学校生活で経験されるいじめ被害の規定要因を分析した従来の研究は、代表性のあるデータを得るための大規模社会調査が主に小・中学生を対象としていたことから、高校の実態に関する実証的検討はほとんど行われてこなかった。そこで本研究では、匿名都道府県Xの全日制高校を対象とした悉皆調査を行い、高校生の被いじめ経験の全体像を描くとともに、マルチレベル分析を用いていじめ被害を規定する個人/学校レベルの要因を析出する。
本稿は、大学が地域社会との連携を通して行うコミュニティ・ベースド・ラーニング(CBL)において、教員に対する地域連携専門職の支援の実態を米国のポートランド州立大学の事例に基づいて検討した。その結果、教員の能力形成が促されるためには地域連携専門職が、教員の多様なニーズに対応した介入や働きかけを行うことが重要であること、また、プログラム開発、実践の展開、アセスメントの枠組みが CBL の取り組み全体の中で可視化されることにより、個々の教員への支援が有機的に機能することがわかった。
戦後の高校教育は共学制を導入したものの高度経済成長期の性別役割分業を背景に、内部でジェンダー化した領域が生まれた。そこから高校縮小期を経た2010年代までに、どのようなジェンダー秩序が新たに生じているのかを青森県の全日制高校を事例として計量的に分析する。さらに青森県の再編整備政策が「男性化された能力」の育成領域を優先しつつ「市場」の選択とも見えることで新たなジェンダー秩序を再標準化していることを示す。
本稿は、学校民主主義の観点からデンマークの生徒会を事例として、「形骸化された参加」の課題をどう乗り越えるのか、校長・教師・生徒のインタビューにより明らかにすることを目的とする。調査結果からは、生徒と校長・教師間の信頼関係、葛藤や意図せぬ帰結も含めた意思決定過程における相互作用、学校文化を醸成する校長や教師のシティズンシップ観が、生徒の影響力の在り方につながることが見いだされた。
多様性に応じる教師教育の重要性が高まる一方で、先行研究は個人や学校レベルに議論を焦点化し、国レベルの要因を十分に考慮してこなかった。本稿では、教師教育が各国の「再分配」と「承認」の度合いの中に埋め込まれていることを計量分析によって明らかにする。分析の結果、再分配については格差是正の度合いが小さい国ほど、承認については多文化主義政策が充実している国ほど、教師が多様性に応じる教師教育を経験していることが確認された。この知見は、教師教育と比較福祉国家論との接続可能性を示している。
本稿では、1954年春以前の校内言論空間に着目し「京都旭丘中学事件」を再考した。京都市教職員組合に属する教師たちの実践は、生徒を組合活動に組み込む政治性を備え、対立を忌避する無関心層を生み出していた。だが、生徒の中には多様な意見をたたかわせ合う言論空間を自覚的に維持しようとする活動も見られた。それは教師の「民主教育」の成果というより、行政と組合双方の圧力に抗して語り続けた生徒によりかろうじて具現化されたものだったが、保護者有志の「偏向教育」批判はこの空間を結果的に破壊していくものとなった。