1) 異なった発育ステージで密度を変化させる実験から,翅型決定に及ぼす密度の影響を調べたところ,密度感受期は雌雄ともに2~4齢期にあるが,低密度に対して最も感受性が高いのは4齢初期であることが判った。
2) 密度感受期の高い3齢末ないし4齢初期にあたる孵化6日後の幼虫に,幼若ホルモン様物質であるメソプレンを塗布したところ,短翅型個体の出現率上昇が誘起された。さらに,孵化10日後の幼虫,および羽化36から48時間後の長翅型成虫への処理は,卵巣発育を著しく促進した。このように,翅型決定,および卵巣発育の両方に幼若ホルモンが大きく関与していることが明らかになった。
3) これらの結果に基づき,幼若ホルモン活性の変動様相を推定した。4齢期の翅型決定のための幼若ホルモン感受期に,ホルモン活性が高く維持されることによって短翅型が誘起される。さらに,短翅型では,5齢期の中頃にホルモン活性が,ある閾値を越えることにより卵巣発育のプログラムが開始されるが,卵黄形成は羽化36から48時間後のホルモン活性の上昇によって進行する。一方,長翅型では,翅型決定のための幼若ホルモン感受期にホルモン活性が低いため,翅型は長翅型に,さらに,卵巣発育のプログラムの開始と卵黄形成のための幼若ホルモン活性の上昇が,短翅型より1日遅れるため,卵巣発育が遅延するものと考えられた。
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