心房性ナトリウム利尿ペプチド(ANP)の肝組織血流量におよぼす影響について,正常ラットおよび四塩化炭素肝硬変ラットにANPを投与して,肝組織血流量,血圧の変化を検討した。正常ラットでは,肝組織血流量はANP10, 100および1000μg/kgのいずれの用量においても投与1分後,10分後および20分後の測定で有意な変動を認めなかった。また,平均血圧は10μg/kg,100μg/kgでは変動を認めず,1000μg/kgでは投与1分後に9mmHgの有意(p<0.05)の低下を認めた。肝硬変ラットでは,肝組織血流量はANP10μg/kgで変化せず,100μg/kgでは投与1分後に20%の有意(P<0.05)の増加を,1000μg/kgでは投与1分後には反対に17%の減少を認めた。平均血圧は10μg/kgで変化せず,100μg/kgでは投与1分後に12mmHg,1000μg/kgでは投与1分後に17mmHgと,それぞれ有意(P<0.05, P<0.05)の低下を認めた。ANPは肝硬変ラットの肝組織血流量に対し用量によって異なる反応を示したが,正常ラットでは有意な変化は見られなかった。血圧は正常ラットおよび肝硬変ラットともに用量依存性に低下したが,その程度は肝硬変ラットで,より大であった。以上より,ANPに対する反応性が肝硬変ラットでは正常ラットと異なることが明らかにされた。
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