本論文は、ドイツの教授学者ヴォルフガング・クラフキが「鍵的問題」批判に対して試みた応答に着目することで、鍵的問題を取り扱う授業(問題授業)が「問題解決授業」の対極にあったことを明らかにした。検証の結果、問題授業の重点が「問題解決」ではなく「問題設定」にあったこと、大人の恣意的な問題設定を彼なりのロジックで正当化していたことなどが明らかとなった。そのうえで、問題−解決の連関を相対化する必要性を指摘した。
中学校教師を対象にした質問紙調査データから、教師としての自己像がいじめ被害者有責意識に与える影響を分析した。その結果、「ノリと親近感」という教師としての自己像を持つ教師は、いじめ被害者有責意識を抱きやすく、「専門性と誠実さ」という教師としての自己像を持つ教師は、いじめ被害者有責意識を抱きづらいこと、そして、その効果は教師の年齢や生徒からのいじめ被害経験によって変化することを明らかにした。
公立学校制度外に位置していたフリースクールの理念や実践が制度内に取り込まれ、オルタナティブ・スクールが成立した1970年代の米国では、既存の学校とオルタナティブ・スクールの共存により公立学校の多様性を拡張させるための教師養成プログラムが展開された。オルタナティブ・スクールの教師の養成にとどまらず、教職に異質性を持ち込み、大学や学区、既存の教師を含めた、関係者間の協働と相互変容のための共通の基盤の構築を担った。
教職員のエンパワメントの具体化は、複雑化する教育の諸課題に対応するうえで重要な課題である。ただし、その施策をめぐる議論は、エンパワメントとその実現のあり方を包括的に検討する枠組みを欠いている。本研究は、エーリッヒ・フロムの「持つこと(所有)」と「あること(存在)」のモードとジュディス・サックスの専門性アイデンティティの視点を統合した四象限モデルを、エンパワメント戦略をめぐる議論の曖昧さを可視化して整理する視座として提案する。その上で、現行の教師教育の議論が用いるエンパワメント戦略とその課題を的確に把握する分析の視点としての四象限モデルの有用性を検証して示す。
二つの調査を用いて現在の学校経由の就職が女子にとってどのような就職経路であるかを明らかにし、学校経由の就職の縮小が女子にもたらす結果について考察した。高校・企業間のリンケージを強弱の二種類で見た場合、女子は女性職を希望することで、男子よりも強いリンケージを利用しにくい状況にある。女子は、今後一層学校経由の就職に包摂されにくくなる恐れがある。高卒就職をめぐる議論には、ジェンダーの視点が必要である。
本稿では相対的剥奪の概念を分析枠組みとし、通常学級に在籍する周囲児が、校内教育支援センターで過ごす対象児をどのようにみなしているのかを明らかにした。周囲児は、「支援提供児―要支援児」という非対称的な関係のもとで対象児を捉え、理不尽な行為を受けても説明責任を免じていた。だが、対象児を「仲間」とみなすようになることで両者間の比較が可能となり、周囲児の立場によっては、特例措置を受ける対象児へと抱いた妬みに対処する手立てとして、通常授業に参加する自己の優位性を確認し、相対的剥奪感を和らげていた。
本稿は、1960〜70年代の肢体不自由養護学校の教師らによる、障害の重い子どもの就学と学級編成にかかわる議論と実践について、東京都立北養護学校の特別学級に焦点をあてて検討を行った。特別学級は、障害の重い子どもを受け入れる場として機能したが、校内での孤立や差別的認識という教育的課題を内包していた。特別学級を含めた学級編成をめぐって、教師らは議論し続け、新たに生じる課題に対して自主的に、創造的な実践を行った。
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