。1) 溶融物はらせん状に回転しない。2) 口金孔内の流速分布は偏心的である。3) 流速のピークは口金孔の中心軸のまわりを連続的に移行する。4) 移行の周期は1×103~3×103 (c/s) である。
  • 第2報配向と構造変化に関する考察
    高木 康夫
    1969 年 26 巻 285 号 p. 39-46
    発行日: 1969/01/25
    公開日: 2010/10/14
    ジャーナル フリー
    ナイロン6の溶融紡糸において, 紡糸速度1500~2000m/minで沸とう水収縮率が極小になり, タテ膨潤度が極大になるという現象を説明するために, 次のような仮説を提案した。そして, この仮説によってこれらの現象をかなり満足に説明できた。
    1) 紡糸時, 局部的に配向度の高い部分と低い部分ができる。そして配向度の高い部分が優先的に結晶化して, 低い部分は無定形で残る。
    2) 紡糸時の高配向に起因する結晶はふさ状ミセル構造である。
    3) 非晶部分はたるんだ状態の部分であり, 低紡糸速度の場合には折りたたみ状の構造となっている。
    4) 紡糸速度が大きくなると非晶部分は折りたたみ構造からふさ状構造へ移り変わる。一般には非晶部分は両構造の混成である。1500~2000m/minが両構造の転移域である。
    5) 沸とう水処理により, 結晶部分は周囲の, より低配向度の部分をだき込んで伸長するとともに, β型からα型への転移による伸長が起こる。非晶部分はその配向度に比例して収縮する。
  • 坂口 康義, 西野 潤, 玉置 克之, 小林 啓祐, 細田 勝美, 小林 至, 野上 隆史
    1969 年 26 巻 285 号 p. 47-53
    発行日: 1969/01/25
    公開日: 2010/10/14
    ジャーナル フリー
    メタクリルアミド (MAAm)・メタクリロニトリル (MAN) およびメタク資レイソ (MAC) をラジカル重合し, 生成ポリマーをポリメタクリル酸 (PMAA) およびポリメタクリル酸メチル (PMMA) に変えた。これらのポリマーの立体規則性を, PMAAおよびPMMAの赤外吸収スペクトル, PMAAの電圧滴定曲線と酸無水物形成性の観点から検討した。これらの結果に基き, ポリ-MAAmは比較的シソジオタクチックであり, ポリ-MANは前者よりはアイソタクチックであり, ポリ-MACはかなりアイソタクチックであるという結論を導いた。ポリマー間のこのような立体規則性の差異は, 主として出発モノマーの側鎖の立体障害の差異に基くものと考えられる。さらに, ポリ-MACから誘導したPMMAは, 未確認の異種構造を含むことを認めた。
  • 第3報 等温結晶化と密度
    池田 守男
    1969 年 26 巻 285 号 p. 54-61
    発行日: 1969/01/25
    公開日: 2012/02/20
    ジャーナル フリー
    ポリエチレンテレフタレートを溶融状態ならびに冷却した状態から等温結晶化すると密度は結晶化時間に対して二つの段階 (一次結晶化および二次結晶化) を経過して増加する。二次結晶化過程では次の関係が成り立つ。
    1) 密度dと時間tとの間にはd=d0+Blogtの関係式が成り立ち, 結晶化温度TcがTc≦220℃ではd0=1.3504±0.0012+ (2.3±0.1) ×10-4×Tc (g/cm3), B=0.0065±0.0006となる。dのlogtによる増加は主として結晶の厚化による。
    2) 結晶間の距離 (長周期) と密度との間には, t0およびtにおける平均の長周期および密度をそれぞれ〓とすると, 〓の関係式が成り立つ。
    3) Tcにおける平衡状態の密度dpおよび長周期Llpは結晶の密度, 結晶表面の密度および表面の平均の厚さをそれぞれdc, ds, sとすると〓によって表わされる。
  • 第4報低結晶化度高分子の融解挙動に関する理論的考察
    池田 守男
    1969 年 26 巻 285 号 p. 62-67
    発行日: 1969/01/25
    公開日: 2012/02/20
    ジャーナル フリー
    低結晶化度高分子の二次結晶化過程の初期あにおいて, ラメラの厚さ方向の分布が分布関数の最大値におけるラメラの厚さL0*よりも小さい方に広がりを持つとすると, 時間tでのラメラの分布の最大における厚さLt*, 融点Tm (Lt*) ならびに結晶化温度TcとTm (Lt*) との関係は次の二つに大別することが可能である。
    1) 〓2) 〓ここでt*はL*0とラメラの平均の厚さLtとが等しくなる時間, B'は密度と結晶化時間の対数との関係から得られる傾斜, L0およびL0lはt0におけるラメラの厚さおよび長周期, dcおよびdaは結晶領域および非結晶領域の密度であり, σe, ΔHl, Tm0はそれぞれ表面自由エネルギー, 融解熱, 平衡融点である。
    Lに対するσe (Lt)/ΔHf (Lt) は時間依存性を持ち次式で表わせる。〓
  • 畠山 立子, 金綱 久明
    1969 年 26 巻 285 号 p. 68-75
    発行日: 1969/01/25
    公開日: 2012/02/20
    ジャーナル フリー
    分子量の異なるポリ塩化ビニル, 単分散ポリスチレンなどの熱処理を行ない, 差動熱量計 (DSC) を用いて熱解析し, ガラス転移温度 (Ta) 付近の挙動を解明することを目的とした。ポリ塩化ビニル (Mn=4.8×104-1.7×105), 単分散ポリスチレン (Mw/Mn=1.02-1.06, Mn=1.98×104-1.80×106) はそれぞれ, Tgeより低い温度で熱処理を行なうと処理温度に対応した熱転移が発生し, DSCサーモグラム上にダブルピーク (Tgh, Tgl) が見られるようになる。また, TgおよびTgよりやや高い温度で処理すると, 吸熱ピークは一つしか現われないが未処理に比べてピークの増大が見られる。DSCサーモグラム上に現われる吸熱ピークの変化について, 熱処理温度, 処理時間, 分子量, 昇温速度などの影響について検討し, 1) Tglはほぼ分子量によらず処理温度に対応して変化する。2) Tglは分子量が小さく, 分子量分布をもつ試料の方が発生しやすいが, 処理時間を適当に選べば, 単分散試料でも発生する。3) 異なった試料にはそれぞれTglの発生に最適な処理時間がある。4) Tgh, Tghの昇温速度依存性が異なり, 分子量の大小で昇温速度依存性が異なる。などの結果を得た。これらのことから, 同一非晶性高分子中にも異なったエンタルピーをもつガラス状態があること, およびダブルピークの存在は, それらが同一試料中に共存しているものと推定した。
  • 畠山 立子, 金綱 久明
    1969 年 26 巻 285 号 p. 76-82
    発行日: 1969/01/25
    公開日: 2012/02/20
    ジャーナル フリー
    差動熱量計 (DSC) を用いて各種セルロースの室温より分解までの熱測定を行ないガラス転移温度の決定を試み, 無定形セルロース未処理試料55℃, 熱処理試料73℃, リソターセルロース85℃の値を得た。また, 水分吸着状態のガラス転後温度をあわせて測定し, 無定形セルロース57℃, リソターセルロース58℃, 発熱ピークの存在のため乾燥状態では測定できなかったゲルセルロース57℃の値を得た。また, 無定形セルロースについて100-180℃ に発熱ピークの存在を見出し, 赤外吸収スペクトルの結果と比較して, 水素結合の生成によるものであろうと考えた。無定形セルロースの粘弾性測定結果と熱測定の結果と対比して, 両者がよく対応することを見出した。
  • 第1報未延伸ポリフッ化ビニリデンの分子運動
    角谷 治子
    1969 年 26 巻 285 号 p. 83-88
    発行日: 1969/01/25
    公開日: 2010/10/14
    ジャーナル フリー
    ポリフヅ化ビニリデン未延伸皮膜の分子運動を誘電的性質, 動的粘弾性, 広幅法NMR測定により調べた。誘電測定においては四つの緩和過程が観測され高温側から順にα, β, γ, δ分散と名づける。α分散はおそらく結晶の融解に関係すると思われるがわれわれの実験範囲では誘電損失の極大は得られていない。β分散は80℃付近で得られ, NMR測定の結果と合わせて考えて結晶域における小さい分子運動によると考えられる。-40℃付近で得られるγ分散は無定形域における分子主鎖のミクロブラウン運動に同定される。δ分散は-70℃付近で, 誘電的には小さく, 分子鎖の局所的振動によると思われる。β, γ, δ分散の見かけの活性化エネルギーは各々21kcal/mol, 29kcal/mol, 6kcal/molである。
  • 村田 勝彦, 小林 貞雄
    1969 年 26 巻 285 号 p. 89-96
    発行日: 1969/01/25
    公開日: 2012/02/20
    ジャーナル フリー
    高圧法未分別ポリエチレンについての固有粘度数とメルト・インデックスに及ぼす分子量および分岐の影響を, 系統的に選んだ多くの測定試料より定量的に評価して, 次の実験式を得た。この式は通常市販されているメルト・インデックスにして, 1~15の範囲の高圧ポリエチレンについて成立する。
    MI=6.06×1027×Mw-5.84×g-9.82
    ここでMIはメルト・インデックス (9/10ml), Mwは重量平均分子量, gは分岐の程度を表わすパラメーターである。分岐の多い高圧法ポリエチレンほど固有粘度数と, メルト・インデックスをプロットした場合, 固有粘度数の大きい方に移動することが明らかになった。
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