高分子化學
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30 巻, 340 号
選択された号の論文の15件中1~15を表示しています
  • 瀬尾 利弘, 加倉井 敏夫, 野口 達弥
    1973 年 30 巻 340 号 p. 451-455
    発行日: 1973/08/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    DMSO-メチルセロソルブ混合溶媒中でポリアクリロニトリル, アクリロニトリル-スチレン共重合体, アクリロニトリル-ブタジエン共重合体および部分シアノメチル化ポリスチレンとジシアンジアミドの反応を速度論的に検討し隣接基の影響について調べた。
    いずれのポリマーにおいてもニトリル基の80%以上が反応し容易にトリアジン環が高分子側鎖に導入された。アクリロニトリル-スチレン共重合体ではニトリル基含有率の増加に伴い反応速度が増大した。隣接ニトリル基の効果によって反応が促進され, 高分子鎖中のニトリル組成分布が反応の加速に大きく影響することが明らかになった。
    ジニトリルとジシアンジアミドの反応においてもニトリル基間のメチレン鎖が短いほど反応速度が増大するという隣接ニトリル基の加速効果が認められ, 高分子反応における隣接基効果と密接な関係があることが示唆された。反応生成物はトリアジン環量とともに熱安定性が向上した。
  • 武石 誠, 大河原 信
    1973 年 30 巻 340 号 p. 456-461
    発行日: 1973/08/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    ドデシル硫酸ナトリウム (SDS) は, 水中におけるポリビニルアルコール (PVA) の過マンガン酸酸化を抑制した。これは, SDSが疎水相互作用でPVAに結合し, その陰電荷が過マンガン酸イオンを反発するためと解釈される。n-ヘキサノールの場合も同様な反応抑制が観察されたが, これはSDSのミセル中にn-ヘキサノールがとりこまれ, そのミセルの陰電荷が過マンガン酸イオンを反発するものとして, ミセル中の反応速度を動力学的に検討した。
  • 住友 宏, 小林 一清, 加藤 義裕
    1973 年 30 巻 340 号 p. 461-464
    発行日: 1973/08/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    レブリンアルデヒドをアクロレインから合成し, その重合挙動ならびに生成ポリマーの構造および性質を検討した。トリエチルアルミニウムを開始剤として-78℃で重合させると不溶性の白色粉末状ポリマーが生成した。このもののIR-, NMR-, およびX線回折スペクトルなどによりアルデヒド基の開鎖した結晶性ポリアセトエチルオキシメチレンであることを確認した。既報の一連の極性置換アルデヒドの重合速度と比べるとレブリンアルデヒドの重合はやや遅い。また三フッ化ホウ素エーテレートおよび硫酸を開始剤として用いるとレブリンアルデヒドの環状三量体 (2, 4, 6-トリス- (β-アセトエチル) -s-トリオキサン) が得られた。
  • 山口 格, 長井 勝利, 板橋 修
    1973 年 30 巻 340 号 p. 464-470
    発行日: 1973/08/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    1, 3-シクロヘプタジエン (1, 3-CHpD) の二酸化イオウ (SO2), 無水マレイン酸 (MAn), およびビニルモノマー類との共重合について検討した。
    SO2およびMAnとの反応においては無触媒でDiels-Alder付加物と交互共重合体が生成し, SO2との反応の場合には前者が多く生成した。また反応温度の上昇により両反応とも共通して付加反応速度が増大し, 共重合速度は低下した。SO2との共重合の場合には約50℃に天井温度が存在した。MAnとの反応では付加反応も共重合反応も1: 1の仕込組成で最大収率を示し, 溶媒による希釈効果は後者のほうが顕著であった。またLewis酸を添加すると付加反応が促進され, 共重合反応が抑制された。
    これらの結果から付加反応および共重合反応はともに両成分間で形成する1: 1錯体を経由し, 両反応の差異は中間体としての錯体種の違いによるものと推定される。
    アニオン, ラジカル単独重合性およびスチレン (St), メタクリル酸メチル (MMA) とのラジカル共重合性はほとんど見られなかったが, アクリロニトリル (AN) とはラジカル開始剤により交互共重合体に近い組成のコポリマーを生成し, またカチオン開始剤によっても単独重合し, この場合約50%近いオレフィンプロトンの損失が見られた。
  • 佐枝 繁, 鈴木 理夫
    1973 年 30 巻 340 号 p. 470-475
    発行日: 1973/08/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    ポリエチレンを分別するための, 実験操作を簡略化したステンレススチール製のカラム分別装置を試作した。
    混合溶媒の流速を従来の10数倍にあげることにより, 2時間40分で良好な分別が可能であることがわかり, また流速の上昇によりかえって分別効率が良くなることが明らかとなった。これは流速が大きいと高分子量領域で, 担体に付着されたゲル層中のポリマーの拡散速度の分子量依存性が分別に有利に働き, 溶解性の差のみを用いる場合よりも良い分別効率が得られたものと考えられる。
  • 横田 和明, 金子 憲明, 高田 善之
    1973 年 30 巻 340 号 p. 475-478
    発行日: 1973/08/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    非対称型二官能性モノマーのo-イソプロペニル安息香酸ビニルをラジカル重合し, 残存イソプロペニル基をわずかに有するポリマーを得た。アクリロニトリルとの共重合ではビニルエステル基も一部残存した。これから重合反応には2種類の環化過程が関与していると考えられる。イソプロペニル基の分子間付加は続いてビニルエステル基の分子内環化のみを導く。この環化過程は可逆的生長反応のために分子間付加が抑制されることによって促進されている。これに対しビニルエステル基の分子間付加は続いて分子内環化と分子間付加を導く。この重合過程に適合する環化率とモノマー濃度の関係式を誘導し, 環化定数と各環化反応による環化構造単位の割合を算出した。
  • 森川 洸, 天野 高男
    1973 年 30 巻 340 号 p. 479-485
    発行日: 1973/08/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    ポリ塩化ビニル (PVC) の熱分解における有機ホウ素化合物の作用を, 主として熱分解体の紫外・可視吸収スペクトルを測定することによって考察した。その作用は以下のようである。
    (1) 有機ホウ素化合物はPVC中の塩素原子に働いて, 四中心的脱塩化水素反応を妨害する。
    (2) 有機ホウ素化合物とPVC二重結合との間に弱い配位結合が生成し, 共役二重結合の発達を妨害する。
    (3) トリオルガノボランから生成したジオルガノボランはPVC二重結合に付加する (ハイドロボレーション)。
    (4) トリス (フェニルエチル) ボランはハイドロボレーションを経る以外にPVC二重結合に直接付加するかあるいはフェニルエチル基がPVCの塩素原子と置換する。
    ハイドロボレーションおよび直接付加反応によって, 長共役系は寸断される。
    (5) 酸素ふんい気中においてホウ酸エステルは, PVC中に生成した過酸化物によって引き起こされるカルボニル基の生成反応, ラジカル的な脱塩化水素反応などを妨害する。
    (6) 酸素濃度の低い場合, オルガノボランはゆっくりと酸化してラジカル的にPVC二重結合に付加する。
    上に述べた (1) から (6) までの反応機構に基づいて, ホウ酸エステルあるいはオルガノボランはPVCの熱分解を抑制するものと結論した。
  • 川崎 信弘, 大野 省太郎, 福田 三寿, 橋本 勉
    1973 年 30 巻 340 号 p. 485-491
    発行日: 1973/08/25
    公開日: 2010/03/25
    ジャーナル フリー
    分子量分布のパラメーターであるMw/Mnがいずれもおよそ2のポリクロロプレン5種を用いて, 毛管流動特性に及ぼす重量平均分子量の影響を検討した。測定には高化式フローテスターを使用した。
    見かけの粘度η, 末端補正係数ν, 流入圧損失P0, die swell (D/D0), melt fractureの起こり始める臨界ずり速度γc, critical die swell (D/D0) cなどは以下に示されるように重量平均分子量Mwに支配されることがわかった。
    logη∝logMw, v∝logMw, P0∝logMw, (D/D0) ∝logMw, logMc∝-logMw, (D/D0) c∝logMw, ここで記号∝は左右の二量の間に正の相関関係があることを意味する。
    またmelt fractureの起こり始める臨界ずり応力τcには顕著な分子量依存性が見られず, 2~3×106dyn/cmcm2の範囲内にあり, 志賀らが高密度ポリエチレンの分別物を用いて求めた値に一致した。
  • 木村 隆男, 奈良 茂男, 松山 謙太郎
    1973 年 30 巻 340 号 p. 491-496
    発行日: 1973/08/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    m-ジベンゾイルベンゼンなどの芳香族ジケトンとベンジジンなどの芳香族ジアミンの重縮合により, 7種類の芳香族ポリシッフ塩基を合成し, 熱安定性および溶解性を検討した。合成は酸触媒を用いた高温溶液重縮合および溶融重縮合を採用したが, 溶液法の場合には有機溶媒に不溶のポリマーが得られた。一方, 溶融法の場合にはN, N-ジメチルホルムアミドやN-メチル-2-ピロリドンなどの有機溶媒に可溶なポリマーが得られた。熱重量分析により, 溶液法で得られたポリシッフ塩基の熱安定性を検討した。ポリマーは空気中で350~400℃まで重量減少を示さず, 急激な分解が約500℃で始まった。
  • 潮村 哲之助, 岩尾 徹也
    1973 年 30 巻 340 号 p. 496-500
    発行日: 1973/08/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    アイソタクチックポリプロピレン (PP) の分子量分布指数 (Q) を簡単に算出する関係式を作製した。これはPPの溶融粘度が分子量 ( [η] で代表される) や, せん断速度によって変化する点を利用したものである。上記の関係式誘導の基礎となるつぎの関係式が実験的に求められた。
    (ここでMI, FIは, それぞれ210℃で測定した高せん断力下, および低せん断力下での押出量であり, [η] は固有粘度である。)
  • 小菅 詔雄
    1973 年 30 巻 340 号 p. 500-504
    発行日: 1973/08/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    エポキシ-ポリサルファイド樹脂の網目構造に関連する動的粘弾性の変化を主としてTBA (Torsional braid analysis) を用い, -100℃から160℃の温度範囲において測定した。一般にエポキシ樹脂にポリサルファイド樹脂 (チオコール) を添加すると, 硬化樹脂は単一な主 (α) 分散を示すが, 分散ピークの形は幅広くなる。しかし, チオコールを少量添加したときは2個の主分散が示される。これは硬化樹脂が相分離しているものと考えられる。さらに, β分散の機構とエポキシ-ポリサルファイド樹脂の構造との関係についても検討した。
  • 自念 栄一, 鈴木 恵
    1973 年 30 巻 340 号 p. 504-511
    発行日: 1973/08/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    繊維混入率を種々変えたガラス繊維強化ナイロン6プラスチックの常温から150℃における引張りクリープ特性についてクリープひずみと応力との関係, 摩擦力分布関数とクリープ速度の時間経過による変化, および2次クリープ速度の応力依存性の面から検討した。その結果重量混入率10%以下の低混入率では摩擦力分布関数およびクリープ速度は時間経過とともに減少する傾向がある。また2次クリープ速度の応力依存性の関係でも高混入率と違った特異なクリープ挙動を示すことがわかった。これに対して20~30%の高混入率では上記の諸特性は著しく低下し, 時間経過による変化過程も低混入率とは逆にいったん低下後増加する傾向が見られた。このようなクリープ挙動の差異は母材中に分散形成されるガラス繊維の細胞組織の応力場における母材との相互作用が繊維混入率によって変化することに起因し, またこれら諸特性の温度依存性についてもこの面から検討した。
  • 近藤 慶之, 早川 忠男
    1973 年 30 巻 340 号 p. 511-513
    発行日: 1973/08/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    ポリ-s-カルボキシメチル-L-システィン水溶液のせん断応力によるコンホメーションの変化をかきまぜ法で行なった。せん断応力下によるポリペプチドの凝結は, 低イオン化の場合に認められた。種々のβ含量をもったポリ-s-カルボキシメチル-L-システイン水溶液からせん断応力によって変性した凝結物はIRとX線回折法よりβ構造であることがわかった。せん断応力下に凝結したポリ-s-カルボキシメチル-L-システインの構造は分子間β構造であると思われる。
  • 金 海珍, 砺波 宏明
    1973 年 30 巻 340 号 p. 513-515
    発行日: 1973/08/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    ポリイオンコンプレックス (ポリ-L-リジン臭素酸塩ポリメタクリル酸) の電子顕微鏡写真から, 無秩序で無定形状の凝集物でない規則的に配列した繊維からなる微細組織が見いだされた。この現象は, 異種電荷にもつポリマー間に立体特異的相互作用が存在することを示唆する。
  • 土田 英俊, 長田 義仁
    1973 年 30 巻 340 号 p. 515-517
    発行日: 1973/08/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    光学顕微鏡および電子顕微鏡による観察の結果から, 水溶液中で形成されたポリイオンコンプレックスが集合して繊維構造に生長していくことを見いだした。生長がある限度に到達するとコンプレックスは成長方向の規則性を失い, 網状構造に発展する。ポリイオンコンプレックス鎖のこのような高次構造形成には, クーロン力のほかに疎水結合力も関与しているように考えられる。
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