九州理学療法士・作業療法士合同学会誌
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第29回九州理学療法士・作業療法士合同学会
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  • 吉原 愛, 大川 尊規, 穐本 聡子, 竹下 満
    セッションID: 151
    発行日: 2007年
    公開日: 2008/02/01
    会議録・要旨集 フリー
    【はじめに】
     肘関節脱臼は骨折や靭帯・筋・血管損傷を伴う複合損傷であることが多く,稀に神経損傷を合併することがある.今回,複合損傷を伴う肘関節脱臼後,遅発性尺骨神経麻痺を呈した一例を経験したので若干の考察を加え報告する.
    【症例】
     44歳,女性,右利き,職業スーパー店員.左肘関節後方脱臼に橈骨頭・頚部骨折,上腕骨内上顆骨折,肘内側側副靭帯(以下MCL)断裂を合併.自転車走行中に転倒受傷し当院搬送入院.受傷後1週にて観血的整復内固定術施行(手術所見1).術後3ヶ月頃遅発性尺骨神経麻痺と診断され,抜釘および尺骨神経剥離術とKing変法施行.同時に拘縮に対し,関節授動術を施行した(手術所見2).
    【手術所見】
     1)関節包・MCL前斜走線維縫合,内側上顆骨片をscrew固定.橈骨頭はAcutrakにて骨接合.頸部は安定していたため固定せず.
     2)尺骨神経は瘢痕組織に囲まれ,尺骨神経溝で細くなっていた.肉芽切除し神経剥離に内側上顆の部分切除を行い,screw抜釘した.拘縮に対し,MCL後斜走線維切離と前内側方の関節包切離を行った.関節可動域は術前屈曲115°伸展-30°から術中屈曲140°伸展-5°となった.
    【経過】
     術直後より浮腫・腫脹に対し,冷却・挙上・手指運動を継続.術後3日より肘関節の自動介助運動を開始.術後2週より交代浴と他動運動開始.術後4週より重錘使用した持続矯正訓練開始.術後5週日中シーネ固定除去.術後11週頃から肘屈曲90°以上での手指尺側のしびれと脱力感出現し,その後小指球筋・骨間筋の萎縮を認め,遅発性尺骨神経麻痺と診断され,屈曲訓練を一時中止した.2回目の手術施行され,術後3日よりリハビリ再開した.
    【結果】
     神経剥離術後よりしびれの軽減,脱力感も改善された.初回術後6ヶ月経過時の可動域は屈曲140°伸展-5°回内70°回外85°不安定性・疼痛なし.握力22.0kg(健側比66%)であり,日常生活動作は特に制限なく使用可能となり職場復帰した.
    【考察】
     術中所見から今回の遅発性尺骨神経麻痺は瘢痕組織との癒着により絞扼されていたことが原因と思われた.癒着の原因として,複合損傷により関節の腫張・浮腫が強く,長期間残存していたことによるものと考えられる.今後,このような症例に対し,浮腫・腫張の残存は拘縮を起こすだけでなく,稀ではあるが,肘部深層での神経の癒着により絞扼され遅発性麻痺をおこす可能性があることを踏まえ,早期から炎症の沈静化・浮腫消退を目的としたアプローチを継続して行い,屈曲角度の獲得に伴い神経症状に気をつけ早期に対応していく必要があると考える.
  • 森岡 真人, 長嶺 多喜児, 宮里 和香, 金城 政樹, 岳原 吾一, 普天間 朝上, 金谷 文則
    セッションID: 152
    発行日: 2007年
    公開日: 2008/02/01
    会議録・要旨集 フリー
    【はじめに】
     先天性橈尺骨癒合症に対する授動術の報告には小児期のものが多く、青年期以降の手術例は稀で、その術後作業療法の報告も少ない。今回、分離授動術に有茎筋膜脂肪弁移植を併用した青年期の1例に対して当院のプロトコールを用いて術後作業療法を施行したので報告する
    【症例】
     17歳男性、左橈尺骨癒合症。前腕中間位で強直し、橈骨頭脱臼はない。
    【術式】
     橈骨と尺骨を分離後、肘筋及び前腕背側の筋膜脂肪弁を分離部間隙に挿入した。上腕二頭筋腱は橈骨背側骨皮質に縫着し、回外力を強化した。術中の前腕可動域は回内60°、回外10°であった。
    【術後作業療法】
     術後3週間でギプス固定を除去し,作業療法開始した。この時点の他動可動域は、肘関節伸展-45°/屈曲100°、前腕回内20°/回外0°、手関節伸展90°/屈曲30°であった。上腕二頭筋と手関節の屈筋と伸筋の緊張、遠位橈尺関節(以下DRUJ)の拘縮、前腕回旋運動に伴なう皮膚の瘢痕部の緊張が認められた。作業療法として、徒手的に前腕回内回外、肘関節屈曲の他動運動とDRUJの mobilization、回内回外補助動筋の強化、道具を用いた回内回外の自動運動を行った。さらにDRUJ、皮膚の瘢痕部に対する温熱療法も行った。術後5週より上腕二頭筋、回内筋に対し、負荷をかけた筋力トレーニングを開始した。術後7週より回内回外矯正装具を装着し、前腕回旋可動域の獲得・維持に努めた。その他に全経過に亘り、ADL及びスポーツを通して前腕回内回外の自動運動を促した.
    【結果】
     術後15週での他動可動域は肘関節伸展-10°/屈曲140°、前腕回内45°/回外35°、手関節伸展90°/屈曲90°であった。自動可動域は肘関節が伸展-10°/屈曲140°、前腕が回内30°/回外10°、手関節が伸展90°/屈曲90°であった.回内回外の他動可動域、自動可動域に解離が認められた。筋力は上腕二頭筋MMT4、上腕三頭筋MMT5、回内筋群MMT3+、回外筋群MMT2+であった。
    【まとめ】
     今回、青年期の先天性橈尺骨癒合症授動術後の症例に対して作業療法を施行した。術後15週にて、他動回旋可動域は80°獲得、回旋筋力は改善傾向を認める。今後の経過を追うとともに、症例数を集積し、青年期の先天性橈尺骨癒合症に対する授動術後の作業療法をさらに深めていきたい。
  • ~ピンチ動作と美容面に対する試み~
    穐本 聡子, 大川 尊規, 吉原 愛
    セッションID: 153
    発行日: 2007年
    公開日: 2008/02/01
    会議録・要旨集 フリー
    【はじめに】
     母指IP関節は、力の作用点として重要な役割を担っており、疼痛・変形・不安定性は、ピンチ力や巧緻性の低下を引き起し、日常生活動作に障害をもたらす。また、変形は、美容面での問題となることが少なくない。今回、両側母指IP関節の動揺性が強い症例に対し、スプリントでのアプローチを行った。その問題点を考察し、今後の課題について報告する。
    【症例紹介】
     70代女性、利き手:右手、職業:専業主婦、現病歴:数年前誘因無く発症。主訴:見た目の改善。平成18年11月29日、両側母指IP関節不安定症と診断され、平成18年12月8日に特に変形の強い左母指に対し、スプリントを作成。
    【作業療法評価】
     痛み(-)腫脹(-)熱感(-)動揺性(+)橈側偏位:右15度、左40度。IP関節屈曲40度。現時点で日常生活上困っている点は特にはないが、ピンチ力、巧緻性の低下がある。
    【治療選択】
     関節の動揺性に対して、靭帯再建術や関節固定術などの手術という選択肢があるが、痛みもなく日常生活動作において大きな支障もないということから手術は望まれなかった。そのため、スプリントによるピンチ動作の獲得と美容面の改善を試みた。最初の2週間は、美容面に着目してアクアチューブ1.6mmで8の字スプリントを作成。3週目から機能面に着目してアクアプラスト1.6mm穴あきを用いてマウス型スプリント作成。どちらも可及的にアライメントを整えた後、15度屈曲位3点固定にて8週間経過観察を行った。
    【治療経過】
     2週経過後、スプリントがチューブの為ピンチ動作に支障をきたし、マウス型に変更。スプリント装着時には、橈側偏位10度で固定され、ピンチ動作の改善を図ることができたが、洗髪時に髪に引っかかるなど日常生活上に支障をきたし、除去している時間が長くなった。
    【考察】
     症例は、変形は認められたが、強直・痛みはなく、動揺性があるためピンチ動作に支障をきたしていた。そこで、スプリントにてアプローチを行った結果、装着することにより、橈側偏位10度で保たれ、ピンチ動作と美容面の改善となり、本人の満足も得られた。しかし、日常生活動作では支障となり、固定用スプリントとしての効果を十分に発揮することができなかった。原因として、日常生活上使用頻度の高い母指の固定にアクアプラストの穴あきを用いた為と考える。さらに、マウス型スプリントは、容易に着脱出来るものの皿洗いなどで抜けやすいという問題点が挙げられた。スプリント作成時には、ピンチ動作の改善も見られたが、実際に日常生活にてスプリントを装着する事により、使用制限を余儀なくされるため、常時固定を行うことは、困難であると思われた。今回のような症例に対してのスプリント療法は、日常生活をいかに制限することなく必要最低限の固定で使いやすくデザイン性のあるスプリントを検討する必要があると考えた。
  • 中西 一, 島津 智香, 内山 将哉, 林 辰博
    セッションID: 154
    発行日: 2007年
    公開日: 2008/02/01
    会議録・要旨集 フリー
    【はじめに】
     今回,左手指にスワンネック変形があり手指屈曲時に近位指節間関節(以下,PIP関節)の屈曲が見られず手指操作が困難なパーキンソン病患者を担当した.治療後にPIP関節の屈曲が可能になり,ADLでの上肢使用の増加を経験したので報告する.
    【症例紹介】
     70代女性.2年前から徐々に左手指の示指~小指までがスワンネック変形となった.示指はPIP関節の伸展拘縮著明で屈曲方向の関節運動は困難.中指~小指のPIP関節は他動運動での屈曲は可能だが,運動時に強い抵抗を感じる.自動運動での手指屈曲は中手指節間関節(以下,MP関節)の屈曲のみでPIP関節は過伸展となる.PIP関節は他動運動時の運動の有無,運動方向の知覚は正常であるが,自動運動では「曲げることができない」と認識している.ADLでの左上肢の使用は殆ど見られず,使えない手と認識している.右手指に変形はない.
    【病態解釈】
     他動運動での示指以外のPIP関節の屈曲は可能であることから,中~小指の関節構造上の問題は無いにもかかわらず,自動運動時の屈曲運動はMP関節のみで,PIP関節は過伸展し,本人も「曲げることが出来ない」と認識している.またMP関節のみの運動であるために把持が困難となり,掴むために筋緊張を高めることにより,PIP関節が過伸展するという悪循環が起こっていると考える.このことから何らかの理由で手指屈曲時の運動プログラムが変性し,PIP関節が運動に参加しなくなり,本人も「曲がらない」と認識しているために運動プログラムの自己修正がされないと考える.
    【訓練仮説】
     左手指のPIP関節の関節構造や知覚には問題が無いにも関わらず,手指屈曲時にPIP関節が運動に参加せず,本人も「曲げることが出来ない」と認識している.このことからPIP関節が屈曲方向へ曲がることを認識し,運動方法を再学習することで自動運動が可能と考える.また右手指は正常な運動を行えるため,右手指の運動を参考にすることが有効と考える.
    【訓練】
     1.左手指のPIP関節の他動運動での屈曲を視覚で確認し,関節が動くことを認識する.2.右手指屈曲時と左手指屈曲時の力を入れている場所の比較,手指の関節の動く順番の比較を行う.3.右手指での運動を同様に左手指で行うイメージをし,その後イメージと同様に実際に動かす.
    【結果】
     訓練を3日間行うことによって,伸展拘縮が見られた示指以外は自動運動時にPIP関節の屈曲が可能となった.またADL場面でも左上肢が動いて左にあるものを掴もうとする,お茶碗を左上肢で持つなど徐々に運動への参加が見られるようになった.
    【考察】
     症例はPIP関節の運動方法が分からず,動かないと認識していたために非効率な運動を行なっていたと考える.また高次脳障害や感覚障害などが無かったために,右上肢の運動を参考にすることで左手指の動かし方に気付き,正しい運動を認識することで短時間に運動の変化が見られたと考える.
  • 筒井 裕介, 小鶴 誠
    セッションID: 155
    発行日: 2007年
    公開日: 2008/02/01
    会議録・要旨集 フリー
    【はじめに】
     第2指末節部切断再接着術後強い痺れを呈し、外界との接触に不快感を訴える症例を担当する機会を得た。この症例に対し認知運動療法を試みた結果、改善を認めたので本人同意の下考察を加えここに報告する。
    【症例紹介】
     30歳代、男性、右利き。平成18年7月17日仕事中に機会に挟まれ受傷。同日再接着術を施行。同年8月1日より作業療法開始となる。
    【初期評価(H18.8.1)】
    1.ROM(左第2指)
    MP関節は屈曲 70°、伸展 10°、PIP関節は屈曲 60°、伸展 0°、DIP関節は屈曲 20°、伸展 0°。
    2.感覚検査
    接触感:2/10(右と比較)
    “ジンジンする”といった異常感覚を認めた。
    接触において対象物の質感が伝わらない。
    3.握力:測定不可
    【プログラム】
    認知運動療法
    1.接触課題
    様々な質感の対象物に対して、左右での比較を行う。
    2.運動イメージの転移
    健側での接触感を患側でイメージする。
    【最終評価(H19.3.1)】
    1.ROM(左第2指)
    MP関節は屈曲 90°、伸展 20°、PIP関節は屈曲 90°、伸展 0°、DIP関節は屈曲 70°、伸展 0°。
    2.感覚検査
    接触感:8/10(右と比較)
    若干の痺れ感は残存するも、接触における対象物の質感を感じることが出来る。
    3.握力:(右)35kg (左)32kg
    【考察】
     訓練開始当初、左手指の使用時の記述は、“痺れていて何も感じない”、“嫌な感じしかしないから何にも当たらない様にしている”といったものであった。このことは、外傷や手術による侵襲のため、手指が情報器官としての機能低下をおこし、求心性情報の伝達異常を生じていたことをあらわす。また、その伝達異常により脳内での感覚情報の解釈に異常をきたし、脳内表象としての身体図式にも歪みが生じている事が考えられた。再接着部を自己身体として捉え、環境との相互作用を築くためには、自己身体を通して情報の処理を行わねばならない。そこでプログラム内容はまず対象物を目で認識し、予期される感覚モダリティーを想起させる。そして、健側にて実際に触れ、予測と実際の体性感覚情報のマッチングを行う。次に健側で実際に得られた情報を患側指へとイメージの転移を行い、実際に触れた求心性の感覚情報とのマッチングを行う。治療経過に伴い、“ジンジンする、物に触れたくない”といった記述から“触ったときに皮膚が伸びたり、材質の感覚がわかる”という変化を認めた。これは、痺れという不快感から自己身体へと志向性の変換を行うことができたと考える。今回の症例を通じて、身体を情報器官として捉えて病態を解釈していくことの重要性を考えさせられた。
  • 田上 茂雄, 與儀 清介, 新里 剛史
    セッションID: 156
    発行日: 2007年
    公開日: 2008/02/01
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】
     回復期リハビリテーション病棟(以下、回復期リハ)の目的として在宅復帰がある。当院回復期リハは、約6年が経過しているが、最終的に在宅復帰が出来なかった患者も少なくない。先の研究において、在宅復帰に関する報告は多数あげられている。そこで今回、当院においても在宅復帰に影響する因子についてFunctional Independence Measure(以下、FIM)を用いて検討したので報告する。
    【対象】
     平成18年4月から19年3月までに当院回復期リハを退院した患者90名とした。内訳は、脳血管疾患48名、運動器疾患42名である。なお、胃婁造設や急変などによっての転院、死亡退院した患者は除外している。
    【方法】
     脳血管疾患、運動器疾患の患者をそれぞれ在宅復帰群(以下、在宅群)と非在宅復帰群(以下、非在宅群)に分け、FIM合計得点をT検定にて比較した。また、FIMのそれぞれの項目にてT検定を用いて在宅群と非在宅群を比較した。なお使用するFIMは退院時のものとした。
    【結果】
     脳血管疾患では、在宅群は31名、非在宅群は17名、運動器疾患では、在宅群は35名、非在宅群は7名であった。脳血管疾患のFIM合計得点において在宅群と非在宅群間において有意差を認めた。運動器疾患においても2群間で有意差を認めた。FIM各項目では、脳血管疾患では全ての項目において、運動器疾患では「整容」「入浴」「更衣」「トイレ動作」「移乗」「移動」「階段」の項目において有意差を認めた。
    【考察】
     結果より、脳血管疾患・運動器疾患ともに在宅復帰に影響する因子として、「整容」「入浴」「更衣」「トイレ動作」「移乗」「移動」「階段」の動作が影響していることが示唆された。このことから、早期のADL訓練として、これらの項目に対して積極的に介入することで、在宅復帰の可能性が高くなるものと考える。また、退院前から患者本人に対する生活指導や主たる介助者に対して、現状や介助方法などの指導を早期から実施しておくことも重要と考える。
    【まとめ】
     当院回復期リハの在宅復帰に影響する因子について、FIMを用いて検討した。脳血管疾患、運動器疾患共に在宅群と非在宅群においてFIM合計得点、「整容」「入浴」「更衣」「トイレ動作」「移乗」「移動」「階段」の項目にて有意差を認めた。これらの項目に対して早期からの積極的な介入により在宅復帰の可能性が高くなるものと考える。
  • ~「一日の過ごし方表」を用いた症例から~
    佐藤 陽彦, 佐藤 友美, 佐藤 浩二, 衛藤 宏
    セッションID: 157
    発行日: 2007年
    公開日: 2008/02/01
    会議録・要旨集 フリー
    【はじめに】
     我々は、回復期リハ病棟に入院している患者の退院後の生活が豊かなものとなるよう退院後の「活動」「参加」の獲得を目指し積極的なチームアプローチを展開している。このような関わりを行う為には、退院後の生活を一日の流れに沿って具体的に想定する事が重要と考える。そのために必要な情報として1)患者が病前行っていた活動内容(時間・場所・方法、役割)2)患者を取り巻く環境3)本人・家族の希望等がある。今回、これらの情報を分析し患者と共に退院後の生活を想定する手段として「一日の過ごし方表」を作成したので症例を通し報告する。
    【「一日の過ごし方表」の紹介】
     まず病前の過ごし方について24時間の枠組みで活動名とその内容(誰と、どこで、どのように)を記入する。次に病前の過ごし方と患者の希望、環境やマンパワーを配慮した予後予測を基に退院後の過ごし方を立案する。その後、「今後能力獲得が必要な活動」を明確にし目標設定を行い訓練を進める。
    【症例紹介】
     60代女性、脳出血後遺症、左片麻痺、入院時BRS.上肢・手指_IV_下肢_III_、B.I.55点、SDS 68.7点。夫との2人暮らしで夫は腎不全を患い重労働は困難。自営業(喫茶店・スナック)を営んでいた。入院から約2ヶ月にてB.I. 80点へと改善し食器洗い等の簡単な家事動作の要領も獲得した。しかし、SDSは61.2点で将来に対し不安が強かった。そこで、今後の目標や訓練内容について症例と共に検討する事とした。
    【「一日の過ごし方表」による新生活の立案】
     ADLは自立し家事は力仕事以外行う、仕事は病前よりも減らし妹・娘の協力を得る生活を想定した。また、余暇時間には新たに店に飾る花を育てる事を計画した。このような生活像から入院中に能力獲得が必要な活動として1)入浴動作 2)調理、洗濯、掃除 3)仕事で行う珈琲作りや軽食作り4)園芸を上げた。これらに優先順位をつけ具体的な目標設定を行い訓練を進めた。またチームで入院生活の中での定着を図った。
    【結果】
     約4ヵ月後にはB.I.90点へと改善した。更に自室での花の水遣りは自立、見守りでの食器洗いや洗濯が日課となった。SDSは42.5点と改善した。2度の外泊で一連の動作が可能なことを確認し5ヶ月半後退院となった。退院より半年後の現在、入院中に想定した生活が送れている。症例は「今後、いろんなことにチャレンジしていきたい」と笑顔で話していた。
    【考察】
     「一日の過ごし方表」は、退院後の生活を24時間の枠組みで捉え、ADLのみでなくIADLも含め詳細に想定するための手段である。すなわち、本人・リハチーム共に目標となる生活を意識化した上で目標達成に向けた準備を進めることができる効果的なツールといえる。今後も「一日の過ごし方表」を広く活用し、患者にとって退院後の生活が豊かなものとなるよう取り組んでいきたい。
  • ~脳血管疾患と運動器疾患による比較検討~
    嶺井 大輔, 與儀 清介, 新里 剛史
    セッションID: 158
    発行日: 2007年
    公開日: 2008/02/01
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】
     当院回復期リハビリテーション病棟は、開設以来在宅復帰を目標にリハビリテーションに取り組んでいる。しかし実際には在宅復帰できなかった者も少なくないうえ、脳血管疾患と運動器疾患の在宅復帰率にも大きく差が生じている。そこで今回は在宅へと退院された患者におけるADLの変化をFunctional Independence Measure(FIM)を用いて、脳血管疾患・運動器疾患を比較検討し、脳血管疾患のADL改善の特徴を見出し、在宅復帰率向上について考える。
    【対象と方法】
     対象は平成18年4月から平成19年3月までに在宅に退院した患者66名とし、脳血管疾患(31名)と運動器疾患(35名)に分類した。 それぞれの入院時および退院時のADLをFIMで評価し、総得点の利得(入院時と退院時の差)と各項目の利得(入院時と退院時の差)を算出しそれぞれ比較検討を行った。統計にはt検定を使用し、有意水準はそれぞれ5%とした。
    【結果】
     脳血管疾患では、利得21.1±3.1点、運動器疾患では利得10.9点±2.2点と改善しており、優位差も見られた。 FIM項目においての改善は、運動項目では「更衣(上半身)」、「食事」、「清拭」、認知項目では「理解」、「表出」、「記憶」、「問題解決」、「社会的交流」の全項目に有意差がみられ、それぞれ脳血管疾患の改善の数値が大きい結果となった。 それ以外のFIM項目の改善度については有意差がみられなかった。
    【考察】
     今回の結果から中枢神経機能、高次脳機能、上肢機能が大きく影響すると思われる項目の点数が低得点から高得点へと変わることで、これらの項目に優位差が生じたと考えられる。  よって脳血管疾患においては、運動機能を高める一方で、早期からチームアプローチによりこれらの機能にも積極的に関与することで、脳血管疾患においての在宅復帰率の向上が期待できる。 また現在、回復期病棟においての入院期限は運動器疾患90日、脳血管疾患150日から180日という差はあるものの、それぞれの「移動」や「移乗」といった運動項目の改善度には有意差は生じていない。しかし今回の結果においては、入院期限の差によるところも少なからず影響していると推測される。
    【まとめ】
     FIMの認知項目、運動項目における排泄コントロールといった面にも重点をおき、患者を総合的に捉え、チーム全体でアプローチすることで自宅復帰へとつなげていきたい。 また今回は、在宅復帰群のみに着目したが、今後は非在宅復帰群や運動器疾患における特徴にも着目して考えていきたい。
  • 太田 祐子, 萩原 尋子, 中川 享子, 川床 裕香, 小峠 政人
    セッションID: 159
    発行日: 2007年
    公開日: 2008/02/01
    会議録・要旨集 フリー
    【はじめに】
     急性期病院において、食事は生命維持という側面が最重要視されている。当院にて、食事を楽な姿勢で食べるためのポジショニングが不十分であり、患者様がおいしく食事を摂られていない状況があるのではないかと考えた。当院作業療法部門では、食事を生命維持の手段だけでなく、今後の生活を見据えた質の向上のためにどのようなアプローチがよいか考えた。その取り組みの第一歩として、入院患者様がおいしく食事を摂るために、病棟スタッフへの働きかけや患者様への介入と共にアンケート調査を実施した。以上の取り組みについて、若干の考察を加えて今後の課題と共に報告する。
    【対象・方法】
     1.病棟スタッフ:食事に関する学習会を開催する。食事の意義やおいしい食事に必要なポジショニングについての説明だけでなく、実際に患者様体験も実施することで不良肢位ではおいしく食事が摂られないことを体感してもらう。学習会前後で病棟スタッフ(計50名)の食事への介入状況など調査を実施する。
     2.患者様:急性期病棟の患者様に対して、食事のポジショニングに介入した。介入前後で、主観的評価として食事に対する満足度を、客観的評価として食事量・スピードの調査を実施する。
    【結果】
     1.病棟スタッフ:患者様の食事における不良姿勢が気になっているが実際にポジショニングに介入できていない例が、学習会前8例であった。しかし学習会後は0例と改善を認めた。学習会直後では、病棟スタッフより食事姿勢に対する質問を受け、ポジショニングへの積極的な介入がみられた。しかし、継続は困難であった。
     2.患者様:食事を経口摂取しており、尚且つアンケート聴取できる患者様数に限りがあったために、データ数は今期間においては9例にとどまった。主観的評価はばらつきがあったが、客観的評価では食事スピードの改善がみられた。
    【考察】
     1.病棟スタッフ:食事に対しての興味・関心が高く、ポジショニングの必要性に理解が得られた。しかし病棟スタッフ間での伝達が不十分あることや他の業務で多忙なために、食事のポジショニング介入が浸透しなかった。
     2.患者様:主観的評価からは、ポジショニングに介入して良肢位で食事をすることが食事の満足度向上につながるとは示唆されなかった。患者様の食事に対する想いや捉え方が様々であり、一概に良肢位だけが食事の満足度向上につながらなかった。しかし、客観的評価の改善からポジショニングへの介入が有意味であることが示唆された。
    【まとめ】
     1.病棟スタッフ:継続して連携を取っていき、まずは患者様の食事姿勢に目を向けてもらい、ポジショニングへ介入をしてもらうことが必要である。
     2.患者様:おいしく食事を摂っていただくために、ポジショニングへの介入のみに留まらず、各患者様のニーズを理解しそれに応じた介入をすることが必要である。
  • 江崎 かおる, 松本 恵, 中原 和美, 山本 奈美, 上葉 亮太
    セッションID: 160
    発行日: 2007年
    公開日: 2008/02/01
    会議録・要旨集 フリー
    【はじめに】
     血液透析(以下、HD)患者は、HD合併症やHD後の倦怠感および心理的退行など多くの問題点を抱えている。当院入院中リハ対象者の約8割がHD患者で、入院HD患者の日常生活活動(以下、ADL)を維持・向上させることは、リハビリテーション(以下、リハ)の課題である。今回、機能的自立度評価法(以下、FIM)を用い、HD患者に対するリハ効果を検討したので報告する。
    【対象】
     当院にて平成18年4月から平成19年1月の10ヶ月間継続してリハを実施している入院HD患者20名(男性7名、女性13名)、平均年齢75歳±10.0歳、平均HD期間は62.4±54.3ヶ月であった。
    【方法】
     病棟でのADL実施状況はFIMを用いて、運動機能および認知機能を得点化した。全身状態は血液検査よりHt、Albで評価し、対象期間前後の変化を検討した。そして、各評価内容の相互の関連性を検討した。対象者へは期間中、HDによる体調に合わせ20~40分の作業・理学療法を週3~6回実施した。
    【結果】
     期間前のFIM運動項目平均56.3/91点、認知項目平均26.1/35点であった。得点変化は、運動機能が維持・向上した患者(以下、運動維持向上群)13名、平均3.6点向上、低下した患者(以下、運動低下群)は7名、平均21点低下していた。認知機能が維持・向上した患者(以下、認知維持向上群)は14名、平均2.25点向上、低下した患者(以下認知低下群)は6名、平均14.5点低下していた。得点変化の詳細は、運動維持向上群全例で、移乗項目が改善した。低下群の要因は転倒による骨折(2名)、心疾患などのHD合併症(5名)で、FIMの全項目に大幅に低下がみられた。認知維持向上群、低下群ともに得点変化項目に個人差があり、明確な特徴は見られなかったが、認知低下群全例が運動低下群と重複していた。全身状態は対象期間中、目標範囲内でコントロールされており、FIM得点変化との相関はなかった。また、各維持向上群と低下群での平均年齢、平均HD期間及びリハ実施回数に、有意な差は認められなかった。
    【考察】
     継続的な入院HDは、身体的負担に加えて心理的退行などにより、「できるADL」を「しているADL」に反映させることは容易ではない。対象者は、後期高齢者で維持HDを実施している者であったが、移乗能力向上など運動機能65%、認知機能75%維持向上群が存在し、リハによる効果があったと考える。また、今回の調査により、運動機能低下と認知機能低下は平行しており、運動機能だけでなく、認知面への関わりの重要性が示唆された。一方ADL低下に、HD合併症や転倒が、最も影響を及ぼしていたことから、予防が重要であると考える。
  • 千知岩 伸匡, 熱田 加那子, 伊波 さおり
    セッションID: 161
    発行日: 2007年
    公開日: 2008/02/01
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】
     本研究の目的は、地域一般高齢者と比べ、移動能力が低く、閉じこもりがちで、要介護状態に陥りやすいといわれる「生きがい対応型デイサービス利用者」の転倒に関する自己効力感の特性を明らかにすることである。
    【対象と方法】
     2006年9~10月の期間に、沖縄県G市にある23の生きがい対応型デイサービスのうち、協力の得られた7ヶ所(178名)の利用者を調査対象とした。調査用紙の回答には、面接方式を用いた。調査項目は、氏名、性別、年齢、痛みや不調の有無、過去1年間の転倒の有無、転倒予防自己効力感尺度(the Fall-Prevention Self Efficacy scale:以下、FPSE)、特記事項であった。FPSEとは、征矢野らが開発した転倒に焦点を絞った10項目からなる自己効力感尺度である。FPSEの質問は、1.布団に入ったり、布団から起き上がる、2.座ったり、立ったりする、3.服を着たり、脱いだりする、4.簡単な掃除をする(日常のちょっとした片付け・掃除)、5.簡単な買い物をする(日常のちょっとした買い物)、6.階段を下りる、7.混雑した場所を歩く、8.薄暗い場所を歩く、9.両手に物を持って歩く、10.でこぼこした地面を歩く(芝生や砂利道など)であり、それぞれを「全く自信がない」、「あまり自信がない」、「まあ自信がある」、「大変自信がある」で回答を得るようになっている。
     統計学的な分析の際には、年齢を65~74歳の前期高齢者と75歳以上の後期高齢者に分けた。またFPSEの回答も、「全く自信がない」、「あまり自信がない」の場合は「自信なし」に、「まあ自信がある」、「大変自信がある」の場合は、「自信あり」として取り扱った。解析は、統計ソフトSPSS15.0 for Windowsを用いて処理し、統計的に有意な水準は5%未満とした。有意差検定には、Fisherの直接確率法を用いた。
    【結果と考察】
     FPSE10項目を自信ありの多い順に並べると、1.布団の出入り、2.更衣、3.簡単な買い物、4.簡単な掃除、5.立ち座り、6.混雑、7.階段を下る、8.両手に荷物、9.でこぼこした地面、10.薄暗い場所であった。また痛みや不調の有無とFPSEの間に、統計学的有意差が認められたものは7項目(布団の出入り、立ち座り、簡単な掃除、階段を下る、薄暗い場所、両手に荷物、でこぼこした地面)であった。このことは、FPSEと主観的健康感の間の密接な関連性を示したものと考えられる。さらに過去1年間の転倒の有無とFPSEの間に、統計学的有意差が認められたものは4項目(立ち座り、更衣、薄暗い場所、でこぼこした地面)であった。転倒と一見関係がなさそうな更衣に有意差が認められたことで、転倒経験は移動や歩行の自己効力感を低下させるだけでなく、生活動作全般の自己効力感に影響する可能性が示唆された。
  • 伊波 さおり, 千知岩 伸匡, 熱田 加那子
    セッションID: 162
    発行日: 2007年
    公開日: 2008/02/01
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】
     本研究の目的は、地域ボランティアと理学療法士(以下PT)が連携して行った転倒予防教室の運営方法と効果について報告する事である。
    【対象】
     地域で毎週1回行われている生きがい対応型デイ・サービス利用者の129名(平均年齢80.2歳±5.3歳、70-93歳)を対象に転倒予防教室を開催した。
    【方法】
     教室の運営方法として、まず地域ボランティアに対して、事前に育成講座を行い、転倒に関する知識と転倒予防体操を指導した。その後、8回の教室を各公民館へPTが出向き関わった。1-3回までは毎週PTが出向き、4回目以降は月に1回とし、その以外の週はボランティアにて体操を実施した。利用者が出来る限り自宅でも自主的に体操が行えるように、資料を作成し、ラミネート加工後、全員へ配布した。また、各公民館へはトリノコ用紙で体操のポスターを作成し、ボランティアが確認しながら行えるように工夫した。体操は高齢者でも行いやすい椅子を利用した簡単な6パターンに絞り、「毎日転ばん体操」と名づけ、毎日継続することを指導した。また教室前後で効果判定のための評価を行った。評価は、握力、5m最大歩行速度、ファンクショナルリーチテスト(以下FRT)、転倒予防自己効力感(以下FPSE)を実施した。
    【結果】
     教室参加者129名のうち、データに欠損値のなかった69名を分析対象とした。教室前後の評価の統計処理には対応のあるT検定およびwilcoxonの符号付き順位検定を用いた。その結果、統計学的に有意差がみられた項目は5m最大歩行速度とFPSE合計得点であった。5m最大歩行速度(p<0.01)は教室前4.5±1.4秒、教室後3.9±1.2秒、FPSE合計得点(p<0.01)は教室前30.1±6.3点、教室後32.5±6.3点であった。また握力は教室前19.3±6.4kg、教室後19.1±5.4kg、FRTは教室前21±7.4cm、教室後20.5±6.6cmで有意差が認められなかった。
    【考察】
     今回の取り組みで、歩行能力と転倒予防自己効力感の改善が認められた。今後はバランス能力を考慮した体操を追加・改良を検討したい。また、PTが毎回関わらなくても、ボランティアと連携することで一定の成果が上げられることが分かった。
  • 熱田 加那子, 千知岩 伸匡, 伊波 さおり
    セッションID: 163
    発行日: 2007年
    公開日: 2008/02/01
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】
     本研究の目的は、高齢者の転倒予防自己効力感(the Fall-Prevention Self Efficacy:FPSE)と活動能力との関連性を明らかにすることである。
    【対象と方法】
     対象は、2006年9~10月の間に沖縄県G市にある生きがい対応型デイサービスのうち、協力の得られた7ヶ所の利用者178名であった。調査では、アンケートと体力テストを行なった。アンケート内容は基本情報、転倒予防自己効力感(以下、FPSE)およびその他特記事項であった。FPSEは、征矢野らが日本人の生活様式を考慮した転倒予防自己効力感尺度である。FPSE10項目は、(1)布団に入ったり、布団から起き上がる、(2)座ったり立ったりする、(3)服を着たり、脱いだりする、(4)簡単な掃除をする、(5)簡単な買い物をする、(6)階段を下りる、(7)混雑した場所を歩く、(8)薄暗い場所を歩く、(9)両手に物を持って歩く、(10)でこぼこした地面を歩くであり、それぞれ「全く自信がない」、「あまり自信がない」、「まあ自信がある」、「大変自信がある」で回答を得た。体力テストとしては、握力、開眼片足立ち、5m最大歩行速度、Functional Reach Test(以下、FRT)、Timed Up and Go Test(以下、TUG)の5項目を実施した。統計学的な分析の際には、FPSEの回答は、「全く自信がない」、「あまり自信がない」の場合は「自信なし」に、「まあ自信がある」、「大変自信がある」の場合は「自信あり」として取り扱った。有意差検定には対応のないt検定を用いた。
    【結果】
     対象者のうちデータに欠損値のなかった149名を分析した。「布団の出入り」と体力テストの間で統計学的に有意差がみられた項目は、1項目もなかった。「立ち座り」と体力テストの間で有意差がみられた項目は、開眼片足立ち、TUGの2項目であった。「更衣」と体力テストの間で有意差がみられた項目は、FRTのみであった。「簡単な掃除」と体力テストの間で有意差がみられた項目は、5m最大歩行速度、FRT、TUGの3項目であった。「階段を下りる」と体力テストの間で有意差がみられた項目は、開眼片足立ち、5m最大歩行速度、FRT、TUGの4項目であった。「混雑した地面」、「両手に荷物」および「でこぼこした地面」と体力テストの間で有意差がみられた項目は、握力、5m最大歩行速度、FRT、TUGの4項目であった。「簡単な買い物」および「薄暗い場所」と体力テストの間では、5項目全てに有意差がみられた。
    【まとめ】
     今回の結果より、FPSEと活動能力の間に強い関連性があることが明らかとなった。
  • 江上 慎一郎, 松永 ゆり子, 熊谷 公利, 永里 裕太
    セッションID: 164
    発行日: 2007年
    公開日: 2008/02/01
    会議録・要旨集 フリー
    【はじめに】
     当院では平成18年度、医療保険改定に伴う外来リハ算定終了者の今後の目標を「予防への意識づけ」とした。その内容は(1)体力の維持(2)生活の質の維持・改善(3)継続的な運動による生活のリズムの定着と閉じこもり予防である。そこで外来リハ算定終了者に対し、マシントレーニングを用い、他職種協働にて支援を行い、継続的な予防的リハビリテーションに取り組んだので報告する。
    【対象】
     外来運動器リハ算定終了者男性1名、女性17名。脳血管疾患リハ算定終了者女性1名の計19名。平均年齢は78.1歳。
    【協働支援内容】
     PTは体力測定、評価、運動プログラムの立案。OTはSF-36というQOLスケールを用いてのQOLの評価、フィードバック、日常生活の指導。健康運動実践指導者は体力測定の実施とフィードバック、プログラムの実施という3者の役割分担により、協働で支援を行なった。
    【検討項目】
     #1、体力測定値の変化 体力測定として以下を比較した。初回測定日、平成18年9月。次回測定日、平成19年3月。1,握力。2,3mTimed Up&Go。3,10m歩行スピード。4,ファンクショナルリーチ。5,片足立ち時間。6,レッグプレス最大負荷量。7,ローイング最大負荷量。
     #2、QOLの変化 QOLはSF-36を用いて評価を行った。このスケールは8つの健康概念を測定するための複数の質問項目から成り立っており、その8つの項目ごとに点数を出し変化をまとめた。
     #3、トレーニングの継続性 初回測定時から平成19年3月までトレーニングを継続して行えた人数を調査した。
    【結果】
     #1、体力測定の結果は、ほぼ全体的に維持から微少の向上がみられた。#2、SF-36の結果は各項目で個人差がみられたが、社会生活機能は1名を除いて維持・改善がみられた。#3、現在も継続してトレーニングが実行できている対象者は10名であり、開始時に比べ約半数の減少となった。
    【考察】
     継続が困難であった9名のうち3名は転倒が原因であり、高齢者の転倒予防が重要視された。
     また、生活の質では社会生活機能に改善がみられ、その要因はトレーニングによる身体機能の維持・改善が関係していると予想された。さらに、トレーニングに参加することで、定期的な外出の機会が設けられ、他者との交流や地域との良好な関係が保たれたためと思われた。
    【今後の課題】
     今後は転倒予防と、社会的交流を目的とした教室的要素を組み込み、今以上の予防への意識づけを定着させていきたい。
  • 上島 隆秀, 高杉 紳一郎, 河野 一郎, 岩本 幸英
    セッションID: 165
    発行日: 2007年
    公開日: 2008/02/01
    会議録・要旨集 フリー
    【はじめに】
     中高齢者を対象に,介護予防や健康増進を目的とした数多くのプログラムが全国で実施されている.内容としては転倒予防や認知症予防を目的とした運動,音楽,舞踊などが多い.フラもその一つであるが,昨年の映画公開をきっかけにフラに対する注目度が上がっている.ハワイの伝統文化であるフラは,見た目の優雅さとは裏腹に想像以上に下肢筋活動を伴う運動である.今回,M市のフィットネス施設において,フラ教室参加者の身体運動能力測定および健康関連QOL評価を実施し,その介入効果について検討したので報告する.
    【方法】
     対象はM市の一般住民でフィットネス施設のフラ教室に参加した女性11名(平均年齢67.6歳)であった.全ての対象者に対して教室開始前と終了後に,ファンクショナルリーチ(以下 FR),開眼片脚立ち時間,長座体前屈,10m最大歩行速度,膝伸展筋力,握力の測定および健康関連QOL評価を実施した.長座体前屈は竹井機器工業社製デジタル長座体前屈計,膝伸展筋力は日本メディックス社製徒手筋力測定器MICROFET2を使用した.健康関連QOL評価はSF-36日本語版を使用した.評価項目は,身体機能,日常役割機能(身体),体の痛み,全体的健康感,活力,社会生活機能,日常役割機能(精神),心の健康である.そして,各測定・評価項目についてフラ教室参加前後の値を比較検討した.なお,統計学的検定には対応のあるt検定を用い,有意水準は危険率5%未満とした.
    フラ教室は,熟練した講師の指導下で毎回1時間,週1回の頻度で2ヶ月間実施された.なお,事前に十分な説明を行い対象者の同意を得た上で測定および評価を実施した.
    【結果】
     教室参加前に比べ参加後では,FR(38.3→41.3cm),長座体前屈(34.9→37.6cm),膝伸展筋力(22.7→24.6kg)において有意な向上が認められた.また,健康関連QOLでは,身体機能(74.5→89.1)および活力(64.5→80.9)において有意な向上が認められた.
    【考察】
     今回, FR,長座体前屈,膝伸展筋力において有意な改善を認めた要因として,ダンス中における頻回な骨盤傾斜・回旋及び膝軽度屈曲位でのステップによるものではないかと考えられた.
    また,健康関連QOLにおいても改善効果が認められたことから,フラを継続することでQOLや生活機能の改善が期待できる.高齢者の生活機能低下予防は,介護予防の観点からも重要であるが,楽しみながら身体を動かすだけで生きがいにもつながればそれに勝るものはないであろう.
    今後は,他の運動との比較も行ってゆきたいと考える.
    【文献】
     1)伊藤彩子:フラダンスのはじめ.WAVE出版,2004.
  • 陣貝 満彦, 小柳 傑, 溝口 記広, 小樽 麻美, 一ノ瀬 真弓, 渡邊 佳奈
    セッションID: 166
    発行日: 2007年
    公開日: 2008/02/01
    会議録・要旨集 フリー
    【はじめに】
     訪問リハビリテーション(以下訪問リハ)の目的とは、利用者の日常生活の自立や社会参加など、その人らしい生活の再建および質の向上を促すこととある。アプローチを展開する上でゴールを設定することは不可欠であるが、変化に富んだ在宅生活においてはその変化に則したゴールの設定が必要である。そこで訪問リハにおけるゴールのあり方について考察すべく調査を行い、検討したので報告する。
    【対象と方法】
     対象は、現在当院訪問リハを利用されている6名(男性5名、女性1名、平均72.5±15.5歳)とした。疾患名は脳血管疾患が3名、神経筋疾患が3名であった。
     方法は、担当療法士に筆記形式にて利用者におけるゴール、達成状況、訪問リハの効果、訪問リハに対する本人・家族の希望を記載してもらい、比較検討を行った。
    【結果と考察】
     (1)現在のゴールについては、身体機能の維持が6名中4名、通所リハへの移行が2名であった。身体機能を維持させることにより本人のADL能力低下、活動範囲の狭小化を予防すると共に、介護面において介助量増加の予防に繋げるという目的でゴールを設定しているという結果であった。
     (2)ゴールの達成状況について、達成できているが4名、できていないが2名であった。達成できているゴールはすべて身体機能レベルを重視したものであり、社会性や生活全般としての観点から立ったゴールも考慮し、設定していく必要があると思われた。
     (3)効果として得られた結果は、モチベーションの向上、日常生活における自信の回復、残存能力の再認識、言語表出の増加などであった。自信の回復に伴い屋外へ出ることが多くなった、又以前は拒んでいた自主訓練を自ら進んで行うようになったなどがみられた。継続した訪問リハの中で生じるセラピストとの信頼関係の確立や、残存機能に対する可能性の発見などができ、自信回復に繋がったのではないかと考えられた。
     (4)本人、又は家族の希望として、すべての対象者において利用継続の要望があった。この理由として、利用を中止した場合における身体機能低下への不安、介護負担増大への不安があるためにこのような結果が得られたのではないかと思われた。対象者の6名中5名において介護者が配偶者(残り1名は独居)であったため、訪問リハの内容や必要性に対して十分満足されている反面、利用を中止することにおける不安が生じていると考えられた。
    【まとめ】
     その人らしい生活を送るためには、本人・家族も含めた、関わるすべての人々がゴールに対する共通の認識を持つことが必要であり、かつ生活の変化に則すための定期的なゴールの見直しが重要であると思われた。
  • 吉武 雄誠, 満行 由理, 浜里 裕美, 加藤 久子, 本田 千絵子, 川崎 紀子, 高橋 宏輔, 奥本 碧, 西島 博満
    セッションID: 167
    発行日: 2007年
    公開日: 2008/02/01
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】
     通所リハビリテーション(以下、通所リハ)の役割には、利用者に対する支援と共に家族の介護負担の軽減が求められる。介護者の介護負担感には、様々な関連要因があり、なかでも利用者の日常生活活動(以下、ADL)は、介護負担と相関するという報告が多い。しかし維持期の通所リハでは、ADLの改善には限界がある。そこで本研究では、維持期における介護者の介護負担感と利用者のADLの関係、その他介護負担に関連する要因について調査したので報告する。
    【方法】
     対象は、通所リハ利用者の介護者57名(男性15名、女性42名、平均年齢64.5±10.9歳)とした。通所リハ利用者については、利用者の属性(年齢、性別、疾患名)、要介護度、ADL、介護サービスの利用状況、介護者については、主介護者の属性(年齢、性別、続柄)、介護期間、仕事の有無、睡眠不足の有無を調査した。通所リハ利用者のADLは、機能的自立度評価法(以下、FIM)を用い、介護者の介護負担感はZarit介護負担尺度日本語版(以下、ZBI)を用いて評価した。分析は、介護負担感とADLとの関連性はSpearmanの順位相関係数を用い、その他の要因は、ZBI総合点を40点以上の負担が重い群と39点以下の軽い群に分け、カイ二乗検定、Mann-Whitney検定を用いて比較検討した。
    【結果】
     1.ZBI総合点とFIM総合点(r=-0.40,p<0.01)、FIM運動項目(r=-0.34,p<0.05)、FIM認知項目(r=-0.37,p<0.05)は、いずれも弱い負の相関を認めた。2.介護負担の重い群と軽い群では、介護者の睡眠不足の有無で有意差を認め(p<0.05)、睡眠不足のある群と無い群では、FIM総合点(U=208.0)、FIM運動項目(U=203.5)で有意差を認めた(p<0.01)。その他の要因については有意差を認められなかった。
    【考察】
     介護者の介護負担感は、介護者の属性や介護期間などに関係なく、利用者のADL能力が高いほど、介護負担感は低い傾向が確認できた。ADLの低下は、介護者の睡眠が障害される原因の一つであるが、通所リハにおけるADLの改善には限界があり、今後は、介護者への積極的なアプローチが必要である。
  • 岩永 健児, 内田 智之, 城戸 暢介
    セッションID: 168
    発行日: 2007年
    公開日: 2008/02/01
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】
     居宅生活を継続するために通所サービスを利用するのだが、利用を中止せざるをえない場合がある。そこで、今回通所リハビリテーション(以下通所リハ)・通所介護の利用を中止する原因を調べた。
    【対象】
     平成18年4月から平成19年3月までの1年間で、通所リハを利用した者129名(平均77.7歳)、通所介護を利用した者65名(平均84.9歳)。また、両施設での介護度は大差なかった。
    【方法】
     上記対象者中、1ヶ月以上利用中止した者をそれぞれ原因ごとに分類した。
    【結果】
     1ヶ月以上中止した者は、通所リハでは41.8%(62名)、通所介護では27.7%(18名)であった。通所リハの中止原因は、1)他施設への変更:32.3%(20名)、2)転倒による外傷:19.4%(12名)、3)家庭の事情(本人の意志):11.3%(7名)の順で多かった。通所介護では、1)家庭の事情(本人の意志):38.9%(7名)、2)内科疾患・転倒による外傷:同数で各27.8%(5名)の順で多かった。ここで、居宅以外の転倒場所をみると、通所リハ利用中で2名であった。また、転倒による外傷を介護度別にみると、1)要介護1:47.1%(8名)、2)要介護2:23.5%(4名)、3)要支援1・2:同数で各11.8%(2名)の順で多かった。これを認知症性老人の日常生活自立度判定基準別でみると、1)正常・1:同数で各35.3%(6名)、3)2:23.5%(4名)の順で多かった。
    【考察】
     今回、利用中止者が想像以上に多く驚いた。まず、両施設の合計で1番多い他施設の利用だが、これは新介護予防給付後徐々に介護度が変更され、要支援になった者が複数の施設利用ができなくなったためである。2番目は転倒による外傷だが、これは環境整備や介護力のある通所リハ利用中でも起こっているため、移動時の見守りや転倒に対する注意を徹底する必要がある。また、問題となるような認知症がない者(正常・1)、日常生活動作がある程度は可能な者(要支援1から要介護2)が大多数だったため、運動や生活指導、家屋訪問の重要さが再確認された。3番目は家庭の事情(本人の意志)だが、ほとんどの者が要支援1・2で介護度も低く、1回でも利用した者は全て対象者に入れたためと考えられる。しかし、本人の意志に関しては、通所リハや通所介護の効果に対する理解が不十分な場合もあるため、通所サービスの目的等を利用者・家族に理解してもらう努力が必要である。4番目の内科疾患は、ほとんどが風邪もしくは肺炎(誤嚥性肺炎も含む)であり、体調管理の重要性が改めて確認された。最後に、対象が各1施設で期間も1年間だったため対象数が少なかったが、この結果を今後活かしていければと考える。
  • 田代 靖知
    セッションID: 169
    発行日: 2007年
    公開日: 2008/02/01
    会議録・要旨集 フリー
    【はじめに】
     昨年4月の改定により介護保険は施設介護から在宅介護へと重きをおくようになった。そのため介護老人保健施設(以下老健)でも入所者をより早期に在宅へ退所させる方向にあり、当施設でも在宅復帰へのアプローチを積極的に行っている。今回、在宅復帰が困難と思われた症例が、家屋改修と福祉用具の導入等により自宅へ退所となったため報告する。
    【症例紹介】
     70代女性、右視床出血により急性期病院での保存的治療の後、約6ヶ月間の回復期病棟でのリハビリテーションを経て当老健に入所した。左片麻痺、注意障害、左半側空間無視等により歩行困難で施設内のADLは入浴が一部介助、その他のADLは車椅子により自立レベル。自宅は独居で築40年の分譲団地5階、エレベーターはなく階段は片側のみに手すりがある。室内は敷居や段差が多い。
    【経過】
     入所時、本人・家族は自宅への退所は困難と考え公営のバリアフリー賃貸住宅等を検討していたが入居希望者が多く、入居は困難であった。理学療法士、介護スタッフ、相談員で自宅の家屋調査を行い、軽介助にて階段昇降が可能であったため、室内を車椅子移動可能であれば在宅復帰も可能と判断し、家族に自宅を改造して在宅に戻ることを提案した。提案は介護保険の限度額20万円以内で改修する案や大掛りにフロア全体を改造する案など費用の異なる数案を提示し、家族は介護保険の限度額を超え費用は掛かるがフロア全体を改造する案を選択した。改修内容は床を玄関から全てのフロア段差無しのフローリングとし各々に手すりを配置した。流し台を車椅子対応型に変更、トイレは壁とドアを取り外し車椅子での出入りを容易にした。入所中に片側の手すりでの昇降など自宅を想定したADL動作練習や、退所前後訪問指導で数回自宅でのADL練習を行い、家族とも練習を行った。更に福祉用具を導入し自宅へと退所となった。
    【考察】
     家屋改修は介護保険の限度額20万円以内で手すり取り付け等の小規模な工事となる例が多いが、専門職が様々なプランを提案することで家族が選択の幅を持ち、自宅復帰が困難と思われる例でも復帰することも可能であると考える。
  • 澤村 一豊, 源島 修二, 恒松 裕介, 中村 弘
    セッションID: 170
    発行日: 2007年
    公開日: 2008/02/01
    会議録・要旨集 フリー
    【はじめに】
     当院では毎年、地域在住高齢者を対象とした転倒予防教室を開催している。各種検査を実施し、転倒危険率の高い対象者に対し、危険率減少と運動習慣の獲得を目的にフォーローアップ教室(以下教室)を行った。教室前後での検査結果の比較を行い、知見を得たのでここに報告する。
    【対象】
     教室へ参加した11名(男性2名、女性9名、平均年齢74.3歳±3.98歳)を無作為に2群に分け、マシントレーニング群(以下A群6名)とパフォーマンストレーニング群(以下B群5名)とした。
    【方法】
     期間は平成19年1月25日~平成19年4月12日まで(月2回)評価は教室前後に運動検査(片脚立位、Functional Reach Test(以下FRT)、Timed Up&Go Test(以下TUG)外乱負荷試験、握力、5m歩行、下肢筋力測定(open・close)と身体計測(身長、体重)を行った。A群は下肢筋力open・close(Well-Round Mizuno社製)、シーテッド・ロー(senoh社製)、バランスボール、エアロバイク(EZ101 COMBI社製)を行い、B群は継ぎ脚歩行、大股歩行、椅座位から2m先へ移動しての玉入れ、手伸ばし、エアースタビライザーを用いた片脚立位、ステップ訓練を行った。ホームエクササイズ(以下ex)としてA群に大殿筋、大腿四頭筋、ハムストリングス、下腿三頭筋、前徑骨筋筋力訓練の5種目を指導した。また来院し、トレーニングを行うよう勧めた。B群には、A群の訓練に加え、exを実施するよう指導し、実施状況を記録してもらった。群分けでの訓練実施は参加者の同意を得て行った。
    【結果】
     教室参加者全体では下肢筋力Close(最大値21.1kg・平均値19.8kg)のみ有意な向上が見られた(p<0.001)。各群ではA群で下肢筋力Close(最大値24.5kg)に有意な向上が見られた(p<0.05)。B群の前後比較とAB群間の比較では、有意差が見られなかった。ex頻度は全体平均1回/2.2日、A群1回/2.6日、B群1回/1.7日であった。
    【考察】
     今回の結果からは2群間において差はなかった。しかし、全体の前後比較においては下肢筋力に差がみられた。通常、運動頻度は週2回以上と言われているが、当院の開催は月2回という頻度にもかかわらず向上した項目があったことから、exの効果が高かったと言える。また、頻度においてはA群よりB群が高かったが、A群のみ下肢筋力の向上がみられている。これは週1回の指導により正確な運動方法を獲得したことでB群と比較すると効果が高かったといえる。運動習慣の獲得という点では、期間中約2日に1回の運動を行っており、目的は達成できたと考える。今後の課題として参加者の運動継続の確認と、運動内容の変化による効果の差異を比較し、より効果の高い教室を開催していきたい。
  • 峰松 一茂, 河野 さおり, 山下 佳孝, 伊藤 真理, 伊地知 伸介, 吉田 暁生
    セッションID: 171
    発行日: 2007年
    公開日: 2008/02/01
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】
     今年度より、地域連携クリティカルパス(以下パス)が導入され、当院においてパスの使用によりどのように変化したかパス導入前と導入後の入院日数の変化から調査を行い、若干の考察を得たのでここに報告する。
    【対象】
     対象はパス導入前(H12~17年度)に大腿骨頚部骨折で当院入院された患者28例、導入後パスを使用し退院された5例、導入後パスを使用せず退院された9例を対象とした。
    【方法】
     調査方法は各患者様の手術日から当院退院されるまでの入院期間の合計と当院のみの入院期間の合計を対象数で割り平均入院日数とし、退院先の調査を行った。
    【結果】
     当院のみの平均入院日数ではパス導入前113.6±117.6日、パス未使用群では61.2±32.8日、パス使用群では78.8±36.4日と導入後の入院日数は短縮していた。パス使用群と未使用群では未使用群のほうが短い傾向にあった。しかし、手術日から当院退院までの平均入院日数では導入前172.25±139.8日、パス未使用群では102.2±40.1日、パス使用群93.8±37.9日、という結果がでた。これにより、導入前は手術日より当院への転院が約60日で転院し、導入後パス未使用群では約15日で当院転院という結果になった。
    在宅復帰に関して、パス導入前が75%、パス未使用群が75%、パス使用群が80%という結果になった。
    【考察】
     今回調査行った結果から、パスをしようにより手術から在宅までの退院期間の短縮が見られた。計画病院・当院において各職種の早期治療・早期退院の意識が強くなり、理学療法においては、各施設でのゴール設定が明確となり、統一された考え方のしたのでのアプローチが行えるため、早期に段階移行でき、日常瀬活活動の獲得が行えたためと考える。しかし、問題点として段階移行の判断基準が施設間またはスタッフ間で曖昧になっていることが上げられ、統一されたレベルでの段階移行の基準が今後必要となってくると考える。それに加え、計画病院からの退院日数は短くなっているが、当院での入院日数はまだ未使用群と比較した場合に短くなっていない。これはパスの一連の流れはできているものの、当院でのパス使用群に対する対応が統一されていないことが挙げられ。患者様の経過に合わせて対応を行っていくものではなく、セラピストが取り巻く環境を把握し、上手く誘導していくことが大切である。その為にも、連携パスと合わせて当院でも独自の流れ(当院でのパス)を持ち、未使用群に対しても転院直後より早期からのゴールを目指し各スタッフが統一したアプローチをしていくことが今後の課題となると考える。
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