我々はネフローゼ症候群の増悪期に, T, Tγ細胞の低下を認め, Tγ細胞に対する抗体を検出しえた一症例を経験したので, その詳細について報告する。症例は46歳の女性で, 昭和55年6月ネフローゼ症状を呈して当内科に入院。入院時尿蛋白は20∿40g/日, 血清総蛋白3.6g/日, 総コレステロール395mg/dl, CCr.68.51/日, 腎生検にて膜性増殖性腎炎(MPGN)I型の所見であった。プレドニソロン30mg/日で治療を開始したところ, 8週間後には尿蛋白は陰性化した。入院時末梢血リンパ球のT細胞は25%, Tγ細胞は1%以下と低下していたが, 尿蛋白陰性化時には, T細胞60%, Tγ細胞18%と上昇していた。Theophylline処理でTγ, T_<nonr>細胞に分け, これらの細胞に対する血清中の抗体をEA rosette形成阻止法で検出した。その結果, 増悪期には抗Tγ細胞抗体(⫲), 抗T_<nonr>細胞抗体(-)であったが, 軽快期には両抗体活性とも陰性であった。ネフローゼ期の, T, Tγ細胞の減少因子として, この抗体の関与が推測され, ネフローゼ症候群の成因解明に興味ある成績と思われた。
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