本研究では,法医剖検例について,ストレス蛋白質であるHsp70,ユビキチン(Ubiquitin:Ub)の含量を測定し,その発現傾向と死因との関連を分析して法医診断を行う上で有用な指標となり得るかどうかを検討した。その結果, Hsp70の含量は,小児窒息群では小児病死群と比較して,心臓,肺,脾臓,胸腺では有意に高く,また心臓は小児窒息群の全臓器の中で最も高い値を示した。Ubについて小児窒息群と小児病死群間では全ての臓器で含量に有意差はなかった。心臓,肺,脾臓,胸腺におけるHsp70の発現量は乳幼児の窒息を診断する上での重要な指標の一つになると考えられた。窒息の確定診断を下すにあたりHsp70を定量することが,死亡時の状況,解剖所見,組織学的所見と共に重要な診断基準の一端を担うことが出来ることが明らかになった。
抄録全体を表示