口腔病学会雑誌
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46 巻, 4 号
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  • 東 千緒子
    1979 年 46 巻 4 号 p. 245-255
    発行日: 1979年
    公開日: 2010/10/08
    ジャーナル フリー
    ヒトのウ蝕象牙質はフクシンのプロピレングリコール溶液によって可染性の表層 (第1層) と不染性の深層 (第2層) に区別される。これら2層の生理的再石灰化の機能を生化学的に確認するため, 各々の有機基質を分離し, そのカルシウムイオン結合能ならびにin vitro石灰化誘導能を測定した。
    カルシウム結合能は, 第1, 第2層とも, 高親和性のカルシウム結合部位 (結合定数K=3~4×104M-1) と低親和性の結合部位 (結合定数K=3×102M-1) との2種類が存在することがわかった。第2層の高親和性カルシウム結合部位の数 (11モル/モル・コラーゲン) は第1層 (6モル/モル・コラーゲン) に比較して2倍近くの高い値を示し, 健全象牙質のそれ (10モル/モル・コラーゲン) に匹敵することを見出した。
    各層のアミノ酸組成に差はないので, 中性糖の含有量を測定したところ, 第2層は健全層の約2倍であったのに対し, 第1層は9倍もの中性糖を含むことがわかり, 多量の糖の混在は両層のカルシウム結合能と染色性に関連すると推定された。
    さらにDe Stenoらの条件で, 各層の有機基質のin vitro再石灰化率を比較測定した結果, 健全層は未脱灰ウシ象牙質のミネラルの49%再石灰化したのに対し、ウ蝕象牙質は一段と低い再石灰化率を示したが, 第2層 (5.3%) と第1層 (1.7%) の問には明らかな有意差が認められた。
    以上の結果からウ蝕象牙質第2層は健全象牙質に近いin vitro再石灰化の潜在能をもっているのに対し, 第1層はこの性質がきわめて低いことが確認された。この結論は, 第1層と第2層に関する従来の形態学的, 生化学的所見ならびにin vivoでの生理的再石灰化の実験結果とよく一致した。
  • 大庭 譲治
    1979 年 46 巻 4 号 p. 256-268
    発行日: 1979年
    公開日: 2010/10/08
    ジャーナル フリー
    アルジネートとハイドロコロイドの連合による積層水膠印象法が, 鋳造修復物調整のための間接印象法としていかなる精度を有するものであるかを明らかにするために, 内外側対照測定器, 併立原型・樋形トレー印象法, 両隣在歯アンダーカット併立原型・樋形トレー印象法, 後方歯傾斜併立原型・樋形トレー印象法, 細線再現性試験法によって測定し, 在来のアルジネート, ハイドロコロイド, ラバーベースおよび積層シリコーンの4種の印象法と比較し, 次のような知見を得た。
    1, 積層水膠材印象法によって得られた石膏歯型は, 他の4法によるものと同様に, 原窩洞に比較して, 外側がやや大きく, 内側がやや小さくなっており, 本法による歯型の寸法変化は臨床上ちょうど良い程度と考えられる。
    2.積層水膠材印象法により, 併立原型を樋型トレーで印象して得られた石膏歯型では, 他の4法によるものと同様に, トレーに支えられた頬舌方向と開放された近遠心方向の印象材の収縮の差によって生ずる変形度はきわめてわずかで, 臨床使用に支障のないものであることが明らかとなった。
    3.積層水膠材印象法は, 積層シリコーン印象法と同様に, 両隣在歯にアンダーカットがあっても, 中央部の石膏歯型に及ぼす影響は少なく, その変形は臨床上さしつかえない程度であった。
    4.積層水膠材印象法では, 隣在歯の傾斜による石膏歯型の変形は, 積層シリコーン印象法と同様にきわめてわずかで臨床上まったく支障のないものであった。
    5.積層水膠材印象で得られた石膏模型では, 積層シリコーン印象法と同様に, 隣在歯の傾斜が大きくなるほど歯型と傾斜隣在歯との歯間距離が短くなる傾向を示した。その程度は臨床上支障はないと考えられるが, 本材料がシリコーンなどに比較して物理的性質が若干弱いことを考えると, 傾斜の強い症例ではあらかじめその部分を粘着性のワックスなどで埋めておけばいっそう安全だと考えられる。
    6.積層水膠材印象法によって得られた石膏模型の精度は, 積層シリコーン印象法, ハイドロコロイド印象法と同様に10μの細線まで再現し, 間接印象法として臨床上十分の精度を持つものと考えられる。
  • 清水 チエ
    1979 年 46 巻 4 号 p. 269-292
    発行日: 1979年
    公開日: 2010/10/08
    ジャーナル フリー
    ウ蝕象牙質が正常層から第2層を経て第1層に変化する過程を, 各種の染色を施した切片の光学顕微鏡観察と, ウ蝕表面から髄腔壁までを一塊として切り出した試料の超薄切片の電子顕微鏡観察とによって検討し, 下記の知見を得た。
    1.正常層とウ蝕象牙質の第1層と第2層との間には明らかに染色性の差があり, 第2層では深部から中部・浅部へと徐々に連続的な変化が起こっていたが, 第1層ではさらに重要な変化が起こっていた。
    2.電子顕微鏡で観察すると, 第2層では深部から浅部に行くに従って基質線維や付着結晶の配列が徐々に不明瞭になり, 溶解による結晶の変形縮小が進んでいたが, 第1層ではそれらの固有の配列が認められなくなり, 顆粒状に縮小変形した微結晶が基質線維から離れて不規則に分散していた。
    3.細菌は第1層のみに認められ, 他には認められなかった。細管腔内には第2層の深部で一部に結晶沈着が起こったが, 中部・浅部ではだんだんと減少し, 第1層では消失していた。しかし第1層では形の異なった結晶が稀に現れていた。
  • ―単相刺激による歯周組織の組織学的変化―
    武内 真利
    1979 年 46 巻 4 号 p. 293-305
    発行日: 1979年
    公開日: 2010/10/08
    ジャーナル フリー
    ラット上顎臼歯に5種類の厚さの帯環を装着し, 単相刺激によるそれぞれの歯周組織の組織学的変化を経時的に観察した結果, 以下のことが判明した。
    1) 本研究の単相刺激法は, 加えられた刺激の量に応じた歯周組織の一連の変化過程をとらえるには, 十分な実験系と考えられた。
    2) 第2臼歯遠心側では壊死巣が認められた場合, 肉芽様組織の形成に伴い, 歯根膜に与えた変位の程度と対応して, その修復される時期が異なっていた。
    3) 修復過程の発現は, 巨細胞ならびに肉芽様組織の出現を指標としてみると, 刺激が加えられたのち2日目には組織上に確認することができた。
    4) 第3臼歯近心側におけるSharpey線維の断裂は, 本研究においては認められず, 歯根膜に与えた変位の程度が強い場合には, 歯槽壁に骨芽細胞が多数出現し類骨組織の形成が認められた。
  • 新内 秀一
    1979 年 46 巻 4 号 p. 306-322
    発行日: 1979年
    公開日: 2010/12/08
    ジャーナル フリー
    矯正治療の対象年齢として最も頻度の高い混合歯列期の不正咬合者の顎運動記録は, 被験者の頭部の固定, 咬合系の成長発育に伴う記録対象点の変動という問題があるため, 精確な顎運動の記録が困難であった。今回, 著者はそれらの問題点を解決した顎運動解析装置を用いて, 運動速度Indexならびに習慣性開閉運動路の軌跡の変異性という2つのパラメーターに着目して混合歯列期の不正咬合者10名の顎運動パターンを解析した。
    その結果, 閉口運動路の後期において極端に運動速度Indexの低下する症例と低下しない症例とに大別できた。さらに, 極端に運動速度Indexの低下する症例は運動路の軌跡の変異が大きい傾向を示しており, 臨床的に従来いわれている機能的不正咬合と関連性の強いことが示唆された。
  • 松浦 基一
    1979 年 46 巻 4 号 p. 323-362
    発行日: 1979年
    公開日: 2010/10/08
    ジャーナル フリー
    本研究は口蓋部軟組織を加圧した時の軟組織の変化とその組織構造の関係を明らかにすることを目的とした。測定は軟組織の厚径, 0~200gまでの連続的な加圧における軟組織の変位量, 50g, 100g, 150gの分銅による定加圧と圧開放後の軟組織の変位量のおのおのについて行った。組織観察は加圧せずそのままの状態の標本と, 加圧した状態の標本について行った。その結果, 軟組織の厚さと連続的な加圧による変位量は直線的に比例する。また, その変位量は粘膜下組織と粘膜固有層の厚さに比例していた。定加圧における軟組織の変位の回復は測定を行った部位によって異なった傾向を示している。その時の変位の回復の程度は, 粘膜下組織の存否, 粘膜固有層の厚さと線維の密度, 弾性線維の量, 血管の量, 粘膜上皮の厚さと角質化の程度に関係していた。
  • 山田 嘉尚
    1979 年 46 巻 4 号 p. 363-388
    発行日: 1979年
    公開日: 2010/10/08
    ジャーナル フリー
    クエン酸代謝障害の硬組織に及ぼす影響を解明する目的で, Wistar系雄性ラットを用い, TCA回路阻害剤であるfluoroacetateおよびsodium citrateを皮下注射し, ラット切歯象牙質と顎骨ならびに脛骨の変化について検索を行った。Fluoroacetate注射後24時間の切歯象牙質形成は著しく抑制され, microradiographにより石灰化の阻害像も観察された。この石灰化不全象牙質はhematoxylinおよびtoluidine blueにはほとんど染色性を欠き, PAS陽性を呈する異常象牙質であることが判明した。また, fluoroacetateの大量投与により象牙芽細胞は壊死に陥る像が認められ, fluoroacetateが象牙質基質形成を司る細胞に対して, 著しい障害作用を及ぼすことが示唆された。Fluoroacetate注射後, ラットの血清クエン酸量は有意に増加し, このクエン酸の増加と平行して血清カルシウムも増加することが示され, また, 血清無機リンもこれに伴って増加する傾向が認められた。Fluoroacetateの連続投与により, 象牙質にクエン酸および無機リンの増量が認められたが, カルシウムには有意の増加は認められなかった。一方, 骨組織においては, 下顎歯槽骨にalveolar crestの吸収を伴う骨質破壊像が観察され, 皮質骨においては骨ミネラルの喪失を示唆する所見が得られた。さらに脛骨骨端部においては化骨機転の障害像が観察された。
    Sodium citrateを投与した場合には, 血清クエン酸, カルシウムの増加および象牙質の石灰化障害などの変化は認められたが, fluoroacetate投与後におけるような著しい象牙質形成障害は認められなかった。また血清クエン酸の増量と象牙質の形成抑制度との間には直接的な相関関係は認められなかった。Sodium citrateの連続投与により象牙質のクエン酸, カルシウムおよび無機リン量の変化にはfluoroacetateの場合とほぼ同様の関係が認められ, また下顎歯槽骨には骨ミネラルの喪失を思わせる骨質破壊像が観察された。
  • ―特に本症でみられるDNA修復障害と高発癌性についての考察―
    高木 実
    1979 年 46 巻 4 号 p. 389-396
    発行日: 1979年
    公開日: 2010/10/08
    ジャーナル フリー
    色素性乾皮症の剖検例は少ないが著者は2例経験した。1例は大人の症例で胃癌併発例であり1例は羊水中の胎児細胞のDNA修復能の測定により, 色素性乾皮症の発症の可能性がきわめて高いために人工中絶された症例である。本症については, 最近分子生物学的解析がさかんになされており, そのDNA修復障害とともに高発癌性の機序が検討されているので, 症例を報告するとともに併せてこれらの点について考察した。
  • 安斎 隆
    1979 年 46 巻 4 号 p. 397-398
    発行日: 1979年
    公開日: 2010/10/08
    ジャーナル フリー
  • 高津 寿夫
    1979 年 46 巻 4 号 p. 399-400
    発行日: 1979年
    公開日: 2010/10/08
    ジャーナル フリー
  • 岩佐 俊明
    1979 年 46 巻 4 号 p. 401-402
    発行日: 1979年
    公開日: 2010/10/08
    ジャーナル フリー
  • 栗原 三郎
    1979 年 46 巻 4 号 p. 403-404
    発行日: 1979年
    公開日: 2010/10/08
    ジャーナル フリー
  • 岡田 憲彦
    1979 年 46 巻 4 号 p. 405-406
    発行日: 1979年
    公開日: 2010/10/08
    ジャーナル フリー
  • 斎藤 祐一
    1979 年 46 巻 4 号 p. 407-408
    発行日: 1979年
    公開日: 2010/10/08
    ジャーナル フリー
  • 今井 庸二, 増原 英一
    1979 年 46 巻 4 号 p. 409
    発行日: 1979年
    公開日: 2010/10/08
    ジャーナル フリー
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