ことば
Online ISSN : 2424-2098
Print ISSN : 0389-4878
38 巻
選択された号の論文の19件中1~19を表示しています
巻頭言
武蔵嵐山ワークショップ
研究発表要旨
個人研究
  • 熊谷 滋子
    2017 年 38 巻 p. 11-28
    発行日: 2017/12/31
    公開日: 2018/01/12
    ジャーナル フリー

    方言ブーム、方言尊重とうたわれている今日、日本語社会は依然として標準語を基本とし、方言を周縁に位置づける社会であることを、東北と関西を舞台としたテレビドラマから検証する。ドラマでは、東北は東京と対極に位置する田舎であり、自然あふれる童話の世界として描かれる。東北方言は若い女性、知的な男性には合わないイメージが反映され、より強く周縁化されている。一方、関西は東京を意識しない、国際的な都市のイメージを押し出し、「お笑い」や「けんか」が活発に展開される場として描かれる。関西方言は基本的に登場人物全員が使用できるため、それほど周縁化されていないように思われる。が、あらたまった場面や外国語の翻訳では標準語が用いられるため、ソフトに周縁化されている。田中(2016)が実施した方言イメージの調査結果、「東北=素朴、温かい」「大阪=おもしろい、怖い」にぴったりなドラマとなっている。メディアは、このようなイメージを再生産している。

  • 小林 美恵子
    2017 年 38 巻 p. 29-45
    発行日: 2017/12/31
    公開日: 2018/01/12
    ジャーナル フリー

    日本国憲法口語訳の「話しことば」文体について分析・記述する。口語訳には、「国民」を「俺」とし、「お前」の呼びかけを用いること、文末に「命令」「禁止」「依頼」「許可」「勧誘」など訴え型の述語形式が使われ、「よ」「ね」「な」「ぜ」などの終助詞が多用されていることなど、憲法原文にはない特徴が見られる。これらは、20代男性の訳者(話者)の立場から、同年代以下の親しい友人などを相手として想定した「話しことば」文体で書かれていることによる。それは憲法に対する親しみを喚起しているが、同時に口語訳されることによる解釈の制約や限界もある。

  • 髙橋 美奈子, 谷部 弘子, 本田 明子
    2017 年 38 巻 p. 46-62
    発行日: 2017/12/31
    公開日: 2018/01/12
    ジャーナル フリー

    母語話者と非母語話者によるインターアクション場面である接触場面の研究は、非母語話者の言語使用実態の把握に有効であると言われている。しかし、非母語話者同士の「第三者言語接触場面」において学習者がどのような言語行動を獲得するのかという観点からの実証的な研究は十分とは言えない。特に、コミュニケーションを円滑にするための多様なストラテジーとして機能しているスピーチレベルシフトは、日本語学習者には習得が困難だと言われている。そこで、本稿では、学部レベルの国費留学生16名の日本語母語話者との会話および非母語話者との会話の2場面における自然談話データを用いて、第三者言語接触場面にみられるスピーチレベルシフトの機能のバリエーションを明らかにした。さらに、非母語話者であっても、相手との言語能力の差や親疎関係の差により、相手言語接触場面と第三者言語接触場面とでは出現するスピーチレベルシフトの機能が異なる可能性も明らかになった。本稿では、日本語学習において第三者言語接触場面を活用する意義を指摘し、多様な日本語使用者による日本語談話の価値の問いなおしを試みた。

  • 髙宮 優実
    2017 年 38 巻 p. 63-82
    発行日: 2017/12/31
    公開日: 2018/01/12
    ジャーナル フリー

    これまでのスピーチスタイルシフトに関する研究は、丁寧体基調の会話に使われる普通体を分析したものが多かったが、本稿では普通体基調の会話に現れる丁寧体に焦点を当てる。同年代の友人同士や家族間といった親しい間柄で話される日常談話を分析した結果、不平、非難、批判、反論、不同意といった不満を表明する際に、丁寧体が使われ、それには次のような3つの機能があることが示された。1)丁寧体で不満表明を繰り返すことにより、意味が強調され、相手を説得したり、理解させたりする効果がある。2)普通体基調の会話に現れる丁寧体には、相手に譲歩させたり、相手をなだめたりする効果がある。3)第三者について否定的なコメントをする際に、丁寧体を選択することによって、聞き手からの賛同を得る。このような機能は日本語での円滑なコミュニケーションにおいて重要な役割を果たしている。

  • 李 文鑫
    2017 年 38 巻 p. 83-101
    発行日: 2017/12/31
    公開日: 2018/01/12
    ジャーナル フリー

    本稿では、概念メタファー理論に基づき、中国人日本語学習者の作文に現れたコロケーションの誤用を分析し、その原因を検討した。まず、「興味」を例として、日本語と中国語の概念メタファーの異同を探った。その結果、日本語では<興味は液体>という概念メタファーが発見され、それを支えるイメージ・スキーマとして力スキーマ、容器スキーマが挙げられる。それに対して、中国語では<興味は植物>という概念メタファーが発見された。次に、学習者コーパスに現れる個々のコロケーションの誤用の原因を分析し、誤用の原因は日中両言語の概念メタファーのズレであることを明らかにした。

  • 遠藤 織枝
    2017 年 38 巻 p. 102-123
    発行日: 2017/12/31
    公開日: 2018/01/12
    ジャーナル フリー

    介護の分野に外国人が加わるようになって以来、介護の用語の平易化がいっそう求められるようになっている。本稿では、現在介護の現場で使われている難解な用語は、明治期の看護学教科書に由来することを想定して看護学草創期の教科書に基づく用語の調査を行った。その結果、今回対象とした「臥床・汚染・頻回」の3語については、看護学の初めのころから使用されている事実が確認できたが、その使用法が現在とは異なっていたことも明らかになった。伝統の踏襲として使用し続けられることが、形骸的な継承になっているとすれば、そうした難解な用語を使用し続けることの意味をあたらためて問い直す必要があると思われる。

  • れいのるず秋葉 かつえ
    2017 年 38 巻 p. 124-143
    発行日: 2017/12/31
    公開日: 2018/01/12
    ジャーナル フリー

    一人称詞は、日本語人がかかえたどうしようもない問題である。どうして日本語にはこうも数多い自称詞があるのか。どうして主要な男性自称詞が漢語由来の「僕」なのか。過去においてあきれるほど多くの自称詞が大陸言語から借用された。欧米の言語学では、人称代名詞はもっとも安定した言語カテゴリーで、めったに他言語から借用されないものだ、と理解されている。では、日本語はなぜ常に不安定なままに続いてきたのか。説明されねばならない。この研究は、歌舞伎脚本の自称詞を歴史社会言語学的に分析し、次のような仮説をたてる。(i)原日本語は、一・二人称を区別しない「前人称」言語であった。(ii)「私」のような疑いもなく一人称詞であるものは大陸言語との接触以降イノヴェートされた。(iii)江戸前期、大量の漢語自称詞・対称詞が借用された。(iv)近代化のなかで多くの漢語自称詞が衰退したが、一人称詞は今も複数であり、不安定である。

  • 斎藤 理香
    2017 年 38 巻 p. 144-154
    発行日: 2017/12/31
    公開日: 2018/01/12
    ジャーナル フリー

    山田わか(1879-1957)は「母性保護論争」(1918–19)をへて母性主義を唱えるようになったが、元々はいわゆる女権主義の影響を受けていた。しかし、自身が子育てを経験する中で、国家が母親への経済保障をするべきだという考えに行きつく。わかと同様、平塚らいてう(1886–1971)もまた母性保護を、特に国家による経済保障による母性保護を主張した。両者ともにエレン・ケイの思想の影響を受け、霊肉合致の恋愛・結婚観に傾倒していた。二人の違いは、らいてうが母性への公的経済扶助は女性が精神的に自立するための手段となるととらえたのに対し、わかは女性の天職たる母性に公的扶助を与えることによって女性が家庭内分業の母親役割に徹することが可能になる、と考えたところにある。

論説
  • ヒダシ ユディット
    2017 年 38 巻 p. 155-162
    発行日: 2017/12/31
    公開日: 2018/01/12
    ジャーナル フリー

    ウィメノミクスとは、日本経済の活性化を目指す安倍晋三政権の経済改革の要素の一つで、日本経済を刺激するプロセスの中に女性の労働力、すなわち女性の潜在能力を集中的に組み込むことを目的としている。これらの刺激策が社会に及ぼす影響には、問題がないわけではない。本稿は、ウィメノミクスの行動計画のポイントに沿って政策の実施状況を明らかにするとともに、懸念される点も指摘するものである。

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