著者は南西アジアのAfghanistanのNuristan, Alinger川流域の男子住民の口腔診査を行ない, その資料を検討した。その結果次のことが, 判明した。
1) この地域は, 地理的条件のため, 未だ開発が進んでおらず, 住民の文化程度は低くて, 原始生活に近い生活をしている。
全身の健康はもちろんのこと, 口腔の健康に対しても全く無関心で, 歯石沈着は被験者の4分の3に観察され, 全体の53%のものは全顎の歯冠を覆うほどの高度なものであつた。また歯肉の炎症は被験者全員に観察され, 高度なものが60%にも及んでいることが判明した。
2) 齲蝕罹患者率は84%に達し, 文化の進んだ民族と同程度の高い値を示し, 未開民族の齲蝕罹患者率は低いという現在までの報告と, 反対の結果が観察された。1人平均齲蝕歯数は2.9本で, 未開民族と文化民族の値の中間の値であつた。
3) 被験者全員に歯の磨耗がみられ, 3分の2以上のものは, 象牙質, 歯髄に及ぶ高度の磨耗を起しており, 全顎の歯痛をうつたえるものが多く観察された。
4) この地域は部落毎に異なつた民族が居住しており, 大きく白色系人種と黄色系人種に分類される。黄色系人種のほうが齲蝕罹患者率, 1人平均齲蝕歯数においてやや高い値を示した。また, 歯の磨耗, 歯石沈着は白色系人種のほうがやや高い値を示した。
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