教育学研究
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73 巻, 4 号
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緊急特集 「格差社会」の教育と課題
  • [記載なし]
    原稿種別: 本文
    2006 年 73 巻 4 号 p. 323-
    発行日: 2006/12/29
    公開日: 2018/12/26
    ジャーナル フリー
  • 文化資本蓄積による教育改革の展望を中心として
    池上 惇
    原稿種別: 本文
    2006 年 73 巻 4 号 p. 324-335
    発行日: 2006/12/29
    公開日: 2018/12/26
    ジャーナル フリー
    現代社会における経済格差は、学校教育内部にも反映して生徒や学生の孤立化・生存競争を招き、教育における基礎的な潜在能力・コミュニケーション能力の開発は喫緊の課題となった。本論文は、2000年代初頭における京都の私立大学文化政策学部を事例として、文化資本の概念を再検討し、学生一人一人の文化資本形成の推進、都市・地域の文化資本蓄積、人々に開かれた生涯教育システムこそ、この課題に応えうることを実証している。
  • 日本版エフェクティブ・スクールを求めて
    志水 宏吉
    原稿種別: 本文
    2006 年 73 巻 4 号 p. 336-349
    発行日: 2006/12/29
    公開日: 2018/12/26
    ジャーナル フリー
    We reported the major findings of our research based on our own academic achievement tests towards elementary school and junior high school pupils in 2002. We then pointed out the fact that the differences of achievement between social groups have been expanded. Nowadays, that issue is seen to be one of the most serious educational problems in contemporary Japan.

    Although the differences of various educational outcomes such as academic achievements or educational aspirations between social groups are always emphasized, it is surprising that they seldom discuss about the ways in which those differences could be made smaller. I myself have been exploring the issue in these several years. In this paper, I will describe the progress and the future directions of our academic exploration on this particular educational issue.

    In section 2, I will give some consideration on the basic concepts such as 'gakuryoku' (academic achievement) and 'gakuryoku kakusa' (collective difference of academic achievement) and locate the existence of the schools that are actually reducing the differences in the context of the theory of effective school. That theory or research trend has been developed in the U.S.A. and the U.K. in these three decades. The concept of effective school is related to a kind of school that can reduce the differences of academic achievement between social groups such as social classes or ethnic groups.

    In section 3, the findings of our collaborative research carried our in 2002 will be shown and the actual contents of effective schools found out in the research will be discussed. In those schools (one elementary school and one junior high school), the averages of achievement of the children are pretty high and the ratios of low-achievers remain fairly small. The overall efforts of the school towards guaranteeing the minimum level of achievement for all the children seems to bear fruit sufficiently.

    In section 4, I will tough the contents of our on-going research project carried out in Osaka. The aim of the project is to find our various kinds of effective school in Japan and to draw common characteristics of those schools. We provisionally present seven factors that can contribute to make a Japanese school effective: not to make the children rough, to develop the good relationship among the children, school management emphasizing teamwork among members of staff, positive and practice-oriented school culture, collaboration with parents and local community, internal system guaranteeing the minimum level of achievement, existence of leaders and leadership.

    In section 5, I will consider several issues I order to prospect future development of research on school effectiveness in Japan. The following is the issues I will pick up: development of appropriate achievement tests, development of appropriate indication of family backgrounds, planning of longitudinal research on school effectiveness, necessity for research on the process of school improvement.
  • 小学校の学力テスト分析から
    川口 俊明
    原稿種別: 本文
    2006 年 73 巻 4 号 p. 350-362
    発行日: 2006/12/29
    公開日: 2018/12/26
    ジャーナル フリー
    本稿の第一の目的は、わが国の「学力の格差」問題について、学力データを用いてその現状を分析することである。その上で、「学力の格差」を縮小するために、学校に何ができるのかということについて議論する。その際に、欧米の学校効果研究の中で、注目を集めている「効果のある学校」という考え方に着目する。「効果のある学校」とは、「社会的・経済的に不利な立場におかれやすい層の子どもたちの学力を保障している学校」のことである。
    本稿の分析からは、「学力の格差」は、たんに上の層と下の層のあいだに差があるというだけではなく、下の層の学力がとくに落ち込んでいる現象であるということが言える。しかし同時に、下の子どもたちの学力を保障している学校=「効果のある学校」の存在も確認された。そして、「効果のある学校」には、「学習への専心」「クラスの雰囲気」といった要素が特徴的であることを指摘した。
  • アメリカ学生経済支援政策の構造と課題
    犬塚 典子
    原稿種別: 本文
    2006 年 73 巻 4 号 p. 363-375
    発行日: 2006/12/29
    公開日: 2018/12/26
    ジャーナル フリー
    本稿の目的は、日本の政策課題である学生支援と関連施策の充実・体系化のために、大学進学へのアクセスと経済格差問題に焦点をあてて、アメリカの政策動向を考察し、基礎的知見を得ることにある。アメリカにおける学生経済支援政策は、(a)狭義の「学生経済支援政策」(奨学金政策)、(b)税・金融政策、(c)授業料・学費政策の3つの系の公共政策の連関としてとらえられる。狭義の学生経済支援政策は、教育の機会均等をめぎして拡充されたが、授業料の高騰に追いつかず、低所得層の生徒は依然として大学進学へのアクセスを阻害されている。低所得層の大学へのアクセスを保障するためには、「早期介入プログラム」や、低所得層向けの「教育費貯蓄プラン」の開発が望まれる。そして、大学へのユニバーサル・アクセスの実現のためには、学生経済支援政策の振興とともに、大学の授業料それ自体の「定価」を安価に保つ制度設計が必要である。
  • チャータースクールの現実的な可能性
    高野 良一
    原稿種別: 本文
    2006 年 73 巻 4 号 p. 376-390
    発行日: 2006/12/29
    公開日: 2018/12/26
    ジャーナル フリー
    チャータースクールは、貧困や階層の再生産に歯止めをかけるアファーマティブ・アクションの実験学校になりうる。この新しいタイプの公立学校は、教育の市場化や保守主義的な身内優先主義(tribalism)を実現する学校であると批判される。しかし、個人商店型に分類されるチャータースクールのなかには、学業達成の向上をはかり、社会正義の担い手を育ててきた「効果のある学校」も実在する。そこでは学校設置権や事実上のアカウンタビリティー定義権という新しい権利を胚胎させている。これは構築主義的な新たなアファーマティブ・アクションの実践に他ならない。本稿は、こうした実践の分析ツールを彫琢するために、新旧アファーマティブ・アクション規範論の再構成を試みている。ナンシー・フレイザーの正義論やサミュエル・ボールズとハーバート・ギンタスの平等論が、再分配と承認を接合させる構築主義的規範理論の源泉となることを見出すことになった。
  • 「質の高い教育」の平等な保障をどう構想するか?
    平塚 眞樹
    原稿種別: 本文
    2006 年 73 巻 4 号 p. 391-402
    発行日: 2006/12/29
    公開日: 2018/12/26
    ジャーナル フリー
    OECDは、「対日経済審査報告書2006年版」で日本における格差と貧困の広がりを問題化したが、本稿はそこで要請された「質の高い教育への十分なアクセス」の保障とはなにを意味するのかを問うた。その際本稿では、移行期のシステムが分解する過程で台頭しつつあるポスト近代型能力観、その一つであるOECDによるキー・コンピテンシーと、社会関係資本との関連に着目した。複雑な行為のシステムとしてのコンピテンスの学習過程では、これまで以上に社会関係資本との関連性が強まり、その多寡が学習上の有利・不利に結びつくと考えられる。ところが少なくとも英国の調査研究によれば、近年の社会変容は一方でむしろ社会関係資本をめぐる格差を拡大しつつあるという。このジレンマに取り組むことが今日的課題と考えられる。マクロな政策レベル、教育現場・地域レベルでの政策的・実践的アプローチを通して、多様な社会関係資本の平等な形成を社会的に保障することが必要になるだろう。
  • 教育の社会化機能にみる「格差」是正の可能性
    山田 哲也
    原稿種別: 本文
    2006 年 73 巻 4 号 p. 403-419
    発行日: 2006/12/29
    公開日: 2018/12/26
    ジャーナル フリー
    学校教育の社会化機能が格差是正に資する可能性を検討するために、本論文では、質問紙調査データを用いて互恵的関係の規定要因を分析した。家族的背景に関わらず、学校生活に適応し良好な友人関係を有する者、学校知識に意義を感じる者ほど共感・互助志向が高く、格差増大に歯止めをかける意識・態度がみられた。他方で、学年段階が上がるほど、「勉強が得意」と考える者ほど共感・互助志向が低く、共感・互助志向と密接に関連する努力主義には、格差化を追認する側面が認められた。分析結果は、学校教育による格差是正の試みが楽観論と悲観論のいずれにも展開する可能性を示唆している。悲観的なシナリオを避けるためには、子ども・若者が所属する場を学校以外にも用意すること、学校知識の意味づけを能力の共同性を強調するものに組み替えることが肝要である。これらを踏まえ互恵的な関係を学校教育で育成することは、格差の拡大を抑止する手助けとなるだろう。
  • 格差問題への新たな視点の検討として
    馬上 美知
    原稿種別: 本文
    2006 年 73 巻 4 号 p. 420-430
    発行日: 2006/12/29
    公開日: 2018/12/26
    ジャーナル フリー
    本稿ではロールズ的な分配論とは異なる視点から格差問題にアプローチしているM.C.ヌスバウムのケイパビリティ・アプローチに着目する。そして「ケイパビリティ」概念を明らかにすることを通してこのアプローチを検討した結果、その可能性と課題が見出された。
    人間らしい機能への条件が整っている状態としての「ケイパビリティ」は、どのような「財」がどの程度必要とされているのかを明らかにすることができる。その際教育は機能を充足させることで「内的ケイパビリティ」を発達させ、かつ自己教育をすることによって当人をエンパワーメントし、「善き生」を保障する上で重要なものであった。
    ケイパビリティ・アプローチはロールズ的な分配論以上に実質的な「機会の平等」を保障しえる。しかしどの程度「ケイパビリティ」を保障するのか、その決定方法や子どもの時分に満たされるべき「機能」についてさらなる検討が必要とされる。
特集 青年の進路選択と教育学の課題
  • [記載なし]
    原稿種別: 本文
    2006 年 73 巻 4 号 p. 431-
    発行日: 2006/12/29
    公開日: 2018/12/26
    ジャーナル フリー
  • ポストフォーディズムにおける若者の進路と支援実践の展望
    横井 敏郎
    原稿種別: 本文
    2006 年 73 巻 4 号 p. 432-443
    発行日: 2006/12/29
    公開日: 2018/12/26
    ジャーナル フリー
    安定的な雇用が得られにくいこの時代において、若者はいかに自らの進路を見出すことができるのか、また彼らを支援できる政策や実践とはいかなるものなのか。近年の日本の若者自立支援政策は、若者と企業のマッチングを主に若者側のキャリア意識の育成によって改善しようとする労働市場政策を中心としたものにとどまっており、福祉の給付と就労を結合させたワークフェア政策として把握できる。この政策を超えて、若者の進路と支援実践に求められる視点と方向を見出すために、2つのNPOの若者支援活動を分析し、また完全参加社会やベーシック・インカムなどの新しい社会構想を検討した。これらを通じて、就労と自立、有給雇用と社会有用活動の区別、労働の権利の保障、新しい雇用と活動の創出、共同的な社会参加の道を若者たちに開いていく普遍的なシティズンシップといった視点と方向を提起した。
  • 東北大学「自分ゼミ」の授業を通して
    八木 美保子, 水原 克敏
    原稿種別: 本文
    2006 年 73 巻 4 号 p. 444-456
    発行日: 2006/12/29
    公開日: 2018/12/26
    ジャーナル フリー
    ニートやフリーターの増加といった若年就業問題が国家的課題とされ、学校教育にキャリア教育を求める声は強い。これは大学も例外ではなく、多くの大学でキャリア教育が導入されている。しかし、政策が一人歩きしている感は否めず、実態はこれまでの就職支援の強化に留まっている場合が多い。加えて、大学では多くの学生がカルト教団へ引き込まれたり、不本意入学による自己否定感を払拭できずにいたりなどの自己形成に関わる問題を抱えている。これに対処するためには、大学は新たな教育機能を整備することが求められているのである。「自分ゼミ」の実践を通して明らかになったのは自己形成に苦闘する学生の姿であった。ある学生達は自己肯定感が乏しく自己と対略することから逃避しがちであり、またある学生達は、内省及び他者との価値観の交流によって自己認識を深めようとするのである。そこで、筆者らは、「自分ゼミ」のような自己形成を基盤とするキャリア教育カリキュラムを、大学入学から卒業まで学生の発達段階に応じて設定するよう提案する。
  • 日本の学校と職場における困難さのいくつか
    清水 睦美
    原稿種別: 本文
    2006 年 73 巻 4 号 p. 457-469
    発行日: 2006/12/29
    公開日: 2018/12/26
    ジャーナル フリー
    本稿では、筆者が1997年以降継続している神奈川県内のある公営団地に住むニューカマーの子どもを対象としたフィールドワークをもとに、ニューカマーの青年期の問題のうち、次の2点について問題提起を行う。第1に、学校から就労へという日本人には自明視されるキャリアトラックからの外国人の排除である。それは、外国人が制度的に日本の学校教育にアクセスしにくいことと、就学後の学校における外国人児童生徒の周辺化によって、外国人のフリーターや無業者は必然として生み出されていくことを明らかにする。第2に、学校から就労へのキャリアトラックからの排除から逃れた場合に直面する問題として、就職した職場に浸透している「固定化された外国人像」による問題と、大学進学の場合、「国際」といった名のもとで、外国人であることが、かれらの必要を越えて注目される「『外国人』というラベルの消費」の問題を明らかにする。
  • 差異化と抵抗の観点から
    新谷 周平
    原稿種別: 本文
    2006 年 73 巻 4 号 p. 470-481
    発行日: 2006/12/29
    公開日: 2018/12/26
    ジャーナル フリー
    本稿の目的は、フリーター・ニートの批判言説および選択の意味解釈を通じて、教育学研究、政策・実践の課題を明らかにすることにある。ニート批判は、社会の不安を抑え込む差異化欲求の表れと解釈することができるが、それを根底から変革するよりは、政策・実践へと転換されるプロセスに影響を与えることの方が現実的でありまた必要である。ニート選択は、確かに客観的には構造要因の影響が大きいが、消費文化への接触や労働の拒否を通じた社会への抵抗という実存レベルの解釈が可能であり、その先に道具的・経済的利益に接続する方策が求められる。キャリア教育政策や機会平等論から導かれる政策は、計画性や上昇移動を基準とする単一の生き方・働き方のモデルを設定するが、それは過剰な同化とあきらめを介した格差拡大を生じさせる可能性が高い。それとは異なる生き方・働き方のモデルを設定し、そのために必要なスキル・認識枠組みを政策・実践に取り入れる必要がある。
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