高齢者肝硬変症の特徴を知る目的で,当科にて肝硬変症と診断された293例を対象に,低年齢層(49歳以下,40例),中年齢層(50〜69歳,166例),高年齢層(70歳以上,87例)の3群に分けて比較検討した。その結果,高年齢層では,性差で男女差が少なかった。成因では原因不明群が多く,その72.0%がhepatitis C virus (HCV)陽性であった。原因不明群におけるHCV陽性率は,中年齢層に比して低率であった。腹水,肝性脳症の頻度に差はなかった。肝機能検査では,血漿アルブミン,コリンエステラーゼが低値,ICG15分停滞率が高値であった。肝癌,食道・胃静脈瘤,消化性潰瘍,糖尿病,胆石症の合併が率であった。死因では肝癌死が低率であった。以上の結果より,高齢肝硬変症は,肝予備能が低く,合併症を伴い易いため,より厳重な管理が必要と考えらられた。
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