九州理学療法士・作業療法士合同学会誌
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第28回九州理学療法士・作業療法士合同学会
選択された号の論文の154件中151~154を表示しています
  • 橋口 綾子, 大石 紗織, 蒔平 ゆり, 坂田 絵美, 福山 憂, 武内 大輔, 吉田 郁恵
    p. 151
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/05/01
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】
     今回、脊髄損傷を受傷し、起居動作時の下肢の操作に時間と負担、外傷の危険性を伴う症例に対し、動作の負担軽減と外傷の危険性軽減を目的に、自助具を導入した。
    【方法】
     自助具装着前後での動作、所要時間、満足度の変化を比較した。満足度は1(不満)から10(満足)までの10段階で評価した。
    【症例紹介】
     80代女性 脊髄損傷(Th11)胸腰椎圧迫骨折。MMT:上肢4下肢1から2-体幹2-、感覚:下肢表在・深部覚重度鈍麻、起居動作:下肢を上げる動作は座位で操作するが、姿勢を崩し背臥位となる。下肢を持ち上げた際、足関節底屈位となり足尖がベッドフレームにひっかかるため、過度な股関節屈曲を要する。下肢を下ろす動作は背臥位のまま片手で大腿部を把持し、片足ずつ下ろす。その際ベッドフレームに下腿部をぶつける。
    【起居動作時の問題点】
    #1下肢操作の際に両手操作となり座位姿勢を崩す。
    #2足関節底屈となり、足尖がベッドフレームにひっかかるため、動作拙劣となり時間がかかる。
    #3下肢を下ろす際、ベッドフレームに下腿部をぶつけ外傷の危険性が高い。
    【自助具導入にあたって】
     今後の機能面の向上は困難と考え、自助具を作成した。 作成した自助具は、外傷から保護するため、クッション性のあるキルト布を使用し、膝関節上10cm程度から、踵部までを覆う筒状のものとした。また着脱が簡単に行えるよう、マジックテープを使用した。踵部には足関節を固定するために、また大腿部には操作が容易に行えるようにベルトをつけた。
    【結果】
     下肢を上げる動作時には、足関節底屈が抑制され、ベッドフレームへのひっかかりが減少した。また、片手で下肢の操作が可能となり、座位時の支持基底面が広がり、下肢を持ち上げた際に大きく姿勢を崩すことがなくなった。下肢を下ろす動作は、側臥位のまま片手で大腿部のベルトを持ち行う。反対側の下肢も同様に行う。その結果下腿部をベッドフレームにぶつける頻度が減少し、ぶつけた際でも衝撃が緩和された。所要時間(sec)は上げる動作:21.2→13.0下げる動作:40.0→17.7と短縮し、満足度も7→9に向上した。
    【考察】
     下肢のひっかかりが減少した要因としては、自助具を使用したことで、片手での下肢の操作が可能となり、反対側上肢を端坐位保持に使用することで、座位安定が図れ下肢操作が容易になったと考える。また踵部のベルトで足関節底屈が抑制され、支点・作用点の距離が近くなり、操作性が向上したと考える。これらにより時間の短縮、動作に伴う負担及び外傷の危険性が減少したと考える。外傷の危険性に関しては、自助具にて下腿部を保護できたことも要因の一つである。満足度に関しては元々起居動作が自立しており、自助具装着前も高い評価であったが、装着後は「きつくない、軽くなった。」との発言も聞かれ、動作の負担が軽減したことが、さらなる満足度の向上につながったと考える。
     今後は、外観と素材を検討し、様々な場面に応じた自助具作成に取り組んでいきたい。
  • 井上 摩紀, 原 寛道
    p. 152
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/05/01
    会議録・要旨集 フリー
    【はじめに】
    四肢麻痺を呈した症例に対し余暇活動導入を目的にパソコン(以下PCと略す)操作へのアプローチを行なった。導入後、操作性向上だけではなく、意欲の増加や今まで伝える手段がなかった症例の思いを伝える機会を得た。それを若干の考察を加え報告する。
    【症例紹介】
    34歳男性、クモ膜下出血後遺症による四肢麻痺。受傷後6年経過。身体障害者療護施設入所中。ニードはPCでインターネットがしたい。病前から訓練導入までPC使用歴なし。
    【評価】
    身体機能:伸筋群の過緊張有り。四肢麻痺を呈す。上肢機能:利き手は右。つまみ動作可能。左は廃用手レベル。コミュニケーション:言語理解・表出は共に可。単語レベルで表出し声が小さく聞き取りづらい。高次脳機能障害:言葉・動作の保続、動作の開始・維持に困難あり。視覚・聴覚刺激により注意の易転動性あり。ADL:Barthel Index0点 余暇時間はテレビを見て過ごす。
    【経過】
    1期(2ヶ月間):訓練にPC導入。50音平仮名とそれ相当の漢字は理解可能。クリック可能、手関節、MP・IP関節の動きでマウスをゆっくり移動させることが可能だが実用レベルではない。入力補助ソフトHeartyLadderを導入。
    2期(2ヶ月間):母指と示指で操作可能な「ごろねマウス」導入。文字入力開始(20分で2文字)。クリックし続ける動作の保続あり。
    3期(0.5ヶ月間):操作中徐々に肩関節内旋、手関節回内し操作性が低くなるため、中間位を保つ設定をする。CDやゲームの要望を自らOTへ伝えてくる。
    4期(現在):訂正や変換を習得し文章を書くことが可能になった。更に家族への思いを手紙に書くことが可能になった。保続は軽減し文字入力5分で5文字可能になった。
    【結果】
    キーボード上の各種キーの用途・操作法を憶え、操作スピードが上がった。PCでやりたいこと、自分の思いを自ら伝えてくる場面、訓練に対して積極的な姿勢が増えた。
    【考察】
    声が小さく単語レベルで表出し、高次脳機能障害や麻痺のため代替手段・機器の使用も困難である症例にとって、自分の思っていることを正確に伝える方法は重要である。訓練でPC導入するまで自分の思いを明確に伝える手段を持たず、伝えようとしても相手に伝わらない場面が多く、自ら伝えようとする力も弱かった。PC操作が向上して自信がついたことで、活動への意欲が出てきたと考えられた。その結果、伝えたかった思いを手紙に自ら書くことが出た。手紙という関わり手にもわかりやすい手段で思いを伝えられたことで、症例だけではなく関わり手のコミュニケーション意欲を向上させる大きな力となった。そのため家族との心の交流が出来て、更に効果が高まった。今後は病棟でも使えるように検討する必要がある。症例が自分の好きな時にPCを使用出来て主体的な生活が送れるように環境設定をしたい。
  • 井手 啓介, 原 寛道(MD)
    p. 153
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/05/01
    会議録・要旨集 フリー
    【はじめに】
     身体障害者療護施設に入所する一症例に対し、電動車椅子(以下、Ew/c)を導入し、追いかけ遊びを通して操作能力が向上したので考察を加え報告する。
    【症例紹介】
     31歳、男性、脳挫傷後遺症(びまん性軸索損傷)による四肢麻痺を呈す。発症より9年6ヶ月経過。人と関わることが大好き。
    【評価】
    身体機能:四肢過緊張。動作時動揺あり。座位保持不可。
    上肢機能:手指屈曲拘縮あり。左側が随意性高い。ゆっくりとした動作で全可動域自動運動可能。
    高次脳機能:注意・集中困難。
    コミュニケーション能力:代替機器にてYes-No反応可能。表情でも感情表現可能。
    Ew/c操作能力:わずかに前方と左右のコントロールが可能。一度緊張を高めると緩和に時間がかかり、一定方向にのみ進む。
    ADL:Barthel Index 0点。
    【経過】
    1期(導入期):自ら周囲と関わる機会作りとしてEw/c導入。操作部位として頸部、上肢、下肢を比較検討したところ、上肢の随意性が一番高かったため、上肢での操作を導入した。手指屈曲拘縮によりコントロールレバーの把持が困難なため改良を加えた。しかし、姿勢の不安定さから筋緊張を高め、上肢操作を困難にしていた。また、注意・集中が続かず持続的な操作が困難。
    2期(姿勢設定期): 以前から所有していた座位保持椅子に電動装置を装着し訓練実施。ゆっくりだが上肢の自動運動が容易になり操作性向上。左右の方向転換が可能になった。直進距離10m可能。
    3期(追いかけっこ導入期):Ew/c操作訓練中、仲の良い他入所者を楽しそうに追う。同時にEw/cの操作能力が向上。その後その方を追いかけることを具体的目標として訓練を実施。追いかける人へ注意が向き操作の持続性向上。直進距離15m可能となった。
    【結果】
     自ら周囲の環境と関わることの少なかった症例は、Ew/cで「人を追いかける」という自ら関わりを持つことができた。また、一方的な関わりだけではなく周囲の反応を期待して働きかけるという、人とのやり取りを楽しむこともできた。
    【考察】
     Ew/c導入を操作訓練において身体機能・高次脳機能面の問題は、積極的に環境に働きかけることへの大きな阻害因子であった。座位保持椅子によって姿勢を安定させたことが操作の向上を促したと考える。さらにEw/cでの追いかけ遊びは、自分の意思で移動でき周囲の人と関わることのできる新鮮で楽しい経験であった。この経験は意欲の向上を生み、より積極的に環境に働きかけるといった気持ちを引き出したと考える。周囲の人々とのやり取りを楽しむことで達成感や自信もより強化された。今回、姿勢保持の重要さと意欲の引き出しが作業活動能力向上の重要なポイントになると思われた。今後Ew/cを実用化していくためには部屋から食堂までの距離(20m)を移動できる程度の能力が必要と考える。姿勢や環境設定の検討が今後も必要である。
  • 中津留 ゆり, 甲野 未紗, 土谷 健治
    p. 154
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/05/01
    会議録・要旨集 フリー
    【はじめに】
    深部感覚障害により立位バランス能力低下を呈する患者に対し、ストレッチポールハーフカット(以下SPと略す)を用いたバランス訓練を実施し、訓練前後の重心動揺を計測した。その結果、立位バランス能力の有意な改善が認められたのでここに報告する。
    【症例紹介】
    平成17年12月より両手指痺れ(左>右)、巧緻運動障害、両下肢脱力出現。平成18年2月頚椎症性脊髄症の診断を受け、3月20日椎弓形成術施行。
    【訓練方法】
    1.前後方向への訓練:SPの長軸を患者の前額軸に合わせ、凸面を上にして床に置き、その上で立位を保つ。次に凸面を下にして同様に実施した。 2.左右方向への訓練:バランスパッドの上にSPを二本、長軸を患者の矢状軸に合わせ、凸面を下にし、左右に並べ、その上で立位を保つ。上記の訓練を開眼、閉眼にて5日間実施。閉眼では動揺が著明であったが、上肢による代償を軽減する目的で、スリングを併用した。
    【測定方法】
    アニマ社製重心動揺計ツイングラビコーダGS-31Pにて閉脚静止立位での重心動揺を、開眼、閉眼にて計測した。なお、計測は訓練直後の変化と訓練効果の持続性を検証する目的で、訓練前と訓練直後に実施した。
    【結果】
    訓練前データは下記のとおりであった。なお、5日後の結果を最終とした。 (1)開眼(初回4/17・最終4/22)総軌跡長:56.50cm/49.70cm 実行値面積:3.28cm2/2.06cm2 外周面積:5.00cm2/3.43cm2 矩形面積:16.61cm2/8.59cm2(2)閉眼(初回4/17・最終4/22) 総軌跡長:212.68cm/109.70cm 実行値面積:13.54cm2/11.36cm2 外周面積:21.67cm2/11.73cm2 矩形面積:51.94cm2/27.03cm2
    【考察】
    今回の訓練では、実施直後にも著明な改善がみられたが、訓練効果の持続性においても良好な結果が得られた。ストレッチポールを使用する利点として、1.材質が低密度ポリエチレンで、沈み込みすぎず、支える硬さを有していながらも、荷重を吸収するという特性を持っており、そのためバランス訓練として使用する場合にも、外乱刺激が強くなりすぎず、適度な刺激を与えることが出来る。2.動揺の方向が一軸性であることを利用し、床面へ設置する方向を換えることで、特に動揺が大きい方向に対して選択的にアプローチを行うことが出来る3.ストレッチポールの曲面上で立位をとるには、支持基底面が狭くなるため、より高度な身体重心のコントロールが必要とされる、などのことが考えられた。また、閉眼訓練時では動揺が著明であったが、スリングを併用することで、上肢による代償が減少し、より効果的なアプローチが行えたのではないかと考える。今回は一症例での検討であったが、今後さらに症例数を増やし、有効性について検討していきたい。
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