杏林大学泌尿器科で1976年1月より1988年12月までの13年間に治療した膀胱移行上皮癌169例について臨床的検討を行なった。性別は男性124例,女性45例で,年齢は30〜89歳平均64.6歳であった。組織学的異型度はG0 2例,G1 48例,G2 83例,G3 35例,GX 1例で,組織学的深達度はpTis 1例,pTa 61例,pT_1 56例,pT_2 18例,pT_3 11例,pT_4 9例,pTx13例であった。異型度と深達度の間には相関関係が認められた。腫瘍数,大きさおよび形態と組織学的異型度,深達度の関係は,腫瘍数では単発にlow stageが有意に多く,多発にhigh stageが有意に多かった。腫瘍の大きさは腫瘍が大きくなるに従って異型度,深達度ともに有意に高くなった。腫瘍の形態では乳頭状および有茎性腫瘍にはlow grade,low stageが有意に多く,非乳頭状および広基性腫瘍にはhigh grade, high stageが有意に多かった。169例全体の5年実測生存率は63.6%で,1cm以下,乳頭状有茎性,低異型度,低深達度の腫瘍が予後良好であった。初回治療法別の5年実測生存率は,経尿道的腫瘍切除術(TUR)73.4%,膀胱全摘術45.8%であった。
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