杏林医学会雑誌
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38 巻 , 1 号
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総説
  • 下島 裕美, Thomas R. McCORMICK, 蒲生 忍
    2007 年 38 巻 1 号 p. 2-10
    発行日: 2007/03/30
    公開日: 2007/11/22
    ジャーナル フリー
    医療倫理の主な目的のひとつは,医療チーム内あるいは医療チームと患者の家族の間で倫理的ジレンマが生じた際,その臨床事例に関して協議する場を提供することである。そこで医療倫理という概念を理解するために,2006年3月,ワシントン大学のThomas R. McCormick博士によるセミナー「臨床場面における倫理教育:4ボックス法を用いて」が杏林大学で開催された。このセミナーの目的は次のようなものであった。(1)臨床場面における倫理的問題を含む事例研究に焦点を当て,(2)事例の研究と分析のために,共通の言葉と概念的枠組みを発展させる。(3)倫理的問題について議論し,自分の意見を伝え,他者の観点を聞くための実践セッションとしてこのセミナーを利用する。(4)ある事例やそれに含まれる親族関係についての我々の価値観,アイディア,感情を共有できるように開放的になる。(5)自分自身と自分の価値観をよりよく理解する。本セミナーでは,4ボックス法によりいくつかの臨床事例を分析し,議論を行った。4ボックス法は4つのトピック(医学的適用,患者の意向,QOL,周囲の状況)から構成されており,体系的な倫理的意思決定における有益なツールである。古典的事例であるBaby Doeの事例からは,障害をもった乳児に対する医学的治療の差し控えに関する判断は,周囲の状況(社会福祉システム,法的枠組み,あるいは乳児の家族の価値観)によって異なることが示された。87歳の慢性閉塞性肺疾患の男性の事例は,日本のみならず米国においてもありふれた事例だと思われるが,この事例では自律性とQOLの問題が示され,米国において生命に関する自律的意思決定がどのようになされるのかが示された。17歳の末期腎疾患のエホバの証人の事例は,患者の決断と家族の決断の間の葛藤に関わる問題であった。法的介入により17歳の未成年の決断を尊重することは可能であるが,それは家族にとって最良の選択とはいえないかもしれない。この事例から我々は,決断に至る過程が結果と同様に重要なものであることを見出すことができた。4ボックス法を用いてこれらの事例を分析することにより,倫理的ジレンマに直面した際,医療の専門家が体系的に倫理的意思決定に至る道筋が明らかになった。
原著
  • 横山 琢磨, 西 圭史, 岡崎 充宏, 和田 裕雄, 石井 晴之, 武田 英紀, 渡邉 秀裕, 青島 正大, 永井 茂, 渡邊 卓, 後藤 ...
    2007 年 38 巻 1 号 p. 11-20
    発行日: 2007/03/30
    公開日: 2007/11/22
    ジャーナル フリー
    優れた抗菌力と幅広いスペクトルを有する抗菌薬が登場する一方で,methicillin-resistant Staphylococcus aureus(MRSA)やvancomycin-resistant enterococci(VRE)などの多剤耐性菌の増加が報告されている。本研究では,当院における最近5年間(1999年~2003年)のグラム陽性菌すなわちMRSA,methicillin-sensitive Staphylococcus aureus(MSSA),Staphylococcus epidermidesEnterococcus faecalisEnterococcus faeciumStreptococcus pyogenesStreptococcus pneumoniae(合計18,065菌株)について主要抗菌薬に対する耐性率を調査した。S. aureusのうちMRSAは73%であった。MRSAはペニシリン系,セフェム系,イミペネム系に対して100%耐性を示したが,vancomycin(VCM),teicoplanin(TEIC)に対しては耐性株を認めなかった。しかしarbekacin(ABK)では1%の菌株が耐性であった。外来患者から分離されたMRSAは3%から6.5%と増加しており,当院が属するコミュニティでもMRSAが拡がっていることが推測された。S. epidermidesではoxacillin(MPIPC)耐性菌株が増加していた(73~83%)。また,erythromycin(EM),clindamycin(CLDM),levofloxacin(LVFX),fosfomycin(FOM)に対する耐性菌株も増加していた。E. faecalisではペニシリン系の感受性は保たれていたが,E. faeciumでは,ペニシリン系,EM,LVFX,FOM,imipenem(IPM)に対する耐性が高度だった。Minocycline(MINO)に対する耐性率はいずれのenterococciでも低下していた。S. pneumoniaeに関しては,ペニシリン耐性株は49~64%,EMに対しては64~79%に達したが,LVFX耐性は3%前後であった。S. pyogenesの耐性菌はEMに対しては約10%に,MINOに対しては約30%に認めたが,ペニシリン系やセフェム系には感受性が保たれていた。
  • 川崎 洋介, 大瀧 純一, 鳥羽 研二, 古賀 良彦
    2007 年 38 巻 1 号 p. 21-28
    発行日: 2007/03/30
    公開日: 2007/11/22
    ジャーナル フリー
    Alzheimer disease(AD)の脳機能画像研究において,頭頂・側頭葉の連合皮質での脳血流の低下がみられ,ADの進行に伴い血流低下部位が前頭葉皮質に広がるといった報告が多い。本研究は,ADの前駆段階であるAmnestic mild cognitive impairment(aMCI)も含めた最初期から重度のAD患者を対象として99mTc-ECD 脳血流SPECT検査を施行し,MMSEを用いたADの重症度と脳血流の関連性について検討した。その結果,両側の後帯状回,楔前部および右海馬の相対的血流低下が,最初期の段階からADの特徴的な所見として認められたが,ADの重症度との相関はみられなかった。一方で,ADの重症度と両側の前脳基底部,眼窩回の血流において正の相関がみられた。これらのことから脳血流SPECT検査は,ADの各段階を判定するのに有用でADの進行予測に有効であることが示唆された。
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