高分子化學
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28 巻, 310 号
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  • 岡本 宏
    1971 年 28 巻 310 号 p. 97-108
    発行日: 1971/02/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    ポリエチレン外被を用いた通信ケーブルの耐環境応力きれつ性を次の諸点について検討した. (1) 試験法, (2) ケーブル外被きれつ防止策, (3) きれつ性の経時変化, (4) 物性論的研究. その結果次の結論を得た. (1) 試験法は室温ベントリップ法を用いること. 試験片はケーブル長方向に直角に, ケーブル曲がりぐせ外縁部から切り出すこと. 外被厚とケーブル外径に応じて試験片をセットするチャンネル幅を変化させるべきこと. (2) わん曲したケーブルに70℃, 3分間の熱処理を加えればきれつ発生の危険性はなくなる. (3) ケーブルわん曲後, 1カ年を経過すれば応力緩和のためきれつの危険性はほとんどなくなる. (4) きれつ表面の形態は界面活性剤濃度とポリエチレン固体構造により変化するがチャンネル幅の影響は受けない. 環境応力きれつに対する応力緩和効果の機構には, ポリエチレンの不安定結晶領域の融解と再結晶化が重要な役割を果たしている.
  • 米田 昭夫, 小沢 啓二, 田中 誠, 村田 二郎
    1971 年 28 巻 310 号 p. 109-115
    発行日: 1971/02/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    ニトロソベンゼン存在下にAIBNを開始剤とする各種ビニルモノマーの重合をベンゼン溶液中60℃で行ない, ニトロソベンビンの重合禁止作用をそのラジカル捕捉効果とモノマーとの反応性から検討した. その結果, アクリル酸メチルと酢酸ビニルはニトロソベンゼンとは反応せず, 禁止時間から求めたニトロソベンゼンの消費速度は開始剤ラジカルとの反応から求めた消費速度とよく一致した. 禁止時間後の重合速度はアクリル酸メチルの場合禁止剤無添加の場合と一致したが, 酢酸ビニルの場合は低下する傾向が見られた. アクリロニトリルはニトロソベンゼンとの反応性が上記のモノマーに比べてわずかに大きいにもかかわらず, 禁止時間は低モノマー濃度では理論値と比較的よい一致を示すが, 高モノマー濃度ではニトロソベンゼンとの反応の寄与が大きくなるため禁止時間と禁止剤濃度との間には直線関係は認められなかった. メタクリル酸メチルはモノマーとの反応性は非常に大きいため禁止時間は予想される値よりも著しく短くなった.
  • 長野 正満, 加藤 義夫
    1971 年 28 巻 310 号 p. 116-122
    発行日: 1971/02/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    PVA-PVAcのブロック, グラフト共重合体フィルムの粘弾性, ガラス点, 強伸度を測定し, PVAcの相がこれらの性質に及ぼす影響を研究した結果は次のようである.
    a) 熱処理PVAフィルムの高酢化物のブロック重合体の弾性率は簡単な直列型の力学モデルでされる. すなわちこの系の複素弾性率Eは次式で表示された.
    ここで, φはPVAcの容積分率, EA, EBはそれぞれPVAc, PVAの複素弾性率である.
    b) 低酢化度の熱処理PVAフィルムの再編成ブロック重合体の弾性率は上記と同様の直列型力学モデルで示されるが, 酢化度が上昇するとPVA, PVAcの相分離が減少した.
    c) PVA-PVAcのブロック, ランダム共重合物のE″の最大値を示す温度は酢化度によって変化しないが, PVAに対するPVAcのグラフト重合体ではE″の最大値を示す温度が高温側に移動した. この現象の原因はPVAに対するPVAcの橋かけ結合によるものと推定した.
    d) PVA-PVAcブロック体の降伏点は酢化度とともに減少するが, 伸度は酢化度20~30%の時最大値を示す. PVA-PVAcのグラフト体ではその降伏点はグラフト率の上昇で変化しないが, 伸度はグラフト率の増加で急激に減少した.
  • 川崎 年夫, 渡辺 仁, 江森 修一, 山口 格
    1971 年 28 巻 310 号 p. 123-128
    発行日: 1971/02/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    ホルムアルデヒドのカチオン重合により高重合度ポリオキシメチレンを得ることを目的とし, ルイス酸と, ルイス酸, ルイス塩基, IXn型ハロゲン化合物あるいは有機ハロゲン化合物などとの組合せからなる一連の2成分系触媒によるホルムアルデヒドの吹込重合を行なった. これらの触媒系のうSbCl5-C5H5N, PCl5- (C6H5) 3CCl, SbCl5-IClなどの場合には高重合度ポリオキシメチレンを得ることができた. またSbCl5-ICl3系について重合諸条件の検討を行なった.
  • 1, 3-シクロヘキサジエンポリスルホンよりポリ-p-フェニレンスルホンの合成
    山口 格, 長井 勝利
    1971 年 28 巻 310 号 p. 129-137
    発行日: 1971/02/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    1, 3-シクロヘキサジエン (1, 3-CHD) ポリスルホンの脱水素によるポリフェニレンスルホンの合成について検討した. 芳香族化はシクロヘキセン環の二重結合に臭素付加して後, 熱分解する方法およびシクロヘキセン環の両アリル位水素のN-ブロムコハク酸イミド (NBS) による臭素置換後, 脱臭化水素する方法によって行なうことができるが, 臭素付加した1, 3-CHDポリスルホンの熱分解およびアリル位水素の臭素置換ではそれぞれ部分的なSO2の脱離や主鎖の切断が伴うようである. 生成したポリフェニレンスルホンは前者の方法では黒色で, 後者の方法では黄色であった. さらにアルカリ水溶液 (10% NaOH水溶液) に浸されず, 約300℃まで比較的安定であるが, 溶解性は非常に乏しい.
  • 石川 光男, 須貝 新太郎
    1971 年 28 巻 310 号 p. 138-142
    発行日: 1971/02/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    PSCBLC, POBLS, POALS, の3種類の試料について, 重クロロホルム-ジクロル酢酸の混合溶媒中でのβ-コイル転移の際のプロトン核磁気共鳴を測定した. いずれの試料についてもジクロル酢酸含有量が少なくなるとNHとα-CHのピークは高磁場側にシフトし, 線幅が増加する. PSCBLCとPOALSの場合は, これらのピークの化学シフトの移動と線幅の増加は, 旋光分散によるa0の変化と対応しているのでβ形成を反映しているものと思われる. POBLSのα-CHのピークについては, はっきりした対応が見られなかった. 側鎖のプロトンのピークは, いずれの場合にもほとんど化学シフトの移動が見られなかった.
  • 守屋 雅文, 間野 志郎, 山下 忠孝
    1971 年 28 巻 310 号 p. 143-151
    発行日: 1971/02/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    アクリル酸 (PA), メタクリル酸 (PMA) およびクロトン酸プロパルギル (PC) の重合を, アゾピスイソブチロニトリル (AIBN) を開始剤として行なった. 60℃でPAおよびPMAのベンゼン溶液重合を行なった結果, 重合初期の速度式として, Rp=k [AIBN] 0.8 [M] 1.6を得た. また相手モノマーとしてスチレン (St), メタクリル酸メチル (MMA) およびアクリロニトリル (AN) との共重合では, 単量体中のPA, PMAおよびPCのモル分率が増加するに従って, 重合速度が急激に低下するのを見い出した. 単量体の反応性比は60℃において次のように求められたPA-St [M1]: r1=0.45, r2=0.24, PMA-St [M1]: r1=0.30, r2=0.45, PA-MMA [M1]: r1=1.12, r2=0.05, PMA-MMA [M1]: r1=0.96, r2=0.79, PA-AN [M1]: r1=0.95, r2=1.49, PMAAN [M1]: r1=0.15, r2=1.75, PC-St [M1]: r1=3.42, r2=0.00.
  • 守屋 雅文, 木村 雅宣, 山下 忠孝
    1971 年 28 巻 310 号 p. 152-155
    発行日: 1971/02/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    アゾビスイソブチロニトリルおよび過酸化ベンゾイル (BPO) を開始剤として, 酢酸プロパルギル (PAc) の塊状重合および共重合を行なった. 得られたPAcの単独重合体は低分子量, 黄色油状でほとんどの有機溶剤に可溶であった. 80℃におけるPAcの塊状重合において, 重合速度 (Rp) はBPO濃度の0.8乗に比例した (Rpαk [BPO] 0.8). 全重合反応の見かけの活性化エネルギーは4.6kcal/molであった. PAc-St系およびPAc-AN系の共重合においては, 重合速度はコモノマー中のPAcのモル分率が増加するに従って, 急激に低下するのが見い出された. 60℃で単量体反応性比, r1およびr2値, は次のように求められた.
    PAc-St [M1]: r1=53.0, r2=0.00
    PAc-AN [M1]: r1=6.15, r2=0.05
  • 第1報 市販高圧法ポリエチレンの銘柄による特徴
    白山 健三
    1971 年 28 巻 310 号 p. 156-160
    発行日: 1971/02/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    市販高圧法ポリエチレンの銘柄の特性は通常メルトインデックスと密度という二つの指標で表わされているが, これらを同じくする銘柄でも著しく異なる性質を示す場合があることをインフレーションフィルム加工性およびフィルムの性質を例にとって示した. このような性質の差は生産者または製造プロセスにより特徴的に現われる傾向が認められ, この特徴はまたMI- [η] の関係という簡単な特性によって端的に代表されることが認められた. MI- [η] の関係に対しては分子量分布や短鎖分岐度の影響は小さく, 長鎖分岐構造の影響が支配的な因子であることを示唆した.
  • 第2報 市販高圧法ポリエチレンの分子量分布
    白山 健三, 喜多 晋一郎
    1971 年 28 巻 310 号 p. 161-166
    発行日: 1971/02/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    市販高圧法ポリエチレンの代表的な銘柄の分子量分布の広さを光散乱測定結果から算出される種々の平均分子量 (Mw, zimm, Mw, dis, M180 or min) の比較から推定し, さらにいくつか銘柄について分別抽出法およびGPC法で分子量分布を求めた. 高圧法ポリエチレンは銘柄により分子構造が異なるので, 分子量分布を [η] の分布として表わすことは適当でない. 分別フラクションの分子量を光散乱法で求めた結果, チューブラー製品の分子量分布は同一MIのベッセル製品に比べて低分子量部分の量が多く, 分布は全体的に低分子量側に寄り, 分布幅は狭いという一般的特徴が認められた. また, チューブラー製品はMw, zimmが大きく, ミクロゲル (巨大分子) を多く含む傾向が認められた.
  • 第3報 市販高圧法ポリエチレンの短鎖分岐の分布
    白山 健三, 岡田 隆行, 喜多 晋一郎
    1971 年 28 巻 310 号 p. 167-172
    発行日: 1971/02/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    市販高圧法ポリエチレンの代表的な銘柄について分子量分別物の分岐度を測定した. チューブラープロセスの製品では高分子量フラクションほど分岐度が低く, 分岐度の分布を示すが, ベッセルプロセスの製品では分岐度の分子量依存性は比較的小さいという特徴が認められた. この結果はチューブラープロセスではベッセルプロセスより重合系内の温度, 圧力の分布が広いという事実とよく対応している. 分子量分別物をさらに分岐度により分別した結果, 前者のフラクション内の分岐度の分布は低分子量フラクションほど広く, この分布の広さは銘柄によって著しくは異ならない. しかし, ベッセルプロセスの製品の高分子量フラクションでは異常な分布が認められ, 複雑な構造の長鎖分岐がこの部分に多く存在することを示唆する結果を得た.
  • 第4報 市販高圧法ポリエチレンの二重結合の分布
    白山 健三, 岡田 隆行
    1971 年 28 巻 310 号 p. 173-177
    発行日: 1971/02/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    市販高圧法ポリエチレンの代表的な銘柄について分子量分別物の二重結合量を赤外線分析法により測定した. チューブラープロセスの製品では高分子量フラクションほど二重結合量が少なく二重結合量に分布を示すが, ベッセルプロセスの製品ではその分子量依存性は比較的小さい. この結果は分岐度分布と並行的でOaks-Richardsの二重結合生成機構からみて妥当な結果である. 試料によっては二重結合の分布が著しく広いものが見いだされたが, この原因はプロピレンまたはイソブチレンとの連鎖移動によりビニル基またはビニリデン基が生成したためと推論した. これらの試料ではポリマー1分子あたりの二重結合数はどのフラクションでもほぼ等しいこと, プロピレンまたはイソブチレンとの共重合により生成するメチル分岐のためにブチル分岐/全分岐の比が他の通常の試料より低い値を示すことはこの推論を支持する.
  • 第1報 延伸ポリオキシメチレン上におけるポリエチレンのEpitaxial Growth
    小林 恵之助, 高橋 利禎
    1971 年 28 巻 310 号 p. 178-184
    発行日: 1971/02/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    パラフィンおよびポリエチレンが, 延伸ポリオキシメチレンの表面上にepitaxial growthすることを見いだした. ポリエチレンの板状結晶がedgeで立ってポリオキシメチレンの延伸方向に直角に配列する. overgrowthした薄膜の一部をはく離して電子線回折に供し, ポリエチレンの分子鎖が下地結晶と同じc軸配向していることを確認した. ポリエチレンとポリオキシメチレンの結晶構造を比較すると, 結晶系は異なるが結晶格子間隔が分子鎖方向 (整数倍の関係) でも, またそれと垂直な方向でもよく合致している. また単位胞内の分子鎖の配列様式も類似している. この結晶格子間隔の2次元的一致という条件は, 高分子結晶の生長に特有な折りたたみ結晶核が一定方位に形成されるのに有利であると考えられる. 分子鎖の形態や極性などの類似性はepitaxial growthの支配的因子でない. 一方パラフィンおよびポリエチレンは延伸6-ナイロン, ポリビニルアルコール, ポリプロピレン, セルロースIIの上ではepitaxial growthしないことがわかった. これらの下地の高分子の中にはovergrowthする高分子に対して2次元的結晶格子間隔の一致という条件を満たすものも含まれており, この条件が決して十分条件でないことを示す. このような結果は高分子結晶を下地としたときの相互作用の複雑さによるもので, 結晶性などが影響しているものと考えられる.
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