高分子化學
Online ISSN : 1884-8079
Print ISSN : 0023-2556
ISSN-L : 0023-2556
29 巻, 327 号
選択された号の論文の14件中1~14を表示しています
  • 溝口 徹也, 石鍋 孝夫, 石川 欣造
    1972 年 29 巻 327 号 p. 459-463
    発行日: 1972/07/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    ブチルゴムのクリープ回復曲線から実測の温度換算因子aTとひずみ換算因子aλを求めて, 前報で理論的に導いた換算因子と比較した。aTの温度依存性はガラスーゴム転移温度近傍になると, WLF式からのはずれが見られ, その偏差をPoisson比の温度変化に対応させて議論した。各伸長率のクリープ回復の合成曲線は3次元的効果を取り入れると, 対数時間軸に沿って平行移動することにより, ほとんど単一の合成曲線になる。理論的に得られたクリープ回復の合成曲線は短時間側で実験値と一致しているが, 長時間側になるとはずれてくる。このはずれは遅延時間の分布を考慮することにより補正できる。aλについでの理論と実験の一致は良好である。
  • 宮本 晃男, 柴山 恭一
    1972 年 29 巻 327 号 p. 463-467
    発行日: 1972/07/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    高分子の低電界における電気伝導機構はイオン伝導であると考えられている。その伝導度σは高分子の組成や構造に強く依存することから自由体積υf, イオン解離エネルギーWおよびジャンプエネルギーEfを同時に考慮した式,
    σ=σ0exp{- (γυ4*f+Ef+W/2ε/kT) }を導いた。ここでσ0, γ, υi*, ε, k, Tはそれぞれ定数, 自由体積の重なりを表わす補正係数, イオンが移動ナるのに必要な最小の体積, 誘電率, ポルツマン定数, 絶対温度である。ここでは硬化剤の種類を変えたエポキシ樹脂について適用した結果, ガラス転移温度Tg前後で急変するσをTg以上と以下に対して統一的な取扱いができるようになり, さらにイオンの輸送を高分子の構造や分子鎖運動と関係づけて考察ナることが可能になった。
  • 吉武 敏彦, 今井 清和, 浮田 純二, 松本 昌一
    1972 年 29 巻 327 号 p. 467-471
    発行日: 1972/07/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    照射PVAの335, 375および400-500mμの吸収がどのような構造をもったラジカルに基づくものであるか検討した。まず, 真空中および空気中照射でともに335, 375および400-500mμに吸収が認められ, 両者で差異はなく酸素の影響はない。つぎにPVA中の異種結合の影響を調べた結果, カルボニル基は影響を与えないが, 1, 2-グリコール結合は大きな影響をもっており, 過ヨウ素酸処理したPVAではこれらの吸収は認められなかった。また皮膜に酢酸ナトリウムを添加すると吸収に顕著な影響を与えることがわかった。これらのことから335mμの吸収は-C=O-C-OH-構造の捕捉ラジカルによるもので, 375および400-500mμの吸収はこの構造が崩壊してできた構造のラジカルC=O- (CH=CH) n-によるものと推測した。また, 前照射したPVA皮膜にスチレンをグラフト重合せしめた場合のスチレンのグラフト率および照射PVAの捕捉ラジカルに基づく吸収の変化の様子を調べた。その結果, いずれの温度でもほぼ1時間の反応で吸収は消失するが, スチレンがこの捕捉ラジカルによりグラフト重合を開始したか否かはっきりしない。
  • 北島 恒子
    1972 年 29 巻 327 号 p. 472-476
    発行日: 1972/07/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    ボリ-2-ビニルピリジン塩酸塩の固有粘度を, 種々の濃度の食塩水溶液中で, 分子量Mおよびイオン化度βの関数として決定し, その分子量依存性を試みに Stockmayer-Fixmanの粘度式によって解析した。これから鎖のセグメント間の近距離および遠距離相互作用のパラメーターに相当するABの値を決定した。A値は中性状態における値よりも大きく, また塩濃度Csの減少とともに増加する傾向を示した。B値はCs-1ではなくCs-1/3に比例しpair-Wise静電ポテンシャルの仮定が成立しないことが示唆された。高分子電解質鎖の広がりに関するだ円体モデル, 糸状モデル, Fussy sphereモデルなどの諸理論を, 実験結果に基づいて比較検討した。本研究の範囲では, 糸状モデル理論が実験とかなりよい一致を示した。さらに永沢らの提唱による解析を行ない, その結果について議論した。
  • 香西 保明, 山崎 慎一
    1972 年 29 巻 327 号 p. 477-480
    発行日: 1972/07/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    2, 6-ジイソシアナートカプロン酸メチル (LDI) とN-カルポベンゾキシグルタミン酸ジヒドラジド (I) およびヒドラジン (II) との溶液重付加反応によるポリマーの合成について検討した. その結果, (I) では, モル比1/1 (モノマーおのおの5mmol, ジメチルスルホキシド5ml), 60℃, 10分以上の反応で収率97.3%, 対数粘度0.33, 融解温度120-125℃の無色透明ポリマーが得られた。反応溶媒としてはN, N-ジメチルアセトアミドおよびN-メチル-2-ビロリドンが使用できる。(II) では, モル比1/1 (モノマーおのおの5mmol, ジメチルホルムアミド5ml), 30℃, 2時間の反応で収率89.4%, 軟化温度105-110℃, 対数粘度0.25の無色透明ポリマーが得られた。反応溶媒としてはジメチルスルホキシド, N, N-ジメチルアセトアミドおよびN-メチルー2-ピロリドンも使用できる。
  • 野沢 靖夫, 浮田 富夫, 東出 福司
    1972 年 29 巻 327 号 p. 480-484
    発行日: 1972/07/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    チタノセンジクロリド ((C5H5) 2TiCl2) -有機アルミニウム化合物 (AlEt3, AIEt2Cl) 系触媒において, 直流電圧1000V, 0℃, 20時間, メタクリル酸メチル (MMA) の重合を行なった。重合収率は (C5H5) 2TiCl2 (C5H5: Cp) -AlEt3系のほうがCp2TiCl2-AlEt2Clより高く, しかもチタン (Ti) 化合物による影響をかなり受けていることなどの結果から, 触媒系においてTi化合物によるイオン種の生成が推定された。ESR測定の結果より, Cp2TiCl2-AlEt3系においてはCp2TiCl2-AlEt2Cl系よりもTi原子はすみやかに3価に還元されるがそれ以上は還元されない。得られたESRスペクトルおよびスピン濃度の結果をもとに, 重合活性を与えるイオン種とTi原子の酸化状態との関係を検討した。
  • 自念 栄一, 鈴木 恵
    1972 年 29 巻 327 号 p. 485-490
    発行日: 1972/07/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    高分子のブレンド系の粘弾性の温度特性をその系を構成する個々のポリマーの特性から表わす高柳らによるモデルを, 非相溶混合系の一例として短繊維分散型ガラス繊維強化ナイロン6プラスチックの動的弾性率, 損失弾性率の温度特性の計算に適用することを試み, 実測値との比較検討を行なった。試料はガラス繊維重量混入率10, 20および30%の未処理 (大気湿度とほぼ平衡した水分率), 乾燥および熱処理試料である。その結果実測値とよく一致するモデルは, 母材とガラス繊維とが並列に接合したものに母材が直列に結合したモデルであり, モデルで用いたガラス繊維の体積分率に関係するパラメーターは, 繊維混入率および試料の処理方法によって変化し, 複合材の繊維構造や母材の変性に関連することがわかった。
  • 鈴木 恵, 矢田 誠規, 馬渕 伸明
    1972 年 29 巻 327 号 p. 490-495
    発行日: 1972/07/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    工業材料に使用される無定形ポリマーのポリ塩化ビニルの片振り引張疲労による疲労き裂伝ぱ機構を結晶性ポリマーであるポリプロピレン, ブレンドポリマーであるABS樹脂のき裂伝ぱ機構と比較した。その結果, 各材料とも巨視的にみて疲労き裂伝ぱ速度はParisらの式にしたがって同じ伝ぱ機構を有するが, 微視的にはまったく異なる伝ぱ機構を有し, 本研究に使用したポリ塩化ビニルはstriationはできずにdimple状のパターンを破面に生じた。しかし, ポリプロピレンとABS樹脂は高応力レベルではstriationはできるが, 低応力レベルではできず, それぞれ異なるき裂伝ば機構を有した。
  • 坂田 功, 祖父江 寛
    1972 年 29 巻 327 号 p. 495-500
    発行日: 1972/07/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    リグニン [天然リグニン (MWL)] およびリグニン誘導体 [リグニンスルホン酸 (LSA), チオリグニン (TL), メチル化および硫化リグニン] に対するスチレンの同時照射法による放射線グラフト重合について研究した。照射生成物からホモポリマーと未反応リグニンをベンゼンとリグニンの溶剤で抽出して, リグニンースチレングラフトポリマーを単離した。リグニンをスチレン中で照射してもほとんどグラフト化しないが, 種々のスチレンー溶媒系中で照射すると容易にグラフト化される。効果的な溶媒は, メタノール (MWL, LSA, TLに対して), 酢酸 (MWL), アセトン (LSA), ジオキサン (TL) であった。H2Sによる硫化によって, リグニン (MWL) に連鎖移動定数の大きなジスルフィド基 (-S-S-) を導入するか, リグニンのフェノール性水酸基をメチル化するとグラフト重合はきわめて容易になる。グラフトポリマーから, 過酢酸酸化によって幹リグニンを分解して, 枝ボリスチレンを分離した。枝ポリスチレンの重合度とホモポリスチレンのそれとには大差が認められない。両者の重合機構はほぼ同じであると思われる。赤外吸収スペクトルから, グラフトポリマー中の幹リグニンと枝ポリスチレンの比は1: 1であった。また, リグニン中のグラフト活性点について検討した。
  • 寺田 進, 上田那 須雄, 近藤 紘一, 竹本 喜一
    1972 年 29 巻 327 号 p. 500-504
    発行日: 1972/07/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    セルロースおよびセルロースのリン酸化物, アミノエチル化物, ニコチニル化物など9種の誘導体による各種金属イオンの吸着性を30℃, 水溶液にて原子吸光分析を用いて測定した。その結果, セルロース誘導体の種類によって吸着能に選択性が見られ, 吸着能はとくにリン酸化物およびアミノエチル化物の場合大きいこと, また吸着能は金属イオンの対アニオンに関係なくまた誘導体の置換度の大きなほど増加することが認められた。またセルロース量および金属イオン濃度と吸着能との関係や, 系のpHおよび電導度の測定を行ない吸着の機構を考察した。
  • 高松 俊昭, 深田 栄一
    1972 年 29 巻 327 号 p. 505-510
    発行日: 1972/07/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    高密度, 低密度および放射線重合ポリエチレンおよびポリプロピレンフィルムを種々の温度および直流電圧の下で分極を行ないエレクトレットをつくった。分極温度が60℃以上であればどれもヘテロ電荷を生じ, 低密度ポリエチレンの場合を除けば, これらの電荷の寿命は長い。ポリエチレンエレクトレットのヘテロ電荷は温度の上昇に伴い単調に減少するが, 高結晶性の高密度ポリエチレンの電荷は他の二者にくらべて安定である。
    ポリブロピレンエレクトレットのヘテロ電荷は100℃以下の温度ではあまり減少しない。しかし, それ以上の温度で単調に減少する。これら表面電荷の減衰に伴い脱分極電流が現われる。
  • 荒井 定吉, 浅野 秀樹
    1972 年 29 巻 327 号 p. 510-514
    発行日: 1972/07/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    スリット金型を流れるポリエチレン融液の応力分布を流動複屈折法により検討した。用いたスリットの長さと間げきの比は30で, 下流での等色線は流入部の影響がほとんどなく, 壁面とほぼ平行であった。その領域の壁面のずり応力τH/2, 単位光路長あたりのしま次数nおよび消光角χから, 主ずり応力τp [=τH/2/sin2χ] とnの関係を求め, その結果に基づいて金型流入部の応力集中と流入前後の応力変化を検討した。nはτpと比例し, 流入部のスリット端で応力集中が観測された。その応力集中係数のずり速度依存性は認められず, 壁面のτpは流入後間もなくほぼ一定値に達する。しかし, 流路中心面上で, その値は出口まで明らかに減少する傾向があった。
  • 後藤 共子, 長野 正満
    1972 年 29 巻 327 号 p. 515-518
    発行日: 1972/07/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    親水性繊維に対する反応性染料の染着機構を解明するためのモデル反応としてポリビニルアルコール (PVA) と塩化ペンジル誘導体の反応をジメチルスルホキシド中NaOH水溶液の共存下で行なった。反応率はIRスペクトル, UVスペクトルから決定した。反応速度は反応液の粘度の上昇に伴って低下した。PVAの濃度を反応液の粘度に依存しない均一系でベンジル化の動力学を検討した。その結果速度はPVA, 塩化ベンジル, NaOHのそれぞれ1次に比例した。塩化ベンジル誘導体の置換基の影響を研究し, 速度はNO2>Cl>H≧CH3>CH3Oの順となった。またオルト体についてはオルト効果が観察された.
  • 永沼 俊二, 桜井 徹男, 高橋 勇蔵, 高橋 誠一
    1972 年 29 巻 327 号 p. 519-523
    発行日: 1972/07/25
    公開日: 2010/03/25
    ジャーナル フリー
    著者らの提案した熱硬化性樹脂の硬化反応測定法の一つであるDSA (Dynamic Spring Analysis)が硬化反応測定以外のどのような測定に応用できるかを知るために, 室温硬化型接着剤の硬化反応, 線状高分子の重合反応および種々の高分子あるいは低分子物質の動的粘弾性スペクトル, さらには溶剤蒸発に伴う高分子溶液の動的粘弾性スペクトルの変化などの測定を試みた。その結果は, DSAがこれらの測定に応用できる効果的な方法であることを示した。とくに, 分解反応が生ずるような温度までの広い温度領域にわたる液体または固体試料の動的粘弾性スペクトルの測定に有効である。
feedback
Top