現在の中国では、いじめ問題は日本と同様に学校現場で深刻な問題となっている。中国における教育の格差は、基本的に都市部と農村部の格差であり、沿海地区と内陸地区の格差でもある。今回は調査対象として中国における典型的な以下の三つの地域(天津市・延辺自治区・湖南省農村地域)の中学生約100名中学生を選ぶことにした。さらに、回想法により質問紙調査を実施した。本研究では中国における生徒と教師の関わりが多いほど、いじめにあった時に、教師への相談に影響するという以下の仮説を検証することを目的とした。本研究の仮説は以下の通りである。中国では都市化されていない地域が都市化されている地域より、教師との関わりが多く、いじめにあった時に、教師に相談する傾向がある。その結果、仮説は支持されてきたが、都市化されていない地域が都市化されている地域より、いじめにあった時に、生徒が教師との相談が多い傾向は見られた。本研究では、生徒と教師の関わりと教師のいじめ相談への影響が絶対的とはいえないが、生徒と教師の関わりがいじめ相談の解決手段の一つになりうることを示しているといえる。それに対して、日本でも同様のことがいえる。児童・生徒と教師との関わりは、いじめの早期発見と適切な対処にとって大事だと考えられる。
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