近年の神経生理学的検査の技術進歩に伴い,精神疾患においても新たな知見が次々と報告されている。本稿では主に,脳波や脳磁図を用いた統合失調症の神経生理学的な知見について概観した。例えば,統合失調症者では,感覚フィルタリング機能を反映しているとされる聴覚P50の抑制機構の障害や,前注意過程の指標とされる聴覚ミスマッチ陰性電位の振幅低下が報告されている。さらに,最新の研究では,統合失調症における高周波ガンマ帯域の神経同期活動の障害が多く報告されており,これは統合失調症の脳内における興奮性ニューロンと抑制性介在ニューロンの相互バランスの破綻を反映していると考えられている。精神現象を神経生理学的にとらえようとするこの試みは“神経現象学”という新たな分野にも通じる。最後に,これらの知見をもとに,今後の統合失調症研究の展望について考えてみたいと思う。
心理教育は広汎な患者に対し適用可能な方法であるが,心理療法においては認知行動療法等の問題解決技法を行う準備段階に位置付けられることが多く,心理教育そのものがもつ心理療法的効果についてはあまり報告されていない。本稿では,外来患者2名に行った短期心理教育面接の診療録を後方視的に振り返り,心理教育の心理療法としての意味づけを考察した。その結果,テキスト内容の伝達に留まらず患者固有の体験を踏まえた振り返りを行ったことが,理解の深化を促し新たな気づきが生まれるきっかけとなったことが窺えた。心理教育的介入の中にも,支持的介入を意図したものから表出的介入を意図したものまでのスペクトラムがあるのではないかと考えられる。
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