本研究の目的は反応性充血における血管壁を介する水移動transcapillary fluid movementについて検討することにある。ウレタン麻酔下のウサギ後肢筋を用い, 大腿動脈を閉鎖し, 大腿静脈から流出する血液をdrop counterに導きflowを測定し, 同時にサンプリングした血中のヘマトクリット(Hct), plasma protein(protein), plasma crystalloid osmolality (osmolality), Po_2, Pco_2, pHを測定した。反応性充血は3秒, 5秒の短時間の血流阻止(occlusion)でも惹起され, 90秒ぐらいから上限を示した。Hctは30秒のocclusionから変化を示し, 120秒ぐらいでpeakに近づいた。occlusion timeを5分とした場合のHctの経時変化は, occlusion 1分後で98.8±0.2% (n=17, p<0.001)に減少し, その後しだいに増加し5分後で102.0±0.4% (p<0.001)に達した。閉鎖解除(release)後105.4±0.4% (P<0.001)に増加し, 4∿5分で閉鎖前値に復帰した。proteinはHctと同様な傾向を示し, release後103.4±0.7%に増加した。osmolalityは大きな変化はなく101.8±0.4%に増加した。Po_2はocclusionによって62.0±4.0%に著明に減少した。これに対してPco_2は113.5±3.3%に増大した。以上のことから, occlusion開始後の初期のHctの減少については, 血管内圧の低下による組織水の流入がhemodilutionを起こすものと考え, occlusion中の経時的Hct増大については閉鎖大腿動脈以外の血流路からの流入血液が増えるに従って, 恐らくは低血管内圧下のhemorheological effectによると思われる。occlusion解除後のHctの増大についてはocclusion中のHctのクリアランス, 血管内圧上昇によるplasma fluidの組織への流出, 組織の浸透圧上昇によるfiltrationの増大などが相乗されているものと思われる。
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