杏林医学会雑誌
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41 巻, 4 号
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原著
  • 佐野 秀仁, 大木 紫, 里見 和彦
    2010 年 41 巻 4 号 p. 26-37
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/01/07
    ジャーナル フリー
    (背景)ヒトの腕の運動指令を伝える経路には,錐体路から直接運動ニューロンにシナプス結合する経路とC3-4に存在するpropriospinal neuron(PN)等を介して間接的に伝える経路が存在すると言われている。患者で間接経路の機能評価を行う基礎として,検査法確立を試みた。
    (方法)正常被検者の右または左腕の上腕二頭筋から表面筋電図を記録,同側の尺骨神経の電気刺激と反対側運動野の経頭蓋磁気刺激の組み合わせ刺激を実施,刺激強度を系統的に変えた。
    (結果)全被検者で組み合わせ刺激により上腕二頭筋で観察される誘発電位の振幅が大きくなり,間接経路を介した効果が確実に観察できた。また,右利き正常被験者では利き腕側でこの促通効果が強いことが観察された。
    (結論)本評価法により,PNを介する間接的皮質脊髄路の機能が評価できることが示された。右利き正常被検者で促通効果に左右差がみられたのは,手の使用頻度によりPNに対する錐体路入力の強さが変わるためと考えられた。
症例報告
  • 松田 朝子, 軽部 美穂, 早川 哲, 有村 義宏, 山田 明, 奴田原 紀久雄
    2010 年 41 巻 4 号 p. 38-43
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/01/07
    ジャーナル フリー
    症例は44歳女性。18歳時に全身性エリテマトーデス(SLE)と診断。28歳時にループス腎炎による急性腎不全を発症したが,寛解後は尿異常はなく,血清クレアチン値は1.0~1.2mg/dl程度で経過していた。今回の入院1ヶ月前より下腿浮腫が出現した。尿蛋白・潜血陽性に加え血清クレアチニン値は1.7mg/dlと上昇し,ループス腎炎の再燃にて入院した。入院後の腹部超音波検査にて,左腎中極に径4cm大の多嚢胞性腫瘍を認め,腎細胞癌と診断した。プレドニゾロン 20mg/日を内服しつつ腹腔鏡下左腎摘出術を施行した。摘出腎の組織所見では,腫瘍部分はclear cell carcinoma,非腫瘍部分はループス腎炎Class IV-G(A)であった。手術後第38病日よりメチルプレドニゾロンによるパルス療法を含むステロイド治療を行い,尿異常・血清抗体価は改善し,第85病日に退院した。手術後4年を経過した現在,腎癌の再発・転移は見られていない。
    SLEと悪性腫瘍の合併は悪性リンパ腫,肺癌などの報告例は散見されるが,我々の検索した範囲で腎細胞癌を合併した報告はなかった。今回我々は活動性のループス腎炎に腎細胞癌を合併した一例を経験したので報告した。
原著
  • 高齢者剖検例と切除標本を用いた計量組織学的検討
    布川 雅雄
    2010 年 41 巻 4 号 p. 44-56
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/01/07
    ジャーナル フリー
    腹部大動脈瘤の発生・進展の特徴を明らかにするため,主として高齢者剖検例で著明な瘤形成例を除外した121例の病理組織学的標本について,計量組織学的検討を行った。大動脈内周と弾性線維層の厚さには相関は認められなかったが,瘤好発部位とその直上部における内周比率および弾性線維層の厚さの比率の検討から,弾性線維層の高度菲薄化が瘤形成の前段階となる可能性が示唆された。また,軽度瘤様拡張症例の一塊摘出標本の観察では,拡張部分に対応した弾性線維層の高度の減少が認められた。このことから弾性線維層減少は動脈壁に瀰漫性に生じるのではなく,部分的な高度欠損のパターンをとること,そしてこれによる壁の部分的脆弱化が瘤様拡張の要因であると考えられた。
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