フォーラム現代社会学
Online ISSN : 2423-9518
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13 巻
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巻頭言
論文
  • 山本 めゆ
    2014 年 13 巻 p. 5-17
    発行日: 2014/05/31
    公開日: 2017/09/22
    ジャーナル フリー
    本研究では、黄禍論の広がりととともにアジア人への排斥が進んだ20世紀初頭、南アフリカに移入した日本人の地位とその変遷に注目する。当国の移民政策に対して日本側はいかなる交渉、適応、抵抗を見せ、それは人種の境界をいかに動揺させたのか。反アジア主義的な移民法をめぐる研究史のなかにこれらの関心を位置づけながら、人種主義研究の観点から検討することを目指す。南アフリカでは19世紀後半よりインド人、20世に入って華人労働者が導入されたことによりアジア人排斥の動きが広がり、1913年にアジア人移民の規制強化を目的とする移民規制法が制定された。日本人がアジア人として規制の対象となったことに強い危機感を抱いた日本政府や領事館は、南アフリカ当局に対し粘り強い交渉を続けた。その結果、1930年に両国間で合意が交わされ、いくらかの制約を含みながらも、日本人の商人、観光客、研究者が禁止移民から除外されることとなる。その背景には日本側が渡航者の身分を商人や駐在員に限定し労働移民を排除するという方針を提示したことや、前年からの大恐慌で南アフリカが羊毛の市場開拓を迫られていたという事情もあった。本稿は、当時の日本人移民の地位について、バレットとローディガー(1997)によって提示された「中間性」概念を重視しながら粗描し、南アフリカの人種政策に対する日本側の批判とその限界について再検討を加える。
  • 平本 毅
    2014 年 13 巻 p. 18-31
    発行日: 2014/05/31
    公開日: 2017/09/22
    ジャーナル フリー
    近年、サードセクターに属する市民団体への社会的な期待が高まるにつれ、NPOの数が増加している。NPO/非NPOの境界は曖昧だが、本稿ではこれを研究者にとっての定義上の問題と考えるのではなく、当事者にとっての実際的な問題として捉える。このことを考える際に、「志縁」組織として特徴づけられるNPOの、活動の現場における「志」をめぐる組織成員の相互交渉のあり方が注目されるが、これまでのNPO研究は組織活動の現場での、組織成員自身にとっての「志」のあり方を、少なくとも正面からは取り上げてこなかった。そのため本稿では小規模なNPO法人Yの事務局会議および理事会の録画データを使った会話分析から、組織成員が「志」として理解可能な事柄が相互行為の中で可視化され、それにより組織のNPOとしての性質が焦点化される「やり方」を記述する。調査の結果、次の事柄が明らかになった。1)「志」は、ランダムにあらわれるわけではない。2)「志」は、議論へのガバナンスの視点の導入を経由して可視化される。3)そのガバナンス上の意見を「正当化」するものとして「志」が使われる。4)意思決定上の具体的な意見に乗せられ、反論-再反論といった意見交換の中で示しあわれることによって、「志」は組織成員間で交渉される。これらの結果は、組織を特徴づけるものとしての「志」の性質にNPOの組織成員が志向していることを示す。
  • 元橋 利恵
    2014 年 13 巻 p. 32-44
    発行日: 2014/05/31
    公開日: 2017/09/22
    ジャーナル フリー
    本稿は、母子健康手帳の戦中から現在までの内容および形式の変化より、現代の母親規範はどのようなものなのかを検討する。1990年代以降の子育て政策において、「専業母」による密着的な育児が望ましいとされた近代的母親規範にかわって、父親の育児参加が推奨されてきた。そのようななか育児者はどのようなあり方が望ましいとされているのだろうか。従来の育児メディア研究は、行政文書や育児雑誌から1990年代以降に近代的母親規範が相対化されてきたことを指摘してきた。しかし、行政文書は育児者にとって身近ではなく、育児雑誌は読者に卑近である傾向がある。そこで、本稿では、すべての妊婦に配布され育児者に最も身近で公的なメディアである母子健康手帳をとりあげ、内容と形式の経年比較分析をおこなった。分析の結果次のことが明らかになった。母子健康手帳は、1990年代から2000年代を通じて、「母親」という呼称が中性化した「親」に代わり、一見育児を性中立的なものとして志向するようになっている。しかし、その一方では1970年代から現在に至るまで子ども中心的でより高い育児水準を求める内容に変化している。さらに1990年代には、手帳所有者に自らの内面を書き込ませるページの割合を増加させ、育児を内省させるという形式上の変化がみられた。分析を通して、現代の母親規範は当事者の選択や意志を強調し、母親に対して重い負荷をかけているのではないかという考察をおこなう。
  • 木下 衆
    2014 年 13 巻 p. 45-57
    発行日: 2014/05/31
    公開日: 2017/09/22
    ジャーナル フリー
    「認知症」という医学的なラベルが付与されることで、患者の周囲の人びとはどう振る舞うようになり、また患者本人の行為はどう意味づけられるのか?現在の日本は「新しい認知症ケア」時代にある。「新しい認知症ケア」とは、患者とのコミュニケーションを重視する介護観を指す。この介護観のもと、介護者達は患者への「道徳的配慮」を常に行い、何らかの反応を期待して「はたらきかけ」をすることになると、指摘されていた(井口2007)。そこで本稿は、「認知症」を患うLと、その家族とのやり取りを集中的に分析する。Lの家族は、患者への「はたらきかけ」を強く志向している点で、「新しい認知症ケア」時代において特徴的な事例だと考えられるからだ。本稿では、Lに対する家族の「はたらきかけ」に、ある種の基準が存在することを指摘する。家族は、彼女が認知症を発症する以前の生活の様子を基準に、「はたらきかけ」をする。この基準を、老年精神科医の小澤勲(2003)に準え、「人生」と呼ぼう。しかし認知症の特徴である「記憶障害」「病態失認」ゆえに、患者本人に「人生」を尋ねることは難しい。そのために、「介護者が自分たちの知識を総動員しなければならない」という事態が生じる。相手がどんな過去を背負い、何を好み、何を望んでいるか、そういった患者の「人生」は、人びとの「あいだ」(西阪1997)でなされる相互行為(はたらきかけ)の中で発見され、再構築されている。
  • 入江 由規
    2014 年 13 巻 p. 58-70
    発行日: 2014/05/31
    公開日: 2017/09/22
    ジャーナル フリー
    本稿の目的は、なぜ、アニメやゲーム、コミックの舞台を訪れる「聖地巡礼者」が、これまで「変わり者」と見なされることの多かった、アニメやゲーム、コミックを愛好するオタクであるにもかかわらず、それらに必ずしも関心のある訳ではない、作品の舞台となった町の住民や商店主らにとっての「ゲスト」へと変貌を遂げたかを分析することにある。オタクの対人関係は、これまで、趣味や価値観を共有する人とだけ交流する、閉鎖的な人間関係を築くものと捉えられることが多かった。だが、聖地巡礼者は、アニメやゲーム、コミックを愛好するオタクであるにもかかわらず、作品の舞台となった町に住む住民や商店主と交流を図り、時に作品を活かした町おこしを模索する企業人や研究者とも、共同でイベントを開催する関係を築いている。このことは、これまでのオタク研究では捨象されてきた、オタクの新たなコミュニケーションの実態を表していた。上記の目的に基づき、本稿では、アニメ作品の舞台を旅する「アニメ聖地巡礼者」に聞き取り調査を行った。その結果、彼らは、住民への挨拶といった礼儀を大切にし、商店主や企業人、研究者からの依頼を、物質的な見返りを求めることなく、自分たちが好きな作品で町おこしが行われるからという理由で最後までやり遂げることで、住民や商店主、企業人や研究者から信頼を得て、「ゲスト」へと変貌を遂げたことが分かった。
特集Ⅰ グローバルな視点から日本社会のこれからを問う
  • 落合 恵美子, 神原 文子
    2014 年 13 巻 p. 71-74
    発行日: 2014/05/31
    公開日: 2017/09/22
    ジャーナル フリー
  • 高橋 美恵子
    2014 年 13 巻 p. 75-84
    発行日: 2014/05/31
    公開日: 2017/09/22
    ジャーナル フリー
    人々の健康と豊かな生活の実現を目指す上で、ワーク・ファミリー・バランス(WFB)は重要な政治課題といえる。我が国では男女双方のWFBの重要性を唱える一方で、性別役割分業を前提とするジェンダー規範は根強く残り、社会全体のジェンダー構造にも大きな変化はみられない。長時間労働や働き方の硬直性に特徴づけられる日本の就労環境でのWFBをめぐる男女間の不均衡は、ヨーロッパの先進諸国に比較すると突出している。本稿では、子育て世代の男女のWFBに主眼を置き、EU諸国を比較対象として、マクロデータとミクロデータを用いて、ジェンダーの視点からWFBをめぐる議論の動向と実践を考察した上で、日本の問題点を抽出し、今後の政策議論の方向性について検討した。本稿で提示した日本の問題点は、相互に関連する複数のギャップ-(1)男女間のギャップ、(2)WFB推進施策・制度と実践のギャップ、(3)理想と現実のギャップ-の存在である。スウェーデンを皮切りに、オランダやドイツ等のEU先進国では、共働きモデルへと転換を図った上で、男性のケア役割についての議論を行っている。日本でも、まずWFBにおける(1)のギャップを取り除いていくという視座に立つ実践的な取組みが求められる。時間的ゆとりをもって豊かに暮らせる生活の質を包括する概念としてWFBを捉え、EUで実践されているディーセント・ワークの観点から、働き甲斐のある人間らしい仕事についての共通認識を得ることも急務であろう。
  • 金 香男
    2014 年 13 巻 p. 85-92
    発行日: 2014/05/31
    公開日: 2017/09/22
    ジャーナル フリー
    1980年代の新自由主義の台頭以降、福祉国家・社会保障は主にその抑制の観点から論じられることが一つの傾向であった。日本においても、グローバル化や少子高齢化の急速な進展と低成長のなかで、福祉関連の支出の増加を抑制する新自由主義的な政策基調が強まった。一方、韓国は1997年の経済危機をきっかけに社会保障制度の急速な拡大を経験し、福祉国家体制を構築した。しかしながら、韓国は「圧縮された近代」と「後発福祉国家」という条件のもと、福祉国家を形成すると同時に福祉の抑制あるいは再編を行わなければならない状況におかれている。本稿で取り上げた三つの政権においても、福祉国家の「形成と再編の同時進行」を進めるなかで、古い社会的リスクへの対応と同時に新しい社会的リスクにも対応せざるをえないという、二重の圧力に迫られていた。福祉拡大を追求したものと見なされる進歩政権10年(金大中・盧武鉉政権)、それとは異なる経済成長を最優先に考えた保守の李明博政権においても、福祉拡大の必要性を受容せざるをえなかった。その結果、李明博政権では、進歩の両政権に比べて社会支出が拡大したのである。韓国では、いまや政権のイデオロギー的志向による一方的な政策推進は不可能になっているといえよう。
  • 安里 和晃
    原稿種別: 本文
    2014 年 13 巻 p. 93-101
    発行日: 2014/05/31
    公開日: 2017/09/22
    ジャーナル フリー
    経済成長を背景とした女性の労働力化と高齢化の進行に対応すべく、家事・介護・看護の外部化が多くのアジア諸国で進んでいる。シンガポール、香港、台湾だけで70万人を超える外国人家事労働者が存在し、韓国や東南アジアの受け入れ諸国でもその数を増大させている。日本はやや例外的で性役割分業を前提とした家族モデルが相対的に強く、家事労働などの外部化はそれほど進展しなかった。しかし、幾度か外国人家事労働者や介護労働者、看護師などの受け入れが議論されたことがある。本稿では外国人労働者政策を振り返ることで、介護保険、ポイント制、経済連携協定が議論された際、外国の人材受け入れに関してどのような対応がされたか検討した。日本では労働需給にもとづき外国人労働者を導入するといった補完的論理に基づく外国人労働者政策を取ることができず、研修や日系人、留学生といった形で事実上の受け入れを行ってきた。EPAにおいても看護・介護部門の人材不足は認められないという前提に立ち「候補者」という形で受け入れが行われ、わかりにくい運用となっている。外国人の労働者性に対する懸念は国民主権の論理、治安の悪化や社会保障費用の増大といった社会的コストなどがあげられるが、人口構成の変化に対する新たな社会システムの構築は喫緊の課題であり、労働市場に応じた受け入れというある意味わかりやすい社会政策と関連付けた外国人労働者政策が取れるかどうか検討されるべきであろう。
  • トゥーッカ トイボネン, 山本 耕平 訳
    2014 年 13 巻 p. 102-110
    発行日: 2014/05/31
    公開日: 2017/09/22
    ジャーナル フリー
    社会起業および社会イノベーションという概念は、この20年間で、新たな実践と研究の領域を切り開いてきた。しかし、社会起業家の社会イノベーションの事例などについては研究が蓄積されてきた一方で、起業家の恊働については十分な研究がなされていない。そこで本稿では、この側面をより体系的に探究するための、柔軟な枠組みを構築することを目指す。社会起業という領域における恊働は、いわゆる社会イノベーション・コミュニティー-恊働を可能にする物理的環境およびインターネット環境に加えて、社会起業の文化によって動かされる混合体-という文脈で展開されるようになっている。いまやこうしたコミュニティーは世界中で生まれているが、これはさらに、当初の恊働関係を超えてより広範な社会イノベーションの「回路をつなぎ換える」ような、恊働体(collaborative community)と見なせるだろう。社会イノベーション・コミュニティーは、多様な参与者を取り込み、学習と創造能力の向上を促進することで、創意にあふれ、かつ持続可能な経済への転換を触発するようになっている。こうしたコミュニティーや、それがもたらすイノベーションのプロセスおよび影響にかんするさらなる研究においては、社会ネットワーク分析、社会関係資本の理論、エスノグラフィーといった多様なアプローチが実り多い成果を生むと思われる。
特集Ⅱ 質的調査のアーカイブ化の問題と可能性
  • 桜井 厚
    2014 年 13 巻 p. 111-113
    発行日: 2014/05/31
    公開日: 2017/09/22
    ジャーナル フリー
  • 小林 多寿子
    2014 年 13 巻 p. 114-124
    発行日: 2014/05/31
    公開日: 2017/09/22
    ジャーナル フリー
    質的調査データは、近年のデジタル技術発展による記録媒体の急速な変化や個人情報への配慮の高まりのもとでそのあつかい方が問われ、個人的記録と歴史的価値の問題、調査データの検証可能性や二次利用、二次分析を含む第三者のアクセスの問題、社会調査データそのもののリサーチ・ヘリテージ(調査遺産)としての価値やデータの管理保存の問題等に直面している。この現状をふまえて、質的調査データの管理・保存・公開の可能性を考え、質的調査法をより信頼性の高い社会学的研究法へ成長させていく方途を探るために、「質的調査データの管理・保存に関するアンケート」調査を2012年2月に実施した。この調査結果を社会学領域の回答者に照準して紹介し、質的調査データをめぐる現状とアーカイヴ化の可能性を考える。質的調査ではインタビューが中心的な手法であり、多様なパーソナル・ドキュメントが質的データとして併用されている実態や調査対象者への二段階の許諾プロセスという倫理観の変化があきらかになった。さらに公共財としての調査データという認識の必要性が指摘され、質的調査データの公共性の認識のもとに、データの学術的意義や社会的意味、歴史的価値を明らかにして調査データを保存管理するアーカイヴ・ルールの確立とアーカイヴ・システムの設立が求められている。
  • 森本 一彦
    2014 年 13 巻 p. 125-132
    発行日: 2014/05/31
    公開日: 2017/09/22
    ジャーナル フリー
    質的調査によって収集されたデータの公開・共有の問題について、京都大学社会学研究室において保管されている村落調査報告書のデータベース化を事例として検討する。社会学研究室には1947年〜1971年にわたる449冊の村落調査報告書が保管されている。それらは地域調査の基礎資料や社会調査史の研究資料として重要であると考えられたために、データベース化を実施した。しかし、データベース化や最終的公開の方法についてどのようにするべきかなどの検討課題が多く生じた。公開については、著作権や肖像権の問題があり、利用規定やデータベースのシステムにおける制限をどのようにするかという問題が生じた。これらの問題への対処を紹介することを通して、大学研究室で保管されている資料をどのように公開すべきなのかを検討する。
  • 石田 佐恵子
    2014 年 13 巻 p. 133-143
    発行日: 2014/05/31
    公開日: 2017/09/22
    ジャーナル フリー
    近年、映像アーカイブズを利用した社会調査への関心が高まっている。本論では、まず、国内外にある既存の映像アーカイブズを紹介する。次に、シンポジウムのテーマに即して、使う/作る/共有する、という3つの側面から、映像アーカイブズを利用した質的研究における課題と可能性を考えてみたい。映像アーカイブを「使う」という側面からは、方法的利点と課題を整理する。利点には、新たな資料・研究視点の開発、方法論の精緻化があり、課題には、方法論の未成熟、資料の文脈や「全体性」についての錯誤を招きやすい点があげられる。映像アーカイブを「作る」という側面からも、その利点と諸課題を議論する。研究者がアーカイブ構築を経験することは、研究実践に大いに利するものである。また、アーカイブの実用性からも、研究に適した設計が期待できる。アーカイブの設計には、映像データと資料価値、分析方法を含む認識枠組みが関わり、研究を方向付ける影響力がある。映像アーカイブを「共有」するという課題は、法改正を含めて社会全体で考えていかなければ解決しない難題である。研究者ネットワークや学会が出来ることは、より公正な研究利用のあり方を模索していくことであろう。最後に、映像アーカイブズと質的研究の展開可能性について、研究論文の質や質的研究の定義とも関連づけ、映像アーカイブズ独自の方法論の必要性を述べる。
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編集後記
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