臨床上腹水貯留患者に遭遇する機会は少なくない。特に難治性腹水に対して従来は内科的治療が主流であったが,不応症例に対して,最近,外科的治療が関心を集めている。われわれは難治性腹水患者に対し,シリコン製の腹腔・大静脈シャントポンプを植え込み有効な結果を得たので報告する。症例は69歳,女性,6年前より肝硬変の診断を受けていた。最近,著明な腹水貯留を認め,内科的治療を行なったが,全く反応せず,難治性腹水と診断し,腹腔・大静脈シャントポンプ植え込み術を施行した。結果は,術前と比較し,体重は約10kg,腹囲は約15cm減少した。尿量は術前より2〜3倍に増量し,同時に消化器症状も消失した。この手術は対症的手段であるが,riskが低く,臨床的効果が大いに期待できる有用な治療である。今後,さらに臨床応用が拡大するものと確信する。
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