熊本県理学療法アドバンス
Online ISSN : 2759-3096
最新号
選択された号の論文の9件中1~9を表示しています
  • 坂崎 浩一
    2025 年2 巻 p. 1-
    発行日: 2025年
    公開日: 2026/02/20
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     熊本県理学療法アドバンス第2巻の発刊にあたり,一言ご挨拶申し上げます.昨年度の創刊以来,本誌は会員の皆様からの温かいご支援に支えられ,その歩みを着実に進めてまいりました.創刊号が本県の学術活動の新たな礎となり得たのは,日頃より本会の活動にご理解とご協力を賜っている皆様のおかげであり,改めて深く感謝申し上げます.本号をお届けできることは,会員の皆様の学びと探究の営みが確かに息づいている証であり,大変心強く感じているところです.  本号では,特別寄稿として長崎大学の神津玲先生より,臨床現場で働く理学療法士が研究に取り組む意義と,その「はじめの一歩」をどのように踏み出すかを丁寧にご解説いただきました.日々の忙しさの中で研究に向き合うことの難しさに寄り添いながらも,臨床家だからこそ持ち得る問いや視点の価値を示す内容は,今後研究に挑戦する方にとって大きな励ましとなるものです.臨床と研究の両輪が理学療法の発展を支えていくという神津先生のメッセージは,本誌が創刊以来大切にしてきた理念とも響き合うものです.  さらに,県内の先生方から寄せられた各演題は,臨床や地域での経験を基盤とした多様な取り組みが並びました.地域支援体制における減災への実践,職員のワーク・エンゲージメントに関する探究,歩行自立基準の作成といった組織的・実践的な視点,末梢神経疾患例を対象としたSplit-Belt Treadmillの臨床応用,地域在住高齢者の身体機能評価,重複障害を有する患者の術後支援など,対象者一人ひとりに向き合いながら丁寧に導かれた知見も多く含まれています.いずれも日常の臨床で抱いた疑問や気づきを丁寧に掘り下げ,形にされたものばかりであり,その背景にある真摯な姿勢が伝わってまいります.  掲載された研究からは,それぞれの現場で誠実に実践を重ねてこられた営みがしっかりと感じられます.小さな気づきや日々の実践の積み重ねが,こうして共有され,新たな視点や改善につながっていく過程は,本県の理学療法がより豊かに広がっていくうえで大変心強いものです.創刊号でも触れましたが,理学療法の発展は,臨床の経験を学術として整理し,共有しようとする姿勢によって支えられています.今回の取り組みは,その営みが確かに根づき,次の一歩へとつながりつつあることを示しているように思います.  本会では,学会や研修会,研究助成,専門領域部の活動など,多様な形で会員の皆様の学びと挑戦を支えてまいりました.本誌もまた,その取り組みの一つとして,会員同士が“知”を共有し,互いの臨床と研究を高め合う場となることを願っております.今回の研究の数々が,読者の皆様の臨床に新たな視点をもたらし,日々の実践の中で抱く問いを大切にしていただく一助となれば幸いです.  最後になりますが,本号の発刊にあたり,ご執筆,査読,編集にご尽力いただいた関係各位に改めて厚く御礼申し上げます.本誌が,会員の皆様の臨床や研究の歩みに寄り添い,熊本県における理学療法のさらなる発展につながることを祈念し,第2巻発刊の挨拶とさせていただきます.

  • 神津 玲
    2025 年2 巻 p. 2-
    発行日: 2025年
    公開日: 2026/02/20
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     本稿は,多様な場で働く臨床理学療法士が,なぜ研究に取り組む必要があるのか,そして多忙な診療の中でいかに第一歩を踏み出すかを論じたものである.特に,毎日の真摯な臨床現場から生まれるクリニカル・クエスチョン(CQ)を出発点に課題を明確化し,PECOあるいはPICOに基づくリサーチ・クエスチョン(RQ)の定式化,倫理的配慮のもとでの測定・評価,データ管理,解析,学会発表・論文化へと至る一連の流れを平易に整理した.さらに,対象者と理学療法士自身双方のメリット,時間確保や業務負担軽減の工夫,チームでの取り組みなどの重要性を示し,「臨床家だからこそ研究を」というメッセージとともに,現場発のCQが良き臨床家と有益なエビデンスを生むことを強調した.

  • 佐藤 亮, 田中 千尋, 吉田 梨沙
    2025 年2 巻 p. 9-
    発行日: 2025年
    公開日: 2026/02/20
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     本稿では,熊本県内3地域の地域リハビリテーション広域支援センターで開催した,避難行動要支援者の個別避難計画に関する研修会の取り組みを報告する.本研修は,リハビリテーション専門職が平時に地域で行う活動を通じて,減災意識を高めることを目的に開催された.保健・医療・福祉等の参加者152名に対し質問紙調査を実施し,研修の評価と実態を把握した.17職種が参加し,避難行動要支援者名簿や個別避難計画の認知度は低かったが,参加者の多くがリハビリテーション専門職の関与や多職種連携への期待を示した.一方で,リハビリテーション専門職自身は制度の認識が十分ではない現状も明らかとなった.本研修は,地域リハビリテーションにおける減災への新たな取り組みとして意義があり,地域において介護予防や自立支援等に活用されている知識やスキルは,減災にも応用可能であるという認識が,リハビリテーション専門職へ醸成することを期待したい.

  • 髙野 直哉
    2025 年2 巻 p. 17-
    発行日: 2025年
    公開日: 2026/02/20
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    【目的】 急性期から生活期にかけたリハビリテーション職種のワーク・エンゲージメント(WE)とリーダーシップ(LS)の関連を明らかにし,管理や人材育成に活かす. 【方法】 PT, OT, STを対象にWebアンケートを匿名で実施.WEは(UWES-9),心理的安全性はEdmondsonの7項目,LS因子は高島らの22項目を5段階調査し,因子分析と急性期,回復期,生活期の3群の比較を行った. 【結果】 WEと心理的安全性には正の相関があり,年齢や勤続年数,職種による差は認められなかったが,上司からの信頼感がWEや心理的安全性向上に寄与することが示唆された.LSの因子分析では,人間関係を重視するPM型,部下の成長を支援するサーバント型,ビジョンを共有するトランスフォーメーショナル型,チームでリーダーシップを共有するシェアード型が抽出された. 【結論】 WE向上には,単なる指示ではなく,信頼を伝え,心理的安全性を確保し,役職にとらわれない協力的な組織づくりが重要であると考えられる.

  • 森 義貴, 田中 康則, 中島 裕太, 来海 勝広, 三尾 和弘, 寺口 拓真, 竹内 睦雄, 三宮 克彦, 松本 美幸, 木原 薫
    2025 年2 巻 p. 25-
    発行日: 2025年
    公開日: 2026/02/20
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    【目的】 回復期リハビリテーション病棟(以下,回復期リハ病棟)適応患者を対象に,客観的指標を用いて作成・標準化した当院独自の歩行自立基準が,活動性と安全性に及ぼす影響を導入前後で比較検証すること. 【方法】 2020年度に導入した歩行自立基準について,導入前の2019年度と導入後の2021年度に入棟した患者467名を対象とした.全患者および疾患別に,歩行自立者割合,歩行自立者における転倒者割合,および歩行自立までの期間を比較検討した. 【結果】 導入前後で歩行自立者割合と歩行自立までの期間に有意差はなかったが,全患者の転倒者割合は有意に減少した.疾患別比較ではすべての項目で有意差は認められなかった. 【結論】 2020年に作成した当院独自の歩行自立基準は,回復期リハ病棟適応患者において,活動制限をすることなく転倒リスクを抑制し,安全性を向上させる可能性が示唆された.

  • 下田 翔大, 立石 貴樹, 藤井 廉, 千手 佑樹
    2025 年2 巻 p. 33-
    発行日: 2025年
    公開日: 2026/02/20
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     人工股関節置換術(THA)術後の大腿神経麻痺は下肢筋力低下を引き起こし,歩幅の非対称性といった歩行障害が生じることが報告されている.一方,歩行能力の低下には転倒恐怖感(Fear of falling;FoF)も関与していることが言われており,本症例においてもFoFを示唆する発言が聞かれ,歩行非対称を助長していると考えた.この歩行非対称を無意識的に改善する介入としてSplit Belt Treadmill(SBT)がある.そこで,FoFを伴うTHA術後の大腿神経麻痺によって生じた歩幅の非対称性に対してSBTを実施した.その結果,歩幅の非対称性,歩行速度,歩行距離,FoFの改善を認めた.本症例においては,SBT介入がFoFによる代償歩行の増悪を抑制しながら,歩行の非対称性を軽減し歩行能力が改善したことでFoFが軽減したと推察される.したがって,大腿神経麻痺による歩幅の非対称性とFoFを生じた症例に対するSBT介入は有効であることが示唆された.

  • 谷口 善昭, 北尾 昌平, 中村 英一
    2025 年2 巻 p. 41-
    発行日: 2025年
    公開日: 2026/02/20
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    【目的】 基本チェックリスト(KCL)で判定したフレイルおよび下位項目と身体機能との関連性を明らかにする. 【方法】 運動器機能評価事業に参加した582名を横断的に解析した.KCLからプレフレイル,フレイルを判定した.事業対象者の基準から,運動機能低下,低栄養,口腔機能低下,閉じこもり,認知機能低下,うつ病の可能性を判定した.身体機能は,握力,5m通常・最大歩行,Time up and go test(TUG),片脚立位時間を測定した. 【結果】 年齢と性別で調整した重回帰分析の結果,フレイルと運動機能低下は通常・最大歩行,TUG,片脚立位時間と関連した(p<0.001).口腔機能低下は片脚立位時間(p=0.049),閉じこもりは最大歩行(p=0.003)とTUG(p<0.001),うつの可能性はTUG(p=0.021)と関連した. 【結論】 KCLのフレイルや下位項目は身体機能と関連していることが示唆された.

  • 太田 こころ, 坂田 潤哉, 立石 貴樹, 藤井 廉, 千手 佑樹
    2025 年2 巻 p. 48-
    発行日: 2025年
    公開日: 2026/02/20
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    【はじめに】 高齢者に対するリハビリテーションは,適切なコミュニケーションを図りながら実施することが重要である.一方で全盲ろう者は環境の把握やコミュニケーションをとることが困難であり,個別性の高い介入が必要と予測される. 【症例紹介】 80歳代女性で既往に全盲ろうを有していた.自宅敷地内でのADL・IADLは自立していたが,疼痛増悪によりTHAを施行.身体機能・認知機能の低下を認めた. 【経過】 介入初期は訓練拒否があったが家族と連携し,コミュニケーション方法の確立,病棟ADLへの介入を行ったことで信頼関係を構築することができ,段階的な訓練が可能となった. 【考察】 症例の特性に合わせた訓練内容や退院支援により自宅退院に繋げることができた.本症例の経過から,コミュニケーションに障害を有する対象者への介入において,対象者毎のコミュニケーションや入院前の環境などの習慣を尊重した介入の重要性が示唆された.

  • 筒井 宏益
    2025 年2 巻 p. 57-
    発行日: 2025年
    公開日: 2026/02/20
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     この度,公益社団法人熊本県理学療法士協会学術誌『熊本県理学療法アドバンス』第2巻を発刊する運びとなりました.  今版は,多忙な日常の中で理学療法士が研究に取り組む意義を問う,長崎大学大学院・神津玲先生の特別寄稿から始まります.神津先生は,単に優れた研究者であるだけでなく,臨床現場に根ざした研究を追求される稀有な存在です.先生の真摯な姿勢は,「臨床家だからこそ研究を」というメッセージに集約されています.この寄稿は,日々の臨床に追われながらも「一歩を踏み出したい」と願う多くの理学療法士への力強いエールとなったことでしょう.先生は,研究活動を一部の専門家だけのものではなく,全ての臨床家が取り組むべき専門職としての責務と捉えられています.そして,毎日の真摯な臨床のなかで培われた観察眼や手技を,科学的なエビデンスとして定式化することで,理学療法士自身の仕事の価値を高め,プロフェッショナルとしての自信へと繋げる重要性を説かれています.これは,私たち自身の努力を「可視化」し,未来を築くための指針となります.  続く投稿論文は,その「一歩」が多岐にわたる分野で実践されていることを示しています.減災という社会的課題への参画,職員のワーク・エンゲージメントという組織運営の視点,回復期での具体的な歩行自立基準の作成,先進的なSplit-Belt Treadmill介入の経験.さらには,地域高齢者の身体機能の分析や,全盲ろうという極めて特殊な症例へのリハビリテーション報告まで,多岐にわたるテーマが収載されました.臨床の疑問から,組織,地域,そして社会貢献へと視点が広がる,理学療法士の「今」を映す一冊となったことを実感しております.  今回の発刊にあたり,日頃より本協会の活動にご理解を頂いている熊本県理学療法士協会会員の皆様,会長をはじめとする理事,監事の皆様,そして貴重な知見をご寄稿くださった執筆者の皆様,ご多忙のところ対応いただいた査読の先生方,編集作業にご尽力いただいた編集委員の皆様に,心より深く感謝申し上げます.  皆様の臨床実践,研究活動の一助となれば幸いです.

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