高分子化學
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29 巻, 325 号
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  • 小菅 詔雄, 金丸 競
    1972 年 29 巻 325 号 p. 285-289
    発行日: 1972/05/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    熱硬化型樹脂接着剤の固化機構を追究するために, ビスフェノールA-メタフェニレンジアミン系エポキシ樹脂にポリサルファイド樹脂 (チオコール) を混合し, 硬化反応による剛性率の増加, 体積収縮や接着強度の経時変化を追跡し, 速度論的な解析を試みた。チオコールを混合しても固化反応速度は前報と同様に1次反応速度式で表現できる。これら固化過程の速度定数 (遅延時間の逆数) はチオコール量の増加によってすべて減少するが, 速度定数の温度依存性から求めた活性化エネルギーはほぼ一定で, 8kcal/molである。樹脂の固化過程と網目の形成におけるチオコール添加の効果に関し考察した。
  • 伊藤 勝清, 村松 広重, 松田 龍夫
    1972 年 29 巻 325 号 p. 290-294
    発行日: 1972/05/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    (ヘキサフルオルシクロベンテニル) エチレン (HCE), (2-クロルヘキサフルオルシクロペンテニル) エチレン (CHCE), (テトラフルオルシクロブテニル) エチレン (TCE), 1- (2-クロル-テトラフルオルシクロブテニル) エチレン (CTCE), 1- (テトラフルオルシクロブテニル) -1-メチルエチレン (TCME), 1- (2-クロル-テトラフルオルシクロブテニル) -1-メチルエチレン (CTCME) のγ線塊状重合反応を温度25から-21℃の範囲で行なった。五員環化合物の反応性はCHCE≫HCEであり, また四員環化合物のそれはCTCE>TCE≫TCME>CTCMEであった。後者の順位から, メチル置換は反応性を低くすることがわかった。また付加様式はHCE, CHCE, TCE, CTCEが1, 2付加であり, TCMEとCTCMEが1, 4付加であることがわかった。さらに, CHCE, TCEとCTCEの重合を速度論的に考察し, 活性化エネルギーや分子量決定に対する停止反応機構についての知見を得た。
  • 西久保 忠臣, 富山 嘉子, 牧 喜代志, 高岡 恒郎
    1972 年 29 巻 325 号 p. 295-301
    発行日: 1972/05/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    ポリ-2-クロルエチルアクリル酸エステル (PCEA), ポリクロル酢酸ビニル (PVCA) とケイ皮酸カリウム, α-シアノケイ皮酸カリウム, β-スチリルアクリル酸カリウムの縮合反応より感光性高分子を合成しその感度を測定した。PCEAとケイ皮酸カリウムの反応はヘキサメチルホスホルアミド (HMPA) 等の非プロトン性極性溶媒中では定量的に進行した。PVCAとケイ皮酸カリウム, α-シアノケイ皮酸カリウム, β-スチリルアクリル酸カリウムの反応もHMPA中室温でも容易に定量的に進行することが明らかになった。また, これらの反応における温度効果, 溶媒効果, 触媒効果についても若干の検討を行なった。得られたPCEAのケイ皮酸エステルに増感剤として5-ニトロアセナフテン (5wt%) を加え市販のポリケイ皮酸ビニル系感光性樹脂 (コダック社製) の感度を100としその相対感度を求めると13であった。同様にして求めたPVCAのケイ皮酸エステル, α-シアノケイ皮酸エステル, β-スチリルアクリル酸エステルの相対感度は未増感の場合それぞれ7, 71, 50であった。増感剤として5-ニトロアセナフテンを加えた場合の相対感度はそれぞれ100, 71, 562であった。この結果より5-ニトロアセナフテンで増感したPVCAのβ-スチリルアクリル酸エステルはKPRより高感度の樹脂であることが明らかとなった。またPVCAのα-シアノケイ皮酸エステルも未増感の状態ではポリケイ皮酸ビニルより高感度であると思われる。
  • 宮本 晃男, 柴山 恭一
    1972 年 29 巻 325 号 p. 301-305
    発行日: 1972/05/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    高分子の導電現象を理解するには高分子の構成や構造を通して説明する必要がある。そのため橋かけ密度を調節して得た酸無水物硬化エポキシ樹脂の電気伝導度の温度変化を調べた。その結果, 電気伝導度は高分子の自由体積に強く依存することがわかったので, それらの間を関係づける式を導出し, イオンの移動に必要な体積を求めた。
  • 安藤 勲, 西岡 篤夫
    1972 年 29 巻 325 号 p. 306-309
    発行日: 1972/05/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    α-クロルナフタリン (α-CINap) 中のn-ペンタンのCH3とCH2間の化学シフトδCH3-CH2の温度変化は屈曲点をもつ直線を示し, 40℃以上での勾配はneatのと似てるが, 40℃以下では急な勾配を示した。δCH3-CH2の温度変化からトランスとゴーシュのエネルギー差を計算すると約1500cal/molになり, 40℃以下ではneat中より伸びた形をとりやすいことがわかった。α-CINap中のn-ドコサンのCH2ピークは2本にわかれ, 高温で高磁場と低磁場のピーク間のシフト差は小さくなり, また低および高磁場のピーク強度がそれぞれ増加および減少することがわかった。これらは, 分子鎖中にα-CINap分子により運動が強く束縛された部分と比較的弱く束縛された部分があると考えて説明した。
  • 吉武 敏彦
    1972 年 29 巻 325 号 p. 310-312
    発行日: 1972/05/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    ビニルアルコールーアリルアルコール共重合体およびビニルアルコールーイソプロペニルアルコール共重合体に真空中および空気中で60Coγ線を照射した場合の重合度の変化を測定した。いずれの場合も重合度は低下する。
    アリルアルコール共重合体ではアリルアルコールの共重合組成により主鎖崩壊の確率は変わらず, G値は1.73である。
    イソプロベニルアルコール共重合体ではイソプロペニルアルコールの組成が大きくなるにつれて主鎖崩壊が起こりやすくなる。イソプロペニルアルコールの組成と主鎖崩壊のG値の間に直線関係が成立する。
  • 吉武 敏彦, 今井 清和, 浮田 純二, 松本 昌一
    1972 年 29 巻 325 号 p. 313-317
    発行日: 1972/05/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    比較的厚い (0.4mm程度) ボリビニルアルコール (PVA) の皮膜に空気共存下または窒素中で60Coγ線を照射し皮膜状のまま紫外線および可視吸収スペクトルを観測した。
    230および335mμに極大吸収, 280および375mμに吸収の肩, 400-500mμにbroadな弱い吸収を認めたが, このうち335, 375および400-500mμの吸収は吸湿処理または軽度の熱処理により完全に消失するところから, 捕捉ラジカルに基づくものであることを推定した。この捕捉ラジカルは335, 375および400-500mμに吸収をもつような少なくとも3種類のものからなると考えられる。また照射によるこれらの吸収の生成速度を測定したところD335>D375>D400-500の順であることを認めた。また, あらかじめ熱処理したのちPVA皮膜を照射し捕捉ラジカルを生成せしめ, その減衰を観測した。その結果, 照射前の皮膜の熱処理温度が低いほど, また減衰温度が高いほど減衰速度は大であることがわかった。PVAの2次転移温度以下で減衰させた場合減衰は平衡になり, ラジカルが残留する。ラジカル残留率は照射前のフィルムの熱処理温度が高く結晶化度の大きいものほど大であった。
  • 荒井 定吉, 浅野 秀樹
    1972 年 29 巻 325 号 p. 317-322
    発行日: 1972/05/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    本論文は流動複屈折の測定によるボリイソブチレンのデカリン溶液の同心円筒間げき内の単純ずり流れの流動光学的解析結果を述べる。まず, 市販の測定装置でその光学的応答をずり速度, 温度ならびに濃度を変えて測定した。ずり速度しま次数係数のずり速度依存には, 粘度同様時間一温度換算則が適用され, また, しま次数はずり応力の関数で, かつ主応力差と比例した。これらの結果にもとづき円筒間げきを広くした場合に現われる等色線の分布図から求まる間げき内のずり速度とずり応力分布は, 粘度に指数則を仮定して計算された値と一致した。また, 等傾線から図的に主応力線を求め, 回転速度に伴うその変位から, 法線応力効果について論じた。
  • 山口 格, 佐々木 栄一, 前沢 次朗, 増山 高之
    1972 年 29 巻 325 号 p. 322-326
    発行日: 1972/05/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    アミド基の反応性を利用するナイロンの改質を目的とし, アルカリ金属-液体アンモニア溶液によるナイロンのメタル化について検討した。その結果, 反応は不均一系で行なわれるにもかかわらず, ほとんどすべてのアミド基をメタル化しうることが, IRスペクトルにより確かめられた。メタル化によるナイロンの分子量低下の程度は, Li>Na>Kの順に減少し, カリウムを用いて0℃で反応させた場合には分子量低下はほとんど無視できた。繊維の強度は, メタル化に用いたアルカリ金属の量の増加とともに著しく低下した。得られたメタル化生成物からは, 有機ハロゲン化物と反応させることにより, ナイロンの新しいN-誘導体が高置換度で合成された。なお, 水洗によりメタル化生成物から再生したナイロンのIRスペクトルはγ型結晶のものと一致していた。
  • 大野 亮, 宮坂 啓象, 石川 欣造
    1972 年 29 巻 325 号 p. 327-330
    発行日: 1972/05/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    SBRゴムは延伸や低温化によっても結晶化しないが, 延伸時の広角X線図形ではハローが赤道上に鋭い配向ピークをもつ。この原因として結晶の大きさやひずみの効果または配向した非晶鎖が考えられる。実験の結果は, 赤道上へ配向する成分の線膨張率が結晶のそれより非常に大きくかつガラス転移すること, 配向する成分の全体に対する重量分率と見られる量が延伸倍率のみの関数となること, 延伸によって内部エネルギー成分は減少するが, その積分量ほ延伸比に対して比例していないことなどがわかり, これらすべての事実は赤道上へ配向する成分が非晶性のものであることを示している。
  • 高橋 利禎, 小形 信男, 岡崎 英生, 辻本 石男
    1972 年 29 巻 325 号 p. 331-335
    発行日: 1972/05/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    ホルムアルデヒドの水溶液中でのポリオキシメチレンの重合過程中におけるepitaxialな結晶化について研究した。延伸した高分子量のポリオキシメチレン上では重合中のポリオキシメチレンがepitaxialに結晶化した。溶液中に高分子量の延伸ポリオキシメチレンが共存すると, 下地のc軸に平行にc軸が配列している反応性のある核が形成される。これらの配列した反応性のある核にモノマーが付加していくことによって配向したポリオキシメチレンの層が形成される。核形成密度の高い条件の下に下地上にepitaxialに生長したポリオキシメチレンの融点は溶液中に生長したポリオキシメチレンの融点よりかなり低い。この場合下地上で生長しているポリオキシメチレンの結晶は, 隣接の結晶によって生長が妨げられるものと考えられる。
  • 散乱光補償機構と2次結晶化
    高井 良三, 金子 六郎
    1972 年 29 巻 325 号 p. 336-341
    発行日: 1972/05/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    高分子の速い結晶化を測定する方法の一つに, 偏光を用いる方法がある。この方法における大きな問題点は, 高分子フィルム中で光が散乱されるために得られた光の変化量が, 結晶化度の変化量と正確に対応しているかという点である。著者らは, すでに偏光を使って連続的に結晶化速度を測定する装置を試作し報告したが, さらにこの問題点を改良するため, この装置に散乱光の影響を補償するサーボ機構を付加した。ナイロン6, ナイロン6-6, ナイロン12, ポリエチレンテレフタレートを試料として測定しアブラミ式により解析した結果, 従来より精度のよいデータが得られ, しかも2次結晶化現象をも観察できることが明らかとなった。また, 上記四つの試料のそれぞれについて, 通常のpre-melt結晶化に対してアブラミ指数nは4となった。
  • 溝口 徹也, 石鍋 孝夫, 石川 欣造
    1972 年 29 巻 325 号 p. 341-345
    発行日: 1972/05/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    ゴム状態でのクリープ回復に非平衡の熱力学を適用し, 伸長による体積変化を考慮して, 遅延時間が伸長比λと温度Tに依存する非線型なクリープ回復曲線が導かれた。温度換算因子aTおよびひずみ換算因子aλが導かれ, ゴム状態では, 換算因子が互いに独立になることが示された。いくつかの伸長比で, ブチルゴムのクリープ回復の等温曲線をガラス-ゴム転移域 (-60℃--40℃) で求め, それらを対数時間軸に沿って平行移動すると合成曲線を得ることができる。伸長比が大きくなると, 合成曲線は低温側へずれる。実測のaTの温度依存性は同一のWLF式によく従っており, ひずみによる影響を受けないという結果が得られた。
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