九州理学療法士・作業療法士合同学会誌
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第30回九州理学療法士・作業療法士合同学会
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  • 岡本 亜由美
    セッションID: 151
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    【はじめに】
    手の骨折は軽視されがちで、リハビリを施行せず経過する場合がある。今回、橈骨遠位端骨折に対する保存的な初期治療後、リハビリを行わず拘縮に陥り、患手を使えないまま長期経過し来院した患者に対し、日常生活において『使える手』の獲得を目的に外来作業療法(以下OT)を実施したので、症例を提示し以下に報告する。
    【症例1】
    50歳代女性。受傷側は左で、利き手は右。受傷後約3.5ヶ月で当院初診。X-P上、尺側傾斜角(以下RI)10度 掌側傾斜角(以下PT)7度 橈骨尺骨長差(以下UV)5mmで、関節可動域(以下ROM)においては手関節掌屈(以下PF)40度背屈(以下DF)50度、回内(以下pro)40度 回外(以下sup)50度で患手は補助手レベルであった。関節可動域(以下ROM)訓練とともに日常生活活動(以下ADL)指導を行った。OT施行約1.5ヶ月後、PF45度 DF58度、pro70度 sup55度、握力22.8kg(健側比76%)で職業復帰し、OTは自主終了となった。
    【症例2】
    50歳代女性。受傷側・利き手は右。受傷後5ヶ月で「自分の手ではない様」と訴え当院初診。RI35度 PT20度 UV5mmで、ROMはPF20度 DF45度、pro35度 sup80度、握力10.8kg(健側比36%)であった。ADL上で、包丁を握る・布巾絞り・食器洗浄・床に手を着いて起き上がる動作に困難をきたしていた。OTでは機能訓練とADL動作を行い、使えるという意識付けを中心に行った。OT開始後3ヶ月でADLは自立し、OT施行5ヶ月経過し、PF20度 DF70度、pro35度 sup80度、握力20kg(健側比68%)にて終了となった。
    【症例3】
    70歳代女性。受傷側・利き手は右。受傷後1.5ヶ月時に右手浮腫・運動障害が気になり当院初診。RI19度 PT7度 UV4mmで、PF20度 DF30度、pro25度 sup10度で、手に力が入らず母指~小指のMP関節に屈曲制限があり、手に力が入らないと訴えていた。機能訓練とともに、ADL訓練を実施。OT施行5ヵ月経過し、PF50度 DF70度、pro85度 sup70度、握力14kg(健側比76%)で、ADL自立し草取りも可能となり終了となった。
    【考察・まとめ】
    今回の3症例はともに骨折後の安静固定、浮腫、疼痛、運動不足、無知により拘縮をきたし、患手をほとんど使えない補助手状態であった。受傷当初から手をどれ位使ってよいか分からない不安、使えないことでの苛立ち、手の変形に対する見た目の不安、再骨折への恐怖を抱え、現実にADLに支障をきたしていた。そこでOTでは、可能な限り手の機能改善と患者に寄り添いADLやその周辺動作において患者の不安を取り除き、細やかなADL指導を行うことで『患手を使える』という意識付けをし、実生活でのADL遂行が可能となった。志水らは「前腕回外50度、手関節0度から20度の範囲で最も多くのADLを遂行できる」と報告しており、症例1、2ではROMの面においては、初診時から問題がなくADL訓練を導入した。症例3では回外制限が著名であったため、獲得ROMに応じたADL訓練を随時導入していった。今後、このような長期経過患者に対する評価として、DASHなどの自覚的評価も取り入れて行っていきたいと考える。
  • 油井 栄樹, 田崎 和幸, 野中 信宏, 山田 玄太, 坂本 竜弥, 貝田 英二
    セッションID: 152
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    【はじめに】
     ボクサー骨折は,その受傷機転より尺側指に多く,そのセラピィにおいてMP関節屈曲可動域の獲得がuseful handへの大きな比重を占めている.しかしながら受傷時,背側凸型に変形し,指伸筋腱滑動床に損傷を与えることも含め骨折部周囲での指伸筋腱癒着,また関節性拘縮によるMP関節伸展拘縮が予測される.また骨接合部は MP関節屈曲運動時,再び背側凸型に転位しやすい.そこで今回決して強固とはいえないキルシュナー鋼線による髄内ピンニング固定を行ったボクサー骨折例に対し,MP関節屈曲可動域訓練を中心に術後セラピィの一工夫に考察を加え報告する.
    【対象】
     2007年1月からの1年間に作業療法処方されたボクサー骨折7例8指のうち,骨癒合まで経過観察可能であった男性3例4指を対象とした.受傷時年齢は平均30歳(14歳から43歳),損傷指は環指2指,小指2指であり,全例髄内ピンニング操作により整復,固定を行った.
    【術後セラピィ】
     術後より患手挙上を徹底させ,運動時はまずMP関節を徒手的に固定してPIP・DIP関節自他動運動を行った.また指自動伸展運動を伸展可動域の確認程度に行った.次にセラピストが徒手的に遠位骨片を掌背側より支持し,基節骨底部が遠位骨片に対し可能な限り掌側に位置する指位までMP関節を他動屈曲する.さらに基節骨底部にて遠位骨片の掌側転位を予防するため,背側方向へ若干圧を加えながらMP関節屈曲可動域を増加させた.最後に獲得したMP関節屈曲可動域を保持しながらPIP関節屈曲運動を行い,指伸筋腱を遠位滑走させた.外固定はMP関節のみスプリントを作製し,骨癒合まで装着させた.また徒手的訓練にて獲得した屈曲可動域に応じて,屈曲固定角度を漸増的に修正し,獲得した可動域を維持させた.
    【結果】
     最終評価時,4指のMP関節屈曲可動域平均77.5度(68度から85度),TAM平均250.5度(235度から270度),%TAM平均92.5%(85%から97%)であった.全例骨癒合は良好であったが,治療経過中粉砕骨折例1指に骨短縮を認めた.
    【考察】
     ボクサー骨折後のセラピィにおいて,骨癒合が不十分な時期でのMP関節屈曲運動は,遠位骨片が基節骨に連動され受傷転位方向である掌側へ再転位しやすい.しかし,基節骨の関節面が遠位骨片の掌側に位置すれば,比較的骨折部は安定すると考えられる.つまり,MP関節伸展位からある程度安定する屈曲位までの運動が転位の危険性が高いと思われる.また,術後の腫脹もありMP関節は伸展位をとりやすく,一旦伸展拘縮を呈してくると,なおさら屈曲位獲得が不可能となる.そのため特に拘縮の不完全な初期時のセラピィにて,可及的にMP関節最大屈曲位に近づけ固定できるかがポイントであると考えている.そこで前述したようなMP関節他動屈曲運動とそれを維持させるための漸増的に細かな修正を加えたsplintの装着が重要であり,可動域獲得へ結びついたと考えている.また骨折部周囲での指伸筋腱癒着に対しては,獲得したMP関節屈曲可動域に応じ,より遠位への指伸筋腱の滑走が可能であった.その結果,粉砕骨折例1指に骨短縮を認めたが比較的良好な術後成績を獲得できた.今後症例数を重ね,更なる検討を行っていきたい.
  • 竹本 恵子, 岡本 亜由美, 切江 優子, 近藤 征治, 古江 幸博, 川嶌 眞人
    セッションID: 153
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    【はじめに】
    一般的に母指MP関節尺側側副靱帯断裂術後では、側方不安定性のないMP関節の屈伸運動が要求される。よって、損傷靭帯の修復を阻害しないMP関節の機能改善が重要であると考える。今回、右母指MP関節開放性側副靱帯断裂に、母指内転横頭断裂を合併した症例を経験した。右手での日常生活動作(以下ADL)・生活関連動作(以下APDL)獲得を目的とした作業療法(以下OT)を展開し、家事動作遂行可能に至った経過を以下に報告する。
    【症例紹介】
    60代女性、右利き、主婦。現病歴は飼い犬に右母指・左示指を咬まれ受傷し、翌日靱帯・神経修復術を施行した。指間部は中手骨骨頭が橈側まで露出し、中手骨側に側副靭帯が残存。内転筋横頭は筋腹で断裂。掌側の尺側指神経は損傷なし。Sesamoid complexは残存。基節骨にアンカーを入れ、側副靱帯と周囲軟部組織、内転筋を縫合。橈側指神経はマーキングして放置した。
    【作業療法評価】
    術後3週経過時、安静時痛・夜間痛なし。右示指屈曲時に伸筋腱の伸張痛あり。痺れは右母指IP関節以遠にあり。右手部の腫脹が著明(特に右母指・示指・手掌)で、手背は軽度であった。熱感は右手部全体にあり。ROM-Tは固定中の為測定不可。ADL・APDLは左手にて自立していたが、右手での箸・家事動作、両手動作が困難であった。
    【経過】
    術後3週経過し外来OT開始となり、4週まで母指IP関節自動運動、健指自・他動運動を行った。抜釘後(4週)より母指IP・CM関節自・他動運動、MP関節自動運動、母指内外転運動開始。Pinch動作訓練、対立運動を追加した。5週より渦流浴・超音波、6週より徐々に筋力強化訓練を開始した。
    【結果】
    受傷4ヶ月経過し疼痛は消失。右母指尖橈側に痺れが軽度残存した。腫脹は8の字法にて測定し右37.5cm左37.2cm。ROM-Tは右母指MP関節屈曲32°伸展2°IP関節屈曲54°伸展14°母指橈側外転50°掌側外転50°。Pinch力はTip Pinch3.5kg(健側比94%)、Lateral Pinch2.0kg(健側比100%)、母指-小指1.0kg(健側比80%)、握力は14.6kg(健側比82%)。ADL・APDLは右手での箸・家事動作、両手動作遂行可能となった。
    【考察】
    岡野らは「母指は手の機能上、最も重要で使用頻度が高く、多方向に広い可動域を必要とする指である」と述べている。母指MP関節尺側側副靱帯断裂では、右手使用時に橈側方向へのストレスを受けやすい。その為、損傷靱帯の安定性とMP関節運動時の動揺を制御し、円滑な関節運動を行う為の可動性が必要であると考える。今回、右手でのADL・APDL獲得を目標に損傷靱帯の修復に応じたOTを展開した結果、右手での粗大なADL・APDL獲得に至ったと考える。その為、本症例の満足度は得られたが、未だスムーズな対立運動が困難であり、MP関節の安定性と可動性を重視したことで、MP関節の土台となるCM関節の可動性が不十分な為と考えた。MP関節の安定性と可動性獲得だけでなく、運動の基盤となるCM関節の特性を活かし、様々な肢位でIP・MP関節の動きを引き出すことで、より母指の多様な動きが獲得されuseful handに繋がったのではないかと考え、今後の課題としたい。
  • ~自動屈曲可動域が得られなかった要因について~
    一 道伸
    セッションID: 154
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    【はじめに】
    手指屈筋腱損傷術後のセラピィとして、腱癒着防止を目的に積極的な早期運動療法が多く用いられている。今回、関節リウマチにより手指MP人工関節置換術や手関節固定術の既往のある屈筋腱皮下断裂を呈した症例を経験した。可能な範囲で術後早期よりセラピィを行ったが、良好な手指の可動域が得られなかったので、その要因を検討し考察を加え報告する。
    【症例紹介】
    53歳、女性、主婦、右利き、診断名:右環指屈筋腱皮下断裂。物を持とうとした際、ブチッという音と共に環指屈曲不能となった。その後包丁を使用する際に環指が屈曲できずに邪魔になるため今回手術を希望した。
    【手術所見】
    浅指屈筋腱は遠位部が菲薄化しており瘢痕様で全く機能していなかった。深指屈筋腱はzone1での断裂であり近位断端は手根管内に退縮していた。手術は長掌筋腱によるfree tendon graftを行った。遠位を末節骨基部にpull outし、近位は中・環指深指屈筋腱にinterlacing sutureした。
    【術後セラピィ】
    手指MP関節人工関節によりMP屈曲可動範囲が30°だったため、手関節0°、MP関節30°、IP関節伸展位で背側ブロックスプリントを作製し、術翌日より3週間、1日5回セラピスト管理下で1.全指他動屈曲後holding・自動伸展2.手関節軽度掌屈位(10~15°)、MP・DIP関節最大屈曲位でのPIP関節他動伸展、MP・PIP関節最大屈曲位でのDIP関節他動伸展を行った。Rubbar band traction(以下RBT)は痛みのため装着できず、日中は全指を軽く屈曲位で固定した。3週経過後スプリント内で自動屈曲運動を許可したが、自動屈曲が不良であった。その後は可能な範囲でRBTを装着し自動伸展・他動屈曲の自主練習を追加した。また、リハ時に腱をより遠位に滑走させる為に徐々に他動伸展と近位滑走を促す為軽度のブロッキング訓練を開始した。スプリントは4週で除去し、6週より包丁を扱う訓練を追加した。
    【結果】
    術後12週目の環指総自動関節運動域は85°、日本手の外科学会%TAMでは32%であった。家事動作でも包丁の把持は困難であった為、自助具を導入した。
    【考察】
    自動可動域が得られなかった要因として、腱の癒着又は縫合部の緩みが考えられる。1.早期よりRBTでの他動屈曲・自動伸展が行えなかったこと。2.手関節0°、MP関節30°、IP関節伸展位でしか背側ブロックスプリントを作成できなかったため縫合部に緊張がかかったこと。3.手関節・手指の可動域制限もあり、テノデーシス効果を利用した縫合部の十分な腱滑走が得られなかったこと。4.隣接指の深指屈筋の筋萎縮のため移植腱を十分に近位へ滑走させられなかったこと。などが考えられた。
  • 山田 玄太, 田崎 和幸, 野中 信宏, 坂本 竜弥, 油井 栄樹, 貝田 英二
    セッションID: 155
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    【はじめに】
     当院では、手指外傷例に対し早期からの運動療法やsplint療法にて拘縮の予防・改善を試みている。しかし重度外傷例では損傷部の長期安静を余儀なくされ、拘縮を呈することも少なくない。今回そのような外傷にて強固な拘縮が予測された1例に対し、修復組織の治癒過程に応じたセラピィを経験したので考察をふまえて報告する。
    【症例紹介・手術所見】
     69歳、男性で職業は大工である。草刈り機で受傷し、左第5中手骨頚部骨折・骨欠損、総指および固有小指伸筋腱断裂・欠損の診断にて同日、髄内固定術および腱縫合術を施行した。しかし両組織ともに欠損しており、骨接合部は不安定で腱縫合部は過緊張状態にあった。
    【術後セラピィ】
     術後3週間は手関節背屈位、小指MP・PIP関節伸展0度のsplint固定を行い、術後3週経過時から自動伸展運動を開始した。術後4週経過時にsplintのMP関節の屈曲角度を30度に変更し、自他動運動を行わず、指屈筋の緊張を利用してMP関節屈曲可動域の増加を図った。術後5週経過時のレントゲンにて仮骨形成が認められたため、セラピストによる徒手的なMP・PIP関節各関節単独での軽い他動屈曲運動と牽引力を調節したMP関節屈曲用動的splintを導入した。術後6週経過時にはその動的splintをMP・PIP関節同時屈曲用に変更し、漸次牽引力を強めていった。また筋力増強訓練を開始した。
    【結果】
     小指の最終可動域はMP・PIP・DIP関節の順に屈曲75・95・50度、伸展-10・-15・0度であり、%TAMは88%であった。握力は右32kg左26kgであった。また骨接合部の著明な骨転位は認められなかった。
    【考察】
     本症例は職業上強いgripができることをニードとしていた。しかし、MP関節は中手骨頭の構造上伸展拘縮をきたしやすいこと、また本症例の損傷組織の修復術からも伸展拘縮が必発することが危惧された。そのためセラピィにおいては、骨接合部および腱縫合部の治癒過程を考慮しながら特にMP関節の屈曲可動域獲得を重視した。今回術後4週経過時に用いた手関節背屈位MP関節30度屈曲splintは、自他動屈曲運動よりも軽い負荷で可動域の改善を行うために指屈筋の緊張を利用したものであり、今回のような修復組織に対してより愛護的だったのではないかと考えている。また修復組織の治癒過程に応じ、運動療法やsplint療法を随時変化・導入したことも可動域獲得に繋がったといえる。今回のような骨折部の不安定性や腱縫合部の過緊張がある例では、再転位・再断裂の危険性が高いため、通常のプロトコールではなく状態に応じた運動やsplintの選択が必要であると考えられた。
  • 松野 浩二
    セッションID: 156
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    【はじめに】
     自立支援法が施行され、重度障害者用意思伝達装置は障害者の日常生活用具から補装具費の支給へと変わり他の補装具と同様に、医師の意見書・適合判定が必要になった。日常生活用具で給付されていた時には、使用者と用具との適合が不十分であり、給付されても実際には使用まで至っていない状況が認められた。今回、福岡市での重度障害者用意志伝達装置の補装具費の支給の流れの中で、当センター職員の係わりから見えてきた現状と今後の課題について報告する。
    【福岡市の現状】
     当センターは障害者生活支援事業を平成11年度に福岡市より委託され、事業の一環として在宅障害者への福祉用具・情報機器の利用援助を行ってきたが、自宅を訪問したときよく目にする光景に、「日常生活用具で給付を受けた意思伝達装置が箱のまま部屋の隅に置かれている」「家族が一般のパソコンとして利用している」などの現状があった。有効に活用されていない原因は次のようなことが考えられる。1.給付前に適合についての支援を受けておらず使用目的と用具の機能とが適合していない。2.入力するためのスイッチと本人の身体機能が適合していない。3.家族など使用を援助する者の理解が不十分であり、支援する者が使用環境を設定することへの負担感があることなどである。逆に本人の機能の評価が十分なされていないために、実際は使用できる能力のある方が適切な支援を受けられていない状況も見られた。
     意思伝達装置が補装具費の支給に変更されるにあたり、このような現状を福岡市と協議した結果、申請から支給までの間に当センタースタッフが利用者の状況を評価し、評価した内容について更生相談所へ報告し、支給にあたっての判定の資料として使用されるというシステムが確立した。
     使用者の評価を行った際に市販のスイッチでの適合が困難な方に対しては、スイッチの作成・適合も行い、また意思伝達装置がある程度使用できるようになるまで、当センター職員や必要に応じてボランティアを導入し、意志伝達装置の定着まで一貫して当センターで係わるような支援体制をとっている。
    【今後の課題】
     意思伝達装置が補装具費の支給になった事により、日常生活用具で給付されていた時期に比べ申請から支給までに時間を要するようになっている。このことで進行性の難病の方の中には申請から支給までの間に病状が進行し、申請した入力スイッチが支給時には身体状況に適合せず使用できない状況も起こることがあり、申請から支給までのシステムについては検討が必要である。また、意思伝達装置の種類によっては機能の複雑さから使用の定着までに多くの援助と時間を要することがあるが、当センターのスタッフの限られた時間の中ではフォローが十分対応できない状況もある。今後、地域での支援体制を整備するために、ボランティア育成も考えていく必要性を感じている。
  • ~自立歩行獲得に向けて~
    片渕 広太郎, 橋詰 裕次
    セッションID: 157
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    【はじめに】
    今回、左人工膝関節再々置換術を施行後、化膿性膝関節炎を呈し下腿骨を骨切りした症例に対し、装具を処方し自立歩行獲得を目指してアプローチを行っている症例を報告する。
    【症例紹介】
    80代、女性。平成19年2月、左人工膝関節再々置換術施行。その後化膿性膝関節炎を生じ、3月にTKA除去、下腿骨上部約6cm骨切りし、膝蓋骨を除去する。平成20年3月の時点ではMMT:右下肢4、左股・足関節4、左膝関節屈曲3、伸展1、ROM-T:右膝関節屈曲120°(TKA)、左膝関節屈曲100°、左膝関節は不安定である。脚長差は、TMDでは7.5cm、SMDでは7.0cm(それぞれ右>左)の左右差がある。起居・移乗動作は、左下肢非荷重位であるが自立している。
    【装具紹介】
    今回処方した装具は、膝関節への負荷を減少・安定性を獲得し、脚長差を補うことで歩行獲得を目的としたものである。特徴として、大腿中上1/3から床面へ支柱があり、間に膝継手、足継手、床面と接する部分はあぶみを使用している。膝継手はリングロックを用い、歩行中はロックして歩行、着脱時・坐位時にはロックを解除して使用する。足部は完全免荷様になっており、足継手は可動式となっている。荷重部位は、膝関節・膝蓋靭帯部での荷重が困難であるため、大腿顆部、下腿部で膝関節への負荷を分散させている。
    【経過】
    平成20年3月に装具を処方。これより、上下肢筋力増強に加え、装具の着脱練習、平行棒内での立位練習から開始した。数日後より平行棒内歩行練習、両松葉杖での歩行練習を行った。また、洗面所で立位での整容動作練習を行い、ADL動作の獲得に向けた練習も平行して行った。現在、筋力増強、立位・歩行練習を行い、自立歩行を目指している段階である。
    【結果及び考察】
    処方して約1ヶ月が経過しているが、装具着脱自立、立位は自立レベル、歩行は両松葉杖歩行一部介助(体幹に手を添える程度)レベルで、つまづき、ふらつきが時折見られる。歩行を制限している原因として、大腿内側顆に荷重痛を生じていること、筋力・バランス能力が低下していること、長期にわたり車椅子生活を送ったことにより、左下肢の支持性が低下し、さらに持久力も低下していることが考えられる。これらの問題点に対してアプローチを行っていき、装具の改良を加えていくことで歩行の獲得は可能だと考える。今後、筋力増強・バランス・歩行・ADL練習を行い、装具の改良を加え、自立歩行獲得に向け検討していく。
  • ~義足歩行と車椅子駆動の比較~
    遠藤 正英, 田川 淳, 浅山 滉
    セッションID: 158
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】
    近年、糖尿病により腎障害をきたし、人工透析を導入している切断患者をみる機会がある。前回、人工透析中の四肢切断患者は義足使用下にADLは向上するものの、義足を装着しての歩行が転倒のリスクが高いこと、疲労度が高いこと、透析後の電解質変化により倦怠感が強く、運動量が低下することにより、日常生活において義足を使用しない傾向にあるにあることを報告した。
    今回、実際にADLにおける義足歩行と車椅子駆動の疲労度を調査したのでここに報告する。
    【対象・方法】
    対象は、当院で2004年4月1日から2007年6月1日の間に人工透析を導入した127例、うち、四肢のいずれかを切断し、現在生存される2例、1例は認知の低下、視力障害にて除外し、1例を調査した。
    方法は、修正Rorgスケールを使用し、上肢エルゴメーターでややきつい(7)を指標とし、2分間実施。その直後の血圧(水銀血圧計)、心拍数(心電計)を記録した。また、車椅子駆動、義足歩行(両ロフストランド杖歩行)を6分間行い、直後の血圧、心拍数を記録し、6分間歩行の正常値(持久力指標)と運動強度を比較した。比較にはDouble Product(DP:収縮期血圧×心拍数)を使用した。 なお、症例においては、事前に自律神経障害の調査として、高さの違う(運動強度の違う)Push upを繰り返し行い、直後の血圧、心拍数の上昇を負荷の増加と同様に認めたため、自律神経障害はないと判断している。
    調査は本人の承諾を得、また医師の監視の下実施している。
    【結果】
    上肢エルゴメーター直後の血圧178/54mmHg、脈拍93Beats、DP16554、車椅子駆動直後の血圧164/60mmHg、脈拍87Beats、DP14268、義足歩行直後の血圧202/64mmHg、脈拍107Beats、DP21614だった。それぞれのDPを比較すると、車椅子駆動、上肢エルゴメーター、義足歩行の順に高い値を示した。
    【考察】
    以前の調査より日常生活において、義足の使用頻度が少ないという結果が出ている。理由として義足歩行の疲労度が高いことが挙げられた。疲労度は車椅子駆動、上肢エルゴメーター、義足歩行の順にDPが高い値を示し、車椅子駆動は楽で、義足歩行は負荷の強い動作ということが言えた。そのため、日常生活での使用頻度が低下すると考える。
    【まとめ】
    今回の調査により、義足歩行が疲労度の高い動作ということが分かった。そのため、義足歩行は日常生活で使用せず車椅子での移動となり、廃用症候群を助長する因子となっている。廃用症候群を防ぐために、疲労を最小限に抑えられる歩行動作の獲得と持久力の強化を積極的に行なっていく必要があると考える。
  • 工藤 義弘, 尾山 純一, 西山 保弘, 矢守 とも子, 中園 貴志
    セッションID: 159
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    【はじめに】
    本研究は,温泉療法の改善効果を解明することを目的としている。前々は温泉浴が慢性心不全患者のナチュラルキラー活性(NK活性)機能に与える影響を検討し、前回は温泉浴が慢性心不全の血清中tumor necrosis factor-α(TNF-α)へ及ぼす影響を調べた。今回は血清中インターロイキン-1β(IL-1β)について検討した。IL-1βは,感染や炎症などで生じる各種免疫応答に密接に関与しているサイトカインである。
    【方法】
    対象:NYHAIII以下の慢性心不全患者(虚血性心臓病5名,心筋症1名)の6名(男性4名,女性2名)。平均年齢:79.6± 6.4歳(平均±SD)。研究の目的と内容に関しては十分にインフォームドコンセントを行った。温泉療法の環境:単純泉を選択した。室内温度を28℃とし、温泉温度は40度、入浴時間は10分間 、入浴頻度は毎日で週5回以上とした。入浴期間は2週間、入浴方法としては、半身浴または胸骨の深さまですることとした。温泉療法における安全性の確保と身体機能の把握のため初回時と最終回の前後60分間医師によるバイタルサインのチェツク、及び毎回の前後にバイタルサインのチェツクを行った。さらに適宜、医師による診察、チェツクを行い温泉療法の安全性に関しては慎重に臨んだ。採血は温泉療法前および2週後に血清中のIL-1βを測定した。IL-1β の測定にはenzyme-linked immunoassay (EIA)キット(Biosource社)を用いた。データ処理:Decision of Statistical Analysis。有意差検定:Paired-Student’s-t-test を使用した。
    【結果】
    血清中IL-1βの量は温泉療法開始前と比較して2週間後では低下傾向を示した(開始前: 0.879±0.210 pg/ml、2週間後: 0.77±0.154 pg/ml)。しかし両者で統計学的な有意差は認められなかった(P =0.1697)。
    【考察】
    温泉療法開始前と2週間後の各種血清中サイトカインの量とその動態変化を検討した。IL-1βにおいて温泉療法開始前と2週間後を比較して有意な差は認められなかった。しかし全体的に低下傾向を示した。IL-1βは主に単球・マクロファージ系細胞から分泌される多様な生物活性を有するサイトカインである。さらに、免疫応答の維持・調節には不可欠な情報伝達物質である。特に,興味深いIL-1βの作用機序は下垂体前葉に作用して体温を上昇させることである。つまり、 IL-1βは体温を上昇させる働きがあることから、本研究では温泉療法後体温が上昇するため、IL-1βの産生が抑制されたのではないかと考えられる。さらに興味深い知見は、温泉療法前にIL-1βのレベルが高い被験者は温泉療法終了後IL-1βの産生は抑制され、温泉療法前にIL-1βのレベルが低い者はその産生が増強されていることである。いずれも一定の基準レベルに近づくような反応が見られた。この所見は松野らの報告とも一致している。
  • 大重 匡, 高森 明久
    セッションID: 160
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】
     温熱療法施行時に入浴剤は、頻繁に使用されているが、その入浴剤の身体に及ぼす影響については、未知で使用されるケースが大半である。そこで、今回部分浴に、単純泉の部分浴と単純泉に市販の炭酸泉入浴剤を使用した部分浴を施行し、身体への影響を比較検討し新知見を得たので報告する。
    【対象】
     対象は、健常若年男性7名(平均年齢20.9±3.2歳)である。
    【方法】
     部分浴の方法は、室温を19℃に設定した部屋にて、充分な安静座位後に41℃の単純泉に右前腕部の部分浴(単純泉浴)を20分間行い、日を変えて市販の炭酸泉入浴剤を入浴剤の使用方法に沿って使用した41℃の右前腕の部分浴(炭酸泉浴)を20分間行った。なお、単純泉浴と炭酸泉浴はランダムに施行した。測定項目は、脈拍数、血圧、右上腕の皮膚血流量、舌下温(深部温)、表在温(額、頚部、左上腕、腹部、左大腿、左足背、左足趾)、Borgの主観的作業強度を温感に改変して主観的温感強度として測定した。測定は入浴前と入浴20経過時に行った。統計処理は、主観的温感強度以外は、対応のあるt検定で行ない、主観的温感強度は、ノンパラメトリック検定(対応のあるWilocxon T検定)で行った。
    【結果】
     脈拍は、安静と比較すると単純泉浴で8.8±6.0回/分、炭酸泉浴で9.3±6.0回/分増加した。安静時からの血圧の変化では、収縮期血圧は単純泉浴で3.3±8.2mmHg、炭酸泉浴で0.1±6.5mmHg低下し、拡張期血圧は、単純泉浴で1.0±6.9mmHg上昇したが、炭酸泉浴では1.6±5.4mmHg低下した。血圧における単純泉浴と炭酸泉浴脈拍比較では、有意差は認めなかった。皮膚血流量は単純泉浴、炭酸泉浴で大きな変化は認めなかった。深部体温は、単純泉浴で0.29℃、炭酸泉浴で0.40℃と上昇し、有意に炭酸泉浴が上昇した(p<.05)。表在温では、各部位の変化は入浴方法の違いで有意な差を認めなかった。主観的温感強度は、単純泉浴より炭酸泉浴が有意に高かった(p<.05)。
    【考察】
     身体に対する負担では、単純泉浴と炭酸泉浴の前腕浴では、心拍数は温熱作用により脈拍数が約10回/分程度増加したが、血圧はさほど変化しなかったことから今回の部分浴の身体に対する負担は軽かったと考える。それに対し、炭酸泉浴の深部体温への効果は単純泉浴より有意(p<.05)に高く0.4℃上昇した。さらに、温感も単純泉浴より炭酸泉浴が有意(p<.05)に高かったことから、市販の炭酸泉入浴剤の使用は、単純泉より客観的にも主観的にも温熱効果を上昇させることが確認された。以上のことから、前腕浴という身体の1部しか、加温しなくても市販の入浴剤が効率的に身体に温熱効果をもたらし、温感も高められたことから、入浴剤には加温効果があると考える。
    【まとめ】
     健常若年男性に対して、単純泉の前腕浴と単純泉に市販の炭酸泉入浴剤を使用した前腕浴を施行し、その比較を行った。その結果、市販の炭酸泉入浴剤を使用したほうが、単純泉より有意に深部体温が上昇し、有意に温感が高くなった。
  • 上川 毅康, 田中 仁史, 鈴木 大介, 大重 匡
    セッションID: 161
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】
    全身浴、部分浴などの温熱療法の急性効果は一般的に心拍数の増加をもたらし、交感神経優位になるといわれている。男女においては、代謝量、皮下脂肪、汗腺機能において性差を認めることから、部分浴(以下前腕浴)による温熱効果に性差を認めるのではないかと考え、41℃の単純泉による前腕浴を施行することにより自律神経機能において、性差が認められるか検討を行った。
    【対象】
    健常若年男女10名(内訳 男性5名、女性5名)
    男性年齢29.6±4.6歳(Mean±SD)〔24-36〕 女性年齢24.6±3.4歳(Mean±SD)〔22-29〕
    【方法】
    前腕浴の方法は、椅子坐位で十分な安静後に41℃の単純泉にて左前腕部の前腕浴を10分行った。浴槽内の水温は温浴療法用装置 BITHATIZER BT-5Nを使用し一定の温度に保たせた。浴前と浴後の測定は、日本コーリン 血圧脈波検査装置 from PWV・ABIを用いて心拍数、RR間隔平均、RR間隔変動係数を測定した。室内の気温は20.7±0.7℃、湿度は30~40%に保たれた。統計処理は、安静時と前腕浴10分経過時の2群間で、ノンパラメトリック検定(対応のあるwilcoxon検定)を行った。有意水準についてはP<0.05を有意と考えた。
    【結果】
    安静時を基準として10分後の数値を比較した結果、男性の心拍数は、安静時:69.3±8.9 10分後:74.0±10.4と増加し危険率5%にて有意差を認めるのに対し、女性は安静時:70.6±4.0 10分後:67.8±4.2と減少し危険率5%にて有意差を認めた。RR間隔平均値は、男性は安静時:881.3±105.8 10分後:824.4±111.3と減少し危険率5%にて有意差を認めるのに対し、女性は安静時:853.2±49.1 10分後:886.4±51.6と増加し危険率5%にて有意差認めた。RR間隔変動係数は、男性は安静時:5.5±3.1 10分後:3.8±2.9と低下し有意差を認めるが、女性においては安静時:5.4±2.1 10分後:4.8±1.4で有意差を認めなかった。
    【考察】
    温熱療法の急性効果として、体温上昇、心拍数増加もたらし交感神経優位になるといわれているが、今回の結果、男性は心拍数増加、RR間隔平均値低下、RR間隔変動係数低下で交感神経優位となったが、女性において心拍数は低下し、RR間隔平均値は増加するという温熱療法の急性効果とは逆の結果となった。この結果は女性が、男性と比較して皮下脂肪が多く、皮膚の断熱性に優れていることから前腕浴による温熱効果を得にくかったのではないかと考える。
    【まとめ】
    今回の研究の結果、心拍数、RR間隔平均値において性差を認める結果となった。しかし、本研究では10名という少ない対象人数で行ったこと、先行研究では反対の結果が報告されていることからも、データ数が少なく信頼性の高い結果は得られなかったと考えている。
  • 伊藤 恵, 廣門 一禎, 江藤 直子, 友延 夏子, 城 早矢香
    セッションID: 162
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    【はじめに】
    当センターリハビリテーション部では、治療中の転倒をなくすため、2005年8月にリハビリテーション部安全管理委員会(以下、安全管理委員会)を設置した。転倒事故防止とスタッフのリスク感性を高めるため、下記に示す活動を行っている。今回、安全管理委員会発足前後の転倒事故分析を行ない、活動の妥当性と今後の方向性について検討を行ったので報告する。
    【安全管理委員会活動内容】
    活動内容は、1.過去の事故分析、2.事故防止のための手引き・マニュアル作成、3.連絡・報告システムの確立、4.啓蒙・教育活動の実施である。特に教育活動では部内の教育委員会と協力して、過去の事故事例集や動作介助法の指導、部内の勉強会開催、月間事故件数のポスター掲示などを行っている。
    【対象・方法】
    部内で起こった転倒報告書(以下、報告書)を、安全管理委員会設置を境とし、2003・2004年度を前群、2005・2006年度を後群とし、転倒事故原因とその内容を分析した。
    【結果】
    報告書の件数は、前群40件、後群38件であった。転倒内容を以下の7項目に分類し、それぞれの推移をみた。1.自主練習中(7から2件)、2.歩行練習中(8から10件)、3.応用動作練習中(7から16件)、4.移乗介助中(3から3件)、5.その他の介助中(1から2件)、6.端座位からの動作中(7から2件)、7.立位動作中(0から1件)であった。
    【考察】
    大きく変化した内容は、第一に自主練習中の転倒が7件から2件と減少したことである。その理由は、スタッフが患者へ自主練習の説明を十分に行なったことや自主練習時間を助手のいる時間帯のみとし、マンパワーの不足する時間帯を避けるように時間調節を行った事などが挙げられる。また、操作が難しく危険を伴う機器や装置にはポスターを掲示し、使用する際には必ず患者がスタッフを呼ぶように周知させた。第二に、応用動作練習中の転倒が、7件から16件と大幅に増加した。これは、経験年数の少ないスタッフが増えたことが挙げられる。スタッフ数の増加は、患者一人当たりの治療時間が長くなる利点もみられたが、そのことで以前より応用動作練習を行なう機会が増す結果となった。経験の少ないスタッフでは、危険予測不十分であることは否めず、結果的に転倒する場面が増加したものと考えられる。第三に、端座位からの動作中の転倒は、7件から2件となった。動作内容として『仰臥位になろうとして』『靴や装具を履こうとして』などのような場面が多く、スタッフがそばにいることで未然に防げたものが多かった。そこで、杖や装具を治療前に準備をしておくことややむを得ず患者から離れる際は近くのスタッフに声かけを行なうなどの対策を強化した。これまでの安全管理委員会の活動は、事故が起こってからの対策を検討し、教育することを中心に行なってきた。今後も予想される危機を未然に防ぐことができるリスク感性を高める対策と環境設定が必要である。
  • 転倒に対する身体機能と精神機能の関連に着目して
    浦田 千生実, 北里 堅二, 大塚 裕一, 小島 美緒, 橋本 幸成, 前田 芳郎, 室原 良治, 上野 真副
    セッションID: 163
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    【はじめに】
    当院では現在,簡易的な転倒評価スケール(以下転倒スケール)の作成に取り組んでいる.先行研究においては身体機能に着目した転倒因子の検討が多いが,精神機能の関連について研究を行ったものは少ない.そこで今回は転倒スケールの作成を目的に,身体機能と精神機能の両面から転倒に関係する因子の検討を行った.
    【対象】
    対象は当院入院患者46名(男性24名,女性22名,平均年齢79.15±11.23歳).ベッドサイド訓練実施者以外のリハビリ実施者で,この1年以内に急性増悪等による身体的・精神的機能の低下を認めない者とした.障害老人の日常生活自立度の分類はJレベル6名,Aレベル6名,Bレベル27名,Cレベル6名である.
    【方法】
    まず,対象の身体機能検査,精神機能検査,障害老人の日常生活自立度を調査した.身体機能検査としては握力,歩行速度(通常・最大),Functional Reach Test(以下FRT),Functional Balance Scale(以下FBS),Timed Up & Go Test(以下TUG),閉眼・閉脚立位保持時間,FIMの移乗・移動項目を調べた.精神機能検査としては標準注意力検査法(CAT)を改良したもの,レーブン色彩マトリックス検査,FIMのコミュニケーション項目を行った.そして,対象を転倒有り群・転倒無し群に分類し,各検査項目に対しMann-WhitneyのU検定を実施した.
    【結果】
    転倒に対する有意性が危険率0.5%未満で認められたものは,レーブン色彩マトリックス検査と注意力検査(エラー数)であった.また,FBSにおいては検査困難な者が多く優位な関係が認められなった為,検査項目の中から可能な者が多い項目(20/45人以上)を選択し,再検討した.しかし,検定の結果,有意性は認められなかった.
    【考察】
    今回の研究では先行研究において転倒との有意性が認められていたFBSを始めとする身体機能検査において有意性が認められなかった.その理由として,対象の身体機能レベルが低かったのに比べ検査の難易度が高かったことが考えられる.また,結果では精神機能において強い有意性が示されていた.この理由として,身体機能検査が低い者でも精神機能の検査結果が高い場合は転倒するケースはほとんどなかった点が挙げられる.これについては,状況や自身の身体機能に対する判断力の高さ,注意力等が影響を与えているものと考えられる.
    今後の課題として,本研究の対象のように身体機能に重度の障害を抱える患者に適切な身体機能検査の検討を行うことや,今回使用した注意力検査についてはその妥当性を確認すること等が挙げられる.
  • 奥永 真由美, 秋満 智子, 川上 純平, 山? 志恵, 米田 美穂, 立石 矩之
    セッションID: 164
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    【はじめに】
    高齢者の歩行能力低下に杖の使用は必要な手段である。今回、杖使用者のBerg Balance Scale(以下BBS)を測定することにより、転倒に対する杖の影響について検討したので報告する。
    【対象】
    当院外来患者25名(男性6名、女性19名、平均年齢81.26±5.96歳、うち骨折経験者5名を含む)、全て杖使用者とし、認知症のない中枢疾患を除く屋外歩行自立レベルの者とした。
    【方法】
    対象者25名を転倒群12名(男性4名、女性8名平均年齢81.75±6.31歳)、非転倒群13名(男性2名、女性11名平均年齢80.69±5.63歳)に分類。全対象者について、BBSの測定及び転倒状況を聞き取り調査し、総得点と各項目についてt検定を用い比較した。
    【結果】
    BBSの総得点の平均は転倒群39.25±9.26点、非転倒群47.31±5.09点と有意差を認めた。(p<0.05)また項目2(立位保持)では転倒群3.50±0.65点、非転倒群3.92±0.27点、項目7(両足揃え立位)では転倒群2.75±1.01点、非転倒群3.69±0.46点、項目10(左右の振り返り)では転倒群2.00±1.15点、非転倒群3.77±0.58点でそれぞれ有意差を認めた。(p<0.05)その他の項目には有意差を認めなかった。
    【考察】
    今回の結果より、総得点において転倒群と非転倒群に有意な差が認められたことにより、転倒群でバランス能力の低下が認められると判断される。また、項目2・7・10においても有意な差が認められたことから、これらの項目の低下が転倒に大きな影響を与えることが推測される。
    更に転倒状況について詳しく調査したところ、転倒時杖を使用していなかったことが明らかとなり、杖の使用により転倒の危険性を回避できることが示唆される。このことからも杖を使用することで、項目2・7・10に関与する身体能力の低下を補助していることも考えられる。
    以上のことから、総得点の低下および項目2・7・10の減点が認められた場合、杖の使用を促すことで、転倒の危険性が低下すると予測される。定期的にBBSを測定することにより、杖の早期使用を促し転倒予防が図れるのではないかと考える。
    今回BBSによって転倒に与える杖の効果が明らかとなった。今後、症例数を増やし、総得点や各項目における関係性やそれぞれの転倒予測値を明らかにしていきたい。
  • 渡邊 佳奈, 小柳 傑, 溝口 記広, 枡嵜 麻美, 陣貝 満彦, 井口 典子, 一ノ瀬 真弓, 米倉 隆弘
    セッションID: 165
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    【はじめに】
    当法人は、19床の有床診療所を母体とし、地域に根ざした包括的・継続的なサポートを行うという理念を掲げ、 “医療”から“在宅生活支援”までを合言葉に様々な事業を展開している。その中で理学療法士(以下PT)として何を求められ、何を行うべきかを考える機会を日々経験している。そこで今回、当法人内職員を対象に他部署・職種が考えるPTの実態をアンケートにて調査した。その中で今後の役割と課題、より良いサービス提供を行うための方向性について若干の知見を得たので報告する。
    【対象・方法】
    当法人内の全職員73名を対象に、選択記載及び自由記載形式にて、理学療法の効果・各部署での情報交換・連携体制・PTに期待する取り組み等に関するアンケートを実施した。尚、回収期間は配布後1週間とした。
    【結果・考察】
    有効回答数は、64名(回答率87.6%)であった。特徴的な結果を以下に示す。1.理学療法への期待またはその効果を実感する項目については、各部署共に身体機能面の維持・向上、転倒予防が大多数を占めた。2.通所サービスでは、在宅生活の向上に繋がる理学療法への期待も高かった。3.グループホームでは理学療法の効果を実感できている結果となった。これは部署の特性として対象者の状態変化を把握し易い環境にある為ではないかと考える。4.全体的には、期待する項目(512例)に対し、実感している項目(230例)が少なかった。
    PTとの情報の共有は50.0%ができているとの回答であり、口頭等の直接的な手段が51.0%であった。そして、チーム全体としての連携状況については、連携できているとの回答が38.9%となったが、部署間で差が見られた。カンファレンスが定期的に開催されているデイケアでは77.8%が連携できているとの回答であったが、そうでない部署においては31.1%であった。情報を共有する機会を持つことの重要性を感じながらも、時間の確保が困難等の理由から、連携が不充分との回答が多い結果となった。
    今回の結果から、職種間の共通理解・認識不足が課題となった。現在のリハビリ室での理学療法が患者様の生活機能に繋がるものであるかを再確認し、PT側から積極的に在宅生活に関する情報収集を行うことが重要となる。生活における問題点を明確に把握することで、より具体的な目標の提示・適切な介助方法等の統一が可能となる。また、その内容をカンファレンス等を通して他職種にフィードバックすることで情報の共有を図り、互いに具体化した共通の目標に向かって、各職種の専門性を活かした関わりを持つことが重要と考える。
    【終わりに】
    今後、対象者のニーズの把握、具体的・効率的な連携体制の工夫に向け、対象者への調査も検討していきたい。
  • 下川 将輝, 丸山 倫司, 虎口 祥子
    セッションID: 166
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    【はじめに】
    高齢患者においては加齢に伴う身体機能の低下により低栄養状態に陥りやすく、栄養と運動のバランスが身体の維持・改善に重要といわれている。当院の身体障害者病棟(以下、身障者病棟)ではベッド上臥床を呈し、低栄養状態となっている患者を有している。今回、活動と栄養の関係について調査したため、以下に報告する。
    【対象】
    2007年10月から2008年4月の期間で当院の身障者病棟に入棟されていた患者のうち54名。内訳は男性19名女性35名、平均年齢±SDは81.9±10.1。平均罹病期間は14.7±33.2ヶ月。
    【方法】
    活動指標に障害老人の日常生活自立度判定基準を使用してB1群10名、B2群14名、C1群4名、C2群27名に分類し、栄養指標には血清アルブミン値と体重を使用した。活動指数と栄養状態の変動を身障者病棟入棟時と入棟後1ヶ月時のデータを比較し、それぞれの減少率を算出した。活動状態と栄養状態の変化をSpearmanの順位相関係数を用いて比較した。
    【結果】
    血清アルブミン値の平均はB1群3.07±0.7g/dL、B2群3.23±0.5g/dL、C1群2.6±0.3g/dL、C2群2.96±0.4g/dLであり、身障者病棟入棟から1ヶ月間の減少率はB1群112.8%、B2群100.6%、C1群97.8%、C2群104.2%であり、体重減少率はB1群100.4%、B2群105.5%、C1群97.8%、C2群102.2%であった。活動指数と栄養状態の間に相関関係は認めなかった。また、身障者病棟入棟からの変化を活動指数別で確認すると、改善群29%、変化なし群69%、低下群1%であり、栄養状態別では改善群36.4%、変化なし群12.8%、低下群50.9%であった。リハビリ介入の有無では血清アルブミン値はリハビリ介入群3.15±0.4g/dL、リハビリ非介入群2.86±0.6g/dL、体重減少率はリハビリ介入群101.3%、リハビリ非介入群105%であった。
    【考察】
    活動指数と栄養状態の間に相関を認めず、低栄養と臥床の経時的変化は見られなかった。合田らは低活動による筋萎縮・筋蛋白の代謝異常により栄養状態の低下を引き起こすことと報告している。今回は身障者病棟を対象に実施したため、平均罹病期間が14.7ヶ月であり栄養法は経口摂取困難な症例に対しても、経腸栄養や点滴により栄養管理が行われていたことが、活動指数と栄養状態の関係が見られなかった一要因と考える。しかし、全体として低栄養・低活動状態の低下を示していた。これは病棟の特性によりケアが中心となり臥床時間延長による廃用症候群の影響や主疾患の病態による影響があると考える。その中でリハビリ介入群がリハビリ非介入群に比べやや高値を示しており、活動の拡大や身体機能に対するアプローチが影響したことが一要因として考えられる。
  • -フィジカルテストからの予測-
    佐田 直哉, 竹内 明禅, 臼元 勇次郎, 成田 真, 五十峯 淳一
    セッションID: 167
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    【はじめに】
    スポーツにおけるタイトネスと障害発生の因果関係は多数報告されている。しかし、スポーツ競技では競技の動作特性を考慮する必要があり、タイトネステスト(以下、TT)のみでは障害発生を予測する事は不十分と考えられる。我々は平成18年よりメディカルサポートを行っている地域少年サッカークラブにおいて、日本サッカー協会が推進するフィジカルテスト(以下、FT)を取り入れた測定を実施している。今回、FTおよびTTのデータを基に障害発生についての検討を行ったのでここに報告する。
    【対象】
    対象は、平成18年4月~平成20年3月までに地域少年サッカークラブに所属する小学生18名(年齢11.5±0.5歳、身長141±6.4cm、体重33.4±5.4kg)である。内訳は、6年生(以下、6年群)が9名、5年生(以下、5年群)が9名であった。尚、対象者には事前に研究の主旨を説明し、同意を得た上で測定を行った。期間中に障害を呈した選手は5名であった。その内、4名は5年生時の発生であり、それらを障害群(以下、S群)とし、コントロール群(以下、C群)はS群と同年齢である選手5名とした。
    【方法】
    FTの項目は、20m走・50m走・ロングキック・スローイン・バウンディング(以下、BD)・10mシャトルランを測定した。またTTの項目は、指床間距離(以下、FFD)・SLR・殿踵間距離(以下、BHD)・足関節背屈・股関節内旋を測定した。各測定項目において、6年群と5年群およびS群とC群での比較を行った。統計処理は対応のないt検定を用い、危険率は5%未満とした。
    【結果】
    1)6年群と5年群での比較は、FTではすべての項目において6年群が有意に高かった。TTではFFD・右BHD・左股内旋で6年群が有意に低い傾向を示した。
    2)S群とC群での比較は、BDでS群が有意に高値を示した(p<0.05)。また、その他のFT項目では統計学的に有意差は認められなかったが、各項目の平均値はS群が高かった。TTでは左SLRでS群が有意に低値を示した(p<0.05)。
    【考察】
    学年間の比較では、FTとTTで有意差を示した項目があったが、6年時では障害発生がなく、今回はこれらの項目の関与は低かったと考えられる。S群とC群の比較では、BDでS群が有意に高値を示し、左SLRで有意に低値を示した。これらの障害発生に関与する要因として、少年期では骨端線の未閉鎖など身体的に未発達であること、個々の成長度と異なる過度な運動量、5年生という年代では技術的に未習熟であることが考えられる。また、少年期では骨と筋腱の不均衡から軟部組織の緊張が高くなると報告されており、軸足である左股関節の柔軟性低下が関与すると考えられる。よって、5年時ではTTが低値を示し、さらにFTでBDの数値が高い選手に対しては頻回に状態観察を実施し予防の必要があると考える。
  • 女子ミニバスケットボール選手の一例
    山下 健太, 村上 秀隆
    セッションID: 168
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    【緒論】
     近年、女性アスリートにおける摂食障害、月経異常、それらに伴う骨粗鬆症を「女子選手の三徴」とし、疲労骨折の主たる原因として問題視されている。
     女性アスリートの骨粗鬆症に対してはホルモン補充療法、疲労骨折には患部に負担のかかるスポーツの中止と装具療法が有用とされている。また、骨折に対しては近年、低出力超音波パルス治療による骨癒合促進作用が注目されているが、坐骨疲労骨折への超音波治療による骨癒合効果については渉猟し得た限り本邦での報告は無かった。
     今回、若年性骨粗鬆症に起因した多発性疲労骨折を呈した女子ミニバスケットボール選手の一例に対し、低出力超音波パルス治療を実施し、一定の効果を得られたので報告する。
    【症例紹介】
     症例は12歳女性で、身長158cm、体重40kg、バスケット歴4年の選手で、競技レベルは県大会優勝、全国大会3位と小学生トップレベルであった。診断名は右坐骨疲労骨折、第3腰椎分離症、後に骨密度の低値が発覚した。主訴は来院約2ヶ月前よりプレー中に右臀部、腰部が痛むというものであった。尚、初経は認められていない。
    【医学的所見と治療経過】
     X線上右坐骨の骨吸収像、MRIにて第3腰椎の右椎弓に分離所見を認め、各部位に圧痛、運動時痛を認められたが、SLRテストは陰性であった。右坐骨部に対しての低出力超音波パルス治療は伊藤超短波株式会社製オステオトロン3を使用し、週3回、6ヶ月間行った。痛みのコントロールについては、ストレッチと高周波治療を行った。損傷部の負担軽減を図るため、競技動作の制限も求めたが本人、家族の強い希望により受傷後も従来通りの競技動作を続け、包括的な治療はできなかった。骨密度は0.310g/cmで若年性骨粗鬆症が認められた。6ヵ月後に右坐骨骨吸収像の骨癒合が得られ、疼痛も軽減したが、第3腰椎に関しては現在も治療中である。
    【考察】
     今回、疲労骨折の治療に低出力超音波パルスを用い、6ヶ月で坐骨の骨癒合を認め、その部位に関して競技内での支障は消失した。恥骨疲労骨折のスポーツ復帰の時期は治療開始から平均7ヶ月といわれていることと、治療期間中十分な安静の確保ができなかったこと、更に恥骨よりも使用頻度が高く、よりダイナミックな筋の起始部である坐骨の骨折であったことを考慮すれば、今回坐骨疲労骨折に対する低出力超音波パルスによる骨癒合促進の一定の効果は得られたものと考える。
     しかし、疲労骨折の治療はあくまでもスポーツの中止が原則であり、加えてホルモンバランスの確認、ホルモン療法といった本質的且つ包括的な治療の上に、超音波治療が位置付けされるべきであり、今回のアプローチは結果的に対症療法に留まっており、女性アスリートの疲労骨折治療の問題点の本質には迫れなかったのではないかと考える。
  • -走行時の離地期に着目して-
    中畑 敏秀, 永濱  良太, 福田 秀文
    セッションID: 169
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    【はじめに】
    今回、走行離地期の腰椎アライメントに対する簡易的な評価法;「離地期再現テスト」を考案した。これは静止立位時の腰椎前彎に対して、離地期で予測される腰椎前彎の増強率を簡易的に定量化したものである。これを陸上長距離選手に対するメディカルチェックで用い、同時に行っている股関節タイトネステストとの関連性について検討したのでここに報告する。
    【対象および方法】
     症例は大学陸上長距離部員11名22脚(男子5名・女子6名)、平均年齢19歳であった。
     はじめに、矢状面から見て下位腰椎(L4)から上位仙椎(仙尾彎曲より上位の仙椎部分)の棘突起間を結んだ軸と床からの垂線がなす角度を「腰仙椎前傾角」として腰椎前彎の指標とし、その角度が大きい程腰椎前彎が増大しているとみなした。
     測定肢位は、「静止立位肢位(以下:STP)」と「離地期再現肢位(以下:TRP)」で行い、両肢位での「腰仙椎前傾角」を計測した。TRPの計測条件は、頭部体幹は床からの垂線が耳垂・肩峰・大転子を通り、一方の下肢を前方への踏み出し、下腿が床と垂直になるようにした。また前方側を評価対象側とした。他方の下肢は後方に引き、膝伸展、足関節最大背屈位で踵が離床しないようにした。
     その後、STPに対するTRPの割合を前彎増強率(TRPでの腰仙椎前傾角÷STPでの腰仙椎前傾角×100)として算出した。
     股関節タイトネステストとして、大腿四頭筋テスト(以下四頭筋T)、SLRテスト、股関節内・外旋可動域(背臥位、股関節・膝関節90°屈曲位)の計測を行った。
     統計学的検討として、前彎増強率と各タイトネステストの関係を見るためにピアソンの相関係数を用い、統計学的有意水準は5%とした。
    【結果】
     腰椎前彎増強率が高いほど1)四頭筋タイトネスは増大する。2〉SLRは低下する。3)股関節外旋可動域は低下する傾向を示した。
    【考察】
     離地期での腰椎前彎増強は、一般に股関節伸展制限に伴う代償として位置づけられる傾向にある。今回の結果では股関節伸展制限に関わる四頭筋Tでタイトネスの増加が見られたが、その他でSLRや股関節外旋可動域の減少が見られたことは興味深いことである。 腰椎前彎の制御は腹筋群が重要であり、特に腹横筋は腰椎の分節的な安定性向上や骨盤帯の安定性に重要であると言われている。この機能が破綻すると、骨盤帯の安定性獲得に股関節二関節筋やそれと連結する靭帯、回旋筋群が関与すると言われ、この安定性獲得の為の機能の逆転が股関節周囲筋のタイトネスを生じさせているのではないかと考えた。 今後、腰椎部と股関節の関連性について検討を重ねていき、スポーツ選手の障害の予防、改善に取り組んでいきたい。
  • 中村 雅隆, 河上 淳一, 宮崎 優
    セッションID: 170
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    【はじめに】
     従来より前十字靭帯(以下ACL)損傷における観血的治療は多くの治療法が考案・施行されている。その中でも一次修復術は他の治療法に比べ適応が少なく、術後リハビリテーションの方法や予後は報告者によって様々である。今回左膝ACL損傷後、一次修復術を施行しスポーツ復帰を果たした症例について考察したためここに報告する。
    【症例紹介】
     18歳、女性、柔道部(左組み手)、身長151cm、体重74kg、診断名は左膝ACL損傷、左膝外側半月板(以下LM)損傷である。
    【現病歴】
     試合中、自ら技をかけた際に相手に膝の上に乗られて受傷。当院受診時に靭帯再建術を勧められるが、監督や両親の意向により他院にてACL一次修復術を行なう。一時修復術後はリハビリを目的に当院を再受診しリハビリ再開となる。この時LMは保存的に治療する。
    【術後評価】
     腫張、熱感が認められた。関節可動域(以下ROM)テストでは左膝伸展-25°、屈曲75°であった。Lachman testは陽性であり、前方引き出しテストにおいても前方への不安定感が認められたものの、最終域で靭帯性のend feelが感じられた。MMTは屈曲、伸展ともに4レベルであった。
    【理学療法プログラム】
     (1)左膝ROM訓練(2) 装具・テーピング下にて左膝周囲筋訓練(3) 患部外訓練
    【経過】
     靭帯の連続性はあるものの、手術後より著名な前方不安定性の改善は認められず、期間がたっても不安定性は改善されなかった。痛みやROMや筋力の回復が早く、トレーニング中やトレーニング後の痛みがなかったため、治療やトレーニングが円滑に進んだ。
    【結果】
     術後5ヶ月で疼痛、ROM、筋力に問題が無くなりスポーツ復帰することができた。しかし期間が経過しても不安定性に著名な改善は認められなかった。
     復帰後約半年で同側MMを損傷し当院を受診した。その際のMRI所見ではACLの連続性が確認できた。その後損傷したMM切除術を行った。術中の所見としてACLは細く緊張のないバンドのみで機能的な靱帯ではなかった。
    【考察】
     術後の理学療法において疼痛、ROM、筋力の獲得が早期に得られた要因として手術の侵襲が軽度であったことや、靱帯を縫合することで生理的な靱帯の走行が保たれたことが考えられる。しかし機能的な靭帯は獲得することができず、細く緊張の無いバンドのみであった。術後5ヶ月より徐々にスポーツ復帰したが、復帰後も不安定感は消失せず、術後約1年でMMを損傷した。これはACL機能不全による損傷である可能性が高いと考える。
    【終わりに】
     今回、ACL損傷に対して一時修復術を行うことで、早期スポーツ復帰が可能であった。しかし結果的にMM損傷を続発した。ACL損傷に対する一時修復術は様々な適応を考慮した上で、明確な復帰判定基準を定める必要があると考える。
  • 河上 淳一, 中村 雅隆, 宮崎 優
    セッションID: 171
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    【はじめに】
     野球肘障害では、幼少期からの投球動作の繰り返しによる慢性的な投球障害を抱えていることも多い。特に投手においては、それまでの経験と培ってきたフォームの特性上での利点・問題点を兼ね備えている。今回、4年前から毎年夏期に投球時痛が出現する投手を担当する機会を得た。その症例に対して行った所見と治療について述べ、機能・フォーム上からくる問題について考察したためにここに報告する。
    【症例紹介】
     17歳、男性。硬式野球部、右投げオーバースローの投手(エース)。診断名は右野球肘(右上腕三頭筋付着部炎)。X線所見では、右内側上顆・肘頭に不正を認める。
    【現病歴】
     投球中(14歳)に、右肘関節内側痛出現。安静にて疼痛軽減するも、毎年夏期になると疼痛増強していた。今年は、冬季練習終了した2月初旬より投球開始、徐々に疼痛増強し当院受診となる。
    【初期評価】
     疼痛:右肘関節伸展にて肘関節後方痛、右肘関節屈曲時に肘関節内側痛を認めた。圧痛は右肘内側側副靭帯に認められた。フォーム中にはLate cockingからAccelerationにて右肘内側痛(キャッチボール程度でも)とFollow throughにて右肘関節後方痛(80%以上でのピッチングにて出現)。関節可動域(右/左):肘屈曲140°/145°伸展-5°/5°回外制限(右>左)肩外旋(2nd)95°/110°内旋(3rd)-15°/15°。肩関節柔軟性:著名に左右差あり。外反ストレステスト:0°・30°では疼痛出現しないが、2nd外旋では内側痛出現。筋機能検査:僧帽筋中部・下部の低下、腱板機能低下を認めた。投球フォームは、Early cockingでの肩関節の水平伸展が出現、Late cockingでは体幹と頚部は非投球の側屈が出現、Accelerationでは体幹の非投球側への過剰な回旋が出現、Follow throughでは手関節は中間位となっている事が確認された。
    【理学療法プログラム】
     (1)肩関節可動域改善(2)肘関節可動域改善(3)腱板・肩甲胸郭関節筋機能改善(4)フォームの再考
    【経過】
     春の大会中であり、試合では100球前後の投球を実施。練習では100球と30球の投げ込みを毎日交互に行っていた。
    【結果】
     投球時痛としてはAccelerationでの投球時痛は改善された。しかし、全力で投球した際のカーブ・スライダーではFollow through時に後方痛が残存した。
    【考察】
     初期に認めた肩関節・肩甲帯の柔軟性・筋力は早期に改善された。そのためLate cockingからAccelerationにかけての外反ストレスが減少し、疼痛が軽減したと考えられる。しかし、フォーム上に変化が見られても、後方時痛は改善されなかった。これは、ストレートでは手関節背屈・手指屈曲となり、屈筋群の緊張が強くReleaseまで行えることから、肘関節の過伸展に抵抗していると考察する。
    【終わりに】
    今回、強く出現していた内側痛に着目しアプローチを行った。肩甲帯・肩関節がフォームに及ぼす影響を再認識できた。今後の課題としては、球種に関与しない肘関節の使い方として、肘の単関節筋と近位から肘関節に付着する筋群に着目しアプローチすることが必要と考えられる。
  • 膝蓋骨周囲の愁訴に対する電気グローブでのアプローチの経験から
    松本 伸一, 川口 雄一, 岩永 健児
    セッションID: 172
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    【はじめに】
    膝関節の手術後には膝蓋骨周囲に拘縮や疼痛が残存する症例がみられることがある。当院においてACL再建術(鏡視下STG法)を行い、術後5ヶ月を経過し健側に比較して膝蓋骨の位置異常、疼痛が残存していた症例がみられた。そこで今回、アルファメディカル社のプロテクノPNFを用いた電気グローブによるアプローチを行い、興味深い結果を得られたので報告する。
    【症例紹介】
    症例はACL損傷後5ヶ月経過した成人女性で、術後5週間で退院となり自宅が病院から遠方であるためホームエクササイズに加え、2~3週間に1回の割合で外来リハビリテーションを行ない、術後5ヶ月での関節可動域は伸展においては自動・他動ともに0°、屈曲では自動で140°、他動では150°となっていた。
    問題点として#1、自動・他動運動ともに伸展運動の際に20~30°屈曲域での膝蓋骨部の違和感。#2、膝蓋骨下方の違和感・痺れ。#3、深屈曲域での膝窩部の鋭痛が。#4、視診・触診にて健側に比較した差として、伸展位にて患側の膝蓋骨のアライメント高位(約1横指)、frontal internal rotation、coronary internal rotationの傾向がみられた。
    【方法】
    電気グローブによる通電を加えながら、膝蓋骨上縁~大腿部・内側膝蓋支帯周囲に対し、軟部組織モビライゼーション・筋膜リリースを週に1回、2週続けて行なった。設定はMassageモードでinterval・innerレベルをオフにし、筋収縮が起きずに電気が流れていることを感じられる強度で10分間行なった。
    【結果】
    施行直後の変化として、#3,4に関しては大きな変化はみられなかった。#1,2に関しては症状を消失させることができた。2回の介入を終え、施行後1日の変化としては治療後の症状改善は持続しており、1週後の変化としては介入前と比較して著名な変化はみられなかった。
    【考察】
    プロテクノPNFでの通電の効果として、筋・筋膜・腱のリラクゼーション作用が生じ、血流改善と神経筋の促通効果が短期間期待できるとされている。
    膝蓋骨下方の感覚は神経の型・諸文献により差はあるものの、伏在神経の膝蓋下枝に支配されており、縫工筋や大腿筋膜、内転筋管を貫通する際に絞扼されることがあるとされている。#1、2の症状改善には筋膜の滑走性向上により神経絞扼、膝蓋骨のトラッキングなどの問題が改善できたためであると考えられる。
    上記した結果のほかに、膝蓋骨脱臼術後の対象者等に対しても同様の成果を経験している。今後の課題として、介入後の効果を持続させるために他の運動療法と併用してのアプローチや適応症状など、有用性を検討していきたいと思う。  
  • カナダ作業遂行測定を使用した事例を通して
    上江洲 聖, 原田 伸吾, 北井 玄
    セッションID: 173
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    1.はじめに:通所リハにおいて、作業遂行レベルでの目標がつかめず漫然と機能訓練を継続している利用者は少なくない。今回、通所リハ開始から5年が経過した事例に対して、カナダ作業遂行測定(以下、COPM)を利用して作業遂行レベルでの目標を発掘した結果、事例に変化が見られたので、その経過を報告する。
    2.事例:60代後半の男性。妻、長男と3人暮らし。元公務員で海外勤務も多かった。約10年前に両側片麻痺を発症。両側下肢に中等度、両上肢に軽度の運動麻痺、構音障害を有する。認知機能は問題なし。アDLは、トイレ動作、整容、食事は自立。屋内歩行は歩行器使用にて自立、屋外歩行は見守りレベル。5年前から当通所リハを利用。現在は要介護2の認定を受け、当通所リハを週2回、他通所リハを週1回利用。歩行能力と上肢機能の向上が本人の目標だった。
    3.経過と結果:特に面接場面を設定することなく、運動療法、屋内歩行訓練を実施しながらCOPMを30分程度で実施した。その後、事例が作業遂行レベルでの悩みを意識するようになった。すなわち、様々な失敗体験から作業に対する不安があること、散歩はしているが介助してくれる家族に気遣うこと、外食しているが手すりの有無など店を選ぶ必要があること、本当は海外旅行に挑戦したいが諦めていたこと、などを話し始めた。対話と評価を通して、事例の作業遂行が困難な原因として、運動麻痺や体力低下もあるが、事例は特に作業遂行に対する不安が強く、作業遂行の減少から自信が持てないという悪循環にあることが考えられた。最終的に、1年後に本人と家族が安心できる状況で海外に車椅子で旅行することを目標に、通所リハでは外食の機会を増やすこと、屋外歩行の距離を延長することを本人と話し合って決めた。現在、通常の運動療法に加えて、屋外歩行訓練と手すりのない喫茶店への外出訓練を実施している。また、担当者会議で家族や介護支援専門員へこれらの目標や訓練内容を伝達し、ケアプランの目標を再設定するとともに、家族や介護スタッフの介護技術を向上させることに協業を求めた。6カ月後、屋外歩行の距離は延長し、喫茶店内の歩行では、段差、椅子への移乗など安定してできるようになり、転倒のリスクが減少。事例も、自らの目標に対して前向きになり、訓練時に自ら色々と提案するようになった。海外旅行に関しては少し希望が出てきたと話すようになった。
    4.考察:まだ経過途中ではあるが、発症や通所リハ利用から数年が経過した維持期の事例においても、作業遂行レベルの目標を再設定することで、事例自身が作業遂行に意欲的になり、活動レベルを向上させることができた。特に今回はCOPMがきっかけとなった。通所リハでは利用者と個別に関わる時間の制限があるが、今回の経験から、訓練中の対話を工夫することで作業遂行レベルでの目標を設定できることが可能となった。また、本人にとって意味のある作業を引き出すことも作業療法士の役割だと再確認できた。
  • 田尻 美穂, 河添 竜志郎, 内田 正剛, 鈴木 圭, 竹内 久美
    セッションID: 174
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    【はじめに】
    今回、趣味活動の絵画をあきらめ、身体機能回復に固執し、ADLが自立レベルの症例に対し訪問リハビリテーション(以下、訪問リハと略す)を実施した。潜在的ニーズを考慮し、症例に適した方法を活用したことで、QOLが拡大し日本画の出展に至った症例を経験したので報告する。
    【症例紹介】
    脳出血後左片マヒ、60代、男性。麻痺レベルは軽度だが、動作に伴う筋緊張亢進を認めた。歩行は分廻しを呈しているが屋内独歩、屋外一本杖自立レベル。ADL自立(Barthel Index100点)。発症前の性格は外向的で自尊心が高く、趣味は絵画(日本画)とスキューバダイビングであった。発症後はパーソナルコンピューター(以下、PCと略す)操作、妻との外出などが主だった。
    【経過】
    第1期(訪問開始):機能障害と生活障害への不安と焦りがあり、治療方法に困惑、インターネットにて様々な治療に関する情報を検索するが整理できず混乱していた。そこで運動目的、方法、注意点を説明し、リハビリテーションプログラムを立案・実施したが忘れることが多く、運動継続困難であった。訪問開始時は絵画活動に対してあきらめ感があった。第2期(展開):元来、利用していたPCを手段として訪問日に運動指導内容、バイタル等を継続して記録するように促した。訪問日以外はメールの送受信にて記録確認、現状把握を行ったため運動継続可能となり、運動への理解が深まり運動目標の共有に至った。この頃より、治療に関する検索が減少し、メールの返信も主体的な表現が多くなり、絵画への取り組みも見られてきた。第3期(活動):オープンコミュニケーションを用いたメール送受信へ変更した。検索は美術展開催情報が主となり、さらに自分の絵画に対する他者評価を切望。評価を受ける場としてブログの立ち上げを提案、主に絵画活動に対する記事の投稿を促した。ブログに評価コメントがあり、県内美術展出展を決意し、申込みなど一人で行った。身体機能回復に対しては、「運動はコツコツ続けます。」とコメントが聞かれた。
    【考察】
    あきらめ感の強いケースに対し、自己表現しやすい手段を選択し方法を考慮した。そのことで自己表出が出来るようになり、絵画出展に至ったと考える。生活に対する考え方は、多種多様である。リハビリテーションの目的は、その人らしい生活を支援し、その人を取り巻く様々な因子を考慮したアプローチをする必要があることを再認識した。
  • アプローチに対し本人が明確な目的を持つことの重要性
    原田 伸吾, 上江洲 聖, 田村 浩介, 田原 行英
    セッションID: 175
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    【はじめに】
    今回、過去に琉舞を生業とされていた事例に対し、琉舞という作業に着目し、アプローチした。このことがアプローチ全てに良い影響を与え、よい結果を生んだ。その経過と考察を以下に述べる。
    【事例紹介】
    60代後半の女性。25歳前後でプロ認定試験にて新人賞を受賞。その後最高賞まで受賞し、教室を開き、何人も弟子をとってこれを生業とする。50歳代のときにクモ膜下出血を発症し入院。後遺症として視力の過度の低下や体の動きにくさが残る。H19年、頚動脈内膜剥離手術を受け、その後遺症により軽い右麻痺と言語障害が残る。現在は週4日当デイケアに通われている。
    【人間作業モデルのまとめ】
    1,遂行:歩行は近監視レベル。ROM,感覚に問題なく随意性も高い。しかし,両下肢の支持性は片脚立位で右側4,0秒, 左側1,4秒と低く頚部の立ち直り反応、防御反応は後方への反応無くバランスが悪い。前頭葉機能検査(FAB):10/18。 2,習慣:ADL概ね自立 3,意志:琉舞に対する興味があり価値が高いが,うまく踊れないと感じている。4,環境: 要介護1,家族状況は姉夫婦と同居。
    【経過】
    歩行バランスの改善の為、運動療法と共に琉舞を行なうことを提案し導入した。初期はふらつくことが多く、OTRが後ろから支えることが多かった。続けていく中で踊ること自体にモチベーションが高くなっていくと同時にふらつきも減少していった。そして現在では「教室に習いに行こうと思う。」と事例自身から話が出た。この時期、姉から「最近は転ばなくなっている。」という情報を得る。
    【考察】
    本事例は両下肢の支持性の低下も転倒に影響していると考えられるが、視覚的なフィードバックが少ないにも関わらず、歩行スピードは速く、転倒に対する認識が低い事などから、FABの結果で示唆されているように注意障害の影響が大きいと考える。このことから運動療法を継続して行なうと共に、琉舞を用いバランスを保つように注意を向けてもらおうと考えた。導入初期は、ふらつきが多くOTRが支える場面が多かったが徐々にふらつきが減少していっている。これは、事例にとって琉舞が、自己目的的で内的報酬がある作業であったこと。また、琉舞を上手に踊りたいという目的を持って運動療法を行っていた為だと考える。そのことが、自身の身体の状態に注意を払うことを習慣化できた要因ではないかと考える。吉川は、むずかし過ぎず、簡単過ぎず、適度な挑戦を求める作業に没頭する時に、自分はできるんだという有能感が高まると述べている。今回琉舞という挑戦課題に取り組み、有能感が高まったことが当施設以外の琉舞教室という社会への参加に目を向けられる要因となったのではないかと考える。本事例を通じて、一つ一つのアプローチにそのひと固有の意味を見出す重要さを再確認した。
  • OSA-IIを使用して協業した通所リハの事例
    田村 浩介, 上江洲 聖, 原田 伸吾
    セッションID: 176
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    1.はじめに:通所リハの利用者は身体機能の改善を期待することが多い。今回、運動療法から自分の役割へ価値が転換した事例と関わり、通所リハにおける作業療法の支援について検討したので報告したい。
    2.事例紹介:60歳代後半の女性。大学卒業後、小学校教員として2年間勤務。上京後、編集社に勤めて結婚。30歳代に会社の倒産、離婚を経験。その後、故郷で小学校の図書室の司書として勤務。この頃より油絵が趣味。50歳代、クモ膜下出血を発症し2年間入院。退院後から当通所リハを週2回利用している。娘と同居。
    3.経過1:通所利用開始当初は、身体機能面への意識が強く運動療法、物理療法を中心に行った。セルフケア自立レベル。家事は娘に依存。右上肢中程度、手指重度、下肢軽度の運動麻痺。交流技能良好。歩行は自立レベル。趣味である油絵は導入したが継続しなかった。
    4.経過2:娘の結婚にともなって独居となった。その結果、娘の役割であった家事全般を行わなくてはならなくなった。家事動作訓練、家事援助型の訪問介護を導入した。家屋改修、買い物時の横断歩道の調整など環境に介入した。その後、意志、習慣化、遂行、環境の関係性を明確にするために作業に関する自己評価(以下;OSA-II)と興味チェックリストを聴取した。その結果、新たな役割の獲得と自宅周囲の安定した歩行の獲得を目標に、映画ツアー、遊歩道の散歩、プランターへの水やり係を取り入れた。その後、計画された活動に継続的に参加するようになった。役割の獲得に向けてボランティア活動も共に計画した。その中で他利用者への参加の呼びかけを自主的に行っていた。また、「旅行がしたい」と話をするようになった時期に、各サブシステムの相互影響の変化を確認するためOSA-IIで再評価した。
    5.人間作業モデルのまとめ:意志:他人に自分を表現できない、目標に向かって励むことができない、と感じていた。習慣化:一家の主という役割があるが満足できる日課がないと感じていた。遂行:変化なし。環境:独居。生産者としての役割を遂行できる場がないと感じていた。
    6.考察:以上の経過があって事例とは「やりたいこと」について話し合う機会が多くなった。そして「デイケアは身体を治すだけではなく、人のために何かをやりたいと思える人たちが協力し合って活動する場であってもよいと思う。」と話した。これまではOSA-IIと興味チェックリストの結果から作業を選択していたが、有能感の獲得には至らなかった。OSA-IIの再評価とその後の話し合いから、事例が求めるのは興味のある油絵や必要のある家事などだけではなく、より価値を高く置く作業であることがわかった。クライエントにとって有意義である作業を提供するとき、生活歴や興味、役割からセラピストが安易に決定するのではなく、共に考えることの重要性を再確認できた。
  • 高齢者うつ評価尺度(GDS)を用いて
    松尾 美幸, 古賀 大亮, 西浦 健蔵, 塩井 良知子, 上城 憲司
    セッションID: 177
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    【はじめに】
    福岡県朝倉郡東峰村より,介護予防を目的とした認知症予防・支援及び閉じこもり予防・支援事業(以下本事業)を委託された.筆者は本事業に参加する中で,対象者の入院や配偶者の死別などの生活背景により,うつ傾向や閉じこもりなどによって活動範囲の狭小化や活動量の低下を招いているケースが少なくないことを知った.本研究では,高齢者うつ評価尺度(以下GDS)を用いて対象者の抑うつの調査を実施し,その結果をもとに本事業の内容の見直しと作業療法士の介入のあり方について考察することを目的とした.
    【対象】
    本事業に1年間通して参加できた参加者の中から,本研究の趣旨を対象者に説明し同意が得られた,8名(男性1名,女性7名),平均年齢は80.2±2.1歳を対象者とした.
    【調査方法】
    平成18年10月より1年間を調査期間とし,月8回の中で作業療法士(以下OTR)および理学療法士がそれぞれ月に1回,本事業へ参加した.評価は,GDS(平均4.4±3.6点)および改訂版長谷川式簡易知能スケール(以下HDS-R:平均23.3±5.8点)を使用し,1年後に再調査を実施した.
    本事業では,体操やゲーム,学習課題,個々の創作活動(ぬり絵や貼り絵)を実施していたが,GDSの結果により抑うつ状態が疑われた対象者に対しては,個別面談を実施し,活動をより個別性の高いものに変更を行い,抑うつ状態の方への接し方などを本事業のスタッフに助言するなどの介入をおこなった.
    【結果】
    1)調査開始からその1年後を比較すると,GDSの得点が,平均4.4±3.6点から平均2.6±2.4点へ,HDS-Rが平均23.3±5.8点から25.4±4.8点へと改善傾向を示した.
    2)個別面談においては,心身機能低下による不安・配偶者の入院による心配(1名)や独居による悩み(1名),死別による悲嘆(1名),また,本事業に参加しない日は殆ど一人で日中を過ごしており刺激の少ない状況(1名)など,抑うつ状態の要因が明らかになった.
    【考察】
    OTRとしては,月に1回のOT介入ではあったが,抑うつ傾向が改善され,また知的機能が維持されていたことがわかった.手探りの予防事業への参画ではあったが,評価の重要性や対象者の生活背景,精神面にあわせてプログラムを修正し,他スタッフと協力しながら個別的な対応の仕方を変化させることの重要性を感じた.この部分に関しては,作業療法的視点が有効と考えられるため,OTRの参加回数を増やすなどの働きかけを行政へ行う必要性があると考える.また,抑うつ状態を含め他の疾病が起こった場合の円滑な医療機関への情報提供が本事業に求められていると思われる.
  • 事例を通して必要要件を考察する
    後藤 仁, 古川 直美
    セッションID: 178
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    【はじめに】
     老人性認知症疾患治療病棟(以下、治療病棟)では、精神科的治療やケアによって精神症状や問題行動が安定又は改善したにも関わらず、退院に結びつかないケースを経験する。
     今回、家族・患者の関係性維持を意識し、早期から在宅復帰を想定した生活機能回復訓練をチームで行った結果、自宅退院が実現したケースを経験した。本症例を振り返り、治療病棟における在宅復帰に向けた関わり方について考察する。
    【症例紹介】
     86歳男性。診断名:脳血管性認知症、パーキンソン症候群。キーパーソン:妻。現病歴:平成18年11月頃より、妄想症状出現。徐々に精神状態の無気力さ、移動時のふらつきも出現した為、同年11月6日に当治療病棟へ入院。
    【初期評価】
     身体機能面は、ROMは頚部・体幹の伸展、回旋制限中等度認めた。精神機能面は、JCS II-20、HDS-R 8点、痴呆性老人の日常生活自立度Mレベル。パーキンソン症状による寡動・無動状態が出現。ADLは、セッティングや一部介助を要した(BI 42点)。又、起居や移動動作での打撲や転倒に対するリスクが高かった。家族のデマンドは「状態がよくなれば帰らせたい」であった。
    【経過】
     家族のデマンドを考慮し、カンファレンス(以下、カンファ)を入院2日目に実施。長期目標は在宅復帰を挙げ、当面の目標を(1)日中の覚醒レベルの向上(2)本人のできる能力や活動性の向上(3)起居・移動時の転落・転倒リスクの軽減としてチームアプローチを開始した。
     28日目には、家族より外泊の要望があり、PSWを介してケアマネと連携し、情報収集を行なった。30日目に2回目のカンファを実施し、外泊に向けた排泄・更衣動作の介助量軽減と転倒リスクに対応した動作指導の実施をチームで確認した。78日目には、家族同席のもと、3回目のカンファを実施。自宅退院前にショートステイを利用し、自宅の住環境調整や家族への介護指導、内服管理等、最終指導することを確認した。入院より131日目に治療病棟を退院した。ショートステイ退所後、305日経過しているが、自宅ではデイケア等を利用し、家族との同居生活が継続出来ている。
    【最終評価】
     身体機能面は、ROMは頚部・体幹の伸展、回旋制限が軽度。精神機能面は、JCS I-10に改善、HDS-R 17点、痴呆性老人の日常生活自立度はIII。基本動作とADL面は病棟内での起居・起立・移動動作が自立した他、食事・排泄動作も自立した。(BI 80点)
    【考察とまとめ】
     今回のケースでは、家族のデマンドに沿い、段階付けてカンファを実施したことで、家族の心情を確認した形で治療計画の立案が出来た。また、カンファ毎にケアマネなど他施設のスタッフとの連携を行い、外泊の日時や退院先の決定などのプロセスを早期に調整出来た。
     これらの取り組みが結果的に、早期の在宅復帰につながったと考える。本症例を通して、治療病棟から在宅復帰に向けては、早期の包括的なチームアプローチが有用であると改めて感じた
  • 小田 慎也
    セッションID: 179
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    【はじめに】
    当院に訪問リハビリテーションが開設されて3年あまりが経過をした。この3年間で患者さんがどのような経過を辿ったのか、また、今後の訪問リハビリテーションにおいての課題についてまとめたので報告をする。
    【方法と対象】
    2004年1月から2007年3月までの患者さん43名を対象とした。対象をそれぞれ年齢・介護度・疾患・終了理由などに分類し、検討を行った。対象は43名で男性26名女性17名、年齢は71±14.5歳、平均利用期間は11.6ヶ月であった。
    【結果】
    訪問件数についてだが、開始時から要介護3以上で半数以上を占める結果となった。訪問リハビリテーション開始時は介護度の低い方もいたが、あとで述べる症状固定や状態改善などの理由により、訪問リハビリの終了となったため、介護度が低い方の件数は年々減少となった。年齢別では70代以上で6割強を占める結果となり、全国平均とほぼ同様の結果となった。介護度別については、上五島においては要介護3以上で半数以上を占める結果となり、これも全国とほぼ同様の結果となった。疾患別については内科疾患で6割、整形外科疾患で3割となった。各科別の疾患名では、内科に関しては27名中20名が脳血管疾患の方であり、今回対象とした43名の約半数であった。訪問リハビリテーションの終了理由については、施設入所・症状固定・状態改善・状態悪化・外来移行の5つに分けることができた。施設入所を理由に訪問リハを終了したケースが最も多く、33名のうち10名であった。症状固定・状態改善については、ほとんどが介護度の低い方であった。状態悪化に関しては介護度が低い方・高い方両方で見られた。訪問リハビリテーションの定義に基づいて生活の再建及び質の向上ができた方は、できたが20名、できなかったが13名であった。生活の再建及び質の向上ができた方、できなかった方がいたが、その背景には家族の関与があったように思われる。できた方は子供が同居している、もしくは近くに子供達がいる環境にあり、常に協力を受けられる状態となっていた。できなかった方は、独居状態や老夫婦のみの生活であり、何かあった時などすぐに対応できる環境ではない状態であった。
    【考察】
    今回、患者さんの動向を知ることで、今後の課題が見えてきたように思われる。島内における高齢化率は年々増加傾向にあり、それに伴い独居老人や老夫婦世帯も増加すると思われ、今後の訪問リハビリテーションにおいて、家族の協力が得やすい訪問先では生活の再建及び質の向上を図ることはできるが、生活リズムの整っていない、モチベーションの低い独居老人や老夫婦世帯においては、介護度の低い状態でも注意が必要であり、簡潔で取り組みやすいリハビリテーションを提供することが必要だと思う。また、ケアマネージャーやサービスを提供する事業所とも情報交換を行い、情報を共有し、身体機能の維持・向上に努めることが必要だと考える。
  • 宮路 範子, 真辺 公彦, 井ノ口 隼人, 井上 由貴子
    セッションID: 180
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    【はじめに】
     当院では、急性期から維持期までのリハビリテーションに加え、訪問リハビリテーション(以下:訪問リハ)を実施している。このため、一人の患者に対して、入院から退院・訪問に至るまで一貫したリハビリを提供することが可能である。今回、日常生活動作(以下:ADL)・歩行能力獲得により在宅復帰を果たし、現在訪問リハ施行中であるケースについて報告する。
    【患者紹介】
     60代、女性。既往歴:糖尿病,脳梗塞(著明な麻痺なし)現病歴:H19年7月27日甲状腺全摘出術。同年9月28日当院へ入院。同年10月1日訓練開始。身体状態として、粗大筋力:上肢3,下肢3,体幹3レベル。ADL:機能的自立度評価法(以下:FIM)48/126,Barthel Index(以下:BI)10/100。基本動作:寝返り一部介助,その他全介助。
    【経過】
     訓練開始時、ベッドサイドにて筋力増強訓練,基本動作訓練を中心とした訓練実施。約2週間後、離床を促し、筋力増強訓練,移乗動作訓練,車椅子駆動を中心とした訓練実施。約1ヵ月半後、平行棒内歩行訓練・トイレ動作訓練実施。状態として、基本動作の獲得によりFIM:80/126・BI:40/100・粗大筋力:上肢4レベル。約3ヵ月後、一本杖歩行訓練・階段昇降訓練・入浴動作訓練実施。同時期家屋評価実施。(廊下に手すりの設置・階段設置)状態として、歩行動作獲得・トイレ動作獲得に至りFIM:109/126・BI:75/100。約4ヵ月後退院・訪問リハビリ開始。退院時FIM:115/126・BI:85/100。
    【まとめ】
     今回、本症例は60歳代と若いこともあり入院当初から在宅復帰を目標とした訓練を開始した。特に基本動作及び歩行に関しての自立を目指して実施した。これらの能力が上がることで、退院後在宅での生活レベルを高めることが出来た。退院前カンファレンスを実施し、在宅生活と入院生活の環境の差が問題点として上がり、家屋評価の必要性があると判断した。また、継続したリハビリテーションが必要であるが、通院困難であるため、訪問リハでの訓練を計画した。家屋評価を実施したことにより、階段・段差があるという情報を得ると共に家屋内の問題点を把握し、早期より階段昇降訓練実施など在宅復帰に沿った訓練を実施することが出来た。現在、訪問リハ施行中。訪問リハでは、訓練を行うことで現状維持・改善と共に状態把握に繋がっている。今後の展望として、他職種との一貫した連携システムを図りながら、利用者のニードに合わせより良い医療から介護へとつなぎ目のないサービスを提供し、在宅復帰を目標としたリハビリテーションを行っていくべきであると考える。
  • ~当院通所の現状と課題について~
    加藤 裕幸, 嶋田 靖史, 幸地 栄一, 大石 弥生, 中島 聖二, 内田 有哉
    セッションID: 181
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    【はじめに】
    医療制度改革を背景に維持期のリハビリテーションは介護保険への移行が促進された。それに対応するため、個別・短時間型通所リハビリテーションを開設した。その現状と課題について報告する。
    【施設基準】
    平成18年9月開設。サ-ビス提供時間:3時間以上4時間未満。実施単位数:午前1単位(9時~12時10分)、午後1単位(1時30分~4時40分)の2ク-ル制。人員配置:専任医師1名、理学療法士2.5名、作業療法士1名、看護師1名、相談員1名、介護員4名。
    【登録者状況】
    開設から平成20年2月までの16ヶ月間の登録者191名(男性90名、女性101名)、平均年齢71.6歳。介護区分:要介護121名(63.4%)、要支援70名(36.6%)。疾患割合:脳血管疾患103名(53.9%)、運動器疾患80名(41.9%)、その他8名(4.2%)。送迎:施設送迎158名(82.7%)、自家送迎33名(17.3%)。
    【提供サ-ビス】
    食事・入浴サ-ビスなし。送迎は範囲限定対応。個別プログラムでは 1.立位歩行等の抗重力活動促進 2.日常生活動作トレ-ニング 3.個人活動、趣味活動の支援の点に留意している。利用者の状態や個々のニ-ズにあわせた柔軟な対応を実施している。
    【現状と課題】
    利用者は、要介護度が軽度で比較的若い年齢層の者が多い。認知面の問題がなく活動性も保たれており利用意識が高い。利用目的の多くは、個別トレ-ニングによる心身機能、ADL維持。在宅生活のフォロ-だけでなく、術後プログラムの引継ぎ、訪問系サ-ビスからの移行、介護予防等に対応している。更新認定となった者のうち介護度が悪化した者は8名、それ以外は維持または改善していた。191名中、利用終了者は58名(30.4%)。そのうち30名(51.7%)が入院・通院加療のため終了している。介護度悪化や終了理由の半数は基礎疾患悪化に起因しており、通所での健康管理と主治医との情報交換等、機能分担と連携が課題と考えられる。介護度改善や日常生活に自信がついた等の理由で終了した者は20名(34.5%)、その他8名(4.2%)であった。個別プログラムの方針が心身機能維持向上だけでなく、在宅での活動性や生活機能向上へと取り組めた結果と考える。改善にて終了した者は、適切に他のサービスや地域診療へ移行している。通所利用動機が漠然としている事が多く、短時間で運動すること自体が目標となることなく、個別の目的や方針を確認しながら適時の計画見直しが必要である。新たなニ-ズや課題を把握する為にも、ケアマネ-ジャ-や本人・ご家族との連携が重要と考える。
    【まとめ】
    従来の通所系サ-ビスでは介護負担軽減の役割が大きく、介護予防効果も上がっていないとの指摘もある。また、介護保険サ-ビス利用者の半数以上が軽度者であることからも、個別・短時間型通所リハビリテ-ションの果たす役割は今後も大きくなると考えている。反面、低い介護報酬や送迎の手間など運営上の厳しい一面もあり、改善策が望まれる。
  • 俵積田 有輝, 野田 恵理, 吉村 達哉, 野尻 良, 前田 英児, 槌野 正裕
    セッションID: 182
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    【はじめに】
    社会の急速な高齢化に伴い,介護予防や健康増進に目を向けた取り組みが全国的に注目されてきている.当院は,平成12年から県より宇城地域リハビリテーション広域支援センターを受託している.しかし,当院コミュニティー校区である富合町での活動は少なく,地域住民との交流が少なかった.そこで,地域住民との交流や介護予防,地域の活性化を目的として健康教室を開催した.今回,本活動についての経緯と現状をまとめ,その結果より今後の展望を述べる.
    【参加者及び方法】
    参加者は年齢,性別を問わず地域住民を対象に募集し,男性1名,女性15名が参加した.開催期間は7ヶ月間,週1回の頻度で計29回実施した.1回の実施時間は90分とし,内容は関節疾患や内科疾患等についてのミニ講話,ストレッチ,当院のオリジナル体操及びボール運動,エルゴメーター等を行った.効果判定について,今回は初回と4ヵ月後に長座位体前屈, 握力,ファンクショナルリーチ,開眼片脚立位,timed up & go test(TUG)で比較した.統計学的処理はt検定を用い,有意水準は危険率5%未満とした.あわせて,平均参加人数についての検討も行った.
    【結果】
    各評価の平均値の結果は,長座位体前屈は31.2が36.1(cm),握力は右が25.6から31.5(kg),左が25.8から30.3(kg),ファンクショナルリーチでは26.9が31.7(cm),開眼右片脚立位は25.6が31.9(秒),開眼左片脚立位は30.3が37.3(秒),TUGは9.9が7.7(秒)であり,長座位体前屈,握力,TUGは有意に効果が認められた(P<0.05).片脚立位とファンクショナルリーチは全体として改善しているが有意な差は認めなかった.また,参加人数の検討は,前半(初回から4ヶ月)が63%(10人/回),後半(4ヶ月から最終)が34%(5人/回)であった.
    【考察と今後の展望】
    結果より定期的な健康教室において,身体機能の向上が認められた.これは,理学療法士の視点から専門的な指導を行う事で,運動への関心が高まり効率の良い運動が行えた為と考える.参加者が減少した原因は開催期間が長期間だったこと,同じ運動を継続した事で参加者の満足度が下がったこと,開催した時点で体力測定の詳細な日時を決定しておらず参加者が予定を組みにくかった事などが考えられる.このような結果と反省点を踏まえて,今後は内容を再考し,アミューズメント性を高めることで楽しんで参加できるような工夫が必要である.また,健康教室に継続して参加することで,どのような効果をもたらすかを参加者へ十分説明し,各個人の目標を設定することが重要であると考える.この活動を通じて,住民の満足度を向上させて,地域での交流を深め,より一層住民の介護予防に努め地域の活性化に寄与していきたい.
  • スタッフ間の意識改革による転倒予防
    岩田 裕也, 毛井 敦, 山形 茂生
    セッションID: 183
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    【はじめに】
    今回、自宅での転倒数が多い利用者に対して情報を聴取しながら通所リハ施設内で主に、アプローチを行なってきたが、転倒数の減少につながらなかった。家族・訪問スタッフ(ケアマネ・ヘルパー)と共に生活状況の確認や情報交換を密に行い、家屋配置を変更し、動線を単純化することで、転倒回数が減少した。今回経験したことで、チームアプローチに求められる過程について若干の知見を得たので報告する。
    【症例概要】
    65歳 女性 診断名:パーキンソン病(H10~)
    H16,11より通所リハ利用開始。自宅で平均4~5回/日の転倒を繰り返していたが、骨折等の怪我にまでは至っていなかった。通所リハ利用時に自宅での転倒の状況を細かく聴取するが、転倒の背景が把握し難く、スタッフ間での情報交換が断片的な状態であった。
    【チームアプローチとその経過】
    家族・訪問スタッフと共に転倒場所を確認しながら生活状況を調査すると、広範囲において転倒場所が多く、動線が複雑な家屋配置となっていた。家族・ヘルパーが居ない時間帯に転倒が多く、聴取した情報からは把握できない生活状況が見えてきた。通所リハ利用状況と自宅での生活状況の違いをスタッフ間で確認しながら情報交換を行い、転倒の要因となっている問題点を明確にした。
    動線を単純化するため家屋配置の変更や動作の安全性を高めるための促しとなる張り紙などを提案した。問題点に対して各職種が専門性を活かしながら「転倒予防」という共通の目標を設定することで、スタッフ間の意識が高まり、お互いに見えなかった自宅生活の状況の変化や通所利用状況の変化が見られた時に情報交換が行いやすくなった。徐々に自宅での転倒数は平均1~2回/日となり、転倒場所も狭小化され転倒予防につながった。定期的に行なわれていたケア会議でも情報交換の重要性を認識できたことで参加スタッフが増加した。
    【考察】
    各職種が自分の役割を理解し、専門性を活かしたアプローチを行うためには利用者の生活の場をしっかりと把握した上で情報交換を行い、共通の目標を設定することが必要である。断片的に生活状況や家屋環境を把握しても、それぞれの情報と実生活がスタッフ間でつながるかが重要であると考える。スタッフ間で共通の認識を持つことで統合的なチームアプローチが構築されやすい環境となり、新たな問題点に対して迅速に対応できるチームになると考える。
    得られた情報への直接的なアプローチだけに留まらず、情報の見方の工夫や、対処の工夫など情報のアセスメントを行うことでチーム全体のフォロー体制が向上する。アプローチの幅が広がることでPTとしての専門性が発揮される場所は更に広がるのではないかと考える。
    【まとめ】
    機能的リハビリや住宅改修・福祉用具の導入等が必要であると同様に、スタッフ間での情報の密なアセスメントや交換が行えるチーム作りが必要であり、各職種の専門性が発揮しやすい環境を整えることが重要である。
  • 加藤 一俊, 重吉 太一
    セッションID: 184
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    【はじめに】
     当センターは大分県より別杵速見圏域広域支援センターの委託を受け、様々な活動を行なっている。その中の一つである転倒予防研究会を平成16年度より発足し、地域の医療従事者へ転倒予防についての啓蒙活動を行なっているのでここに報告する。
    【活動目的】
     病院や施設の職員に対して高齢者の転倒に対する危険性を理解してもらい、転倒予防への医学的対応を理解していただく事を目的としている。
    【活動内容】
     平成19年度の活動内容として圏域の医療従事者を対象とした転倒予防教室を初級と中級の2回に分け開催した。内容として初級が「転倒予防体操の実践」というテーマで転倒の疫学、転倒リスクの説明、健脚度の評価、転倒予防体操の紹介を行なった。中級では「転倒予防の医学的対応」というテーマで薬剤と転倒の関係、正しい靴の選び方の講義を行なった。また、講師の依頼があり、1施設の職員を対象に転倒予防講義を行なった。その内容としては実際の転倒予防体操を職員と一緒に行なうという実技中心のものであった。
    【結果】
     初級の転倒予防研究会研修会参加人数は33名であり、内訳は理学療法士6名、看護師6名、介護福祉士12名、ケアマネ3名、その他6名であった。中級の転倒予防研究会研修会の参加人数は40名であり、内訳は理学療法士9名、看護師6名、介護福祉士18名、ケアマネ3名、その他4名であった。施設を対象とした転倒予防教室では参加人数は26名であり、ケアマネ9名、介護職7名、訪問看護師3名、その他7名であった。大部分の参加者が「大変参考になった」と答えられており、転倒についての知見を深めることができたのではないかと感じている。また、本研究会研修会を開催していく中で、各施設からの講師派遣依頼が増加している。
    【考察】
     今回我々は県リハセンター共催の転倒予防指導者養成講座に参加し、その内容を元に実践してきた。現在、転倒予防の重要性は広く理解されてきており、各地で様々な取り組みがなされてきているが、PTとして転倒予防を地域で実践するに当たり、他職種複合的アプローチにて「転倒予防の医学的対応」を実践することが重要であるように考える。
    今後はアンケート結果を参考にし、更に分かりやすく、理解しやすい講義を開催していく。また、実際に他職種協業にて地域での転倒予防教室を開催し、教室運営のノウハウも蓄積していき、地域リハビリテーションの中核を担っていけるだけの知識・技術も高めていきたい。
  • 日中落ち着かず訓練へも拒否的な症例から学んだ事
    土橋 ゆかり, 佐藤 友美, 佐藤 浩二, 大隈 まり, 衛藤 宏
    セッションID: 185
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    【はじめに】
    協調運動障害や仮性球麻痺に加え、発動性低く訓練に対しても消極的な症例に対し病前の生活様式や興味関心を把握した上での活動が有効であった。今回の経験を振り返り発動性を引き出す為の活動提示の視点を報告する。
    【作業療法評価】
    80歳代、男性、診断名は脳梗塞後遺症、左右不全麻痺、両側仮性球麻痺、Br.Stage右上下肢stageVI、左上下肢stageV。難聴、嚥下・構音障害で著明あり、Yes、No程度の意思疎通は可能。B.I.は25点。であり、セルフケアは車椅子主体で要介助状態。家族構成は妻・娘の3人。
    【目標】
    3ヶ月で可能な限り妻と娘との在宅生活が継続して行えるよう、セルフケアが見守りから軽介助にて遂行可能となる。併せて、日中は落ち着いて生活できる活動を探り、生活リズムを確立する。
    【経過】
    更衣・整容の訓練を1週間導入するも訓練を拒否した。そこで、本人の意思が向けば主体的に動くことができる点を生かし、 (1)本人自ら関心を示した活動 (2)生活歴に基づく活動(3)OTが「これは症例が集中してできる」と考えた活動、の3つの視点から活動選択し、これらの活動を通して発動性を引き出し日中落ち着いて生活でき生活機能の改善に結び付ける事を試みた。以下、各活動選択の経過を記す。(1)では活動への関心が高いものを探る際の指標として、日常生活の中で注意が止まる、指を差す、物を手に取って見る、他者を呼んで何らかの主張を示す、の4点を重視した。その結果、「屋上へ行く」、「猫と触れ合う」、「陶芸」に関心を示した。 (2)では、なじみのある活動や手続き記憶を通して発動性を生かす事ができると考え生活歴に基づく活動を提示した。結果、「囲碁」、「新聞を読む」を選択した。 (3)では様々な環境を設定する事で関心を広げる事も必要と考え「パズル」、「棒体操」、「絵画」を実施した。
    【その後の経過】
    訓練時は、本人の関心を示した屋上にて歩行を行いその後、訓練室にて囲碁を実施する等、内容を組み合わせた。この結果、意欲的に歩行し能動的に軽介助歩行が行えるようになり、自分の意思をジェスチャーにて伝えることや感情表出も多く見られるようになった。日常生活場面では、身体耐久性は向上し介助量の軽減が図れ、約3ヶ月で目標達成となった。最終時、B.I.35点。在宅訪問の際は、仏壇に参る為やトイレに行為に妻との軽介助歩行が可能であった。退院6ヶ月後も、妻と散歩や畑に行く等、日中は離床し本人らしく在宅で過ごしている。
    【まとめ】
    訓練に対して拒否的で日中落ち着かない患者に対して、セルフケアへの直接的な訓練だけでなく様々な環境で本人の行動を評価し興味や関心を生かした作業活動を選択・提示する事が、活動のきっかけとなり心身機能面や活動面の機能向上には重要であった。
  • 余暇活動から役割の獲得へ
    川手 梓, 東條 竜二, 花山  友隆, 瀬戸山 泰樹, 松元 寛文, 山元 奈緒子
    セッションID: 186
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    【はじめに】
    将来の生活への不安から悲観的になったO氏に本人が希望した余暇活動を用いて介入を開始した.その結果作業が発展し,有能感を得,ADLと共に家庭での役割を獲得するに至った例を経過を踏まえ報告する.
    【事例紹介】
    O氏76歳女性,右利き,独居.診断名:脳血栓症. H19年10月早朝左手足の痺れと言葉のもつれを訴えて当院救急搬送,翌日理学療法開始.翌月回復期リハビリテーション病棟で作業療法開始. 既往歴:両膝変形性関節症に伴い疼痛あり.
    【初回評価】
    Br-Stage:左上下肢・手指II.感覚は表在深部共に軽度鈍麻. 筋力:右上下肢4・左上下肢1.観察から失行様の症状,注意障害を認めた.寝返りから座位保持は軽介助, 起立・立位保持中等度介助を要す.食事・排尿排便管理以外のADLは全介助.Barthel index(以下BI):30/100.機能的自立度評価表(以下FIM):53/126. 面接:一番の問題として真っ直ぐ座れず陰部清拭が出来ない事,何も出来なくなった事を挙げ, 感情失禁も見られた. 職業歴:学校職員. 趣味は園芸・書道・読書.ゲートボールに通い,余暇を楽しむ生活をされていた.新たな趣味として絵手紙をしたいと思っていた.
    【介入方針】
    面接より身体機能が著しく制限された事から有能感が低下,退院後の生活を悲観し,受動的となり,家族に対して申し訳ないという気持ちが強いことが伺えた為,まずO氏と協業に努めながら意味のある作業を用い,ADLの向上を図ると共に有能感が得られる様支援した.
    【経過】
    第1期:座位安定性の獲得を目標にO氏が希望した絵手紙を用い,段階付けをしながら,物品を交え,難しい工程の問題解決の方法を一緒に考えた.座位は安定し,陰部清拭可能となった.物品操作の効率が向上した事から,訓練中の動作を他の場面でも利用できる事に気付き,応用が可能となった.第2期:具体的な要望が聞かれるようになり,ADLへ介入を行った.また余暇時間を活用,生活リズムが構築され,自室で日記をつけ始めた.第3期:介護サービスの利用が予想され,O氏より送迎車が来る前に朝食・整容・更衣を済ませたい, 娘の役に立ちたいという希望が聞かれた為, 更衣の習慣を促し,簡単な調理・洗濯等家事動作訓練を中心に介入した.
    【最終評価】
    Br-Stage:左上肢・手指II,下肢IV.筋力:上肢・手指2,下肢4.BI:80/100.FIM:107/126.4点杖での短距離歩行は可能であるが,膝疼痛の増悪予防の為,主な移動は車椅子で行い, 院内ADLは高次脳機能障害の影響無く入浴動作以外自立となった.在宅生活への不安は軽減し,有能感を得られる作業を獲得した.
    【考察】
    介入当初悲観的であったO氏は,様々な作業を通して,工夫をする事で作業が可能になる事を経験した.新たな作業に挑戦する意志を抱き,役割を担った生活を望めるようになったと考える.
  • ~一事例を通して~
    岩田 充史, 福田 久徳
    セッションID: 187
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    【はじめに】
     今回、交通事故により瀰慢性脳損傷を呈し、ADL・IADLなど遂行能力に問題を生じた患者(以下事例)を担当させて頂く機会を得た。事例を人間作業モデル(以下MOHO)から評価し、カナダ作業遂行測定(以下COPM)を機能回復に合わせ実施する中で、クライエント中心の作業療法を展開していった。その中で職場復帰へのきっかけを作る事ができたため、それまでに至る経過を踏まえ一見解を報告する。
    【事例紹介】
     24歳男性。H19.2.13バイク事故にて頭部外傷。MRI所見にて両側前頭葉、右側頭葉、中脳、脳梁に出血所見有り。骨折部位:右大腿骨骨幹部・右橈骨遠位端。JCS:2-III。入院日:H19.3.19。翌日より作業療法開始。介入1ヶ月後の評価:Br-stage左右共に上肢IV~V・手指IV~V・下肢IV。基本動作:寝返り自立、起き上がり軽介助・立ち上がり中等度介助。B.I:10/100(食事・移乗動作以外全て多介助)。病前はA町にある板金工へ仕事に行っていた。
    【アプローチ】
     COPMにて事例にとって友人や彼女の存在は大きなものであった。しかし、事例は過去の自己とのギャップに自信を喪失し自殺企図が現れた。そこで事例が問題として挙げたADLと平行して友人や彼女との繋がりを保つ目的にてメール作成を実施した。Thelmahaは「実際に作業を遂行することは自己効力の情報に関する最も影響力のある要素である」と述べている。その後も定期的にCOPMを実施する中で、クライエントを尊重し、意志決定に参加させ、クライエントのニーズに合うように、クライエントと共にアプローチを展開していった。
      【結果】
     Br-stage左右共にV・手指VI・下肢V.B.I:100/100。具体的かつ事例にとって意味のある課題を探し、行動計画を練り、実行するといったサイクルが確立していった。事例が行なう作業の経験を通して有能な自己の再獲得を図ることができ、自発的課題の出現がみられADLに留まらず事例の役割として仕事に眼を向けることが可能となった。
    【考察】
     村井は「意味ある作業が加わることで生活が変わる。生活が変わることで人生が変わる」と述べている。食事や排泄動作などのADLと共に、事例の生活の中で意味ある作業に着目し、評価・アプローチを実施することで、自己決定機会が増加した。自己決定が増加することで病前の役割や習慣を再獲得することが可能となった。事例にとって意味ある作業から新たな作業が生まれ、自分が何に価値や役割を持ち、何ができ、何をしたいのかといった自己洞察を深め、その積み重ねが職業復帰への足がかりになったのではないかと考える。
    【まとめ】
     クライエント中心の作業療法では患者と協業していく姿勢が重要視される。セラピストからみた問題点と事例が自分の問題とすることが一致していれば、それを改善するために両者の協業が一層推進し、事例の作業療法への参加が円滑に進む。今後、対象者をみていく上でAMPSや作業に関する自己評価法(OSAII)など遂行・習慣・意志への客観的評価を行い、それらの変化が人に与える影響を検討していきたい。
  • 一升瓶の操作、移動へのアプローチ
    枦山 祐子, 渡 裕一, 木藤 博志
    セッションID: 188
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    【はじめに】
    前職が酒杜氏として酒工場に勤務し、受傷後より把持動作が困難になり職場復帰を断念していた症例から、術後から約半年後、「仕事復帰」の要望が出た。一升瓶の取り扱いは必須のため、移動と操作に的を絞った訓練経験に若干の考察を加え報告する。
    【症例紹介】
    70歳代、男性。診断名:右橈骨開放骨折(以下患側)OTA分類4型。現病歴:平成●年勤務先で機械にて受傷し同日、前腕屈筋群縫合、橈骨動脈再建術を施行。3週目プレート固定を実施。術後4週目ミュンスター型装具、8週目手関節部を除去し、16週目の退院時に装具除去。現在も外来通院中である。
    【評価】
    自動関節可動域は前腕回内外共に80°、手関節掌屈40°背屈35°尺屈15°橈屈20°。中、環指指尖部の正中、尺骨神経領域に触覚低下(健側比6/10)。患側肩・肘関節の粗大筋力は4レベル。MMTはFDP/FDS4 、EDC3 中指EDC2 、母指FPB/FPL4 、EPB/EPL3、 APL3。握力健側35kg患側15kg(健側比42.9%)。
    【作業療法実施計画】
    一升瓶を扱う職業関連動作をa.到達 b.把持 c.操作 d.移動 で問題点を絞る。500mlペットボトル、五合瓶、一升瓶の順で段階付けし、内容量は、目標動作が可能となった時点で500mlずつ加え、最終的には一升瓶と同じ約2Lを目指す。到達及び把持方法は、健側を参考とし、訓練では左右上肢を同時に動かす両側肢鏡像運動を実施した。
    【経過】
    ・第1期 訓練導入
    ペットボトル、五合瓶のa~dは可能だが、一升瓶は患側上肢全体に力が入り、体幹左側屈と患側上肢が密着した代償動作のためcとdが不可能。よって一升瓶に訓練を限定した。
    ・第2期 操作
    代償動作を打破するために肩関節90°外転位で行う。内容量が約2Lの時点で代償動作が出現。健側は把持した手部と前腕部が一体となり先行運動開始となるが、患側は肩関節挙上が先行する。健側運動を認知するため、鏡のフィードバックにて運動を修正した。
    ・第3期 移動
    肩関節90°屈曲位時の上肢長約65cmの位置に一升瓶を置き、各関節運動と固定性を学習。「持ち上げる」意識をなくすため「自身の方へ滑らせ、元の位置に戻す」と指示した。
    【結果】
    肩関節90°外転位からの運動で、持ち上げた時点での体幹の代償動作が伝わりやすく、把持した状態での移動へ繋がり、3週間で代償動作が消失した。
    【考察】
    両側肢鏡像運動は世界男子テニス優勝者レンドル選手も用いた方法である。中田は、「右腕の直接的な操作にとらわれ悩んでいた選手に、反対側の腕の意識が入るのは革命的な効果をもたらし、優れた運動制御の対処方法である」と報告している。症例に対しc.操作:代償動作を鏡のフィードバックにて患側動作を修正したこと、d.移動:手関節に対する肩、肘関節の固定性の学習を行ったことが有効であった。しかし「落としそう」と手掌全体で握り込むため片手で複数を持てず、仕事復帰にはまだ壁もあり、満足度も低い。持ち上げる=筋力との考えから、把握調節学習が不十分であったことが反省点であり今後の課題でもある。
  • ~前方侵入法と後方・前側方侵入法の比較~
    横山 綾, 谷口 理恵, 山田 康二, 清水 啓
    セッションID: 189
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    【はじめに】
    当院では、変形性股関節症に対する、人工股関節全置換術(以下THA)の侵入方法の検討が行われた。平成19年より、術後ADL動作方法への満足度の充実、低侵襲手術による脱臼の防止を目的に、前方侵入法(以下DAA)が開始された。DAAに関しては、患者の動作獲得に至るまでの経過が早く感じられた。そこで各侵入法別で治療経過を調査したので以下に報告する。
    【方法】
    DAA、後方侵入法(以下DPA)、前側方侵入法(以下DALA)の3つの侵入法での対象群を1)平均在院日数2)術後1週目、3週目のBarthel index(以下B・I)の平均値を調査した。
    【対象】
    平成18年5月~平成19年3月までに当院にてTHAを施行された16名を対象とする。内訳は、DAA(男性3名、女性4名、平均年齢60.3歳)、DPA(男性2名、女性0名、平均年齢74.0歳)、DALA(男性3名、女性4名、平均年齢64.3歳)である。
    【結果】
    1)平均在院日数は、DAA27日、DPA36日、DALA34日となった。2)DAAの術後1週目のB・Iの平均値は83.6点であり、DPAは65.0点、DALAは71.4点である。術後3週目ではDAAは100点に到達するのに対し、DPAは90.0点、DALAは92.1点となった。
    【考察】
    近年、運動器下肢疾患に対してOTの活躍の場が拡大している。その中でも、THAは患者自身に脱臼肢位の理解が必要であるため、より密なADL指導が求められる。当院でのTHA手術は従来DPAが主流となっていたが、ADL動作に必要な程度の股関節屈曲を引き出す事が困難なため、股関節屈曲が可能であるDALAを検討した。そして最近では筋の侵襲が少なく、脱臼が起こりにくいといわれるDAAの施行が増えつつある。今回の調査より、DAAは平均在院日数が短く、ADL再獲得までの経過が早い事が分かった。その要因として、DAAはADL動作の中に脱臼肢位が含まれる動作が少なく、患者がこれまで行っていたADL動作を最小限の修正で指導が出来る事が挙げられる。これにより他の侵入法に比べ患者の心理的負担も少ないと考えられる。
    【まとめ】
    今回の調査より、DAAは他の侵入法に比べ早期にADL再獲得が可能という傾向が得られた。DAAの場合、従来行っていたADL動作をほとんど修正せず動作指導を行うため、患者の心理的負担が少なく、スムーズな介入が可能となった。最後に、今回の調査は検証するにはデータ不足であった。今後も調査し検証する中で、将来的にはTHAクリニカルパスを侵入法別で作成する必要性を考えている。
  • 大塚 渉, 麻生 努, 坂本 亜矢子, 泉 清徳, 渡邉 哲郎, 井手 睦
    セッションID: 190
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    【はじめに】
    当院回復期リハビリテーション病棟(以下回復期リハ病棟)での転倒事故要因のひとつに実際の動作能力よりも自らの動作能力の過信が考えられた。そこで、征矢野らの地域高齢者への転倒予防自己効力感の質問内容を参考に回復期リハ病棟用を作成し、転倒予防自己効力感と実際の動作能力の差と、転倒歴との関連性を比較検討したので報告する。
    【対象】
    平成20年3月の当院回復期リハ病棟入院患者で、転倒予防自己効力感の質問の理解が可能であった55名(男性24名、女性21名、脳血管疾患31名、整形疾患23名、その他1名)を対象とした。
    【方法】
    転倒予防自己効力感は自室または病棟内での起居動作、座位保持、起立・着座、移乗、しゃがみ動作、立位動作、歩行を患者にわかりやすい言葉に変え、征矢野らの報告に基づき10項目を作成し質問した。回答形式は征矢野らの転倒予防自己効力感尺度(4段階)を用いた。リハビリスタッフは全介助~最大介助:4点、中~軽介助:3点、監視:2点、自立:1点で評価した。転倒群(12名、平均年齢71.6±10.6歳)・非転倒群(43名、平均年齢60.1±16.3歳)の2群に分類し、年齢、患者の転倒予防自己効力感の合計点からリハビリスタッフ評価の合計点を引いた値と、認知機能としてMini Mental State Examination(以下MMSE)を用いそれぞれ比較検討した。統計学的処理はMann-Whitney U検定を用い、危険率5%未満を有意水準とした。
    【結果】
    年齢は転倒群が有意に高かった。患者の転倒予防自己効力感とリハビリスタッフの評価の合計点の差は転倒群がプラス点(患者の自信の方が高い):10名、マイナス点(患者の自信の方が低い):1名、ゼロ点(同点):1名で平均3.1±3.7点、非転倒群がプラス点:17名、マイナス点:18名、ゼロ点:8名で平均0.2±4.8点であり転倒群が有意に大きかった。MMSEは転倒群が平均20.7±9.4点、非転倒群が平均27.5±5.6点であり転倒群が有意に低かった。
    【考察】
    征矢野らは、転倒予防自己効力感とは日常活動を転ばずにやり遂げる自信の程度を指すと述べている。今回、この転倒予防自己効力感を調査した結果、転倒群はほとんどがプラス点であり、実際の動作能力より転倒予防自己効力感を高く評価していることが多く、このことが転倒につながる要因のひとつであることが示唆された。認知機能が低い人は、点数の差が大きく複数回転倒している傾向も伺えた。今後、定期的に転倒予防自己効力感の質問を用い、実際の動作能力と比較することで転倒のリスクが高い人を予測することができ、転倒予防する上で有力な評価のひとつになるのではないかと考える。また、症例数を重ね今回の評価の信頼性についても検討していきたいと考える。
  • 佐野 博, 村木 友美, 春日 敬子, 筒井 宏益, 渡辺 充伸, 内賀嶋 英明
    セッションID: 191
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】
     従来の医療機器を用いてのバランス訓練を行おうとすると、機器が特殊で高額であったり、訓練場所の制限などにより在宅で容易に行うことができないため多くの高齢者に普及することは困難である。今回、家庭用ゲーム機として広く普及しているWii(Nintendo)とバランスWiiボードを用いて、家庭や施設でも容易に、そして比較的安価にできる転倒予防訓練として効果を検討したので報告する。
    【方法】
     対象は当院にて入院治療を行った75歳以上の高齢者9例(男性4名、女性5名、平均年齢は79歳)である。主病名は小脳梗塞1例、腰椎圧迫骨折4例、腰部脊柱管狭窄症2例、大腿骨頚部骨折2例である。訓練はNintendo Wii fitとバランスWiiボードを用いて、重心移動を利用して行うテレビゲームを週5回、4週間の合計20回行った。1回の訓練時間は約15分であった。評価方法は、1)Berg Balance Scale (BBS)、2)3m Timed Up and Go test (TUG-t)、3)日常生活自立度を用いて訓練前後の数値を比較した。BBSとTUG-tに対してはMann-Whitney検定を用いて統計学的評価を行った。
    【結果】
     BBSは訓練実施前が平均41.8±7.6点であったのが、訓練実施後は平均50.0±5.4点と有意に向上していた(p<0.05)。TUG-tは実施前が平均15.3±6.3秒であったのが実施後は平均11.6±3.2秒であった。有意差は認められなかったものの、9例全例の所要時間が短縮していた。日常生活自立度は9例中5例(55.6%)に自立度の向上が認められた。また、今回9例に実施した合計180回の訓練中に転倒事故などは生じなかった。
    【考察】
     今回使用した家庭用ゲーム機は全身の動きを捉える体感ゲーム機である。重心移動しながらボールをステージの穴に落としていく玉入れや、左右の重心移動を使ってヘディングを行うバランスゲームがある。
     今回の結果、20回の訓練によりBBSは有意に向上した。また今回、有意差は認められなかったがTUG-tも全例において所要時間が短縮した。これらより、本訓練は転倒予防に効果があることが示唆された。その要因として、対象者の重心移動に合わせてゲーム画像が変化するため、その画像が視覚的フィードバックとなり重心移動の制御がより可能になったと考える。重心移動を再学習したことでBBSが有意に向上し、バランス能力の向上が図れるといえる。転倒予防訓練にゲームを利用することで楽しみながら運動ができ、運動継続のmotivationが維持できる。また、家庭用ゲーム機は安価で気軽に行えるため、施設・病院はもとより在宅訓練の選択肢の一つとして普及する可能性がある。
  • 吉村 憲人, 山形 茂生, 山沢 悟, 福森 健
    セッションID: 192
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    【はじめに】
     人にとって、入浴という行為は、人間らしい生活を送る上で大切なものである。身体を清潔にするという目的だけではなく、精神・肉体ともにリラックスさせ、苦痛と緊張の緩和、排泄作用の促進、睡眠を助長するなどの効果もあり、心身ともに健康に生活するためには必要不可欠なものでもある。
    しかしながらその反面、高齢者、身体に障がいを持たれている方にとっては、転倒・溺水などのリスクもあり、それらのリスクを抱えているが故に、入浴が辛いものになったり、入浴を断念せざるを得ない方もいる。また介助者にとっても、限られたスペースで、尚且つ介助しにくい環境では、介助される側同様リスクが高いといえる。
     それらのことを考え、高齢者・障がいをもたれている方への自立支援と介護をする側にも優しい入浴設備を実現できないかと、農協共済別府リハビリテーションセンター(以下別府リハ)は2001年より積水化学工業・中伊豆リハビリテーションセンターと共同研究を行ってきた。これまでの経緯と結果、結論としての今後の展望を述べる。
    【結果】
     入浴設備に関する共同開発を開始し、様々な対象者の身体状況、ニーズに合わせ対応できるよう、人間生活工学に基づく素材や機能の安全性と、配置・形状、可変性を備えた入浴設備(ユーザー可変システム)を開発した。実際に可変性や洗い場寸法などを被験者実験により検証、さらに別府リハの福祉ホーム「のぞみ」の利用者に対してPT・OTが介入し使い勝手の検証を行った。その結果、自立の方は勿論、介助される/する方にも使いやすい入浴設備が完成した。施設向け個浴、集合住宅の個室や個人住宅のリフォームにも対応でき、現在、全国各地での特別養護老人ホーム、グループホーム、デイサービスなどの施設の他、個人住宅へも多数導入している。
     しかし、現状では、個別対応が重要な身体障がい、特に下肢に障がいを持たれている方に対しては問題が残っている。そこで昨年より、下肢障がい者向け浴室の研究に着手、実際の対象者からのヒアリングとPT・OT・介護・看護スタッフの意見を集約し、設計開発上のポイントを整理して試作品を作成した。そして現在、積水化学入浴設備を導入している別府リハ職員住宅に在住の頚髄損傷者に使用してもらい評価を行っている。
    【結論】
     高齢者・障がい者に限らず、個別対応が求められる中で、設備の標準化は矛盾しているようにも思われるが、標準化することのメリットも大きい。その中で個別に対応するため、配置や形状に可変性を持たせることにより、入浴する方に安全で快適な、尚且つ介助者にとっても安全で介助しやすい入浴設備を実現してきた。現在も入浴設備だけでなく、トイレ設備やその他住環境設備の研究も行っている。専門知識だけでなく実際の利用者の声を聞き、どのような方でも住まいが安らげる環境であることを実現するため今後も努力していきたい。
  • 本郷 あすか, 小野 秀幸, 池田 道子, 服部 亮, 山川 亜沙美, 吉田 志保, 財前 乃利
    セッションID: 193
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    【はじめに】
    当院では患者様の在宅復帰に向けて、退院前訪問調査・自宅訓練を実施し、退院後の生活や身体状況に応じた、住宅改修の提案を行っている。しかし、住宅改修後の在宅生活環境の把握は出来ておらず、住宅改修の効果判定には至っていない。その為、より良い在宅生活環境の提供が出来る様、住宅改修満足度をはじめとする退院後現況調査を実施し、今後の課題について考察したのでここに報告する。
    【方法】
    平成19年4月から平成20年3月の期間中、当院にて住宅改修を行い自宅退院した患者様に対し、アンケート調査を実施。質問内容は改修場所、改修内容に対しての本人・同居家族の満足度(5段階評価)、改修にかかった費用、家屋内での転倒回数・転倒場所、現在の生活での困り事とした。
    【結果】
    回答が得られた患者様20名のうち、改修場所は玄関・トイレ・浴室の順で多く見受けられた。
    改修場所に対して満足度の平均は5点満点中4.03点であり、内訳として(本人/家族)玄関(4点/4点)トイレ(3.5点/4.3点)浴室(3.3点/4.1点)であった。平均費用は20万円、転倒回数の平均は0.8回であり転倒場所は居室、トイレ、廊下の順で多く発生していた。また、現在の生活の中での困り事としては排泄に関する意見が多く聞かれた。
    【考察・まとめ】
     今回アンケート調査を実施した事で、入院中から退院後の生活を見据えたサービス内容の提案を行う事や、身体機能の低下を予防していく事の重要性を改めて実感した。住宅改修そのものに対しては比較的高い満足度が得られていると考える。しかし、退院時の身体機能に合わせた在宅生活環境の整備だけではなく、退院後も身体機能の維持・向上を図り安全な生活を末永く送って頂く事への配慮や、徐々に起こり得る身体機能の変化に合わせた在宅生活環境の提供を行う必要があると考える。そのためには、維持期リハビリの提供、通所・訪問リハビリ等のサービスの利用、家族や支援員からの情報収集を行い地域で包括した支援管理が行えるシステム作りが必要であると考える。
  • 矢木 健太郎, 平山 厳悟, 泉 清徳
    セッションID: 194
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    【はじめに】
     通所リハビリテーション(以下通所リハ)は、日常生活動作(以下ADL)の維持・改善を図り、自立した生活を支援していくことを特徴としている。今回通所リハ利用者と健常高齢者のADL価値観についてその特徴を比較検討し、通所リハにおいてどのようなADLを重視すべきか検討したので報告する。
    【対象と方法】
     対象者の年齢は60歳以上とし、通所リハ群として当院の通所リハ利用者35名、健常者群として福岡県下に自宅在住の健常高齢者36名とした。ADL価値観の評価方法として、長尾らの研究を参考にした一対比較法を用いた。意思伝達、交際、移動、食事、トイレ、更衣、入浴、整容および趣味の計9項目を用いて、36対の質問用紙を作成し、各対のうち,もしも自分ができないとしたらより困ると思う項目について選択させた。項目を選択した百分率をその項目の選択率とし、その大小をもってADLの価値序列を決定した。またADL能力は機能的自立度評価(以下FIM)を用いて評価した。属性および選択率の比較はMann-Whitney U検定を用い、有意水準は5%未満とした。
    【結果】
     2群の年齢およびFIM平均点はそれぞれ、通所リハ群74.4±7.6歳・112.1±9.1点、健常者群71.1±7.7歳・125.9±0.4点であり、年齢に有意差はなく、FIMは通所リハ群が有意に低かった。通所リハ群のADL価値序列および選択率は1位トイレ75.4%、2位食事58.9%、3位意思伝達57.5%、4位入浴56.4%、5位更衣53.9%、6位移動52.5%、7位整容47.1%、8位交際29.6%、9位趣味18.6%であった。健常者群では、1位トイレ89.2%、2位食事63.2%、3位入浴60.1%、4位整容54.2%、5位意思伝達51.7%、6位更衣50.7%、7位移動49.0%、8位交際20.1%、9位趣味11.8%であった。選択率において通所リハ群は健常者群と比べて、トイレで有意に低く、趣味において有意に高かった。また交際については通所リハが高い傾向を示した。
    【考察】
     ADLにおけるトイレという行為は、羞恥心や屈辱感を伴うことから、2群とも1位の価値序列となっている。しかし、通所リハ群はその選択率において有意に低い。一方交際や趣味において高い値となり、その他のADL項目は2群間に差を認めなかった。通所リハ群はFIMに反映されるようADL能力低下とともに今後トイレにおいて介助を要するようになる可能性に対して諦めが生じ、代わりにより現実的に通所リハで多くの時間を使って行われている趣味活動や他利用者との交流などを重視するようになるのではないかと考えられた。通所リハにおいて、トイレなどのADL能力の維持向上は無論重要であるが、利用者の趣味や他者との交流をいかに行いやすくできるかといった視点もリハビリにおいて重要であると考える。
  • 丸山 将, 木山 浩志, 三好 進太郎, 緒方 大亮, 江崎 のり子, 駕田 理恵子
    セッションID: 195
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    【はじめに】
    以前当院でのADL評価ツールはBarthel Indexを使用していたが、今回、回復期リハビリテーション病棟(以下リハ病棟)において、Functional Independence Measure(以下FIM)を用いることとなった。導入後の職種間(リハスタッフ及び看護師)による誤差の把握・分析を行ったのでここに報告する。
    【対象・方法】
    平成19年12月~平成20年2月までの3ヶ月間でリハ病棟に転棟してこられた男性26名、女性19名、計45名の患者様を担当看護師・リハスタッフ双方がFIMによる評価を毎月行った。さらに合同カンファレンス前に双方の採点を持ちより、意見交換を行うことで評価の精度を高めた。(以下、担当リハスタッフが採点したFIMをリハFIM、担当看護師が採点したFIMを看護FIM、合同カンファレンスにて採点したFIMを合同FIMとする)。
    リハFIM点数から合同FIM点数を引いた値、看護FIM点数から合同FIM点数を引いた値を大項目(運動面、認知面)及び小項目で分析した。分析は値の平均値(全体の偏りと判断)、分散(ばらつき度)を参考にした。
    【結果】
    リハFIM、看護FIMに有意な差はなかった。小項目ごとにみてみると、リハスタッフではベッド移乗・トイレ移乗・歩行の項目で実際よりも高く評価し、浴槽移乗・排泄・清拭の項目では低く評価していた。また、看護師では記憶・清拭・排尿の項目で高く評価し、ベッド移乗・整容・トイレ移乗の項目で低く評価していた。
    リハと合同のばらつきは社会的交流・浴槽移乗が多く、トイレ動作・理解・表出が少なかった。看護と合同のばらつきは歩行・記憶・表出・理解が多く、トイレ動作・浴槽移乗が少なかった。
    【考察】
    今回の結果から、リハFIMの採点と看護FIMの採点に大きな差は無いものの、各項目のばらつきをみると職種の特徴が表れていることが分かった。リハスタッフが認知面の評価に優れているのは、患者様一人一人に関わる時間が長く、様々な評価・アプローチを実施しているためと考えられる。また、看護師が運動面の評価に優れているのは、夜間のトイレ動作や浴槽移乗といった病棟生活場面での状況把握が出来ているからだと考えられる。
    小項目でみると、リハスタッフは浴槽移乗などのばらつきが多く、病棟への介入が不足していることが分かる。また、看護師は歩行などのばらつきが多く、担当患者様の能力把握が出来ていないため、病棟での介助量統一が実施できていないということが考えられる。
    今後、職種間の理解を更に深め、情報を共有することで、患者様一人一人の能力把握が確実なものとなり、よりよいアプローチが可能になると考えられる。
  • ~入学から卒業まで~
    松崎 哲治, 河元 岩男, 明日 徹, 田中 裕二, 松岡 美紀, 木村 孝, 熊丸 真理, 山下 慶三, 花田 穂積, 崎田 正博, 松木 ...
    セッションID: 196
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    【はじめに】
    1995年より全米各地の学校が「EQ(emotional intelligence)~こころの知能指数」を数学や国語と同じような必修科目として教える方向にある。また近年、企業も採用試験や職員教育にEQテストを取り入れるようになってきた。当校においてもH17年春より毎年一回(最終学年は長期臨床実習終了後も)理学療法学科全学生にEQテストを実施している。今回、入学から卒業まで通しての結果を報告する。
    【研究手順・対象】
    本研究は、内山らが開発した検査EQSを用い行った。対象は、当校に在籍している、全理学療法学科学生に行った。なお、H17・18・19・20年春に当校当学科在籍学生1275名に実施した。そして今回は、EQSの自己対応・他者対応・状況対応という3つの領域において、昼間課程・夜間課程に分類し等分散の検定後に母平均の差の検定を行った。さらに今回は、入学から卒業まで通して検査を行った32名の経過を追ったのでここで報告する。
    【結果】
    対象の当校に在籍している全理学療法学科学生1275名中、回答信頼性傾向(偏り)を判定する基準に引っかかった者及び統計学的手法により外れ値を示した者を除き1156名を分析の対象とした。この、1156名の対象者全体の平均値および標準偏差を求めると、自己対応51.04±10.05・対人対応51.94±9.63・状況対応42.99±10.69となった。その平均を、EQSマニュアルにある大学生226名の平均やその大学生226名内の専門・研究職を目指す大学生62名の平均より有意に高かった。そして、昼間課程・夜間課程に分類し等分散の検定後に母平均の差の検定を行うと、3領域中、自己対応の領域で有意差を示した(p=0.002)。また他者対応・状況対応においては有意な差は示さなかった。また、学年が増す毎に高くなる傾向があった。
    【考察及びまとめ】
    今回、当校理学療法学科全学生にEQテストを実施した。そして、昼間課程・夜間課程に分類し比較した。その結果、自己対応の領域で有意差を示した。これは夜間課程という社会人経験の多い郡に、「自己の心の働きについて知り、行動を支え、効果的に行動をとる能力」が身についていると思われる。また、「他者の感情に関する認知や共感をベースに、他者との人間関係を適切に維持することのできる能力」や「自己を取り巻く、あるいは自己と他者を含む集団を取り巻く状況の変化に耐える力、リーダーシップ、また自己対応領域と対人対応領域の各種能力や技量を状況に応じて適切に使い分ける統制力」には差はなく、専門学校に入学する学生にEQの差はなく高値を示すことが、他データからも伺えた。そして、学年が増す毎に高くなった。今後は、さらにデータを重ね、個人の経過や精神的健康(気分や感情)との関係、また外れ値を示した者の行動分析を行っていきたい。
  • 日下部 修, 峯? 佳世子, 岡 大樹, 中野 桂子, 野方 拓, 豊島 宇茂, 兒玉 隆之, 大坪 健一, 野中 嘉代子
    セッションID: 197
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】
    理学療法士・作業療法士養成校(以下養成校)において入学を機に職業的専門知識の習得、成人学習での教育が実施されているが、一部には次第に学習性無力感に陥り意欲の低下をきたし授業態度の悪化、学業成績の低下等の問題が増加している。この背景には意欲はあるが理学療法士・作業療法士になるという目的に向けて効果的な行動をとる能力が備わっていない目的志向性の低さが考えられる。我々、養成校教員はこのような学生の傾向をいち早くつかみ効果的な学習方法を講じる必要がある。今回、行動と強化の随伴性の側面から意欲を測定するためにLocus of Control (以下Loc)尺度、自己対応の側面から目的志向性を測定する目的にEmotional intelligence scale(以下EQS)尺度を実施し、その実態を調査した。
    【方法】
    対象は作業療法学科1年生27名、男性16名(うち高卒現役生6名)、女性11名(うち高卒現役生8名)、平均年齢20.5±5.1歳。理学療法学科1年生、75名、男性49名(うち高卒現役生32名)、女性26名(うち高卒現役生24名)、平均年齢19.5±3.6歳。調査は前期開始時の4月に検査目的と個人情報保護についての説明を書面にて行い同意の得られた学生に対し実施した。調査紙はLoc尺度(18項目、4件法で最高点72点、最低点18点)とEQS(65項目、4件法で最高点84点、最低点0点)を使用した。これらの結果について「高卒現役群」と「非高卒現役群」の比較検討を行った。
    【結果】
    Loc尺度における内的-外的統制得点では「高卒現役群」と「非高卒現役群」に有意差を認めなかった。EQSの自己対応得点において「非高卒現役群」に比較し「高卒現役群」は有意に低かった(P<0.01)。
    【考察】
    今回Loc尺度、EQSを実施したことで「高卒現役群」と「非高卒現役群」における意欲に差異はなかったが、「非高卒現役生」は入学時に目的志向性が高くアイデンティティーが確立されつつあることが特徴と考えられた。一方、高卒現役生の傾向として、それまでは階層的な教育課程にあり成人教育の経験に乏しいこと、高校を卒業したばかりでいままさに青年期におけるモラトリアムの中にありいまだアイデンティティーが確立できていない時期であり、そのことで目的志向性が低い状況にあることが考えられた。目的志向性が向上する教育方法として問題基盤型学習(以下PBL)が多くの養成校で実施されている。今回の結果から、1年次の早い段階にPBLへの移行手段として学習ソースを事前に与える予備講義実施型授業を入門PBLとして実施することで、成人学習の理解と目的志向性を確立させることが必要と考えられた。
  • -授業評価(アンケート調査)を通して-
    永崎 孝之, 川俣 幹雄, 二宮 省悟, 大池 貴行, 五嶋 佳子, 森下 志子, 岡田 裕隆, 福留 英明, 山本 広伸, 濱田 輝一
    セッションID: 198
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】
    本学では2年次2学期(後期)から3年次1学期(前期)にかけて、専門科目「臨床理学療法学」11科目(運動器系、神経系、呼吸循環代謝系、小児)に問題解決型学習(以下PBL)を配置している。現在2年次2学期(7科目)が終了し、3年次1学期(4科目)が進行中である。理学療法教育において臨床系基幹専門科目のほとんどにPBLを導入し、体系的な取り組みをしている養成校は少なく、本学の試みが理学療法教育をさらに発展させるものになれば幸いである。今回進行途中ではあるが、7科目終了時点で学生に授業評価(アンケート調査)を実施し、教育効果を検討したので報告する。
    【方法】
    12グループ(1グループ6~7名)に班分けした当学科1期生74名に対し、平成19年9月より上記7科目にPBLを実施した。PBLは一切講義を行わず、症例シミュレーション(全18疾患)形式で実施し、グループディスカッションに基づいて症例の基本的知識、理学療法評価、治療をレポートにまとめた。PBL終了後、学生に対し授業評価(アンケート調査)を実施し教育効果を検討した。アンケートは「Self-Assessment of participation in PBL」を一部改変したもの(以下SAPP修正版)、PBLの満足度、今後の授業形式、PBLを実施して評価できること、改善すべきこと等を調査した。
    【結果】
    74名中68名より回答が得られた(回収率91.9%)。SAPP修正版の各質問項目(10項目)で5段階評価中、「よくできた」以上の回答が得られた割合は、事前の自己学習(22%)とグループ内での問題処理(50%)の2項目が50%以下であったが、それ以外の8項目、責任の自覚(71%)、グループ活動への積極的参加(77%)、コミュニケーション技術の習得(73%)、専門職としての自覚(71%) 、知識と能力の限界の自覚(87%)、論理的思考(72%)、学ぶことの発見(83%)、計画性(56%)は50%を超えていた。PBL満足度については、「満足した」、「とても満足した」の割合が59%であった。また今後の授業形式については、「講義がよい」が10%、「PBLがよい」が56%とPBLを支持する学生が多かった。さらにPBLを実施して評価できることでは、認知領域の向上のみでなく情意領域の変化についても満足する意見が多かった一方で、グループ内での責任分担の不均一、図書の不足、グループ間の格差など改善すべき意見も多数見られた。
    【結論】
    理学療法教育においてPBLの有用性、必要性は高まりつつある。単年度の授業評価ではあるが今回の結果からもPBLは、自己主導型学習の体得、コミュニケーションおよび対人関係のスキル獲得にとって有益な行動変容をもたらす教育技法であると思われた。
  • 峯崎 佳世子, 日下部 修, 山本 裕宣, 野見山 通済, 田川 秀明, 兒玉 隆之
    セッションID: 199
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】
    青年期における職業選択は重要な発達課題のひとつである。この時期、青年は様々な環境の中で自己理解を深め、やがては職業という社会的決断を行なう。しかし、近年社会的役割を回避する青年の増加に伴い、職業を通じて獲得される自己認識(identity;ID)(以下、職業的ID)の確立が不十分であるとされる。それら青年期におけるIDの混乱は、職業的IDに安住することができないという無力感ともされる。それほど青年期のID確立にとって職業的IDが果たす役割は大きい。PT・OT専門学校生は、入学と同時に自我を同一化させていくことが求められるのだが、入学後、これまでに経験したことのない体験により職業的IDの拡散をきたすおそれがあるのも事実である。そこで今回、専門学校教育と学年進行の関係性を明らかにし、職業的IDの確立過程を理解することを目的とした。
    【方法】
    対象は専門学校の理学療法学科35名(男子26名、女子9名)、作業療法学科43名(男子24名、女子19名)である。調査は1年次、2年次は後期末である1月に、3年次は臨床実習経験後の6月と卒業前の3月に実施した。質問紙は「自我同一性地位判定尺度」を使用した。これは、A:現在の自己投入、B:過去の危機、C:将来の自己投入の希求の3変数12項目からなり、回答方法は「まったくそのとおりだ」から「全然そうではない」までの6件法とし、最も高い水準に対応する反応を6点、最も低い水準に対応する反応を1点として、得点によって6つの同一性地位に分類する評価である。これらの結果について、「同一性地位」および「学年」による比較検討を行った。
    【結果】
    同一性地位において、「モラトリアムと同一性拡散の中間地位(D-M中間地位)」が214名(68.3%)と最も多かった。次いで、「同一性達成地位」34人(10.9%)、「同一性達成と権威受容の中間地位(A-F中間地位)」29人(9.3%)、「積極的モラトリアム」23人(7.3%)、「「権威受容地位」29人(9.3%)、同一性拡散地位」9人(2.9%)であった。また、D-M中間地位における学年間の比較では卒業前に低くなった。
    【考察】
    今回最も多かったD-M中間地位は、将来の目標を持ちたいという欲求や希望を持ってはいるものの、実現を目指して日々の活動を管理しているかについては不十分な状態であることが明らかになった。これらの結果から、目標志向的行動ができていないことが考えられた。つまり、具体的な目標達成には学内での原理的知識中心の教育だけでは不十分であり、実習および実習をシミュレーションした学習などを通じて、臨床に対する志向性を高めることが重要であると考えられた。
  • 京極 大樹, 大脇 秀一
    セッションID: 200
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    【はじめに】
     近年、理学療法士の職域は社会的ニーズの高まりにより、医療のみならず福祉やスポーツ、健康産業などの分野にまで及んでいる。このような状況を踏まえ、臨床実習において病院外での理学療法士の活動を体験することでより幅広い視野と考え方を学習するために、当院では平成15年度より長期臨床実習において、新たなカリキュラムとして訪問リハビリテーション(以下訪問リハ)を取り入れた学生指導を実施している。 平成16年熊本県理学療法学会にて第1報を発表し、今後の課題として多くの学生に訪問リハを経験させたいと述べた。そのため平成17年度より実習方法を変更し、より多くの学生に訪問リハを経験させることが出来た。今回その実施方法と訪問リハを経験した学生に対してアンケートを行ったので合わせて報告する。
    【対象及び方法】
    平成15年度~19年度当院にて長期臨床実習中訪問リハを経験した実習生37人を対象とした。その内訳は理学療法学科27名・作業療法学科4名・言語聴覚学科6名(男性15名・女性22名、平均年齢24.7歳)であった。 実施時期は実習第4~6週目に設定し、訪問前に実習内容や目的・学習すべき点を説明する。1回の訪問に学生を3~4人同行するため事前に十分利用者・家族に説明し同意を得ておく。終了後感想文を学生に依頼し、それを元にフィードバックを全員で行う。その後アンケートを提出し訪問リハによる実習を終了する。アンケートの項目は、1)訪問リハに対するイメージ 2)訪問リハを行ってよかった点 3)訪問リハを行って苦労した点 4)今後訪問リハをやってみたいか?及びその理由である。
    【結果及び考察】
    実習方法変更前は2年間で11名(平均5.5名/年)であったが、変更後は3年間で23名(平均7.7名/年)と訪問リハを経験した学生の増加が認められる。アンケートの結果から実習期間や時期における回答内容のばらつきは少なく、むしろ学生個々の資質や能力、興味がアンケート結果に影響している。また学生37名中36名が就職後訪問リハをやってみたいと回答している。アンケートの内容から退院後の生活イメージや家族・地域との関わりといった院内の実習では困難な領域の学習が出来ていると考えられる。院内における急性期や回復期リハビリテーションと訪問リハの両者を実習カリキュラムとして併用することで、よりリアルに入院から在宅生活といった一連の流れを体験・経験することができるのではないかと考えられる。
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