唐辛子の辛味成分であるカプサイシン(capsaicin,CAP)の一重項酸素(
1O
2)に対する消去活性を,ナノ秒時間分解レーザーフラッシュフォトリシス装置を使用して定量的に検討した。その結果,
1O
2に対するCAPの二次反応速度定数(
kQ)は7.7×10
5 M
-1sec
-1で,既知の抗酸化物質であるα- トコフェロール(
kQ:1.9×10
8 M
-1sec
-1)や
1O
2消去剤である2, 5-diphenyl-3, 4-benzofuran(
kQ:2.8×10
9 M
-1sec
-1)と比較して非常に低い消去活性だったが,
1O
2の自発的消去速度定数(8.3×10
4 sec
-1)よりは速い消去活性を示した。そこで,CAPの
1O
2消去活性部位を特定するために,CAPの主要骨格であるグアヤコール構造を有する各種誘導体の
1O
2消去活性を測定し,比較検討した。その結果,グアヤコール骨格を持たずCAPのacetamide部位を有する
N-benzylacetamideには
1O
2消去活性が全く認められなかったことから,CAPの
1O
2消去活性部位はグアヤコール骨格部分のフェノール性水酸基であることが推測された。また,グアヤコール骨格のフェノール性水酸基に対してパラ位に置換されている側鎖の種類によっても
1O
2消去活性が影響されることが明らかになった。
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