増原, 平沢考案のMH衝撃滑走式摩耗試験機を使用し, 第2燐酸カルシウム, 酸化鉄, アルミナ, 酸化クロムの各種グリセリン懸濁液を介在させ, 温度, 打速度, 表面粗さ, 荷重, および打数の種々の条件のもとでのアクリリックレジン対アクリリックレジンの摩耗を検討した結果, 次のような知見を得た。
1) 摩耗量は温度, 打速度, 表面粗さに比例して増大するが, その影響は僅かである。
2) 摩耗量は打数, および荷重と比例関係にある。これらの関係は, 摩耗量が1~2mm
3以内の初期において直線関係を示すが, それ以上に摩耗が進むと, 摩耗効率が低下し, 直線関係が成立しなくなる。
3) 各グリセリン懸濁液の研摩材濃度に比例して摩耗量は増大するが, ある濃度で最大摩耗量を示し, それ以上では濃度に反比例して, 摩耗量は減少する。最大摩耗量を与える懸濁液の濃度は, 第2燐酸カルシウム, 酸化鉄, アルミナ, 酸化クロムの順にそれぞれ, 26.7, 12.0, 12.0, 18.9体積パーセントである。
4) 温度37℃, 荷重'1, 000g, 打速度76回/分, 打数10, 000回, および, 各研摩材の最大摩耗を与える濃度で試験したときの摩耗量は, 第2燐酸カルシウム懸濁液では, 上部試験片で1.76mm
3, 下部試験片で2.03mm
3, 同様に酸化鉄懸濁液では1.49mm
3, 3.07mm
3, アルミナ懸濁液では4.47mm
3, 5.86mm
3, および酸化クロム懸濁液では7.20mm
3, 8.38mm
3の値を示す。
5) 最大摩耗を与える濃度の懸濁液が示す粘度は, いずれの研摩材-グリセリン懸濁液でも, 20~50poiseの範囲にある。
6) 摩耗量は研摩材のかたさと形状に影響され, そのかたさにほぼ比例し, 同一濃度で比較すると, 第2燐酸カルシウム, 酸化鉄, アルミナ, 酸化クロムの順に摩耗量は大きくなる。
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