ことば
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巻頭言
武蔵嵐山ワークショップ
研究発表要旨
個人研究
  • 佐々木 恵理
    2018 年 39 巻 p. 17-35
    発行日: 2018/12/31
    公開日: 2018/12/31
    ジャーナル フリー

    女性への性暴力への抗議と性被害を告発する「#MeToo」運動をきっかけとして、日本でもセクシュアルハラスメント(セクハラ)の議論が活発になっている。報道の姿勢や世論の反応から、セクシュアルハラスメントは重大な人権侵害であるという認識が浸透していることがわかる。一方、セクシュアルハラスメントが正しく理解されているとは言いがたい状況もある。セクシュアルハラスメントは、職場や労働の場で権力関係を背景に起きると定義されるが、日常で起きる性暴力や性被害を「セクハラ」と表現したり、性的な発言や身体接触の様子を象徴的に「セクハラ」と描写したり、ふざけたりからかったりする意図で「セクハラ」が使われたりしている。本論では、まずセクシュアルハラスメントの定義を確認し、次に、さまざまな場面での誤用・誤解例を示す。さらに、こうしたことばの混乱が起きた源泉を探り、セクシュアルハラスメントの問題解決のためのよりよい表現を考えたい。

  • 馬 雯雯
    2018 年 39 巻 p. 36-51
    発行日: 2018/12/31
    公開日: 2018/12/31
    ジャーナル フリー

    本研究は新聞記事に用いられている「女性」「男性」という語と形容詞のコロケーションから日本語におけるジェンダー表現を考察するものである。分析に際し、「女性」「男性」と共起する形容詞の全体像を把握するために、テキスト型データを統計的に分析するためのソフトウェアKH Coderで共起ネットワーク図を出力し、分析を試みた。そして、「女性」「男性」の直前に位置する形容詞の考察にあたって、「女性」「男性」と共起関係を有し、直接女性や男性の性質や様子を形容する語をピックアップした。そのうち、「若い」と「女性」「男性」の強い共起関係は偶然なものではなく、「若い女性」「若い男性」は二つの定着度の高いカテゴリーとして認識され、用いられていることが確認された。さらに、カテゴリーとしての「若い女性」「若い男性」はそれぞれ異なった動詞、名詞と共起していることを明らかにした。

  • 李 文鑫
    2018 年 39 巻 p. 52-69
    発行日: 2018/12/31
    公開日: 2018/12/31
    ジャーナル フリー

    本研究では、<思考>メタファーに関して、日本語でも中国語でも<考えは機械の動き>という上位概念メタファーがあるが、その下位概念メタファーとして、日本語では<頭は機械>があるのに対して、中国語では<脳は機械>があることを示して、目標領域及び写像において日中両言語にズレがあることを明らかにした。さらに、大型学習者書き言葉コーパスのデータを分析し、中国語を母語とする日本語学習者が自然産出したコロケーションを①母語の<脳は機械>の写像に対応する誤用、②母語から目標言語へシフトしていく途中の誤用、③目標言語の<頭は機械>の写像と対応する正用の3種類に分類し、目標領域及び写像への間違ったアクセスによる概念誤用の例を示した。そして、コロケーションの誤用原因は日中両言語における概念メタファーの写像のズレによることを明らかにした。

  • 髙宮 優実
    2018 年 39 巻 p. 70-86
    発行日: 2018/12/31
    公開日: 2018/12/31
    ジャーナル フリー

    言語形式的には「ほめ」であっても、実際には批判や非難として機能している場合がある。このような機能は、これまでに、小説やエッセイなど作者によってつくられた文章にもとづいた資料の分析からは言及されているが、本研究において自然談話を分析した結果、日常の会話において、特に第三者を批判する場面で「ほめ」の形をとった皮肉や嫌味といった否定的な機能が使われていることが明らかになった。これは、直接言語的に批判をするよりも、状況をユーモラスに捉え、事態の深刻さを回避する役割があるためと考えられる。

  • れいのるず秋葉 かつえ
    2018 年 39 巻 p. 87-104
    発行日: 2018/12/31
    公開日: 2018/12/31
    ジャーナル フリー

    この研究の目的は、中世から近世、近代はじめの800年間に書かれた書簡をデータにして、日本語自称詞の歴史的変化のアウトラインを描きだすことである。まず、中世は大陸言語との接触に刺激されて「私」「某」などの和語自称詞がいくつか創出されはしたが、漢語自称詞そのものはまだ使われることがなかった。中世は「和語自称詞の時代」であった。江戸期には徳川幕府の漢学奨励政策によって有文字人口が急増し、「拙者」を代表的な例とする漢語自称詞が学者、武士その他の識者たちの間に広く普及した。しかし、江戸中期には新たな漢語自称詞「僕」が出現し、和語自称詞と「拙者ことば」を中心にした自称詞パラダイム(権力原理タイプ)は、「僕」を主体とするパラダイム(連帯原理タイプ)にシフトしていった。「僕」は封建社会のタテマエが崩れた大状況に打ち込まれた楔の役割を担いつつ、幕末乱世を生き延びて近代を支え、現代日本語の主要な男性自称詞となっている。

  • 遠藤 織枝
    2018 年 39 巻 p. 105-123
    発行日: 2018/12/31
    公開日: 2018/12/31
    ジャーナル フリー

    明治期の介護・看護を表す語としては、「看護」「看侍」「介輔」「介抱」「看病」「介助」「みとり」「介護」が使われた。この中で、「看侍」「介輔」は教科書で多く使われたが、一般の用語としてはほとんど使われなかった。「介助」が教科書で1例のみ、「介護」は看護関連の書籍には登場せず、恩給の法律の中では使われていて、国語辞書に採録されたのは1970年代である。

    介護・看護をする人の呼称としては、「看護人」「看護者」「看護婦」「看病人」「看病婦」「介抱人」の6語が抽出できた。明治初期は「看護人」「看護者」「看病人」「看病婦」が使われ、「看護婦」の語の登場はこれらより遅い。中期以降は「看病婦」と「看護婦」が並行して使われ、明治期後半からは「看護婦」に集約された。

  • 斎藤 理香
    2018 年 39 巻 p. 124-137
    発行日: 2018/12/31
    公開日: 2018/12/31
    ジャーナル フリー

    山田わか(1879–1957)は、日本最初の女性による「文学雑誌」と、かっこ(「」)付きで紹介されることのある『青鞜』(1911–1916)で翻訳や文学作品を発表し、後に婦人問題評論家としての地位を築いていった。今回は、その執筆活動の最初の頃に、わかが同じ『青鞜』に掲載した短い小説「田草とり」(1914年4号)、「女郎花」(1914年12号)、「虎さん」(1915年2号)を紹介する。これらの作品は、女性の自己決定を阻む問題に深く切り込み、時代を超えて読み継がれる力をもつキャラクターを描いた作品とは言えず、また人物像や状況の書き込み不足もうかがわれる。小説はわかの本領を発揮する分野ではなく、その後に書かれたエッセーや評論へとつながる発展への一段階という役割を担ったと捉えられる。

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