杏林医学会雑誌
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34 巻, 1 号
March
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原著
  • —頭蓋内圧, 脳潅流圧, 脳酸素代謝と転帰との関係—
    奈良 一成
    原稿種別: その他
    専門分野: その他
    2003 年 34 巻 1 号 p. 5-10
    発行日: 2003年
    公開日: 2005/02/18
    ジャーナル フリー
    重症頭部外傷患者の頭蓋内圧 (ICP) 亢進と脳潅流圧 (CPP) 低下は, 転帰に影響する重要因子である。それらに対する神経集中治療法のうち低体温療法 (HT), バルビタール療法 (BT) の併用と高浸透圧療法 (OT) 単独との効果を比較するため, ICPとCPPに加え頸静脈血液温 (Tjb), 脳循環と酸素代謝の需給バランスを示す頚静脈洞酸素飽和度 (SjO2) と両側前額部の局所脳酸素飽和度 (rSO2) を連続モニタリングし, 転帰との関連からそれらの効果を比較・検討した。対象は入院時昏睡の重症頭部外傷患者23例 (10-62歳)。全例に過換気とOTを施行し, HTを9例, BTを6例に併用し, OT単独8例を対照とした。評価は, a) BT投与量による各パラメーターの比較。b) HTの程度による各パラメーターの比較。c) 受傷後72時間以内の各パラメーターの異常値 (ICP ≥ 20mmHg, CPP ≤ 60mmHg, 脳虚血を示すSjO2 < 55%とrSO2 < 60%, 脳充血を示すSjO2 > 75%とrSO2 > 80%) を呈した回数 (時間), d) 3ヶ月後の転帰, との関係を比較・検討した。
    結果 a) BTの投与量とICPの低下及びCPPの上昇が関連した (p < 0.05)。b) Tjbの低下に伴いICPの低下とCPPの上昇 (p < 0.05) がみられた。c) ICPはBT群で, CPPはHT群でそれぞれ異常値を示す頻度が高かった。SjO2と非損傷側rSO2には, 3群間に有意差を認めなかった。損傷側rSO2 < 60%はBT群で多く (p < 0.001), 損傷側rSO2 > 80%はHT群で多かった (p < 0.0001)。d) 転帰は, HT群で機能予後良好例が多かった (p < 0.0005)。
    結論 重症頭部外傷患者の低体温併用療法は, CPP低下や損傷側の局所酸素代謝の異常を示しても, バルビタール併用療法や高浸透圧単独療法より機能予後改善が期待できる。
  • 水間 広
    原稿種別: その他
    専門分野: その他
    2003 年 34 巻 1 号 p. 11-17
    発行日: 2003年
    公開日: 2005/02/18
    ジャーナル フリー
    本研究は, セロトニン (5-HT) 神経系発達障害の病因基礎研究の一環として, ラット新生仔期に選択的5-HT神経破壊を行い, 発達期におけるモノアミン量と自発性行動量の変化について検討を行った。3, 6日齢に5, 7-dihydroxytryptamine (5, 7-DHT) 25-200μgを側脳室内投与し, 8, 14, 28日齢に脳内セロトニン系物質の測定, 28日齢に円形オープンフィールドを用いた行動解析を行った。海馬, 線条体, 大脳皮質での5-HT濃度は5, 7-DHT投与により著明な低下を示したが, 脳幹部では発達に伴い増加傾向がみられた。一方, 自発性の行動量は用量依存性の低下が認められた。また, その行動低下はテトラヒドロビオプテリン (6R-BH4) 連続投与により回復した。以上の結果から, 新生仔期5-HT枯渇により, 終末部と起始部での発達に伴う変化が異なることが確認された。また, 5, 7-DHT誘発性の行動低下は6R-BH4投与により改善されることが明らかとなった。
  • 村上 千夏, 加藤 龍二, 鎌田 邦栄, 中村 幹雄
    原稿種別: その他
    専門分野: その他
    2003 年 34 巻 1 号 p. 18-23
    発行日: 2003年
    公開日: 2005/02/18
    ジャーナル フリー
    これまでに我々は, caffeineの自発運動亢進効果が中枢におけるdopamine遊離を促進することで発現していることを支持する報告をしてきた。そこで, 本研究はcaffeineの自発運動亢進効果と中枢におけるdopamine遊離との関係を詳細に検討するために, selective dopamine re-uptake inhibitorであるnomifensineの慢性投与の影響を検討した。本研究ではOpen-Field装置を用いて, ラットの自発運動量を評価した。ラットにcaffeineを腹腔内投与すると自発運動量の用量依存的な増加がみられ, nomifensineの慢性投与によりcaffeineの効果を増強することが観察された。また, selective adenosine A2 receptor antagonistである3,7-dimethyl-1-propargyl-xanthine (DMPX) でもcaffeineと同様の結果を得た。以上の結果から, caffeineの中枢におけるメカニズムにdopamine遊離が関与しており, さらにadenosine A2 receptorを介していることを明らかにした。
症例
  • 牛川 憲司, 板垣 英二, 曽野 聖浩, 関 博之, 小澤 幸彦, 山口 真哉, 丸山 雅弘, 滝澤 誠, 片平 宏, 吉元 勝彦, 住石 ...
    原稿種別: その他
    専門分野: その他
    2003 年 34 巻 1 号 p. 24-30
    発行日: 2003年
    公開日: 2005/02/18
    ジャーナル フリー
    症例は40歳女性。平成12年12月30日より38℃台の発熱を認め, 数日後には右前頚部に有痛性の腫瘤が出現した。近医で投薬を受けたが症状の改善がないため平成13年1月7日当科に入院。体温38.9℃, 右前頚部に3 × 3cmの圧痛を伴う腫瘤を触知した。白血球増多, CRP高値, 軽度の甲状腺機能亢進と, 血中サイログロブリンの著増を認め, 頚部CTでは甲状腺右葉に境界明瞭な低吸収域の腫瘤を認めた。腫瘤の穿刺では膿性の液体が採取され, 細菌培養は陰性であったが好中球を多数認めたことから急性化膿性甲状腺炎と診断した。抗生物質の投与で症状は消失し, 頚部腫瘤も縮小した。咽頭喉頭ファイバー, 咽頭食道造影のいずれでも下咽頭梨状窩瘻は確認されなかった。
    本症のほとんどは小児期に初発し, しかも罹患側は発生学的理由から圧倒的に左側に多いことが特徴であるが, 我々は中年期に初発し, かつ右側に発症した稀な一例を経験したので報告する。
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