高分子化學
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27 巻, 297 号
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  • 緒方 直哉
    1970 年 27 巻 297 号 p. 1-20
    発行日: 1970/01/25
    公開日: 2010/10/14
    ジャーナル フリー
    交換反応および開環反応の二つの異なる経路による縮合系高分子の新合成法についてそれぞれ検討した。アミン水素をオキシエチル基で置換するとアミンとエステルの間で交換反応が容易に起こり, アミド化合物が生成することを見出した。これから, N- (オキシエチル) アミノ酸エステルあるいはN-N'- (ビスオキシエチル) アルキレンジアミンとジカルボン酸エステルは塩基性触媒の存在下でアルコール中, 室温でポリアミドを生成する。N- (オキシエチル) β-アラニンエステルはエタノールアミンとアクリル酸エステルのMichael型付加反応によって好収率で得られ, このモノマーはアルコール溶液中でリチウム触媒によってN- (オキシエチル) ポリ-β-アラニンを生成する。このモノマーから高分子量ポリマーを得る反応条件について主に検討し, モデル化合物を用いてエステルおよびアミド基の間の交換反応に対する反応機構を提案した。同一環内に2個の官能基を有する二官能性環状化合物, たとえばラクタムエーテル, ラクタムチオエーテル, ラクタムスルホン, ラクタムイミンを合成し, 種々の触媒を用いてそれらの開環重合を行なった。これらの二官能性環状化合物の重合性は一官能性環状化合物に比べると環を通して官能基が相互作用をなすためにかなり異なることを見出した。環状リン化合物とラクタム類との開環共重合を行なって共重合体組成がラクタムによって変化することを見出した。
  • 日比 貞雄, 前田 松夫, 伊藤 文博
    1970 年 27 巻 297 号 p. 21-32
    発行日: 1970/01/25
    公開日: 2010/10/14
    ジャーナル フリー
    試料の巨視的な弾性コンプライアンスを, 構造単位の弾性コンプライアンスの集合平均値から求める場合, これら両者は4階のTensorで与えられるので, 方向余弦の4乗項までが必要である。延伸結晶性高分子物質のX線回折によって得られる結晶面法線ベクトルの配向分布を使って, 延伸軸方向に関する結晶分子鎖の配向分布を評価する方法をRoeらが一般的に記述したが, この報告では, Roeらの方法をさらに発展させ, 任意の空間固定座標に関する結晶分子鎖軸の配向分布の評価方法を導き, 延伸結晶性高分子物質の弾性異方性を評価する際に, 必要となる各方向余弦の4乗項までの, 平均値をX線回折によって与えられる結晶面法線ベクトルの配向分布の平均値から, 球面調和関数を用いて推定する方法を示した。次にこれらの各方向余弦の寄与を用いて, 構造単位の弾性コンプライアンスから試料内任意方向のヤング率を計算する方法を誘導した。上記の具体的計算については構造単位の決定が重要な役割を果すので, その一例として, 結晶相, 非結晶相とが立体的に3方向から貼合さった複合構造単位モデルによる構造単位コンプライアンスの評価方法を最後に示す。
  • 石田 泰夫, 植田 季弘, 川井 弘三, 木村 幾生
    1970 年 27 巻 297 号 p. 33-39
    発行日: 1970/01/25
    公開日: 2010/10/14
    ジャーナル フリー
    ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィ (GPC) の検量線が, 分子量の対数と保持容量との間に直線関係を有することは, 溶出パターンの信頼性から考えて大切なことである。従来そのために, permeabilityの果なったゲルカラムを複数本接続する方法がとられてきたが, それでもなお, 数百万から数百までの分子章領域にわたって直線関係を有するカラム系の選択は困難な場合が多い。筆者らは数種類のゲルを, あらかじめ適当な比で混合してカラムに充てんする方法によって, 1本のカラムでも広い分子量領域で直線関係を有するMixed Gel Columnを得た。混合比は, セル・レスポンスの補正を行なえば検量線間に加算性がなりたつことから, 作図によって決定することができる。また, 検量線が直線の場合とそうでない場合とでの溶出パターンの比較を行ない, 直線関係が必要なことを確かめた。
  • 第18報 実験データの円すい形ノズルへの適用
    山浦 和男, 松沢 秀二, 呉 祐吉
    1970 年 27 巻 297 号 p. 40-46
    発行日: 1970/01/25
    公開日: 2010/10/14
    ジャーナル フリー
    三フッ化酢酸ビニルから誘導されたポリビニルアルコ一ルの水溶液の種々のずり速度での粘度測定により, 溶液中からポリマーが析出するときのずり速度 (臨界ずり速度), 粘度, ずり応力の値を求め・それらの値を円すい形ノズルの理論式に適用し, ノズルの長さ, ノズル出入口での流速, ノズル入口でのずり速度およびノズル入口での圧力などを求めた。ノズルの計算は, ノズル出口の i) θ=α (α: 円すい形ノズルの半頂角) で臨界ずり速度を示すとき, ii) θ= (1/2) αで臨界ずり速度を示すときのそれぞれについて行なった。また, ここではニュートン粘性体のみについて計算を行なった。
  • 第1報 直交ニコル法に基く複屈折測定装置の製作とそれによるポリエチレンテレフタレート紡糸での実測
    藤岡 幸太郎, 西海 四郎
    1970 年 27 巻 297 号 p. 47-54
    発行日: 1970/01/25
    公開日: 2010/10/14
    ジャーナル フリー
    溶融紡糸程での分子配向の機作を明らかにする目的で, 紡出ボエチレンテレフタレート走行糸の各点における複屈折を測定した。このため直交二コル法により光電的に走行糸のレターデーションと, 写真法により直径を求めた。結果は次のとおりである。口金1孔あたりの吐出速度を増すと配向開始点は口金から遠ざかる。巻取速度を増すと配向終結点が口金から遠ざかるが, このときの到達複屈哲は高くなる。複屈折は口金からS字状に増加していき, 未延伸系の値に連なる。これらの結果を一次元マックスウェルモデルと複屈折-ひずみの関係を用いて説明することを試みた。
  • 第4報 「くもり」の発生に関する考察
    井手 文雄, 児玉 恒雄, 長谷川 章, 山本 修
    1970 年 27 巻 297 号 p. 55-57
    発行日: 1970/01/25
    公開日: 2010/10/14
    ジャーナル フリー
    スチレン・メタクリル酸の懸濁共重合物は乳化共重合物比ベてくもりが強く発生するこの原因を追求するため, 乳化, 懸濁, 塊状重合の重合挙動を比較検討した。塊状重合では乳化懸濁重合に比べて重合初期にメタクリル酸が多く入る傾向が認められた。しかし, 油層のみに着目してみるとモノマー組成ーポリマー組成はいずれの重合法でも等しい。懸濁, 塊状, 重合では [η] の重合率依存性が大きく乳化重合では小さい。このことは前者からのポリマー重合度分布が広く, 後者のそれは狭いことを意味する。すなわち, 懸濁重合でのくもりは重合度分布の影響と共重合体構造の不均一性の累積効果に基くと考えられる。
  • 井手 文雄, 児玉 恒雄, 長谷川 章
    1970 年 27 巻 297 号 p. 58-64
    発行日: 1970/01/25
    公開日: 2010/10/14
    ジャーナル フリー
    懸濁重合で合成したスチレンーメタクリル酸共重合体 (St-MAA共重合体) において認められた「くもり」を解決し, さらにポリマーの耐応力クレージング性の増大をはかるために, 系中に第3成分としてToの低いアクリル酸エチルを導入し, ポリマー物性に与える影響を検討した。ポリマーの曇価はEAの導入に伴って減少し, 5wt%以上では事実上「くもり」は認められなくなる。一方, ポリマーの耐応力クレージング性はEAを導入しても大差なく, 特に放置クレーズの発生はポリマー構造に一義的に帰因するものでなく, そのポリマーの有する軟化温度と射出成形時での金型温度との温度差により一義的に定まり, その差の小さいほど, すなわち, アニール効果により残留応力の影響の消される方向にクレーズの発生が認められなくなる。したがってスチレン系の耐熱ポリマーが持ちうる耐熱度には上限があり, 金型温度を90℃とした場合, ポリマーの持ちうる最高の耐熱度は, たとえばビカット軟化温度でいうと115℃までである。その他, 二三の樹脂特性に及ぼす効果を検討した。
  • ジメタクリレートの種類の影響
    児玉 恒雄, 井手 文雄
    1970 年 27 巻 297 号 p. 65-73
    発行日: 1970/01/25
    公開日: 2010/10/14
    ジャーナル フリー
    官能基の間の長さを自由に変えうるジメタクリレートを橋かけ剤に使って, メタクリル酸メチル, スチレンとの共重合を行ない, 橋かけ剤の二つの官能基の間の長さが, 共重合挙動に及ぼす影響, ないし得られた橋かけ重合体の物理的性質に及ぼす影響などについて検討した結果, 次のことがわかった。(1) 重合の初期では, 共重合速度に対するジメタクリレートの官能基の間の長さの影響は, それほどないと思われるが, 重合後期では, 官能基の間の長さの影響が認められ, エチレングリコールジメタクリレートの共重合より, ビスー (エチレングリコール) フタレートジメタクリレートの共重合の方が重合連度が速かった。(2) 官能基の間の長さの長いビスー (エチレングリコール) フタレートジメタクリレート, テトラエチレングリコールジメタクリレートは, 官能基の間の長さの短いエチレングリコールジメタクリレートに比して橋かけ効率が高かった。(3) 得られた橋かけ重合体の二次転移点は, 橋かけ密度に関係なく, ほぼ一定であった。(4) 得られた橋かけ重合体の耐衝撃性, 軟化温度に対しては, ジメタクリレートの官能基の間の長さの影響が著しく認められた。しかし, 耐摩耗性, 強伸度, 屈曲強度に対しては, 橋かけ密度の影響しか認められなかった。
  • 桜田 一郎, 坂口 康義, 法林 昭二, 上原 浩
    1970 年 27 巻 297 号 p. 74-81
    発行日: 1970/01/25
    公開日: 2010/12/22
    ジャーナル フリー
    ラジカル重合により得られたポリ無水マレイン酸およびポリフマル酸ジエチルから, 2種のポリカルボキシメチレン (PCM) 試料を誘導した。両PCM試料はほとんど同一の赤外吸収スペクトルと高分子電解質挙動を示し, ほぼ同じ立体構造を持つと考えられる。PCMは電圧滴定曲線において, 半中和点付近で明らかな変曲を示した。また, イタコン酸 (IA) ・イタコン酸ジメチル・無水イタコン酸のラジカル重合により, 数種のポリイタコン酸 (PIA) 試料を製造した。IAを希薄水溶液中, あるいは塊状で高温 (130℃) で重合させて得られたPIAは, 他のPIA試料と異なる赤外吸収スぺクトルと高分子電解質挙動を示した。これらの結果は, 主としてPIA試料間の立体構造の差異に帰することができる。
  • 桜田 一郎, 坂口 康義, 上原 浩
    1970 年 27 巻 297 号 p. 82-88
    発行日: 1970/01/25
    公開日: 2010/10/14
    ジャーナル フリー
    無水マレイン酸-エチルビニルエーテルおよびフマル酸ジエチルーエチルビニルエーテルの交互共重合物から, マレイン酸-エチルビニルエーテル共重合物を誘導した。得られた両試料の高分子電解質挙動はほとんど同じであり, したがって両試料は似た立体構造を持つと考えられる。また, 無水マレイン酸-スチレン交互共重合物 (A) およびフマル酸ジエチル-スチレン交互共重合物 (B) から, マレイン酸-スチレン共重合物 (MA-St) を誘導した。両MA-St試料は電圧および電導度滴定曲線において, 半中和点付近で明らかな変曲を示した。両試料の高分子電解質挙動は細部において明らかに異なり, これは主として試料の立体構造の差異によると考えられる。(B) からのMA-Stは (A) からのそれに比べて, 水溶液中におけるtighter coilingの傾向がより大きいと推定される。
  • 桜田 一郎, 坂口 康義, 大村 恭弘
    1970 年 27 巻 297 号 p. 89-96
    発行日: 1970/01/25
    公開日: 2010/10/14
    ジャーナル フリー
    酢酸ビニル・ビニルアルコール (A), 酢酸ビニル・ビニルピ・リドン (B), 酢酸ビニル. アクリルアミド (C), 酢酸ビニル・ジメチルアクリルアミド (D), 酢酸ビニル・メタクリルアミド (E), 酢酸ビニル・N-メチロールアクリルアミド (F), 酢酸ビニル・アクリル酸 (G), 酢酸アリル・ビニルピロリドン (H), 酢酸アリル・アクリルアミド (I), N-アセトキシメチルアクリルアミド・アクリルアミト (J), N-アセトキシメチルアクリルアミド・メタクリルアミド (K) 共重合物勅酢酸エステル, ならび数種の低分子酢酸エステルを, 水溶液中で塩酸または水酸化カリウムを触媒に用いて加水分解した。(A), (B) および (H) の加水分解速度は, 類似構造を持つ低分子酢酸エステルのそれと大差なかった。(C), (D), (E), (F) および (I) は水酸化カリウムによって円滑に加水分解されたが, 塩酸による加水分解速度は非常に小さかった。他方, (G) は塩酸により円滑に加水分解されたが, アルカリにより水分解されにくかった。(J) および (K) の酸加水分解速度は, 他の高分子および低分子酢酸エステルのそれらよりずっと大きかった。これらの結果について少し議論した。
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