教育学研究
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82 巻, 4 号
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特集:教育の公共性
  • 田中 毎実
    2015 年 82 巻 4 号 p. 520-530
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/05/18
    ジャーナル フリー
     「私」と「公」は、対立するのか、それとも調和するのか。このような議論は、「私」を滅却する「共同体」に対して「私」を活かす「公共性」を対置するたぐいの常套的な議論と同様に、「私」と「公」とをくっきりと分け隔てる。したがってそれは、「私」と「公」とを、ダイナミックな生成連関においてとらえることができない(注1)。たとえば、異世代間の相互生成を通して、「私」たちはともに生成し、自立するものの共同としての「公共性」を編むことになる。つまり異世代間相互生成としての「教育」によって、先行世代と後続世代の非対称性は、自立するものの対称性へと変容し、公共性が生成するのである。「公共性」は、特定の「状態」ではなく、教育関係や世代継承的関係において不断に生成する「運動」である。教育的公共性、世代継承的公共性は、生成の運動であり、つねに変容しつづける公共性のそのつどの表現である。公共性、教育的公共性、世代継承的公共性は、一連の生成運動に帰属する。公共性は、「教育」の観点からみる場合に、「生成する公共性」としてその—理論を構成し実践に向き合う力としての—ポテンシャルを最大限に発揮できる。
  • 髙橋 哲
    2015 年 82 巻 4 号 p. 531-542
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/05/18
    ジャーナル フリー
     本稿の目的は、現代教育政策を「教育政策の私事化」という視点から分析し、教育の公共性をめぐる国家論、および制度論の課題を、教育における福祉国家論の文脈より析出することにある。そこでは、現行の教育再生実行政策を、政策立案機関、教育目的、教育制度の「私事化」という観点から検証する。また、戦後日本の福祉国家論との対比から見出される「新しい福祉国家構想」をもとに、教育の公共性形成に求められる国家関与の在り方を追究する。
  • 生澤 繁樹
    2015 年 82 巻 4 号 p. 543-557
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/05/18
    ジャーナル フリー
     政治や教育における「代表」や「表象」という意味での “representation” の機能と作用について考察する。とくにこれまでのカリキュラムの公共性をめぐるポリティクスを中心的に取り上げながら、この問題を考えることが現代社会における代表制デモクラシーのあり方にとどまらず、参加政治の意味それ自体を根本的に問いなおし、そこに暗に設定されたコンピテンシーという教育上の問題を再び浮き彫りにするということを試論的に示していく。
  • 志水 宏吉
    2015 年 82 巻 4 号 p. 558-570
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/05/18
    ジャーナル フリー
     本稿では、「教育の公共性」という問題を考える際の切り口として「学校選び」という現象を取り上げる。近年「ペアレントクラシー」という言葉が生みだされるほどに、「教育を選ぶ」人の存在が際立つようになっている。それと軌を一にするように、公教育内部の「差異化」を推し進める新自由主義が日本では主流となり、公教育の実質的な解体が進行しつつあるように思われる。特定の階層・集団のみを利することのなき、オープンかつコモンな公教育制度の再構築がのぞまれる。
  • 倉石 一郎
    2015 年 82 巻 4 号 p. 571-582
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/05/18
    ジャーナル フリー
     本稿は、生活・生存保障と教育の論理とのむすびつきを探るくわだてを教育福祉のチャレンジと捉え、教育福祉の系譜を戦後日本社会の流れのなかで追跡したものである。長期欠席問題に対処した1950年代の福祉教員の時代から、1980年代以降の「不登校」の時代に移るなかで、生活・生存保障と教育とがむすびつく条件は掘り崩され、教育福祉は拡散していった。少子高齢化のなかで迎えた教育の周縁化も、事態を一層困難なものに陥れかねない。この生活・生存保障と教育のむすびつきの危機を、教育における公共性の危機として捉える視点を提起した。
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