高分子化學
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26 巻, 296 号
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  • 第11報ポリエチレンテレフタレートおよびその共重合物
    桜田 一郎, 梶 慶輔
    1969 年 26 巻 296 号 p. 817-822
    発行日: 1969/12/25
    公開日: 2010/10/14
    ジャーナル フリー
    ポリエチレンテレフタレート (PET) およびその共重合物一ポリエチレソテレフタレート/8.3mol%イソフタレート (PET/PEI)-は, ほとんど同一の結晶性のX線図を与えるので, これらについて鎖軸方向の結晶弾性率 (Et) を測定した。実測されたEt値はつぎのとおりである。
    PET…Et=110×104kg/cm2 (21±1℃)
    PET/PEI…Et=115×104kg/cm2 (20±1℃)
    これらの値は実験誤差 (各値の±10%) 内で一致しており, 鎖軸方向の結晶弾性率は少量の共重合成分によってほとんど影響されないことがわかる。また, この値はPETに対するTreloarの計算値Et=124×104kg/cm2ともほぼ一致している。PETについては, 鎖軸方向に引張応力をかけたときの赤道面の変化をも測定した。その結果, 応力によって鎖軸と直角方向に縮みが起こるが, その程度は (110) 面が最も大きく,(100) 面はほとんど動かない。(010) 面はその中間であり複雑な挙動を示す。この動きやすさの順序は, 別報の各面に対する分子鎖軸に対し直角方向の結晶弾性率 (Et) の値と対応している。
  • 第5報ポリェチレンテレフタレートおよびその共重合物
    桜田 一郎, 梶 慶輔, 中前 勝彦, 和田野 晋
    1969 年 26 巻 296 号 p. 823-832
    発行日: 1969/12/25
    公開日: 2011/11/29
    ジャーナル フリー
    ポリェチレンテレフタレート (PET) およびその共重合物-ポリェチレンテレフタレート/8.3mol%アジベート (PET/PEA) およびポリェチレンテレフタレート/8.3mol%イソフタレート (PET/PEI)-について, 鎖軸に対し直角方向の結晶弾性率 (Et) を測定した。その結果, つぎの値を得た。
    PET…(100): Et=4.7×104kg/cm2 (110): Et=3.8×104kg/cm2 (010): Et=4.2×104kg/cm2 (23±1℃)
    PET/PEA…(100): Et=4.7×104kg/cm2 (110): Et=3.7×104kg/cm2 (010): Et=4.2×104kg/cm2 (20±1℃)
    PET/PEI…(100): Et=4.2×104kg/cm2 (110): E2=3.4×104kg/cm2 (010): Et=3.8×104kg/cm2 (20±1℃)
    PETの値は, ポリェチレンのEt (3.8-4.3×104kg/cm2) とほぼ同程度であり, したがって, PETの分子鎖間には特に強い結合力は働いていない。しかし,(100) 面に対するEtは他の方向に比して若干高い。これはおそらく, ベンゼン核どうしのπ電子相互作用が働いているためと思われる。また, 共重合物のEt値をPETと比較すると, PET/PEAではほとんど等しいが, PET/PEIではいずれの面についても約10%ほど小さくなっている。このことは, イソフタレート成分はアジペート成分に比べてPETの結晶格子中により入りやすく, そのためPET/PEIの揚合には結晶格子が乱されてEtが低下したことを示しているものと思われる。
  • 第6報ナイロン6 (α型)
    桜田 一郎, 梶 慶輔, 中前 勝彦
    1969 年 26 巻 296 号 p. 833-840
    発行日: 1969/12/25
    公開日: 2010/10/14
    ジャーナル フリー
    ナイロン6のα型の分子鎖軸に対し直角方向の結晶弾性率 (Et) をX線的に測定し, つぎの結果を得た。
    Nylon 6 (α-form):(200)…Et=7.3×104kg/cm2 (002)…Et=4.4×104kg/cm2 (20±1℃)
    すなわち,(002) 面の瓦値は, ポリエチレンの値とほぼ等しく,(200) 面のEt値は,(002) 面の値よりもはるかに大きい。この結果は, ナイロソ6のα型結晶の分子鎖間力の異方性と一致している。すなわち, 水素結合方向に近い方向のEtの方が大きい。
  • 第17報 コポリ (L-glu, L-ala) 水溶液の機械的変性
    近藤 慶之, 早川 忠男, 呉 祐吉
    1969 年 26 巻 296 号 p. 841-845
    発行日: 1969/12/25
    公開日: 2010/10/14
    ジャーナル フリー
    コポリ (L-glu, L-ala)(19: 1),(9: 1),(8: 2) の水溶液が, 摩擦, かきまぜ, 振とうなどの “ずり応力” によって, いわゆる機械的変性を起こす現象を定性的に観察した。pH3.8~4.5のユポリ (L-glu, Lala) 水溶液に “ずり応力” を加えると, コポリマーは凝固析出することが認められた。凝固析出したコポリ (L-glu, L-ala)(19: 1) はIRスぺクトル, X線写真の測定からβ構造であることが認められた。しかし, アラニンの含量が多くなると, 完全にはα→β転移を起こしにくく, コポリ (L-glu, L-ala)(8: 2) においてはα-helixの状態のまま凝固析出してくることがわかつた。そして, 80%helixを含む蟹ポリマ一 (8: 2) が機械的変性したものは部分的にβ転移を起こしていることが認められた。コポリ (L-glu, L-ala) 水溶液の機械的変性のメカニズムは, アラニンの含量が少ないとポリ-L-グルタミン酸と同様に “ずり応力” が加えられたためにα-helix→β構造に転移して析出してくるものと考えられる。また, アラニンの含量が多くなるとhelixがこわれにくいためβ転移を起こしにくく, α-helixのまま凝固析出してくるものと考えられる。
  • 吉岡 直範, 佐藤 宏
    1969 年 26 巻 296 号 p. 846-852
    発行日: 1969/12/25
    公開日: 2010/10/14
    ジャーナル フリー
    急冷成型された無定形フィルムを115℃および150℃で熱処理結晶化させ, 各々110℃および145℃の温度で延伸した。球晶の変形挙動を各種の小角光散乱理論により説明できるかどうか検討したが, 実験値に厳密に適合する理論は存在しない。ただし延伸初期においては体積一定の仮定は一応成立していると考えてよい。フィルムの内部構造はさらにX線回折, 密度, 複屈折および応カ-ひずみ測定により研究したが, 結果は球晶の変形を考慮することにより, よく説明される。
  • 田代 辰夫, 安田 誠
    1969 年 26 巻 296 号 p. 853-862
    発行日: 1969/12/25
    公開日: 2010/10/14
    ジャーナル フリー
    2-置換-4, 6-ジアミノ-s-トリアジソ (XT) およびメチロール化2-メトキシー (MMT), 2-イソプロポキシ-4, 6-ジアミノ-s-トリアジン (MiPT) ならびにメチロールメラミソ (MM) の解離定数 (pKb) を電気滴定により測定した。2-アルコキシまたはアリールオキシ-(ROT), 2-アルキルアミノ-, またはアリールアミノ-(RNT), 2-アルキル, またはアーリ-ル-4, 6-ジアミノ-s-トリアジン (RT) の塩基性はフェニル基を除いてR (アルキル, またはアリール基) の炭素数が増加するにつれてやや増大する。XTのpKa (=pKw-pKb) と置換基定数σmとの間の直線関係から, 次の諸定数計算値が得られた: 反応定数ρ=4.28, pKa (H)(X=H) =4.12, 相関係数γ=0.966, 標準偏差d=0.177。MMT, MiPTおよびMMの塩基性は結合ホルムアルデヒド (F) 平均モル数 (n) が増加すると減少する. pKbとnとの間に直線関係が成立し, その勾配はMMTの方が大きい。MMおよびMMTのプロトン付加挙動の相違が考察された。
  • 第1報 エマルジョン中でのイオン橋かけ
    井手 文雄, 児玉 恒雄, 長谷川 章
    1969 年 26 巻 296 号 p. 863-872
    発行日: 1969/12/25
    公開日: 2010/10/14
    ジャーナル フリー
    乳化重合により合成したスチレンとメタクリル酸との共重合体エマルジョンを用いて, エマルジョン中でのイオン橋かけ反応の検討を行なった。ポリマー中に含有される金属の定量, および赤外吸収スペクトルによるカルボキシル基の吸収ピークの減少率などから橋かけ反応が確認された。橋かけ剤として用いた金属塩は Na+, Ca++どに比ベるとイオン間力の強いZn++の酢酸塩が優れ, また, エマルジョン中でのイオン橋かけ反応はきわめて速い。橋かけ剤の反応率はTgの低いアクリル酸エステルの場合と比ベて低いが, 橋かけ剤濃度の増加に従ってポリマーの溶融指数が低下し, 一方, ゲル含量は増大する。ゲル含量は橋かけ剤濃度以外にもベース共重合体の [η] の影響を強く受ける。また, エマルジョンのpHがアルカリ側になるに従って橋かけ度は大きくなり, 一方, ポリマー粒子の粒径の増大する方向に橋かけ度が大となる。
  • 第2報ポリマー構造と樹脂特性との関係
    井手 文雄, 児玉 恒雄, 長谷川 章, 山本 修
    1969 年 26 巻 296 号 p. 873-882
    発行日: 1969/12/25
    公開日: 2010/10/14
    ジャーナル フリー
    種々の条件にて合成したスチレン-メタクリル酸共重合体およびそのイオン橋かけポリマーについて, ポリマー構造と樹脂特性との関係を調べた。動的弾性率 (E') の転移域は橋かけに伴って高温側に移り, また, ゴム領域でのせん断弾性率 (G') も高くなって橋かけ効果を示す。ポリマーの溶融指数はメタクリル酸含量, 共重合体の [η], および橋かけ度の増加に伴って低下するが, 特に橋かけ度の影響が大きい。流動の活性化エネルギーは橋かけポリマーとベース共重合体とでは大差ないが, Zn++によるイオン的結合が強いために高温における溶融指数の絶対値は橋かけボリマーが低く, イオン結合の完全な切断は生じない。しかしながらメタクリル酸含量 [η], 橋かけ度の間に適当なパランスをとることにより, イオン橋かけポリマーが容易に成形される。ポリマーの熱変形温度は橋かけに伴って向上するが, 特にメタクリル酸含量の影響が大きく, その量の増加とともに直線的に増大する。ポリマーの耐沸水性はポリマーの耐熱性の関数であり, そのため, イオン橋かけポリマーはきわめてすぐれた耐沸水性を示す。機械的性質にはイオン橋かけの顕著な効果はない。
  • 第3報懸濁重合法を用いたイオン橋かけ反応
    井手 文雄, 児玉 恒雄, 長谷川 章, 山本 修, 森藤 和彦
    1969 年 26 巻 296 号 p. 883-888
    発行日: 1969/12/25
    公開日: 2010/10/14
    ジャーナル フリー
    前報で述べたエマルジョン中でのイオン橋かけポリマーでは, 凝固方法あるいは残存乳化剤に基く成形品の着色などの問題が生じた。これらの乳化系の問題点は, 懸濁重合法により合成したベース共重合体と金属橋かけ剤との均一混合物を押出機中で混練りすることにより解決された。すなわち, ベース共重合体と橋かけ剤との混合物を溶融状で反応させても橋かけ反応は容易に進行し, しかも, 橋かけ時間あるいは橋かけ温度への依存性はきわめて小さい。この場合, 橋かけ反応とペレット化とが同時に行なわれるという利点を有しており, また, ポリマーならび成形品の着色は事実上認められなくなる。一方, 熱的性質あるいは機械的性質などの樹脂特性は乳化系での値と同等であるが, 光学的性質は乳化系と異なり, 懸濁重合法ではメタクリル酸含量の増加とともに曇価が増大する。また, 乳化系あるいは懸濁系のいずれの場合も, ポリマー中にメタクリル酸が8wt%以上含有されて, ポリマーの軟化温度が高くなると放置クレーズが発生し, この傾向はポリマーの中和度, 射出成形温度などには関係しない。
  • 第13報無水マレイン酸基とアンモニアの反応
    野間 夬之, 内海 弘, 丹羽 政三
    1969 年 26 巻 296 号 p. 889-895
    発行日: 1969/12/25
    公開日: 2010/10/14
    ジャーナル フリー
    無水マレイン酸とスチレンのコボリマーあるいは無水マレイン酸とビニルn-ブチルエーテルのコポリマーとアンモニアとの反応をトルエン・アセトン混液中で行なった。酸無水物基は容易にアミド基とカルポン酸基とに変わる。減圧下60℃で乾燥すると, アミド基の一部がイミド基およびカルボン酸基に変わる。水酸化ナトリウムによる加水分解ではアミド基の一部のみがカルボン酸基に変わり, 硫酸による加水分解ではアミド基の全部がカルボン酸基に変わる。無水マレイン酸とビニルn-ブチルエーテルとの50℃でのアセトン溶液共重合では, モノマー反応性比は0.045 (γm) および0.00 (γv) であった。
  • 松本 恒隆, 有原 正彦
    1969 年 26 巻 296 号 p. 896-902
    発行日: 1969/12/25
    公開日: 2010/10/14
    ジャーナル フリー
    酸性白土によるメタクリル酸メチル (MMA) の塊状重合機構について検討し, 次の諸結果を得た。1) 重合速度はクレー量の増大, 重合系への水の添加により増加し, クレーの熱処理温度の上昇とともに減少した。重合の見かけの活性化エネルギーは17.7kca1/molであり。ジフェニルどクリルヒドラジル (DPPH) の添加によって重合が禁止された。それゆえに, この重合はラジカル的に進行する。2) ラジカル源としてはMMAのモノマーおよびボリマー過酸化物 (MMA過酸化物) が考えられ, クレーはこの過酸化物の分解を促進し, 重合速度を増大するものとして推定された。3) クレー中の重合促進の活性点が何であるかは明確にしえなかったが, ラメラ間隙が重合の開始に関係するとともに, 重合の場を与えていることを明らかにした。
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