プチルゴム加硫物の強度T.Sに就いてはFloryにより次式が呈出されている。
ここにMは加硫前の分子量, Mcは加硫後の綱目間の分子量で加硫によつて完全な網とならないところの分子の自由端の濃度2M
C/Mだけ伸張時に結晶化しないとしたものである。Kは全單位が完全に結晶化したときの強度で, 尚プチルゴムの場合, bなる補正が必要であるが, その意味は必ずしも明かではない。本式はMに闘する限り天然ゴムにもよく適合するが, 加硫と共に, 即ち綱日の増大と共にT.Sは増えるのではなく實際には最適點があり, それを超えるとT.Sは逆に漸滅するので, Flory式は必ずしも適合しない。筆者等は天然ゴムの分子量及び加硫度v (單位重量當りの網目數で弾性率から求める) を變えて實験し次の實験式が適合する事を見出した。
M
0はゴム炭化水素構造單位 (イソプレン) の分子量, Nはアボガドロ數で2N/vMはFloryのと同じであるが, 綱目と共にβvだけ非結晶化の部分が増えるのである。これより
∂T.S/∂v=0 として最適加硫度
即ちvmaxは
1√Mに比例し, T.Smaxは
1√Mと直線関係になるが, これは實験と良く合う。賓験によりKは400kg/cm
2, β はvmaxに對する蘭係から9.6T.Smaxから11.4平均10.5となり, この値を (1) 式に入れると全加硫範團に亘り賓験と良く合う強度の曲線が得られる事が分つた。βは綱目結合をしているイソプレン單位1ケがあれば, そのために10ケの單位が伸張に依る結晶化が不能になる事を意味する。これはイソブシンと結合した硫黄がゴム炭化水素と結晶型を異にするため綱目周園の歪, 分子のゆるみ等に原因するものであろうが又, ここに用いた網目濃度は彈性率から求められたもので架橋結合した硫黄の量かち化學的に推察されるものと比べて相當小さいところに原因しているとも考えられ, おそらくこれらの諸原因が重なつた結果としてβ=10となるのであろう。最適加硫點の綱日vmaxの割合はイソプレン單位にして1~2%(電量) で加硫前分子量の大きい程小さく, 又Mの大きい程T.Smaxは大きい。
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