杏林医学会雑誌
Online ISSN : 1349-886X
Print ISSN : 0368-5829
ISSN-L : 0368-5829
42 巻, 3 号
選択された号の論文の3件中1~3を表示しています
総説
  • イソフラボン抱合代謝物の代謝と排泄
    石井 和夫, 細田 香織, 古田 隆
    原稿種別: 総説
    2011 年 42 巻 3 号 p. 97-105
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/09/30
    ジャーナル フリー
     イソフラボンは,ホルモン依存性がんや骨粗鬆症などの予防の観点から注目される。一般にヒト生体内においてイソフラボンの大部分は抱合体として存在するが,体内動態の評価は,抱合体の選択的酵素水解により得られるアグリコンにより為されるため,生体中に存在する活性本体と排泄過程における化学形については不明な点が多い。著者らは,消化管より吸収されたdaidzein(Dein),genistein(Gein)などのイソフラボンとその抱合代謝物を同定し,さらに,これら16種の代謝物の高速液体クロマトグラフ-UV検出器による直接一斉分析法を開発した。本法を,きな粉摂取後のヒトにおけるイソフラボンの代謝,排泄の研究に適用した。その結果Dein-7-glucuronide-4’-sulfate,Gein-7-glucuronide-4’-sulfate,Gein-4’,7-diglucuronideは,イソフラボンの薬理学的性質および薬効を示すためのkey compoundsと考えられ,さらに抱合代謝物の腎排泄過程において脱硫酸抱合もしくは脱グルクロン酸抱合が起こり得ることが判明した。
  • 長谷川 瑠美, 高見 茂, 塩田 明
    原稿種別: 総説
    2011 年 42 巻 3 号 p. 107-115
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/09/30
    ジャーナル フリー
     脳由来神経栄養因子(BDNF)は発達期および成熟期の神経系において,多様な作用を及ぼすことが知られている。その作用機序解明には,BDNFを投与あるいは阻害するといった従来の実験生物学的手法が用いられてきたが,1980年代以降に発達した遺伝子工学の貢献度の大きさは甚だしかった。本総説では,これまで作出された遺伝子工学の発達による産物であるBDNF過剰発現動物,さらに,我々が作出した嗅覚系の感覚細胞である成熟嗅細胞が特異的にBDNFを過剰発現するラットの解析によりもたらされた主要な知見を述べる。加えて,ウイルスベクター注入技術を用いたBDNF過剰発現研究を紹介する。これらの遺伝子工学的手法の発達がもたらした研究により,多岐にわたるBDNFの機能についての理解がさらに深まった。
  • 相磯 聡子
    原稿種別: 総説
    2011 年 42 巻 3 号 p. 117-121
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/09/30
    ジャーナル フリー
     大腸菌は酸に対し高い耐性を示す。大腸菌にはAR1からAR4の4つの酸耐性機構が知られ,この中心と考えられているAR2はglutamate-dependent acid resistance(GDAR)系である。GDARにおける中心的な転写調節因子GadEの発現は少なくとも9種のタンパク質により調節されており,これにより様々な環境下において酸耐性が保証されていると考えられる。またアンチセンスRNAにより転写後調節あるいは翻訳調節を受けている可能性が示唆されている。さらにGadEタンパク質は分解調節されており,酸刺激が存在しなくなると迅速に細胞内から消失する。gadEは多剤排出系の遺伝子の一つmdtEFとオペロンを形成しており,二成分制御系の一つEvgA-EvgSの制御を受けている。EvgAはこのほかにも多剤排出系の遺伝子emrKYの発現を正に制御しており,多剤耐性と酸耐性が共通のシグナル伝達系により制御されている。細胞間シグナル分子の一つインドールにより酸耐性が誘導される,あるいはautoinducer IIの産生に関わるluxSgadAB遺伝子の発現を制御する等の最近の報告は,酸耐性や抗生剤耐性がクオラムセンシングを通し制御されている可能性を示唆する。
feedback
Top