先ヅ持續的發育ヲナス齒牙ヲ有セル家兎、白鼠ヲ實驗動物トナシ、皮下注射ニヨリテ、黄燐ノ少量ヲ色々ノ量ニ奥へ、齒牙發育速度ノ測定, X光線像檢査、組織學的檢査, 灰分含有量測定等ニヨリ、圭トシテ齒牙竝ニ其ノ支持組織ニ如何ナル影響ヲ奥フルカヲ探リ。生體ニ對スル黄燐ノ作用ヲ究メントセリ。
其ノ結果ハ齒牙發育速度ニハ、常ニ著明ナル變化ヲ認メ得ザリシモ、大體ニ於テ黄燐ハ齒牙ノ發育ヲ稍く遲延サスモノ、如ク、叉極メテ微量ナル黄燐ハ齒牙ニ嵜シテハ、明ラカナル變化ヲ認メ得ザルモ、齒槽骨、顎骨ニ於テハ既ニ或ル變化ヲ現ハシ、投與量ノ増加ニ伴ヒ、X光線像ニ於テモ既ニ齒牙組織ノ増大セルヲ認メ、反之灰分含有量ハ低下セルヲ知レリ。更ニ是等ノ動物ヲ組織學的ニ檢査セシニ、齒牙及ビ其ノ支持組織ニ著明ナル變化ヲ認メ得タリ、而シテ此ノ變化ハ動物ニヨリ著明ナルモノト、然ラザルモノトアレドモ、變化ノ主ナルハ、骨質ノ肥厚増大、琺瑯質ノ發育不全或ハ發育停止状態 (缺損) 、象牙質ノ肥厚増大, 白皇質ノ増生等ニシテ、爾ホ此等肥厚堆大セル骨, 象牙質。骨樣白堊質 (家兎) 、白堊質、及ビ琺瑯質ニバ非常二著明ナル吸收状態ヲ示シ、巨大破骨細胞ノ現出頗ル多キコトナリ。
以上ノ實驗ノ外、更二家兎切齒根部二外傷ヲ與へ、齒牙ノ諸組織が如何二再生スルカヲ見, 且ツ其ノ際二働カセタル黄燐ガ此ノ再生機能二對シ如何ナル影響ヲ與フルカヲ知ラントシ。更二叉齒牙交換期ノ仔犬ヲ實驗動物トナシ、齒牙交換期二於ケル新陳代謝二對シ、同ジク黄燐が如何ナル變化ヲ與フルカヲ究メ、以テ前ノ實驗ト對照比較ヲ試ミントセリ。其ノ結果ハ著明ナル黄燐ノ影響ハ認メ得ザリシモ.爾前記實驗結果二反對ノモノ、一ツモナク、多クハ前ノ結果二逍從シウルモノノミヲ認メ得タリ。
以上ノ諸變化ヲ總合シテ其レニ基キ、黄燐ノ生體二對スル作用ノ本體ヲ按ズルニ、爾ホ斷定ヲ憚ルモ、古來多數ノ學者ニヨリテ説明サレタル燐ノ同化促進作用ハ、實際ハ異化作用抑制ト見做スヲ至當トスベシトノ大槻氏等ノ説明ニ著者モ亦同意シ得ベシ、同時二著者ノ實驗結果ニヨレバ、右抑制作用以外, 眞ノ同化作用促進 (白〓質異常壇生等) 、又異化作用促進或ハ同化作用抑制等, 先人ノ指摘セル作用以外ノ燐作用ヲ認メザルヲ得ザルニ至レリ。

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