常染色体優性遺伝(成人型)多発性嚢胞腎(ADPKD : autosomal dominant polycystic kidney disease)は両側腎の多数の嚢胞形成を特徴とし,1000人に1人の割合で発症する遺伝病である。PKD遺伝子は2っあり,PKD1は第16番染色体短腕16p13.3に,PKD2は第4番染色体長腕4q13-q23に座位し,最近(1994) PKD1遺伝子の一部がクローンされたが,まだ直接DNA診断は行えない。そこで今回最も簡便で迅速な方法である口腔粘膜細胞からのDNAとマイクロサテライトマーカーを用い,PCRによって,PKDlのDNA間接診断を行った。DNA抽出は,両頬部の口腔粘膜を約200回擦過後プロテナーゼK,フェノール,クロロフォルム,エタノール処理により行った。その結果得られたDNAの量は1-20μgでPCRには十分であった。今回用いたマーカーSM7,16AC2.5,SM5B,MS7,KG8,SM6のうち,明らかに多型を示したマーカーはSM7,16AC2.5であった。2つのマーカーを用いてそれぞれに2名の患者のいる2つの家系の分析を行った。家系1においては父親のPKD1遺伝子は長男には受け継がれていない可能性があり,家系2においては祖父から父親を介して男児にPKD1遺伝子が受け継がれている可能性があった。今後この方法は発症前診断に用いることが期待できる。
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