九州理学療法士・作業療法士合同学会誌
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第32回九州理学療法士・作業療法士合同学会
選択された号の論文の389件中301~350を表示しています
  • 西 智洋, 福留 清博(PhD), 米 和徳(MD), 前田 哲男, 川井田 豊, 松下 寿史, 秦 一貴
    セッションID: 301
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/01/15
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】
     我々は頚髄症などに起因する上肢機能障害の定量的評価を実現するために,座標,筆圧のデータを経時的に取得できる,ペンタブレットを活用したシステムを試作し,利き手の描画能力から頚髄症患者のmyelopathy handを検出可能であることを見出した.しかし,myelopathy handは頚髄症の進行の過程において左右差を認めた報告が多くなされており,利き手側のみの評価では不十分である.しかも,利き手・非利き手の問題と疾患による障害の問題が混在する可能性があり,両者を判別できる必要がある.そこで今回は,利き手と非利き手との描画の特徴を明らかにするために,障害を持たない健常成人(以下若年者)と健常高齢者(以下高齢者)を対象として運動機能の観点から調べた.

    【方法】
     本研究では体幹および上肢に整形外科的・神経学的疾患の既往のない若年者21名(年齢23.1 ± 2.3歳)および高齢者22名(年齢75.2 ± 8.7歳)を対象とし,全員が右利きで,本課題を遂行できた.被験者にはペンタブレット(WACOM社製,Intuos3 PTZ-930)上に提示された正弦波図形をデジタルペンでなぞる描画課題を利き手と非利き手で各1回ずつ快適速度で行い,描画中はデジタルペン以外がタブレットと触れないように指示した.算出した諸量は垂直方向の座標値誤差,筆圧平均値,筆圧変化量,描画時間である.利き手と非利き手との比較には対応のあるt検定を用い,有意水準は5%と設定した.

    【説明と同意】
     研究開始に先立ち,当大学の倫理委員会にて研究計画の承認を得た.また,全被験者に対して本研究の目的や方法などに関する説明を十分に行い,口頭および書面にて同意を得た後に臨床研究を実施した.

    【結果】
     利き手に対する非利き手の諸量は,若年者では,座標値誤差は0.99 ± 0.01に対し1.00 ± 0.02と,筆圧変化量は9.1 ± 3.9に対し16.2 ± 6.1と,一方,高齢者では,座標値誤差は1.01 ± 0.03に対し1.03 ± 0.03と,筆圧変化量は12.3 ± 3.5に対し20.0 ± 8.1と有意に大きかった(p = 0.000-0.002).しかし,その他の項目(筆圧平均値,描画時間)では有意差を認めなかった(p > 0.05).

    【考察】
     今回,年齢に関わらず,非利き手側の座標値誤差および筆圧変化量が,利き手のそれらより有意に大きいことを見出した.座標値誤差の増加は最適ではなく冗長な経路を辿る動作であることを示し,巧緻性が未熟なためであろう.同様に,筆圧変化量の増加は筋骨格系の円滑な出力の欠如を示唆する.言い換えると,一般的に認識されているように,非利き手は年齢に関わらず利き手より運動機能が拙劣であると推定される.こうした運動機能の違いは,頚髄症の一つの評価法である10秒テストを用いた研究では健常者の場合認められないが,我々の評価システムでは巧緻性を検出できかつ定量的に評価できる.
  • 急性期病院としての一考察
    後藤 早弥華, 黒塚 友紀, 中田 有紀, 林田 彩, 山口 智太郎
    セッションID: 302
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/01/15
    会議録・要旨集 フリー
    【はじめに】
    近年、肩腱板断裂に対する関節鏡視下(以下AS)手術療法が増加し、1~2年後の術後成績の多くは良好である。しかし、急性期病院である当院では長期間のリハビリテーション(以下リハ)フォローは難しい現状にある。今回、当院にて入院から外来までリハ実施できた症例を通し、早期からの肩腱板断裂術後療法の結果をまとめ、その有効性について考察したのでここに報告する。
    【対象および方法】
    2008年2月から2010年4月までに当院で肩腱板断裂の手術を施行された者で、14名14肩(右肩9例、左肩5例)、男性9例、女性5例、平均年齢63.6±7.3 歳であった。断裂サイズ別では、不全断裂5例(ASデブリードマン)、小断裂2例〔鏡視下腱板修復術(以下ARCR)〕、中等度断裂5例(ARCR 3例、mini-open法2例)、広範囲断裂2例(mini-open法1例、大腿筋膜パッチ術1例)であった。平均経過観察期間は4.3ヶ月で、術前、術後の日本整形外科学会肩関節疾患治療成績判定基準(以下JOA score)、うち内訳の疼痛、機能、可動域の点数、機能項目内の外転筋力および可動域実測値を、各々術前・後で比較した。
    【後療法】
    中等度断裂修復の術後計画は、3日後より肩甲骨の自動運動による筋スパスム除去を開始し、術後1週より肩甲上腕関節の他動運動、腱板修復が進む3週以降より肩周囲筋群等尺性運動から筋収縮をはかり、修復が完了する5~6週より積極的筋力強化訓練を実施した。小断裂ではこれより早く、大断裂、広範囲断裂では遅く、それぞれおよそ1~2週間差ですすめられた。平均約2週間の入院リハ中は毎日1単位程度行い、外来リハとなってからは、1週間に3日約2単位程実施し、著明な可動域制限がなければ週1~2日フォローとなった。可動域、筋力訓練の自主練習は十分理解するまで徹底して行い、主治医の指示のもとリハ終了となる。
    【結果】
    JOA scoreの平均は、総合点が術前66.8±14.1点、術後81.9±13.3点と有意に改善した(P<0.01)。機能およびその項目内の外転筋力では、術前後に有意差は認められず、可動域、疼痛では有意差が認められた(P<0.05)。可動域実測値では、自動前方挙上の術前平均114.3±40.1°、術後平均135.7±32.0°で有意に改善(P<0.05)し、他動前方挙上の術前平均147.9±31.2°、術後158.6±14.6°と有意差は認められなかった。
    【考察】
    平均経過観察期間9ヶ月、JOA score平均93点以上という他施設の報告と比較すると、今回の当院の結果は、これらの約9割の成績を約4ヶ月で達成できた。術前後では、疼痛軽減、それによる自動可動域の改善ははかれたが、機能および外転筋力において改善はみられなかった。手術適応の高齢化が進む中、治療の目的の多くが疼痛の緩和で、日常生活動作の改善が主な目標となる。さらに、断裂の程度に関わらず、術前と変わらない機能、筋力を得られている点を踏まえると、治療効果は十分得られていると考える。
    【まとめ】
    昨今の腱板断裂において、手術適応の高齢化が進んでいる中、今回の結果からも早期運動療法の有効性が示唆された。
  • 吉村 和代, 矢倉 千昭, 岡 真一郎
    セッションID: 303
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/01/15
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】
    最長筋は脊柱起立筋のひとつであり,脊柱の直立位保持に作用する抗重力筋である.近年,筋硬度計を用いて筋の緊張度を測定した研究が散見されるようになっている.我々は,第44回日本理学療法学術大会において起立傾斜角度の増大に伴う最長筋の筋硬度の変化について調査し,起立傾斜角度の増大に伴って最長筋の筋硬度は除々に高い値を示し,起立傾斜角度60°で最も高くなることを報告した.しかし,筋電図による筋活動の評価は行っていなかったため,最長筋の筋活動の変化については検討していなかった.そこで,本研究では,起立傾斜台による起立傾斜角度の増大に伴う最長筋の筋硬度および筋電図の変化について調査した.
    【方法】
    対象者は一般成人18名(男性11名,女性7名)であり,平均年齢は男性21.5±1.2歳,女性21.6±1.5歳であった.なお,すべての対象者に対し,事前に書面にて研究の目的と内容を説明し,同意を得てから調査を行った.筋硬度は,生体組織硬度計PEK-1(井元製作所)を用い,L4棘突起レベルの両側腰部最長筋の硬度を測定した.筋電図は,誘発筋電図記録装置neuropack MEB-2200(日本光電)を使用し,筋硬度の測定部位から2横指上の両側腰部最長筋を測定した.測定手順は,対象者を起立傾斜台に腹臥位にさせ,傾斜角度0°,15°,30°,45°,60°,75°での筋硬度を呼気時に3回測定し,平均値を代表値とした.筋電図については,各傾斜角度で5秒間測定し,前後1秒間を除いた3秒間の筋電図波形を記録して積分筋電図(iEMG)を求め,腰部最長筋の最大収縮時におけるiEMGで除して%iEMGを算出した.統計解析については,男女間における基本特性の比較は対応のないt検定,各傾斜角度での両側腰部最長筋の筋硬度および%iEMGの変化の比較は,二元配置反復測定分散分析を行い,5%未満をもって有意とした.
    【結果】
    性別でみた起立傾斜角度による両側腰部筋硬度の変化では,男性は起立傾斜角度60°から両側腰部最長筋の筋硬度および%iEMGが有意に高い値を示した.しかし,女性では,%iEMGは男性と同様の変化がみられたが,筋硬度および%iEMGに有意な変化がみられなかった.
    【考察】
    本研究の結果,男性では,起立傾斜台を用いて腰部最長筋の筋硬度と筋活動の変化を評価できることが示された.一方,女性において筋硬度および%iEMGに有意な変化が得られなかった理由として,サンプル数の少なさもあるが,皮下脂肪厚,筋量やその厚さなどが影響している可能性がある.
  • 上江洲 聖, 友利 幸之介, 東 登志夫
    セッションID: 304
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/01/15
    会議録・要旨集 フリー
    【はじめに】
     作業療法ではクライエントの日常生活上の作業の獲得を支援する.どの作業の獲得を目標にするかについての意思決定には,クライエントの希望や意思が十分に反映されていることが望ましい.しかし先行研究では,目標設定に関して作業療法士とクライエントの両者の認識にはギャップがあることが報告されており,その理由の一つに,意思決定の実践的なガイドライン不足が指摘されている.現在,我々は作業選択の意思決定を支援するため,ポータブルデバイスもしくはパソコンで動作するアプリケーションソフト(Aid for Decision-making in Occupation Choice; 以下ADOC)を開発中である.今回はADOCの概要とβ版の試用経験について紹介する.

    【ADOCの概要】
     ADOCは,日常生活の様々な作業場面が描かれたイラストを,クライエントと作業療法士がポータブルデバイスやパソコンの画面上で取捨選択しながら,クライエントにとって価値のある作業を見つけるための意思決定支援ソフトである.イラストは,FIM,老研式活動能力指標,社会生活基本調査などから446項目の作業を抽出し、ICFの「活動と参加」の大~中分類を基準に振り分けた.そして,最終的に8カテゴリー90項目の作業を選出した(セルフケア;6項目,移動・運動;8項目,IADL;13項目,仕事・学習;4項目,対人交流;4項目,社会参加;6項目,スポーツ;20項目,趣味;29項目).各90項目の作業のイメージ図案を作成し,イラストレーターにイラスト作成を依頼した.アルゴリズムは,1)クライエントにとって重要な作業を選択する.2)1)選択した重要な作業の重要度を5段階で評定する.3)作業療法士がクライエントにとって必要と考える作業を選択する.4)両者の選んだイラストを画面に表示して,両者で協議の上,作業療法で目標とする作業を決定する.5)決定した作業の満足度を5段階で評定する.6)選択した作業に関する作業療法プランを立案してPDFを作成する。7)PDFを印刷してクライエントからサインをもらう.となっている.

    ADOCの試用
     パソコンを用いたβ版の試用において,これまで通常の面接では引き出せなかったクライエントの意思や希望を引き出すことができた.また,作業を選択するプロセスで,クライエントが主体的に問題を解決しようとする場面もみられた.所要時間は20分から40分であった.これらの試用経験から,ADOCは作業療法目標設定に関する意思決定において有用である可能性が示唆された.今後は,iPad(apple)版およびwindows版アプリケーションの開発を進めるとともに,信頼性と妥当性の検証も行う予定である.
  • 多職種による連携アプローチ
    待鳥 沙代香
    セッションID: 305
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/01/15
    会議録・要旨集 フリー
    【はじめに】
    当院の回復期リハビリテーション病棟(以下、回復期リハ病棟)は、年平均年齢76.4歳であり、自宅復帰するために病棟スタッフが共有の目標を持ち、患者様の在宅復帰に努めている。今回、事例の少ない回復期病棟での10代前半の症例を担当し、当院での取り組みと経過を報告する。尚、本報告は両親に説明と同意を得ている。
    【症例紹介】
    10代前半小学生の女性、2009年10月発症、左視床出血に伴う脳室内穿破及び急性水頭症を認めた。低体温療法、左側前角穿刺にて脳室ドレナージ施行。経過中誤嚥性肺炎を併発し人工呼吸器管理となる。2009年12月リハ目的で当院回復期リハ病棟へ入院となる。【神経学的所見】
    右重度片麻痺(Br.stage_III_-_II_-_II_)両足関節ROM制限あり(右-5°、左0°)右上下肢に表在・深部感覚鈍麻。その他高次脳機能障害として、注意障害・記憶障害・遂行機能障害・寡黙・発動性意欲低下あり。
    【経過・結果】
    <1期:介入当初>FIM20点、自室のベット上での生活がほとんどであり、ADL・基本動作はほぼ全介助状態。経鼻栄養で、スピーチカニューレつけているが、発動性や意欲低下、呼気量の低下により発声はなく口型にて表出する。また、容易に感情失禁を認め、訓練の阻害因子となる。
    <2期:介入から1ヶ月>
    FIM51点、車椅子への離床が進み、リハビリ室での訓練が定着。早期歩行を目指し、LLBを作製する。声量はわずかであるが、発声可能。失語や保続あり。食事は、車椅子にて3食経口摂取となる。また、音楽療法として歌を歌うことにより発声を促し、キーボードを弾くことで右上肢の機能訓練を目的として同時施行となる。
    <第3期:介入から2ヶ月以降>
    FIM58点、失語や保続はあるが、YES-NO反応が正確になっている。起き上がり、端坐位保持可能となる。また、装具装着し、上肢把持なしでの静止立位保持が可能となる。音楽療法と一緒に歩行訓練の導入。
    【考察】
    今回、当院の回復期リハ病棟での事例の少ない小児のリハビリ施行にあたり、PTは複数担当とした。さらに、他小児施設への訪問を実施する事により訓練のアドバイスを頂いた。また、病棟スタッフとの協力によりスケジュール表の作成と空き時間に貼り絵を実施するなどの精神的ストレスの緩和、離床時間の延長を目的とする対策をとった。そして、ソーシャルワーカーやリハビリスタッフの蜜な話し合いを実施し、方向性の確認や情報の共有化を図った。高齢者と異なり、在宅復帰と共に小学校への復学やその後の人生プランの方向性等の一端を担う目標の設定が必要であった。高齢者を対象としたリハビリ主体の中での本症例は戸惑いも多くあったが、貴重な経験となり今後の経験に活かしていきたい。
  • 鹿毛 美里, 近藤 直樹, 阿部 光司, 相良 美和子, 進 貴臣, 相良 研
    セッションID: 306
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/01/15
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】
    当院肢体不自由児通園施設(以下通園)の理学療法士(以下PT)は,保護者に対してホームプログラムを指導している.しかし先行研究では「保護者は諸理由によりホームプログラム実施困難」といわれている.よって,今回通園におけるホームプログラム指導状況とそれを実施している保護者の実施状況について調査した.
    【方法】
    対象は,平成21年9月時点での通園在籍62名の児の保護者と担当PTとし,アンケート調査を実施した.調査は当院通園担当PTが行った.内容は,PT側に1)ホームプログラムの指導をしているか,2)内容の確認・再指導をしているかの2項目,保護者側に1)ホームプログラムの指導を受けているか,2)内容の確認・再指導を受けているか,3)保護者の実施状況の3項目とした.なお,実施状況においては,保護者の受け止め方として,楽しさ・手ごたえ・負担度についても調査し,重症度別(大島の分類;1・4=重症臥位,2・3=重症座位,5~16=中等度,17~25=軽度の4群)ならびに年齢別(1・2歳,3・4歳,5・6歳の3群)で比較検討した.
    【結果】
    保護者の回答数は51/62名(82%)であった.指導状況について,PTは49/51名(96%)に指導しており,保護者も47/51名(92%)が指導を受けていた.しかし,確認・再指導となると,PT;34/49名(69%),保護者;31/47名(66%)と共に低下した.保護者の実施状況では,47名全員が何らかのホームプログラム(例:ストレッチ,運動発達促進)を実施していた.但し,これらの指導を受けた内容の中で,全ての内容を実施していた保護者もいれば,全ては実施できていない保護者もいた. その実施できていない理由として,「家事等により,本児との共有時間がない」等が挙げられた.保護者の受け止め方をみると,楽しさでは,重症度別での各群と年齢別での1・2歳群及び3・4歳群は8~9割が楽しめていると回答し,年齢別での5・6歳群では5/16名が楽しくないとしていた.手ごたえでは,重症度別・年齢別の全群で8割以上が手ごたえを感じていた.負担度においても,全群で8割以上が負担なく実施していたが,重症度別の重症臥位群では3/18名が負担であると回答した.
    【まとめ】
    今回の調査では,PT・保護者共に初回指導に関して高い認識を持ち,保護者の実施状況においても,先行研究と異なり積極的な意見が多かった.一方で楽しくない・負担であるとの意見もあった.よって,今後は両者の意見を考慮し,PTが家庭環境の配慮等を含めたホームプログラムのあり方について検討していく必要がある.
  • 守屋 聡子, 原 寛道
    セッションID: 307
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/01/15
    会議録・要旨集 フリー
    【はじめに】
    実用的な移動手段を持たなかった児に、電動車椅子(以下、電動w/c)を試行した。その結果、活動への自発性が増し、床上移動や自走式車椅子(以下、w/c)駆動能力にも向上が見られた。これらの経過に考察を加え報告する。なお報告にあたり本人・保護者の同意を得た。
    【症例紹介】
    小学3年生の脳性まひ(痙直型四肢まひ)を持つ男児。GMFCS・MACS共にレベルIV。WISC-III言語性IQ95、動作性IQ60、全検査IQ76。こどものための機能的自立度評価表(以下、WeeFIM)得点59点。移動はw/cで全介助。努力を強制すると左右への寝返り、摩擦の少ない床上でずり這い2m程度、屋内w/c駆動5m程度可能だが、過度な時間を要し実用性はない。床上・w/c共に移動は受身的で、自ら介助を求めることもしない。日常生活動作(以下、ADL)にもその傾向は見られ、したいことを伝えることはほとんどない。児の知的・身体的機能から、電動w/c操作は可能と予測されたが、母親は電動w/cの使用でw/c駆動能力が低下する可能性を危惧していた。
    【目的】
    自力で移動できる経験を通じ、自発的に活動する意欲を高める。
    【方法】
    週1回、約2ヶ月間、電動w/c操作練習を行った。その後1ヶ月間、電動w/cを貸し出した。試行前後にWeeFIM及び独自のADL評価表を作成し実施した。独自の評価は、ベッドから降りる等、注目した10項目について意欲と遂行度を各3段階、0点~2点に分け採点した。各段階は、意欲の尺度を「促してもしようとしない・促せばしようとする・自発的にしようとする」、遂行度の尺度を「できない・少しできる・できる」とした。
    【結果】
    開始から間もなく電動w/cでの屋内移動が監視下で可能となった。練習中に活動を自ら考え他者を誘って行動する様子が見られた。家庭では、自発的にずり這いで布団から出ようとする、隣の部屋へ行こうとするなどの行動が見られ始めた。また、学校では自発的にw/c駆動に取り組むようになった。電動w/c貸出期間中には、より生活場面に沿った操作が可能となった。貸出終了時、w/cを自発的に駆動し、困難な時は自ら介助を求めるようになった。WeeFIM得点は59点が61点に上がり、そのうち1点は移動の項目であった。独自の評価では、意欲の得点が7点から17点へ、遂行度が4点から16点に上がった。児の様子をみて、母親は電動w/cの購入を希望するようになった。
    【考察】
    今まで児の活動が受身的だったのは、移動の成功体験がないことからのあきらめと、求めなくとも介助してもらえる環境が原因と考えられた。児は電動w/cで自力移動を経験し、これが自信となって、床上移動やw/c駆動も自発的に行うようになり、その結果、短期間で能力が向上したと考える。また、主体となって活動した経験が、活動への積極性を高め、自力移動が困難な際は自発的に介助を頼めるようになったと考える。この結果より、活動に参加する手段としての移動は代償的なものであってもできるだけ早期に提供し、経験してもらう必要があると感じた。
  • ~GMFCSレベル5の児童の5年間を追って~
    野田 智美, 藤井 満由美, 久保田 珠美, 武田 真樹, 福屋 まゆ美, 廣瀬 賢明, 武智 あかね, 那須 賢一
    セッションID: 308
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/01/15
    会議録・要旨集 フリー
    【はじめに】
     今回GMFCSレベル5の児童に関して、障害者スポーツの1つである卓球バレーにおける姿勢・環境を検討し、ラケット操作・日常生活動作(以下ADL)の5年間の経過を報告する。尚、今回の報告は両親に説明と同意を得ている。
    【症例紹介】
     低酸素性虚血性脳症による混合型四肢麻痺。養護学校6年男児。1歳時より当センターに入所し、6歳よりスポーツ活動に参加。当時、食事はほぼ全介助、電動車椅子は駆動できるが停止・方向転換不可。現在、右上肢のみ不随意運動を伴いながらの操作が可能。ADLは食事以外全介助、食事は特殊スプーンと皿を設置すれば自立。寝返り可・坐位不可・電動車椅子での移動可。
    【卓球バレーにおける姿勢・環境調節及びラケット操作】
    1年生:ラケットの持続的把持、動くボールへの対応が困難。よって、車椅子は得意な水平外転の動きで打てるよう後向きとした。車椅子上に割り座をとらせ左前腕をアームレストに固定することで、下部体幹の安定性向上・右上肢の分離運動を促した。ラケットをベルトで固定しようとするが、上肢の活動に伴う手指伸展が強かったため、児の手の上からセラピストが把持を手伝う必要があった。
    2年生:車椅子にKnee blockを取り付け、左上肢はグリップ付き前腕固定板とともにアームレストに固定することで、より強固に安定させた。結果、ラケット操作時の手指伸展の不随意運動が減少し、ラケットをベルトで固定できるようになった。しかし上肢操作に股関節・体幹の強い伸展が伴い、連続でボールがくるとスムーズな動きができなかった。
    4年生:すばやくラケットを振っても持続的把持が可能。また車椅子のテーブル上に箱を置き、右前腕を卓球台と同じ高さとした結果、台に沿わせて打ち返すという運動方向のイメージが明確になり、ラケットが卓球台から浮かなくなった。さらに左肩を上方からのベルトで圧迫したことでサーブの正確性が向上した。
    5年生:スピードのあるボールを打ち返すことができ、サーブにもスピードをつけられるようになった。左上肢は肘伸展位で座面などを支持し、自分で安定を図れるようになった。
    【考察】
     以上のように右上肢以外を安定させるなどの姿勢・環境へのアプローチを行った結果、分離した運動イメージを獲得でき、身体の選択的な使用が可能になった。また年々上手に打ち返せるようになった自信・楽しみが本児のモチベーションを向上させ、ボールを注視しタイミングを合わせて打ち返すなどの目と手・上肢の協調的な動きを積極的に行う結果となり、その積み重ねが食事や電動車椅子の操作などADLの向上に繋がったと考える。加えて、チームスポーツであることから、他児に認められるなどの成功体験も重ねることができた。今後も本児の自信や楽しみを引き出せるような理学療法を提供し、将来に繋げていきたいと考える。
  • 高濱 みほ, 萩原 秀樹, 奥田 裕美
    セッションID: 309
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/01/15
    会議録・要旨集 フリー
    【はじめに】
    長期臥床は下側肺障害を引き起こしやすく、重力により気道分泌物が貯留し無気肺が生じて酸素化能が低下する。本症例は先天性疾患により四肢や体幹の奇形が著明な気管切開(気切)を施行している児で肺炎を繰り返す症例に対し腹臥位療法を施行したので若干の考察を加えて報告する。
    【症例】
    重症心身障害者病棟に入院している18トリソミーで5歳の男児。意思の疎通は困難。慢性呼吸不全に対し気切を施行している。日中は酸素投与を行い、夜間は人工呼吸器を装着している。喉頭分離術はしていない。未頚定、高度の亀背、臼蓋の形成不全、膝蓋骨欠損などのために可動域制限が多数見られる。変形が著明なため自力にて体位を変更することは困難である。先天性重度嚥下障害があり、口腔や鼻腔の分泌物の嚥下が全くできず誤嚥性肺炎を繰り返している。入院中に鼻腔から膿性の分泌物と気切口より粘稠痰を認め、平成22年1月12日胸部CTにて右肺野に肺炎の陳旧化した像、左肺野には肺炎と思われるスリガラス影が認められた。
    【方法と経過】
    平成22年1月19日より1週間に3~5回20~40分間、膝上にて腹臥位を実施した。2月中旬まで、腹臥位後に鼻腔の膿性分泌物と気切口より粘稠痰が多く認められた。3月上旬には腹臥位後の鼻腔の膿性分泌物と気切口からの粘稠痰は減少した。3月4日胸部CTでは、左肺野のスリガラス影は消失し、右肺野の陳旧化した病変と思われていた影は、縮小・消退していた。
    【考察】
    一般的に腹臥位療法や体位ドレナージが下側肺障害に対して有効な治療手段であることは良く知られているが、本症例は四肢体幹の変形が多発していることとライン類が多く、体位ドレナージ時のモニタリングをするマンパワー不足により、当院では積極的に腹臥位を実施していなかった。加えて、にぎやかな場面を目にすると表情の変化が多く見られるため、人の往来がある方向を向く肢位を取らせることが多かった。これらが重なり右下側肺に陳旧化した像がみられ、肺炎が繰り返し起こったと思われる。リスク管理が煩雑で、腹臥位を導入しにくい症例だったため、低頻度・短時間となってしまったが、腹臥位療法は内科的治療に加え有効であった。
    【まとめ】
    本症例より奇形や随伴症状が多い児にも内科的治療に加え適切な介入があれば、低頻度でも腹臥位療法は有効であることが示唆された。今後は予防的な意味を含めて介入時期と姿勢管理の検討をしていきたい。
  • 評価化のデータ化を通して
    上原 りつ, 吉田 真司
    セッションID: 310
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/01/15
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】
     脳性麻痺児(以下、CP)は障害が重度重複するにつれてその合併症も問題となる。今回、当園における関節変形及びROM制限の傾向を明らかにすると伴に年齢、姿勢、移動機能との因果関係を分析し、重度心身障害児者の2次的障害の進行予防に役立てる事を目的とする 。
    【対象】
     当園入所者及び通園利用者126名を対象に実施。平均年齢20.9歳(SD±8.77、範囲1-36歳)、男女比11:10であった 。
    【方法】
     平成21年4月~6月の期間中に_丸1_Cobb角_丸2_ 股関節MP_丸3_ 上・下肢ROM_丸4_普段多い姿勢と多様性_丸5_改訂大島分類横地案移動機能レベル(以下、大島分類)を評価した。計測した定量値は条件関数(Excel)を用いて名義尺度に変更し定数値としてデータ化。その詳細として、Cobb角10°以上を側弯、MP75%以上を脱臼、33%以上75%未満を亜脱臼。「丸首シャツの脱着」に制限を有する上肢ROM(肩関節屈曲<70°外転<45°内外旋<45°)を元にそれ以下を「制限」、「いすへの立ち座り」に制限を有する下肢ROM(股関節屈曲<112°外転<20°外旋<14°膝関節屈曲<93°伸展<0°)を元にそれ以下を「制限」とした。また普段多い姿勢と多様性が平均値より少ないものを「制限」、それ以上のものを「制限なし」とした。移動能力は大島分類レベル1~6で評価した。さらに「側弯」「脱臼、亜脱臼」「ROM制限」(以下、関節制限)と「年齢」「姿勢」「大島分類」を相関分析(クラメールの関連指数)した。
    【結果】
     Cobb角10°以上の側弯が48%、両側又は一側下肢に股関節脱臼を有するものが16%、亜脱臼は24%を占めていた。ROMでは上肢7%、下肢30%が「制限あり」。姿勢では68%が制限を受けていた。大島分類より、抗重力姿勢・活動に困難を呈するレベル1、2が61%を占めていた。
     年齢と関節制限の相関は、散布グラフ、相関分析より年齢と関節制限との間には相関がなかった。姿勢、大島分類と関節制限との相関は姿勢の「制限なし」と「側弯」との間に弱い相関があり、大島分類との間に相関はなかった。
    【考察】
     側弯、股関節脱臼、ROM制限はCPの合併症、2次的障害といわれている。今回の研究結果より、年齢によってこれらの発症に違いがないことから周産期医療の発達に伴いCPが重度化していることが主たる原因と考える。また未就児は股関節亜脱臼や膝関節伸展制限を呈していることが特徴的でこれらに対して早期から取り組んでいく必要性が伺えた。また医療従事者、療育者が現在のCPの臨床像の共通認識を深め、児の姿勢ケアや運動発達を援助していくことが大切だと考える。
     姿勢の「制限なし」と側弯の間に弱い相関があることから床上ポジショニングの定着により臥位時の姿勢の多様性は得られているが坐位時の抗重力姿勢に問題があると考える。また61%が抗重力姿勢・活動に困難を呈していることからも側弯が進行しやすい車椅子上の良肢位や移乗時間の配慮は勿論、児の自発的な運動を支援していくことが必要だと考える 。
  • OSA_II_とアンケート調査を用いての考察
    河口 万紀子, 松本 貴子, 米ヶ田 宜久, 亀尾 香珠代
    セッションID: 311
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/01/15
    会議録・要旨集 フリー
    【はじめに】
    当学院では、高校推薦よりの学生が6割以上を占め、約半年前に入学が決定する。そうした中、入学までの期間に、入学後の学習のイメージをつくり、PT・OTに成りたいという志を持続させる為の関わりが必要と考え、施設見学を含む3回の「入学前講義」を実施した。この講義の効果を検討するため、講義前後に、作業に関する自己評価(以下OSA_II_)を実施し、終了時のアンケート調査結果を踏まえて講義の効果を考察した。
    【方法】
    3回の「入学前講義」に参加し、本研究の主旨を説明し同意が得られた者で、OSA_II_を講義前後で実施できた学生55名の結果に対して、有能性と価値の評定を素点化し、遂行1~11(11問)・習慣化12~16(5問)・意志17~21(5問)の設問の素点を合計した各得点の中央値において、比較検討を行った。統計処理は、wilcoxsonの符号付き順位検定を用いて分析を行なった。加えて、その結果を踏まえて、アンケート調査の内容より、どの様な関わりが変化を及ぼしたのかを考察した。
    【結果】
    OSA_II_講義前後の、意志、習慣化、遂行の素点合計の中央値は、有能性・価値尺度のすべての項目で講義後が、低値を示し、意志・遂行の有能感については、有意差が認められた。(P<0.05) アンケート集計では、「入学前講義はPT・OTを目指す上で役にたったか?」の質問では、「意味があった。」「とても意味があった。」の回答が、全体の90%を占めていた上で、「どの内容が役に立ったか(複数回答)」の質問では、69%の学生が運動機能学講義、58%の学生が現場のPT・OTと接したこと・49%の学生が施設見学を、役に立った内容と答えていた。「参加しての感想(複数回答)」では、「むずかしさを感じた」40%「頑張らなくてはならない」25%の感想が上位を占めていた。
    【考察】
    講義前後のOSA_II_の比較検討で、意志と遂行の有能性に低下が認められたが、このことは、本講義が、意志と遂行の作業有能感を、妥当な方向に修正を及ぼした事を裏付ける結果であると考える。アンケート結果の感想においても「むずかしさを感じた」40%「頑張らなくてはならない」25%など課題的な感想を述べた学生が上位を占め、「PT・OTに成ることは自分が思っていたより大変なことで、頑張らなくてはならない」という現実感を与える機会をもたらし、自己の高すぎた有能感を見直す機会を与えたことが伺える。また、その講義内容において、学内での講義以外に、現場の施設見学・現場のPT・OTと接したことが、役に立ったと答えた学生が多かったことは、臨床現場でのさまざまな対人交流の機会提供が、その修正に大きく影響したことも予測できる結果であると考える。
  • ~5年間の経過~
    松崎 哲治, 河元 岩男, 明日 徹, 田中 裕二, 松岡 美紀, 木村 孝, 熊丸 真理, 山下 慶三, 花田 穂積, 松木 直人, 峰岡 ...
    セッションID: 312
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/01/15
    会議録・要旨集 フリー
    【はじめに】
    1995年より全米各地の学校が「EQ(emotional intelligence)~こころの知能指数」を数学や国語と同じような必修科目として教える方向にある。また近年、企業も採用試験や職員教育にEQテストを取り入れるようになってきた。当校においてもH17年春より毎年一回(最終学年は長期臨床実習終了後も)理学療法学科全学生にEQテストを実施している。今回、これまで開始から5年を経過したので、これまでのデータや、その間に起こった定員増などよる影響なども踏まえ報告する。
    【研究手順・対象】
    本研究は、内山らが開発した検査EQSを用い行った。対象は、当校に在籍している、全理学療法学科学生に行った。なお、H17・18・19・20・21・22年春に当校当学科在籍学生2139名に実施した。そして今回は、EQSの自己対応・他者対応・状況対応という3つの領域において、5年間の経過を追ったのでここに報告する。
    【結果】
    対象の当校に在籍している全理学療法学科学生2139名中、回答信頼性傾向(偏り)を判定する基準に引っかかった者及び統計学的手法により外れ値を示した者を除き1939名を分析の対象とした。この、1939名の対象者全体の平均値および標準偏差を求めると、自己対応51.04±10.05・対人対応51.94±9.63・状況対応42.99±10.69となった。その平均を、EQSマニュアルにある大学生226名の平均やその大学生226名内の専門・研究職を目指す大学生62名の平均より有意に高かった。そして、学年が増す毎に高くなる傾向があり、各年度による差や、定員増による差は見られなかった。
    【考察及びまとめ】
    今回、当校理学療法学科全学生にEQテストを5年間実施した。そして、当校の学生は、「自己の心の働きについて知り、行動を支え、効果的に行動をとる能力」が身についていると思われまた、「他者の感情に関する認知や共感をベースに、他者との人間関係を適切に維持することのできる能力」や「自己を取り巻く、あるいは自己と他者を含む集団を取り巻く状況の変化に耐える力、リーダーシップ、また自己対応領域と対人対応領域の各種能力や技量を状況に応じて適切に使い分ける統制力」にもおいても、専門学校に入学は高値を示すことが、他データからも伺えた。そして、学年が増す毎に高くなった。また、定員を増やしても、学校の取組によって影響がないことが、この数値からは伺えた。さらにデータを重ね、個人の経過や精神的健康(気分や感情)との関係、また外れ値を示した者の行動分析を行っていきたい。
  • -本学独自のアンケート作成-
    日下部 修, 峯崎 佳世子, 岡 大樹, 兒玉 隆之, 野中 嘉代子, 土田 健司
    セッションID: 313
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/01/15
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】
    学校教育における問題を論じるには、学生個人の資質だけを問うのでなく、文化や政策、経済といったその時代の社会背景を踏まえる必要がある。理学療法士・作業療法士養成校(以下、養成校)を高等教育機関とみるならば、ここでの教育問題を検討するには初等・中等教育を踏まえる必要がある。このような観点から養成教育に関する先行研究を見てみると、このことを踏まえて学生がどのような価値観で学院生活を送っているのか検討したものは、筆者の知る限り、希少である。
    本校についてみると、平成20年度入学の高卒現役生は、平成14年実施の学習指導要領で新学力観に基づいた実質的な「ゆとり教育」を受けたいわゆる「ゆとり世代」である。この「ゆとり世代」については、教育機会の不平等や階層格差による学力低下、さらに態度の評価により目立たないが内面にストレスを抱やすいといった問題が指摘されてきた。このことをふまえて、養成校を含む高等教育においては、「ゆとり世代」の学生の特徴を理解した教育戦略を構築することが肝要であると指摘されている。
    そこで、本校では初等・中等教育を踏まえた学生理解や養成教育を模索するべく、本学院で独自アンケートを作成し、平成20年度に1年次を経験した「ゆとり世代」学生における学習や学生生活の意識を調査した。
    【方法】
    対象は、調査目的と個人情報保護について口頭と紙面にて説明し、同意の得られた学生とした。詳細は、理学療法学科1年生71名、男性46名(うち「ゆとり世代」38名)、女性25名(うち「ゆとり世代」24名)、平均年齢20.3±3.7歳。作業療法学科1年生29名、男性18名(うち「ゆとり世代」11名)、女性11名(うち「ゆとり世代」10名)、平均年齢21.3±5.0歳であった。)本調査では、学習と学生生活の意識に関する44項目の質問に4件法で回答する独自作成の質問紙を使用した。これらの結果について、「学習動機」「学業の成果」「学習行動」「学校生活の充実」に関する項目で比較検討を行った。
    【結果】
    「学習動機」、「学業の成果」、「学校生活の充実」それぞれの間には正の相関が認められた(p<0.05)。一方、「学習動機」と「学習行動」の間に負の相関が認められた(p<0.05)。
    【考察】
    本調査の結果、本学院に入学してから一年間の学習に肯定的な意識を持つが、一方では学習行動に消極的な意識を持つ傾向を示している。つまり、本学1年生の「ゆとり世代」学生における学習に関する意識は、アンビバレンツな傾向があることが明らかとなった。このことは、「ゆとり世代」の特徴と似通っていると思われる。
    「ゆとり世代」学生における学生生活に関する意識は、1年次を終了した時点でもその特徴を持ち続ける傾向にある。つまり、学生の持つ問題は表面化しにくい傾向にあり、我々教員には学生とのコミュニケーションが特に要求される状況であることが示唆された。
  • ~理学療法学科学生のアンケート結果から~
    立津 統, 天願 博敦, 砂川 昌信
    セッションID: 314
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/01/15
    会議録・要旨集 フリー
    【はじめに】
    いわずと、義肢装具学は、理学療法の治療手技の一つである。2009年版脳卒中ガイドラインでは、「脳卒中片麻痺患者に、歩行改善のために短下肢装具が勧められる(グレードB)」とされており、歩行能力を改善させる有力な治療要素となっている。
    このような中、学生の臨床実習中に関わる義肢装具の頻度を知り、臨床実習や学内講義に活かすことを目的として調査を行った。
    【対象と方法】
     昨年度に臨床実習を行った理学療法学科学生76名対して、義肢装具に対するアンケートを実施した。 アンケート内容は、「実習中に義肢装具の質問を受けたか」「義肢装具に関することで困ったことはあったか」「義肢装具に関わったか」を1.たくさんあった。2.多少あった。3.まったくなかった。の選択肢を設け、その内容について記入させた。義肢装具に対する自由記入欄も取り入れ集計した。
    【結 果】
    1.義肢装具の質問を沢山受けた2名(2.6%)、多少受けた39名(51.3%)、まったくなかった35名46.1%)、具体的質問内容は、装具の名称・特徴・構造が16で最も多かった。
    2.義肢装具に関して沢山困った5名(6.5%)、多少困った24名(31.6%)、まったく困らなかった47名(61.8%)、具体的に困った内容は、装具の装着手順・方法が多かった。
    3.義肢装具に沢山関わった7名(9.2%)、多少関わった20名(26.3%)、まったく関わらなかった49名(64.5%)、関わった装具で多かったのは下肢装具7、であった。
    4.義肢装具に対する自由意見欄で最も多かったのは義肢装具学に対する必要性理解の項目16であった。
    【考 察】
    今回のアンケート結果では、臨床実習で義肢装具に関わった者は少なく、限られた臨床実習の中では、義肢装具の作製、あるいは使用した症例の十分な関わりは得られにくい事が確認できた。
    臨床実習では、各施設形態によって疾病構造が違うこと、実習時期のタイミング、症状、素材やアライメント、症例の履き心地、生活環境、経済状況などにも広く評価が及び全体像を理解させるための時間や手順が必要な事も考えられる。
     しかしながら、様々な疾患の運動療法を語る中で義肢装具の治療法は必要不可欠であり、臨床実習の中においても症例を治療する手段としての義肢装具の視点は重要であると思われる。
     また、高木らは、学生が義肢装具の一連の流れを経験・学習する機会が非常に少なく、卒後90%が不安と感じていることを報告している。
    今回のアンケート結果においても、義肢装具で困ったことは、経験が求められる内容、義肢装具に対する自由欄では義肢装具の重要性理解に関する回答、義肢装具に対する要望や意見などが多かった。
    このことからも学生は義肢装具のニーズをある程度知りつつある段階であり、臨床的な視点に立った臨床実習と学内講義での指導、経験が卒後の不安材料を拭う一つであると思われる。
  • 佐野 幹剛, 石橋 敏郎, 神崎 良子
    セッションID: 315
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/01/15
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】
    目的は、長期臨床実習における実習生の行動特性を明らかにすることである。
    【方法】
    対象は、調査研究の趣旨を理解し同意を得た4学年理学療法学科及び作業療法学科の学生82名。調査は、10週間の第1期臨床実習終了後にアンケート法により実施。アンケート項目は、実習地訪問時の学生面談で話された行動特性と高次脳機能の実行機能に関する行動特性の57項目で構成した。項目に対して「頻繁にあった」から「全くなかった」までの4段階評定で一つを選択する4件法とした。また、生活環境として、自宅、寮・賃貸など、実習環境として、ひとり、同学科あるいは異なる学科の実習生ありの項目を設けた。分析には、SPSS for windows 10.0.7Jを使用した。因子分析について、因子抽出法は主因子法で、回転法はKaiserの正規化を伴うバリマックス法を用いた。
    【結果】
    学生の属性について、理学療法学科59名、作業療法学科23名、生活環境で自宅33名、寮・賃貸49名、実習環境でひとり35名、同学科の実習生あり47名であった。アンケート項目の内、出現率20%以下の項目と因子負荷量0.35以下の項目を不良な項目として除外した。結果的に19項目に絞られた。因子分析の結果、4因子が抽出され累積寄与率は41.8%であった。項目分析後のクロンバッハのアルファ係数は、第1因子0.78、第2因子0.69、第3因子0.72、第4因子0.64であった。第1因子は、「すぐ諦める、何をしても続かない」など7項目で、集中が続かず受け身や無為な状態に陥ると解釈し「注意の持続困難」と命名した。第2因子は、「閉じこもりや抑うつ気分がある」など4項目で、気分が沈み物忘れや不正確な判断に陥ると解釈し「気分の落ち込み」と命名した。第3因子は、「ことわざやたとえ話が理解できない」など4項目で、思考が混乱し言葉がまとまらず動作がのろくなってしまうと解釈し「言動のまとまりのなさ」と命名した。第4因子は、「食欲をコントロールできない」など4項目で、食事や睡眠が不規則になり生活リズムが不安定になると解釈し「生活リズムの乱れ」と命名した。
    【考察】
    症例や疾患レポート、デイリーなど課題が重なると学生は睡眠時間を犠牲にする。結果、生活リズムが乱れ日中の注意力も低下すると考えられる。また、症例レポートの再提出が何度も続くと、学生は自信をなくし無力感から意欲が低下し、気分が落ち込んでしまうのではないか。この注意力低下や意欲低下から、学生は自分の言動に正確な判断ができず、すばやく行動に移したり、順序立てて説明したりと効率的で正確な言動が困難になると考えられる。4つの行動特性は前頭葉の実行機能の働きであり、実習生はその機能が一時的に低下することを示唆している。実習生に対して生活リズムの調整やストレスコーピングなど指導が必要である。
  • 目的意識の向上をめざして
    松本 貴子, 河口 万紀子, 米ヶ田 宜久, 亀尾 香珠代
    セッションID: 316
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/01/15
    会議録・要旨集 フリー
    【はじめに】
    本学院の入学試験は入学予定の10月に開始され、推薦入試の合格者は入学までおよそ半年間の期間がある。その期間の目的意識向上のための試みとして、2回の入学前講義、半日程度の臨床施設見学を行った。特に臨床施設見学については、入学前の高校生が対象であるということや、見学施設との調整など、入学後の実習とは異なった考慮点が多くあった。しかし、参加者からの反応が非常に良好であったため、以下にその内容、参加者の感想をまとめて報告する。
    【参加者】
    平成20年12月現在の合格者117名中、参加を希望したもの93名(79.5%)である。各学科の内訳は作業療法学科22名(入学予定者の81.5%:以下同様)、理学療法学科昼間部48名(77.4%)、理学療法学科夜間部20名(71.4%)である。
    【実施期間】
    平成21年1月中の土曜日3日間、半日程度の見学を設定した。受け入れ施設は作業・理学療法両部門の見学が可能で、事前に趣旨を説明し、賛同を得られた11施設である。
    【実施内容】
    基本的に全体的なオリエンテーションの後、指導者に個別で対応して頂き、実際の治療場面を見学させて頂いた。その後、同行の教員、指導者を交えて反省会を行い、1週間後に感想の提出を義務づけた。
    【学生への案内】
    平成20年12月初頭に実習受け入れ先を知らせ、希望を調査した。返信はハガキでの申込30名(32.2%)、メールフォーム利用が63名(67.8%)であった。最終的にメールでの連絡が困難だったのは対象学生117名のうち9名のみであった。
    【感想の内容】
    終了後のアンケートはメールフォームを使用した。90名の参加者のうち返信があったのは82名(91.1%)である。1.参加してどうでしたかという問いの結果は大変良かった55名(67.0%)、良かった26名(31.7%)、普通1名(1.2%)であり、ほとんどの参加者が良かったと答えている。2.感想としては職業のイメージが明確化した、あこがれる気持ちが強くなったなどの意見があった。また、3.見学の前後で何か変化があったと答えているものは73名(89.0%)だった。4.の変化点では、学ぶ内容が具体的になった、入学してから頑張っていこうと思った、などの意見が多かった。5.来年も行った方が良いと答えた参加者は80名(97.5%)とほとんどを占めていた。
    【考察】
    アンケートの結果より、当初の目的であった目的意識の明確化という点では一定の成果を得られたと考える。しかし、実施に際しては入学前の高校生が中心ということで、オリエンテーションが十分できず、個々との連絡調整が困難など入学後の実習とは異なる点も多くみられた。この点に関しては、携帯電話所有者については個別での連絡やアンケートにメールやメールフォームの活用が有効であった。受け入れ先の施設も初めての経験ということで、戸惑いも多かったが、学生の学習意欲の向上につながるとして評価するという意見を多く頂いた。今後もこの取り組みを継続し、経過を報告したいと思っている。
  • 野中 恵美, 中島 俊美, 宮崎 清美
    セッションID: 317
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/01/15
    会議録・要旨集 フリー
    【はじめに】
    B._I_の点数が高いほど在宅復帰率は高いことは知られている。しかし、今回B._I_10点の方を在宅に繋げることが出来た。この方を通して在宅復帰が可能となった要因をご本人様、ご家族様のご理解と承諾を得て考察する。また、当院の倫理委員会の承認を受け発表する。
    【症例紹介】
    66歳男性、妻と二人暮らしである。H11年脳出血にて左片麻痺を呈するもADLは自立していた。H21年 4月23日構音障害認め、急性期病院入院となる。4月27日に右片麻痺出現し左片麻痺増悪する。H21年5月13日当院入院となる。左右片麻痺と構音障害、摂食障害がありB.Iは0点であった。
    【経過】
    6月11日一回目のカンファレンスが開催され、ADLは全介助レベルであり、意思表出はyes-noにて可能であることを伝える。その際、妻より在宅介護は難しいと言われる。10月7日二回目のカンファレンス開催、端座位は見守りレベルで、移動は標準型車椅子を右下肢のみで駆動し、自立レベルとなった。それ以外のADLは全介助レベルであり、意思表出は文字盤を使用すれば右下肢で可能となった。主治医より在宅復帰を提案するも、妻から返答は無かった。その後、本人や妻が介護保険サービスを分からない部分もあり相談員やリハスタッフから具体的に説明を行った。また、小柄な妻でも出来る移乗動作方法を本人、妻、リハスタッフと考案した。10月18日妻より「本人が帰りたいと言うから家に連れて帰ります」と伝えられる。家屋調査を行い、2月2日自宅に退院となる。訪問看護、訪問介護、入浴サービス、訪問リハを使いながら在宅生活が始まる。3月18日妻へアンケートを実施した。妻より、本人が帰りたいと文字盤を使って伝えていたこと、本人が帰るために努力する姿を見て、連れて帰ろうと決めた。乗り移りも工夫すれば出来るので、在宅介護もできると思った。
    【考察】
    当院は、急性期病院からの転院数、在宅復帰率共に増加している。B._I_の点数が高いほど在宅復帰率は高いことは当然である。しかし、B._I_の点数が低い方でも、帰りたいと願う方は多くいるが、主介護者の考えに左右される。今回、在宅復帰を実現できた要因は標準型車椅子駆動が自立したこと、本人が自分の思いを自分で伝えることが出来たこと、本人、妻そしてリハスタッフが一体となり移乗方法を考案したことで、妻が在宅介護をやってみようと思うきっかけになったと考える。
    【まとめ】
    どんなに小さな能力であってもその能力を実生活の場面に結びつけ、獲得出来ない能力は介護保険にて補うことで、B._I_の点数が低い方でも在宅に帰れることを今回学ばせて頂いた。患者様の獲得できる能力や介護保険を使った場合の予測される在宅生活を早期からご家族様に提示することにより、在宅復帰率を高めることが出来ると考える。症例報告であったが今後も調査を重ねていく。
  • ~福祉用具導入と課題~
    花田 雄貴
    セッションID: 318
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/01/15
    会議録・要旨集 フリー
    【はじめに】
    当院は、内科疾患を中心とした療養型病院である。しかし、脳卒中や神経疾患、整形疾患を患った高齢の患者様が多く、長期療養を余儀なくされることも少なくない。 特に近年、神経難病や重度脊髄損傷の患者様も増えてきた。重度の障害を抱え終日臥床傾向となった患者様に対してQOLの向上のために当院OTが力を入れている取り組みについて述べる。
    【当院の福祉用具】
    福祉用具とは、心身の機能が低下し、日常生活を営むのに支障のある老人または心身障害者の日常生活上の便宜を図るための用具及びこれらの者の機能訓練のための用具ならびに補装具を言うとある。当院では、環境調整によりQOLの向上が見込めると判断した患者様に対して福祉用具の導入を検討している。円滑に導入できるよう当院では様々な福祉用具を備えている。
    ・スイッチ
    ビックスイッチ、ジェリービーンスイッチ、スペックスイッチ、タッチセンサースイッチ、PPSスイッチ、ピンタッチスイッチ
    ・伝の心 ・テレビトコール ・改造ナースコール
    【対象】
    主に神経難病や重度脊髄損傷の患者様
    【取り組み】
    リハ医からの処方や病棟スタッフからの依頼があると、OTは評価し福祉用具の必要性を検討する。患者様や病棟スタッフのneedを考慮しながらナースコールおよびIT機器、そしてそれらを操作するスイッチを選定し、操作練習を行って導入する。尚、ナースコールの場合、即座に設置する。また、当院にない福祉用具を導入する際は失敗がないよう業者からのレンタルを勧めている。福祉用具を導入後も症状変化や不具合などで調整が必要となる場合が多く、その都度対応している。中でも病棟スタッフへの指導は、多数の病棟スタッフが扱うため重要となる。
    【症例】
    50歳代 女性 ALS 平成16年9月ALSと診断。平成21年1月8日療養継続目的にて当院入院。 身体状況:筋力2レベル。寝返り全介助。
    BI:0/100点FIM:55/126点 コミュニケーション:単語レベルの発語あるがほとんど聞き取れず。理解面は問題なし。
    導入機器  伝の心、スペックスイッチ 入院時、作業活動が狭小化した状態であったため伝の心を導入。その結果、他者との円滑なコミュニケーション、DVD・テレビ観賞が可能となりQOLが向上した。
    【まとめ】
    当院では、精神面では問題がないものの重度の身体障害のため終日臥床傾向となっている患者様が増えているが、環境調整というOTの専門性を活かし少しずつQOLの向上に貢献できていると考える。しかし、高齢者が多い内科中心の病院であるためOTの専門性や福祉用具の使い方等、病棟スタッフへ浸透しにくい。そのため扱い方が統一されないことや乱雑に扱うことで生じる不具合が多く、今後の課題であろう。
  • 紙パンツを検証・導入しての一考察と今後の課題
    下崎 直子, 吉原 直貴
    セッションID: 319
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/01/15
    会議録・要旨集 フリー
    【はじめに】
    当院療養病棟では離床・活動性向上・自立支援を行うためパンツ型紙オムツ(以下紙パンツ)を導入し、排泄自立に向けたシステムづくりを行った。今回検証により以下の知見が得られ、今後の課題について検討した為報告する。
    【方法】
    分類:当院では各社ある紙パンツの中から以下の2種類を検証した。1つ目は一度排泄された後はすぐに取り替えることをコンセプトとし一回量320ccの紙パンツを検証した。2つ目は上記コンセプトとは別に紙パンツと紙オムツ2つの機能を有する紙パンツ(以下、2Way紙パンツ)を検証した。
    検証方法:当院では以下の5つの方法で検証を行った。1.通気性・尿量・吸収量・横漏れ機能・吸収体における機能を比較。2.実際に履いたときのフィット感・履き心地を比較。3.起立・歩行時のフィット感・動きやすさを比較。4.座位時での吸収量を比較。5.着脱自立レベル・着脱介助レベルおよび立位安定型・着脱介助レベルおよび立位不安定型での着脱のしやすさを比較。
    【結果】
    検証より一回量320ccの紙パンツを比較した場合、機能面からは著明な差は認められなかった。しかし紙パンツは形状からフィット感と介助のしやすさに分けられるのではないかと考えた。フィット感を重視したものは運動をしやすく動きやすいという側面を持っているのに対して、介助のしやすさに重視したものは立位保持やバランス能力の低下などの場面で着脱が容易にできるという側面をもっていることが分かった。その結果、当院では1回量320cc紙パンツの中からフイット感を重視した紙パンツと介助のしやすさに重視した紙パンツの2種類、2Way紙パンツの中から1種類の紙パンツを選定した。そしてフィット感を重視した紙パンツ・介助のしやすさに重視した紙パンツ・2Way紙パンツの順に自立度・FIMの点数が高いという仮説を立て、紙パンツを選定することとした。
    【考察】
    紙パンツ選定基準における明確な報告は少ない。よって臨床場面ではベッド上での排泄から自立度の高いトイレでの排泄に移行する場合、どの時期にどの紙パンツを選択すべきかといった判断を行うことは容易ではない。そのため各職種の視点で話し合い、情報を共有することは必要不可欠であると考える。
    その中で理学療法士の役割とは、トイレ動作能力に及ぼす機能障害を明らかにし各身体機能の評価を行うこと、また身体機能・能力に合った紙パンツを履くことでどのような能力を発揮することができるのか、介助量軽減につながるのかということを考察し、他職種と話し合うことが必要であると考える。
    【現状と課題】
    今回の紙パンツ選定基準は仮説の段階である。今後は紙パンツ選定基準の妥当性を検討する為、FIMを用い実行状況を経過で追う必要がある。上記経過におけるデータ収集を行うためにも、今回得られた紙パンツ選定基準に基づき1人の患者を取り巻くチーム内で紙パンツの種類を明確に選ぶ必要がある。そして最終的にはFIMの点数で紙パンツの導入時期を管理できるようなシステムを構築することで、紙パンツを早期に選定し、オムツから離れ、自立へつなげていきたいと考える。
  • ~発症から2年半経過した左片麻痺症例の上衣着衣動作への介入~
    吉田 裕志
    セッションID: 320
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/01/15
    会議録・要旨集 フリー
    【はじめに】
     今回、脳出血発症より2年半更衣動作の介入が行われないまま経過した左片麻痺の症例を担当した。上衣着衣動作の手順・方法が分からず、これらを指導・訓練する事で着衣動作が自立した為、介入方法を踏まえ報告する。
    【症例紹介】
     50歳代男性。平成19年8月に脳出血を発症し、左片麻痺を呈する。身体機能は、Br.Stage上肢II・手指II。上肢感覚は、表在・深部共に重度鈍麻。認知機能は、特に問題なし。入所前の生活は、基本動作・歩行は4脚杖にて自立。日常生活動作は、更衣のみ妻が介助を行っていた。その他自立。主介護者である妻が上肢の関節・筋肉に疼痛が出現し入院する為、平成22年2月から約1ヶ月間当施設への入所。
    【経過及び結果】
    第1期:入所~1週間半
     入所当初、更衣動作を確認すると、麻痺側の肘・肩まで十分に通さないまま上衣の着衣を行っており、上衣の着衣にのみ一部介助が必要であった。本人は、手順・方法がわかっていなかった為、動作の訓練・指導を行い、手順書を作成する事でいつでも着衣の手順・方法を確認出来る様にした。
    第2期:入所1週間半~3週間目
     徐々に着衣が出来る様になってきたが、着衣をする機会が訓練時のみだった為、自主訓練表を作成・導入し、一般棟にて着衣動作訓練を自主的に行ってもらった。
    第3期:入所3週目~4週目(退所)
     自主訓練表を導入した事で、着衣動作の回数も増え、自立して着衣が行えるようになった。更衣動作の家族指導を行う。
    第4期:自宅退所後
     上衣着衣動作も定着しており、更衣動作が自立していた。
    【考察】
     本症例は、2年半前に脳出血を発症し、左片麻痺を呈していた。年齢が若く、認知機能面も問題なく、本人・妻のdemands、入所前の日常生活の情報から上衣着衣動作の介助量軽減を目標に介入を行った。発症後、急性期病院に入院したが、基本動作訓練を中心に訓練を行っており、基本動作が自立した事で、自宅退院となっていた。その為、更衣動作の手順を教わった事がなく、着衣の手順や方法を十分理解していなかった。また、妻が本人一人では出来ないと思い、今まで更衣動作を介助していた。これらの理由で、着衣動作が脳出血発症から2年半自力で行えていなかった。しかし、着衣動作の訓練・指導を行い、手順書・自主訓練表を作成・導入した事で着衣動作が自立となった。
    【まとめ】
     今回、1ヶ月という短い期間で、集中的かつ効果的なリハビリテーションを行う事で、上衣着衣動作を獲得する事が出来た。維持期のリハビリテーションは、身体機能・動作能力の維持・向上を図るだけでなく、自立生活の支援・介護者の負担軽減を目的としている。「できるADL」と「しているADL」を整理し、いかに「しているADL」に繋げられるかで、患者・利用者様の自立生活の支援・介護者の負担軽減を図る事が出来ると再認識出来た。
  • 東島 美佳, 渡辺 千賀子
    セッションID: 321
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/01/15
    会議録・要旨集 フリー
    【はじめに】
    食生活は人間が生きていく上で必要不可欠な行為である。また生きる楽しみの一つとして提示されている。今回、体重増加により膝への負担が生じている一症例に対し、食生活の改善を指摘された。調理活動を通して作業療法と栄養指導との相違から若干の考察を得たのでここに報告する。
    【症例・経過】
    68歳 女性 一人暮らし 診断名:左脛骨高原骨折・左第4中手骨骨折 既往歴:右膝関節症・DM・HT 身長:154_cm_ 体重:76kg BMI:32 食事箋:エネルギーコントロール食(1400kcal・塩分6g) 平成21年6月、車との接触事故にて受傷。膝関節への負担軽減のために体重コントロールが必要となり食事制限が指摘される。荷重が許可されたころより作業療法では家事動作への介入を行なう。家事動作での左手指への負担や下肢の耐久性確認目的にて調理訓練実施。初回、リハビリ室の調理室にて、日頃本人が食しているものから献立を立ててもらい荷物を持っての歩行訓練も兼ねて食材調達から実施。調理動作では手指の骨折への負担は少なく、また一定期間の立位姿勢にて疲労が生じないように椅子を準備することを提案した。味付けは調味料を目分量で行い、塩分の濃い味となった。2度目は栄養相談室内での調理室にて実施。食材のカロリー・塩分などが一目で分かるような提示をし、計量しながら調理を進めていった。本人の食生活に対する意識の変化がみられた。退院時体重は71kg。
    【考察】
    食生活は1]食材を調達する2]栄養を考える3]食事を作る4]食事を食べるに分けられている。作業療法では食生活の自立を支援する為に活動分析を行い、動作や姿勢、手段などを評価し生活環境を考慮して調理活動を行なっている。生活環境や家族関係などの影響により体重増加していた背景があり、本症例は管理栄養士による栄養指導で薄味や食事量の制限を指摘された。調理動作自体に問題は生じなかったが、味付けや量など栄養管理面での基礎知識・注意点などの把握が不十分あったことが考えられる。このことから管理栄養士・作業療法士で実際に調理活動を行なう上で事前に、1)管理栄養士による献立の立案や2)調味料の摂取量の確認できるよう計量を行う必要があると考えた。また3)リハビリ用の調理室・栄養相談用の調理室を必要に応じて使用する。4)退院後も活用できるような調理メニューの配布などを考慮した結果、本人も実践にて食事量や薄味を把握できたのではないかと考えられる。また、食生活において制限をされるだけではなく、好きなものをおいしく楽しみをもって調理を行なうことを実感でき、体重減少へと意識を向けることが出来たのではないかと考える。今後も互いの専門性を生かし適切な栄養管理をもとにリハを加味したアプローチが必要であると考える。
  • ポジショニング講座の効果検証を交え
    松本 伸一, 坂本 知子, 丹生谷 優希, 岩永 健児, 坂井 綾子, 酒井 祥平, 秋山 謙太, 山中 健生
    セッションID: 322
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/01/15
    会議録・要旨集 フリー
    【はじめに 】
     当院ではNSTの活動が平成15年度から開始され、リハ部は運動機能・ADL動作能力、嚥下機能の評価などを通してNSTの中でチームの一員として貢献し、H21年度より院内の褥創委員会の活動・回診へも参加するようになった。中でも活動量が低くなっている症例では、日中の姿勢やギャッジアップの方法、クッションの使い方など、介助者により理解が様々で適切な除圧や食事の際の姿勢がとれているとはいえない様子が散見された。そこで今回、ポジショニング講座を2回開催し、1カ月後にアンケート調査を行い、理解度の調査と意識統一を図る試みを行った。
    【実施方法】
     看護師・リハスタッフ・リハ助手・介護士など、患者様に接するスタッフを対象に、PT・OT・STの3部門でポジショニングの基礎知識・実践編・食事の際の姿勢の3編を2回に分けて開催し、#1ギャッジアップをする際、上半身のずれ落ちを予防するために下半身・上半身の順に行うこと、#2仙骨後面や踵部の除圧のために上下の角度の目安を20°とし、#3テンピュールやビーズクッションなど、目的により素材を使い分けることなどを今回の意識統一の項目として挙げ、重点的に指導し、1カ月後にアンケート調査を行い参加者・不参加者の点数を評価した。
    【倫理的背景】
     調査は匿名とし、データにより個人情報が特定されないように行った。
    【結果】
     講座後にアンケート調査を行い14点満点中、平均点は参加者(55人)が11.27点、不参加者(92人)は9.86点だった。その結果をt検定にて統計処理を行った結果、参加者と不参加者の間に有意な差がみられた(0.005>)。
    【考察】
     当院における2~3年間の褥創発生箇所として、仙骨・尾骨などの骨盤帯や、踵骨、大転子など、一般的に多発している部位に多く発生していた。城井らによると、ギャッジアップの膝挙げ角度は30°や35°よりも、20°が有意に仙骨部局所圧が低値になり、過度の膝挙げ角度は仙骨部に負担がかかる可能性があるとしており、20°以下にしても踵部への圧が高まるため、統一項目#1~#3を簡易的な指標として重点的に指導した。
     回診に参加し、講座を開催し始めたことで院内でも適切なポジショニングを行えているケースが多くみられるようになってきており、徐々に日常のポジショニングの重要性が認識され始めている。また、講座後にアンケートを実施ししたことも再度意識を高めることに役立ったと考えられる。NSTの介入が必要な低栄養状態の症例や、整形外科的手術後に安静が必要な症例など、入院してから褥創を発生してしまう症例も多くみられるため、病棟スタッフとリハスタッフの連携を今まで以上に綿密にとっていく必要があると考える。
    【最後に】
    今後もNSTの活動を通して、呼吸障害への体位指導や病棟内での離床の指導などリハスタッフの特色を活かし、長く患者様と関わっていく病棟スタッフへの伝達講習行っていきたいと考える。
  • 当院回復期病棟から在宅復帰した症例の追跡調査
    大里 泰彦, 前田 英児, 野尻 良
    セッションID: 323
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/01/15
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】
    これまで訪問リハビリテーション(以下:リハ)を提供している中で、在宅復帰後に転倒を起こす患者が少なくない事を経験してきた。里字らによると、CVA患者は14%~39%で転倒し、鈴木らによると転倒するものは何回も繰り返す傾向があると報告されている。今回、当院回復期リハ病棟から在宅復帰後の転倒に関する調査と身体機能及びFIM(移動項目)を調査し、回復期から維持期で関わる上での留意点について検討した。
    【方法】
    対象は、H19.4.1~9.30までの当院回復期病棟退院患者で通所または訪問リハを利用しているCVA患者20名(男:女=3:2、年齢:77.3±7.7)とした。転倒に関する調査方法はアンケートを本人・家族へ実施。身体機能及びFIMに関しては、Br.stage、筋緊張、FIM(移動項目)を退院時と現在とで比較した。検者は、現在利用している通所又は訪問リハの担当セラピストに依頼。なお、対象者へはあらかじめ本研究の主旨を説明し同意を得た。
    【結果】
    転倒した者は60%であった。FIMは15%で低下、45%は向上(監視・介助レベル⇒修正自立レベル)していた。FIM向上者の9人のうち8人は転倒し、そのうち5人が複数回転倒していた。さらに、転倒した者の62%が退院時と比べ筋緊張が亢進していた。転倒した者のうち退院後1ヶ月以内に転倒:58%、半年以内:25%、半年以上:16%となった。Br.stage下肢ステージIVで移動が監視、軽介助レベルで退院した者は、退院後1ヶ月以内に100%転倒していた。転倒場所は、ベッド周囲:30%、廊下:23%、トイレ:19%、屋外:19%、絨毯:3%、玄関:3%であり、時間帯は、日中:96%であった。
    【考察】
    在宅での環境に十分慣れていない時期に、移動が軽介助・監視レベルであるにも関わらず、自分で移動されていることが転倒の原因になっていると考える。また、筋緊張の亢進は、入院時と在宅復帰後の生活スタイルの変化に患者本人が対応できていないと考える。変化する環境への適応と家族・本人の意識が退院後の転倒に関与していることが示唆される結果となった。
    【まとめ】
    今回、入院生活と在宅生活は大きく違う事を改めて感じた。入院中は転倒のない患者でも、在宅生活では転倒のリスクが上がる。その為、早い段階から在宅に生活の場が変わる際に必要なサービスを十分に検討していく事が重要であると考える。そして常に能力の変化に応じた適切な支援が行えるよう、後方連携のネットワークを作ることが重要である。院内、在宅を問わず、それに関わるセラピストは、これらを熟知し、患者の今後の生活イメージと、そこに関わる転倒因子を予測しフォロー体制を考慮していく必要性があると感じた。
  • 鈴木 綾香, 明石 理佐, 中村 佳子, 木許 かんな, 兒玉 吏弘, 兒玉 慶司, 井上 仁, 川上 健二, 松本 裕美, 松浦 祐也, ...
    セッションID: 324
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/01/15
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】
     くも膜下出血(以下SAH)の急性期の転帰に影響を及ぼす因子についていくつかの報告がなされているが自宅や回復期病院への転帰にとどまり最終的な転帰の報告は少ない。今回、最終的な転帰を調査し、更に自宅退院できなかった症例の転帰に関する因子を検討した。
    【対象】
     2007年2月~2009年11月に本院に入院しリハビリテーションを実施したSAH患者のうち、外傷性SAHを除外した31例を対象とした。性別は男性5例、女性26例であり、発症時平均年齢は62.1歳(35~86歳)であった。脳神経外科的な初期治療の内訳は開頭クリッピング術29例、開頭クリッピング術および外減圧術1例、コイル塞栓術1例であった。
    【方法】
     カルテより後方視的に31症例の臨床所見、転帰を調査した。そして、1)入院時意識レベル(以下JCS)、2)退院時JCS、3)脳血管攣縮の有無、4)シャント術の有無、5)麻痺の有無、6)在院日数、7)退院時Barthel index(以下BI)を比較し、転帰に関する因子の検討を行った。本院より自宅退院した症例をA群、回復期病院へ転院した症例をB群とし、B群のうち自宅退院をB-1群、その他医療機関をB-2群とした。3)、4)、5)の内訳は延べ人数を記載した。
    【結果】
     31例中、A群17例、B-1群11例、B-2群3例であり90.3%が最終的に自宅退院した。臨床所見はA群1)0~100、2)0~2、3)0例、4)0例、5)0例、6)30.7日、7)85~100点であった。一方、B-1群1)0~200、2)0~3、3)3例、4)7例、5)3例、6)39.0日、7)0~95点であった。B-2群1)1~100、2)1~10、3)1例、4)3例、5)3例、6)73.3日、7)0~30点であった。退院時BIに着目するとA群は平均値95.2点、B-1群は平均55.5点、B-2群は平均16.7点であった。B-1群のうち退院時BIが低値を示した症例が2例(0点と5点)存在したが、転院後著明に改善した症例と家族の多大な協力が得られた症例であった。
    【考察と結論】
     SAH患者の家庭・社会復帰を長期的に左右する因子としては認知機能や精神・感情の障害、重度の運動障害が報告され、Hunt分類のgradeが上がるにつれ予後不良といわれている。今回の研究では本院入院患者のうち90.3%と多くの症例が最終的に自宅退院可能であった。しかし、3例は最終的に自宅退院が不可能であり、また、3群間を比較するとその因子は退院時BI値、意識障害、麻痺、シャント術の施行、在院日数の長期化、介護者の有無が相互に関係したためであると考えられた。発表ではHunt分類のgradeもふまえ、最終的な転帰に関する因子について検討した結果を報告したい。
  • 田中 靖之, 太田尾 浩, 今村 一郎
    セッションID: 325
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/01/15
    会議録・要旨集 フリー
    【はじめに】
     脳卒中片麻痺患者(以下,片麻痺患者)において日常生活活動(以下ADL)の獲得は在宅で生活を送るにあたり重要な目標である.またADLの獲得には体幹機能が重要であることは先行研究にて指摘されている.しかし体幹機能と各ADL動作との関係を詳細に検討した研究は見当たらない.そこで本研究では,片麻痺患者の体幹機能を臨床的体幹機能検査(以下,FACT)で評価し,各ADL動作との関連について検討した.
    【対象と方法】
     対象は研究への協力に同意を得ることができた片麻痺患者41名(男性23名,女性18名)で,平均年齢71.2±12.1歳.脳梗塞22名,脳出血18名,くも膜下出血1名であり,麻痺側は右片麻痺21名,左片麻痺20名であった.測定は体幹機能についてFACT,ADL能力はFIM-Mにて評価した.上肢筋力は非麻痺側の肩関節屈曲を,下肢筋力は膝伸展をMMTにて評価した.その他にBrステージとHDS-Rを評価した.統計処理は,FIM-Mの各項目別に自立群(7~5点)と要介助群(4~1点)の2群にわけ,各測定項目をMann-Whitney検定で比較検討した.またFACT得点とFIM-M項目との関連をSpearman順位相関係数および年齢と性別で調整した偏相関係数を算出し検討した.さらに,ADL能力に影響を及ぼす因子を抽出するため重回帰分析を行った.統計学的有意水準は5%未満とした.
    【結果】
     FIM-M自立群と要介助群とを比較した結果,すべてのFIM-M項目で有意差が認められたのはFACT得点(p<0.01),上肢筋力(p<0.01),非麻痺側下肢筋力(p<0.05),HDS-R(p<0.01)であった.FIM-MとFACTとの関連を分析した結果,全てのFIM-M項目で有意(p<0.01)な正の相関が認められた.また,FIM-M各項目とFACT得点との関連の強さを偏相関係数から判断すると,トイレ動作(r=0.84),清拭(r=0.84),上衣更衣(r=0.81),ベッド移乗(r=0.80),浴槽移乗(r=0.80),トイレ移乗(r=0.77),下衣更衣(r=0.76),排尿(r=0.74),移動(r=0.67),排便(r=0.65),階段昇降(r=0.58),食事(r=0.42),整容(r=0.42),の順であった.従属変数をFIM-M,その他を独立変数として行った重回帰分析の結果,FIM-Mに影響を及ぼす因子として選択された独立変数は,標準回帰係数が高い順にFACT(0.69)とHDS-R(0.27)であった.ANOVAの結果は有意(p<0.001)で,R2は0.79と適合度は高かった.
    【考察】
     片麻痺患者は体幹機能が高いほどADL能力も高いことが明らかとなり,体幹機能の重要性が改めて確認された.また体幹機能は,ADL能力の中でも移乗やセルフケアとの関係が強く,とくにBr.ステージや筋力よりも体幹機能と知的機能の方がADL能力に影響を及ぼすことが示唆された.これらのことから,片麻痺患者がADLを獲得するには体幹機能が重要であり,併せて知的機能へのアプローチの必要性が明らかとなった.
  • 古賀 久雄, 奥永 真由美, 榎本 智子, 宇山 義雄, 弓岡 光也, 北島 瑞愛, 別府 信孝, 高津 弘樹
    セッションID: 326
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/01/15
    会議録・要旨集 フリー
    【はじめに】
     転倒は高齢者の日常生活動作を低下させる原因となる。転倒要因の一つとして、注意機能の低下がある。日常生活動作は会話をしながら歩くなど二重課題の場合が多く、注意を動作以外に分配させる必要がある。そこで、本研究では注意機能の低下が二重課題下での動作に与える影響について検討したので報告する。
    【対象】
     当院外来患者26名(平均年齢77.0±6.4歳)、認知症のない、中枢神経疾患を除く、屋外歩行自立レベルの者とした。またserial-2sが可能な者とした。あらかじめ対象者には本研究の趣旨を説明し同意を得た。
    【方法】
     過去1年の転倒の有無により、対象者26名を転倒群13名(平均年齢78.2±6.0歳)、非転倒群13名(平均年齢75.8±6.8歳)に分類した。全対象者にTrail Making Test A、B(以下TMT-A、TMT-B)、何も課題を与えない10m歩行(Single Task歩行、以下ST歩行)、Timed Up&Go Test(以下STTUG)、serial-2sを行いながらの 10m歩行(Dual Task歩行、以下DT歩行)、 TUG(以下DTTUG)を行った。なお、TMT-A、Bは2分間での解答数を指標とした。10m歩行、TUGに関しては歩行速度を、TMT-A、Bに関しては解答数を記録し統計処理を行った。統計処理は2標本T検定を用いた。
    【結果】
     転倒群と非転倒群において、ST歩行では転倒群11.1±2.7秒、非転倒群10.7±2.6秒、DT歩行では転倒群16.7±6.6秒、非転倒群12.7±4.2秒であり、ST歩行、DT歩行共、群間に有意差は認められなかった。STTUGでは転倒群13.8±2.7秒、非転倒群11.8±3.8秒、DTTUGでは転倒群18.6±6.2秒、非転倒群13.6±5.4秒であり、STTUGでは有意差は認められなかったが、DTTUGでは転倒群が有意に遅かった(P<0.05)。
     TMT-Aの解答数では転倒群12.8±1.7個、非転倒群17.9±5.5個、TMT-Bの解答数では転倒群10.8±3.4個、非転倒群15.4±6.2個であり、共に転倒群が有意に少なかった(TMT-A :P<0.01、TMT-B :P<0.05)。
    【考察】
     本研究から、注意がより認知課題に向くことによって歩行速度が有意に遅くなることが示唆された。その理由として、利用可能な資源としての注意には限界があり、一方の情報に多くの注意が分配されると、別の情報に対する注意は低下するといわれている。これらより、動作課題と認知課題の多い条件下では動作課題に分配する注意量が減少するため、転倒リスクが高まると考えられる。
     今回の結果より、転倒予防には注意機能を向上させる必要があると示唆される。なお歩行速度が遅くなった要因として、慎重になるなど心理的要因も推測されるため、今後検討が必要であると思われる。
  • 溝田 康司
    セッションID: 327
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/01/15
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】
    地理情報システム(Geographic Information System:以下GIS)は、多様で多量の情報を地理的位置に基づいて統合管理し、空間的解析を容易にする情報ツールであり、疾病・健康状況の地理的分布を解析する空間疫学にも応用が図られている。今回、地理情報分析システムMANDARA及びGISソフトSuperMap2008を用いて沖縄県北谷町をモデルに、高齢者、障害者に着目した地理情報分析を行ったので報告する。
    【対象】
    分析対象は、沖縄県中西部に位置する北谷町とした。人口約27000人の町で近年西部地域への居住人口の増加が見られる。2003年に「北谷町まちづくり住民意識調査」が実施され、自治会別の統計データが整備されており、分析対象に適した地域であると考えられた。
    【方法】
    地図データには国土地理院発行の数値地図を中心に北谷町が整備したラスタ地図をベクタ化し使用した。統計データは北谷町発行の統計書、第2次障がい者計画(いずれも平成19年)及び『北谷町まちづくり住民意識調査』調査報告書(平成15年)を使用した。自治会ポリゴンデータ、道路ラインデータ、標高メッシュポイントデータは、GISソフトSuperMapを使用し、ポリゴンデータをクリッピングし、shapeファイルを作成した。最後に、地理情報分析システムMANDARAを使用し、目的に応じた分析項目に基づいて地図化を図った。なお、分析項目は、自治会別の1.居住環境、2.高齢者・障害者状況と空間地形、3.道路環境である。
    【説明と同意】
    本研究に用いたすべての統計資料及び地図情報は一般に公開されているデータであり、説明と同意は必要ないと考える。
    【結果と考察】
    桃原区、上勢区に向かって漸次標高が高く、起伏量は北玉区が最も大きい。標高の高い地区は起伏量が小さく、段丘特有の平坦な居住環境が考えられる。高齢者、障害者状況と空間地形では、高齢率の高い地区と障害者比率の高い地区が比較的一致しており(r=0.82 P=0.008)、障害者の多くが高齢に起因した障害によるものと考えられる。高齢率が高く、障害者人口の多い北玉区、謝苅区については、起伏量が大きく、高齢者、障害者の日常生活活動の障壁となる可能性が示された。道路環境では、美浜区、宇地原区を除くすべての地区で幅員3m~5.5m未満の幅員道路が最も多い。道路密度は栄口区を中心に高く道路自体の整備が進んでいる地域といえるが、幅員5.5m未満の道路で整備されている状況にある。高齢化率、障害者人口の高い北玉区や宇地原区の一部は3m未満の幅員道路も散在し、生活活動空間の狭小化が懸念される。このようにGISは、統計情報を地理空間に反映させた分析が可能であり、地域リハビリテーション及び災害弱者対策に有効なツールであると考えられた。
  • 福田 圭祐, 佐藤 亮, 南 留美子, 中野 真実, 冨田 伸
    セッションID: 328
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/01/15
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】
    Timed Up & Go-Test(TUG)は、日常生活機能との関連性が高いことが証明されており、高齢者の身体機能評価として広く用いられている。しかしTUGにおける歩行レベル判定は独歩もしくは杖歩行による報告が多く、他の歩行補助具使用に関する報告は少ない。当法人は高齢者の利用率が高く歩行車やシルバーカーを移動手段として選択している方も多い。そこで今回、歩行車・シルバーカー使用者における歩行自立度判定に関して、TUGの有用性を検証する為に平衡機能検査として信頼性の高いFunctional Balance Scale(FBS)との比較検討をしたので報告する。
    【方法】
    対象は当院入院患者もしくは併設通所リハビリテーション利用者の内、歩行車またはシルバーカーで移動可能な22名(平均年齢:84.1±6.9歳、男性4名・女性18名)。対象者の平衡機能をFBSで、機能的移動能力をTUGで評価した。またFBS結果から37点以上を転倒低リスク群(FLR群)、37点未満を転倒高リスク群(FHR群)に分類した。統計解析は全対象者のFBSとTUG、各群それぞれのFBSとTUGの関連性をスピアマンの順位相関係数検定、FLR群とFHR群のTUGについての関連性をマン・ホイットニ検定にて比較した。いずれの解析も危険率5%未満をもって有意とした。
    【説明と同意】
    今回の研究にあたり、書面と口頭にて研究の趣旨を説明し研究参加の同意を得た。
    【結果】
    全対象者のFBS平均31.0±12.6点、TUG平均35.4±23.5secであり、FBSが高いとTUGが早いという有意な負の相関を得られた。またFLR群(n=13)のFBS平均40.3±3.3点、TUG平均20.9±6.6sec 、FHR群(n=9)のFBS平均17.6±8.2点、TUG平均56.4±23.3sec であり、FLR群がFHR群よりもTUGが速いという有意な相関を得られ、各群のTUGとFBSの関連性についてはFLR群のみ有意な相関が得られた。
    【考察】
    本研究では先行研究同様に歩行車やシルバーカー使用下においてもTUGは転倒リスクとの関連性が高いことからTUGの有用性が示唆された。しかし評価時に疼痛や性格による影響からTUGが変動してしまうこともみられた。今回の対象者は要介護認定を受けておりTUGの結果からも身体機能や認知機能が低下していると考えられ、TUGは歩行自立度判定基準として簡便且つ有用ではあるが、判定を行なうには対象者の特性に合わせた評価を検討していく必要性があると考える。
    【理学療法学研究としての意義】
    歩行車やシルバーカー使用下におけるTUGを機能的移動能力の客観的指標として用いることは有用であることは示唆された。しかし判定には身体機能だけではなく認知機能や心理状態等様々な要素が影響する為、複合的な評価が必要である。
  • 3年間の経過をたどって
    荒木 克也, 黒土 達也
    セッションID: 329
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/01/15
    会議録・要旨集 フリー
    【はじめに】
    患者様の在宅復帰を円滑にすすめていく上で、患者様を中心とした家族、医師、看護師、コメディカルスタッフの協力・連携が重要である。しかし、患者様の疾患が重症であればあるほど在宅復帰は難しい状況が現状であり、またその家族の受け入れ次第では復帰できる可能性のある患者様も在宅復帰を困難にしていることも現状である。そのため今回、当病院においてより良く家族に患者様を受け入れていただくことを目的として家族会を開催し、実施後の家族へのアンケート調査をもとに取り組みを行った経過および結果をここに報告する。
    【対象】
    当院回復期病棟に入院中である熊本県地域連携パスBコース(当院在宅復帰率85.7%)及びCコース(当院在宅復帰率36.2%)の患者様家族を中心に声かけを行い希望者を募った。
    【方法】
    看護部からは症例を用いて説明し、医療連携室からは介護保険制度の説明、リハビリテーション室からはベットからの起き上がり方法・車椅子及びトイレへの移乗方法を中心とした実技指導方法も交えて3部門よりそれぞれの特色を生かした説明を行なった。その後、第1回の参加者12名、第2回参加者9名、第3回参加者9名の計30名の家族会に参加した方々に終了後アンケート調査を実施した。
    【結果】
    1.開催日について:良い88%その他12%2.開始時間:良い96%その他4%3.講義時間:良い88%長い8%未回答4%4.講義内容:理解しやすい66%普通34%5.実技:わかりやすかった88%普通12%
    【考察】
    今回3年分の家族会の経過を基にアンケート調査を実施し検証を行った。アンケート調査の内容に今後取り上げてもらいたい内容、その他ご意見・ご感想の欄を設けた。その意見として、退院後のリハビリテーションの実施方法、栄養面での栄養士による栄養指導、住宅改修を実際に行った前後の写真や経費、入院期間の期限、入浴介助方法などの意見を頂いた。このような意見を基に今後の展望として家族会に上記の意見を十分に取り入れていきたいと考える。また、県外の兄弟にも参加させたい、もっと頻度を増やしてほしい、退院後も定期的に行ってほしい。と積極的な意見もみられ、これは地域連携パスにおける重傷者の患者家族の意見としてはより在宅復帰が近いものになってくるのではないかと考える。今後も検証を続け、患者様家族の意見を取り入れもっと家族会がよりよいものとなり、1人でも多くの患者様が在宅復帰できるよう支援していきたいと考える。
  • 当院における再入院患者に着目して
    大山 将平, 山内 盛一郎, 松田 伊津香, 上地 美姫, 砂田 和幸
    セッションID: 330
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/01/15
    会議録・要旨集 フリー
    【はじめに】
    糖尿病足部潰瘍は再発率が高く、当院においても足部潰瘍治癒後に再入院する患者は後をたたない。また、そこから切断に至るケースは多々みられる。そこで今回、当院でのフットケアに関わる理学療法士としての現状と課題を挙げたので、ここに報告する。
    【対象・方法】
    平成20年度4月~平成22年3月に糖尿病足病変(切断を含む)にて入院した患者60名の中で、再入院した患者16名(平均年齢62,4±12,3才、男性11名、女性5名)を対象とした。それに対し、リハビリ処方の有無、入院時からリハ介入までの期間、リハビリ介入時の評価項目を調査し分析した。
    【結果】
    再入院患者のうち、リハビリ処方有りが14名で、無しは2名であった。リハビリ介入までの期間は、平均9,71±10,6日であった。リハビリの評価内容は、筋力検査、関節可動域検査、ADL評価は16症例の全患者にて評価されていたが、感覚検査は4例、足趾の評価(アライメントや可動域)、アキレス健反射、健側の評価をしているのは0例であった。プログラム内容としては、下肢中心の筋力強化、歩行などのADL指導を行っていたのが主であり、全身運動を実施しているのは1例であった。
    【考察】
    糖尿病足病変の患者が再入院する要因として、患者の病識の低さやADL上で気を付けなければいけないことへの認識不足などが要因に挙げられるが、DrやNrsにおけるリハビリ介入への意識不足や、理学療法士としての評価力・指導力不足などが関係していることも大きな要因と感じた。また糖尿病足病変は免荷となるケースが多く、その為Bed上安静となり廃用症候群を生じ退院までに長期入院化する例が多々みられた。リハビリ処方が早期から施行されることで、廃用症候群の予防、糖尿病足病変の悪化予防となり、それによりADL・QOLの維持・向上へと繋がっていくと考えたため、今後他職種(Dr、Nrs、PO)などにリハビリ介入の重要性を啓発し、リハビリが早期介入できるようにしていきたい。糖尿病足病変は神経障害と末梢血管障害を合併している患者が多いが、当院理学療法士は糖尿病足病変患者に対しての、各検査(感覚検査や関節可動域検査、健反射など)の評価法が統一されていなく、今回の調査でも、足病変患者に対しての細かい評価ができていなかった。必要な評価項目を挙げ、それを統一することで病態把握をし、指導パンフレットなどを作成することで個々人にあった指導を行い、患者の病識の向上やADL上での危機意識向上を図っていくことが大事だと考える。それにより、再入院率を下げられるのではないかと考え、これらを今後の課題とし、対策を立てることが重要であると感じた。
  • 永江 香澄
    セッションID: 331
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/01/15
    会議録・要旨集 フリー
    【はじめに】
    当院介護保険病棟では平均介護度4.7と寝たきりの患者が数多く入院している。寝たきり患者に対するポジショニングは褥瘡予防、肺炎予防、拘縮予防などの目的で重視されている。しかし、リハビリ部では経験年数の違いや異動もあり、ポジショニングに関する知識・技術に差を生じていた。そこで、知識の習得と認識の統一を図るため、スタッフの意見を基に、勉強会・検討会などを開催した。様々な取り組みを行なうことで、ポジショニングに対する意識が変化し、問題点などに対する意見が聞けるようになった。今回、ポジショニングに対する取り組みと効果及び今後の展望について報告する。
    【今までの取り組み】
    1._介護保険病棟リハビリスタッフ全員で文献・DVDを用いて勉強会を開催 _2._メーカーに依頼しポジショニングについての研修会と実際の症例を通しての検討会 _3._簡易型圧測定器を使用して患者様の圧・ズレ力測定を行い現状のポジショニングの評価 _4._メーカーよりポジショニング枕を借り比較検討 _5._圧測定結果を記載したポジショニングシートの作成
    【症例供覧】
    症例:M氏 診断名:脳梗塞 四肢麻痺 身長:165.5cm 体重:54.7kg Alb:3.1 介護度:要介護5 食形態:経管栄養(胃婁管理) 寝具:静止型マットレス(ソフィア)、ポジショニング枕4個使用
    ・ポジショニング検討前後での圧比較(ポジショニング前⇒ポジショニング後)※単位はmmHg
    ※問題となった部位のみ抜粋  大転子(53.8⇒25.6)踵(83.3⇒11.5)
    ・本症例のポジショニングで考慮したポイント
     _1._32mmHg以上の圧で褥瘡リスク _2._点ではなく面で支える _3._安楽な姿勢の検討(良肢位保持、変形・拘縮予防) _4._長時間での耐久性 _5._体格に合わせた枕の選択
    【取り組みの効果】
    ・ポジショニングに対する理解が深まった ・ポジショニング枕のあて方が改善した ・圧測定器の活用が定着した ・圧測定結果を載せたポジショニングシートを使用することで、病棟スタッフの意識が向上した
    【今後の展望】
    ・ポジショニングシートの内容の充実 ・病棟と協力してポジショニングの評価(長時間使用でのズレ・ムレなど) ・メーカーと協力して安価なポジショニング枕の検討 ・2台追加購入となった圧・ズレ力測定器の活用方法の検討
    【まとめ】
    現在、ポジショニングに対する取り組みを行い、意識の向上に繋げることができた。今後も褥瘡予防の観点から、患者様・ご家族様・リハビリ部・看護部・介護部と協働でポジショニングに取り組んでいきたいと考えている。また、圧測定器などの活用を行い、しっかりと根拠を理解した取り組みにつなげていきたい。
  • 堤 文生
    セッションID: 332
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/01/15
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】
    理学療法学科に在籍する学生は、入学時から学業成績や進級判定、理学療法士としての適性など不安と期待を抱きながら2年次・3年次へと進級していく。最終学年ともなれば臨床実習・国家試験・就職など様々な不安を抱えることとなる。学生の「不安要因」を分析することで、学生への教育指導に資することを目的とする。
    【方法】
    対象は理学療法学科1年生74名、2年生79名、3年生71名である。学生生活における不安について10項目まで自由記述させた後、各学年の共通項目を抽出し類似した30項目を調査項目とした。回答は「1、非常に不安である」から「5、全く不安はない」の5件法とした。調査は平成21年10月と平成22年4月に集合調査方式にて実施し、述べ415名分の回答を得た。30項目の不安度について、学年別・性別・成績別に分類し、独立群の検定および因子分析を用いて統計処理を実施した。
    【説明と同意】
    アンケート調査に際し、本研究の趣旨を説明し同意を求めた上で実施した。
    【結果】
    不安の高い項目は、「臨床実習での課題遂行」、「国家試験の合格」、「理学療法士としての適性」、「就職先」、「単位の取得」の順で高い。学年別・性別・成績別における不安要因に特異性が窺える。415名の30項目で因子分析(因子負荷量≧0.40)を行った結果、第1因子として「国家試験、臨床実習、就職」などの臨床因子(寄与率11.5%)、第2因子として「進級、単位取得、学習方法」など学習因子(寄与率10.1%)、第3因子として「生活設計、適性、やる気、体調管理」など生活因子(寄与率8.5%)が潜在因子として抽出された。さらに、第1因子得点~第3因子得点を求め比較した結果、学習因子・生活因子において、1・2年生が3年生より不安が高い。成績別では学習因子で下位群が最も不安度が高い。性別では女性群が臨床因子で不安度が高い結果を示した。半年間における不安の変化では、学習因子が各学年および男・女性群ともに不安が軽減している。成績の上位・中位群では学習因子の不安が大幅に軽減しているのに対し、下位群は不安が高いままで著変なしであった。各学生の不安の変化は、第1・2因子得点の二次元平面上に散布することでその推移が読み取れる。
    【考察】
    一般に不安を感じることは学生の常である。その不安を乗り越えることで理学療法士としての道が開けるといえる。学習面では成績に関する不安が非常に高く、単位の取得に敏感に反応する姿勢がみられた。臨床面では、実習期間中での課題遂行や人間関係、就職先や安定性などに不安を抱いていることが窺える。生活面では、体調管理ややる気の無さ、理学療法士としての適性などに不安を感じている。
    【まとめ】
    学生の抱える不安要因を解析することは学生指導の一助と成り得る。今後、半年毎に調査を行い、学生の不安要因の推移を観察することより、不安の軽減方法を模索してゆきたい。
  • ~1年次と4年次進級後のアンケート調査~
    白石 浩一
    セッションID: 333
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/01/15
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】
    近年、理学療法士養成校の増加にともない、多くの多様な心理状況にある学生が入学して将来の理学療法士になり社会貢献を目指している。この多くの学生の中で進級をする学生は4年間の学校教育の中で心理面にどのような影響を及ぼすのか、1年次と4年次へ進級進級後の縦断による達成動機づけテストを用いたアンケート調査を実施して、その結果を検討した。
    【方法】
    被検者はヘルシンキ宣言に基づき研究の了承を得た理学療法学科4年18名を対象に下山剛達成動機づけテスト(下山、1974)によるアンケート調査を入学後1ヶ月と4年次進級後の2回実施した。「勉強や仕事がうまくいかなかったとき、もう一度やりなおしてみたいと思う」等の質問を含む18項目を「はい」「いいえ」にて回答を得た。
    【結果】
    18名中18名(100%)の有効な回答であった。20%以上の「はい」有効数の変化を示した質問は以下の通りであった。「勉強や仕事をしているときに、うまくいきそうもないと感じると、やる気がすぐになくなってしまう」22%の低下。「大事なテストや仕事のある前の日は、そのことが気になって落ち着かない」22%の低下。テストや仕事の結果がよかったときに嬉しいのは、自分の力がついたと思うからよりも、親や先生や友人に認めてもらえると思うからだ」28%の低下。「大事なテストや仕事のときほど、へまをやってしまうのではないかと心配になる」33%の低下。「テストや仕事の結果がわかったとき、他人の結果がどうであったかが気になる」22%の低下。「テストや仕事の途中で、うまくいかないものにぶつかると、もうだめだと思ってしまうことが多い」22%の低下であった。また、4年次に80%以上の偏りがあった質問は以下の通りであった。「はい」として「勉強や仕事がうまくいかなかったとき、もう一度やりなおしてみたいと思う」。「いいえ」として「勉強やテストのときに、一つの問題がわからないと、あとの優しい問題もわからなくなってしまう」、「つとや仕事の途中で、うまくいかないものにぶつかると、もうだめだと思ってしまうことが多い」、「テストを受ける前や仕事を始める前に、きっとうまくいかないだろうという感じがする」
    【考察】
    今回の結果により、理学療法士になるためにどのような心理面の変化が在学中に起こっているかが推測される。入学したばかりで理学療法士になるという動機がまだ明確に確立されていない時期に比較して、評価実習も終了して国家試験対策対象学年においては、比較的、自己分析をしっかりと行い、それに対する心構えは、前向きな意欲が必要だと考えられる。そのため、教育機関はすべてを新入生に求めるのではなく、4年間の教育課程にて、長い目でゆっくりと教え育むことが本来の「教育」といえるのではないだろうか。
    【まとめ】
    今回1年次と4年次進級後の比較を実施した。勉強に対する肯定的な変化が得られた。1年次に未熟であっても進級するにつれ前向きな意欲へ変貌する可能性が示唆された。
  • 不安と生活習慣の視点から
    吉住 浩平, 中原 雅美, 柗田 憲亮, 久保下 亮, 川崎 東太, 岡 真一郎, 下田 武良, 田原 弘幸
    セッションID: 334
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/01/15
    会議録・要旨集 フリー
    【はじめに】
    当学科では評価実習、2回の総合臨床実習を各6週間とし、3年後期から4年前期までに設けられた5期間のうち3期間において臨床実習に臨む。そのため、実習前に長期的・定期的な実習対策セミナー(以下セミナー)を実施し、知識・技術の向上、生活リズムの適正化を図る必要があると考えた。そこで今回は今後のセミナーの一助とするために、セミナー実施前後の学生の不安と生活習慣の変化を調査したので報告する。
    【対象】
    当学科3年生82名(男性63名、女性19名)である。対象者には事前に本研究の趣旨を口頭・書面にて説明し、書面にて同意を得た。
    【方法】
    セミナー内容は講義、レポート作成・解説とし6週間、週3回実施した。レポート課題は週に1つとした。出席確認を厳しく行い、遅刻・欠席者に対しては個別に面談し指導を行った。不安については日本語版STAI状態不安検査(以下STAI)を用いた。生活習慣についてはBreslowの推奨する7つの健康習慣(適正な睡眠時間、喫煙をしない、適性体重の維持、過度の飲酒をしない、定期的な運動、朝食の摂取、間食をしない、)を基に質問表を作成した。調査はセミナー実施直前(以下実施前)とセミナー終了直前(以下実施後)のセミナーの中で一斉法にて行った。統計学的解析はχ2乗検定およびWilcoxon符号付き順位検定を用い、有意水準は5%未満とした。
    【結果】
    実施前と実施後の比較においてSTAI得点は49.8±8.5点から52.6±9.4点へと実施後では不安が有意に高まっていた。生活習慣は性差の影響を受けなかった生活リズム、睡眠時間、栄養バランス、食事摂取が有意に改善したが、朝食および間食の摂取は変化が認められなかった。性差の影響を受けた運動習慣は男性においてのみ運動頻度が有意に減少していたが、飲酒および喫煙は変化が認められなかった。
    【考察】
    STAIの評価段階基準では男性41点、女性42点以上で状態不安が高いとされることから、学生は実施前に既に状態不安が高い水準にあり、実施後に更に高まったと解釈できる。不安とは漠然とした対象のない恐れであり、学生は臨床実習における未知の体験に対する不安を抱えている。このため、今回の実施後の不安の高まりは実習直前の調査であったことが影響したと考える。しかし実施後のSTAI得点は先行研究に比べ低値であったことから、本セミナーは不安軽減の効果があったと考えられる。生活習慣に関してBreslowらが推奨する7つの健康習慣が健康度と有意に関連するとされている。また、今回の結果は田原らが報告した理学療法士として望ましいライフスタイルにより近付いていた。今回、セミナーを6週間、定期的に実施したこと、実習が近付くにつれて意識が高まったことから生活リズムが適正化し、評価実習に臨むにふさわしい生活習慣に変化したと推測される。
  • 一症例を通して
    渡邊 誠司, 大戸 元気, 加藤 貴志
    セッションID: 335
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/01/15
    会議録・要旨集 フリー
    【はじめに】
     半側空間無視(以下USN)は、Heilmanらにより大脳半球損傷の反体側に提示された刺激を報告したり、刺激に反応したり、与えられた刺激を定位することの障害と定義されている。
     近年、プリズム順応や頚部への振動刺激等の新たなアプローチが報告されている。中でも、杉原らは左空間に対する持続的注意喚起によるUSNの改善を示唆している。
     今回、我々はヘッドマウントディスプレイ(以下HMD)を用いて左USNを呈した症例に対し、左空間の強制使用訓練を実施した。結果、書面検査、ADL場面において改善が見られたため以下に報告する。
    【症例紹介】
     50代、女性。診断名は脳出血、2009年12月発症、左片麻痺。高次脳として、左USN、注意障害を認める。行動性無視検査(以下BIT)129点、書面検査上軽度の無視を示した。日常生活のUSNを評価するCBS16/30点、更衣、トイレ動作、歩行にて中等度の無視が見られた。身体機能として、12段階グレード上肢5、手指7、下肢7。歩行は短下肢装具と4点杖を使用し見守りレベル。歩行中、自発的に左に曲がらないため見守りを外せない状態であった。
    【方法】
     HMDとは、ビデオ等に接続する事で映像を視聴する事が出来るゴーグル状のポータブルディスプレイである。これまで、HMDをUSNの治療に応用した報告が多数なされている(杉原、佐々木)。特徴としてはビデオカメラと接続し、そのビデオカメラで症例の右側より撮影した左側空間を視聴する事が可能となる。この特徴を活かし、左側空間を強制使用する訓練を行った。実際の訓練として、USNトレーナーボードを症例の左側に設置する。USNトレーナーボードは、56個のボタンがランダムに光点を発する事で視覚性注意訓練が可能である。そして、症例はHMDを装着しビデオカメラを通して左側のUSNトレーナーボードを視聴する。椅子座位にて点灯したボタンを右手で押してもらう事で、左空間への持続的注意喚起を行った。訓練頻度は週6日、2週間、HMD訓練開始前後でBIT、CBSを評価した。なお、事前に症例に対して訓練に対する説明を行い、同意を得た上で訓練を行った。
    【結果】
     実施前後でBIT129点→136点、CBS16点→8点と改善した。ADL場面では主に更衣、トイレ動作、歩行に無視の軽減が見られた。特に、歩行では左側に対して曲がれるようになり生活範囲の拡大が可能となった。
    【考察】
     今回、我々は発症から4ヶ月を呈した左USN患者に対し、HMDを用いて左側空間の強制使用訓練を行った。杉原らは、USN症例にHMDを用いる事で頭部の左回旋が多く見られ、書面課題の改善が生じたと報告している。症例に対して、左空間の強制使用により訓練中の頭部、体幹の左回旋が認められ、身体的にも左空間認識を行えたことで無視の改善に繋がったのではないかと考える。今後は症例数を重ね、より効果的なアプローチを検討していきたい。
  • 北里 堅二, 佐藤 なな絵
    セッションID: 336
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/01/15
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】
    半側空間無視は脳卒中の重要な合併症の一つであり、重大なリハビリテーション阻害因子であるといわれている。その発生機序にはいくつかの説があり、責任病巣もいくつかの場所が挙げられている。また、消去現象は半側空間無視の軽症化したものとの捉えられている場合が多く、二つの症状は同じ病態の病期による重篤さの違いを観察していると考えられている場合が多いようである。しかし、机上のテストでは明らかに半側空間無視の症状を呈するにもかかわらず、消去現象を認めない症例を経験したので報告する。
    【症例】
    70歳代、男性。平成19年4月に左頭頂葉脳出血で右不全麻痺、9月に左前頭葉脳出血、引き続き右頭頂葉終結により左片麻痺を発症した。左片麻痺発症時より左半側空間無視の症状を呈していた。現在も左半身の麻痺と半側空間無視は残存している。視力、視覚には問題はない。
    【方法】
    十分な説明と同意の下に以下の検査を実施した。消去現象については1mほど離れて対座し、検者が腕を片方または両方同時に挙上した際、挙げた手の自分から見た方向を答えさせた。半側空間無視に関してはBITの線分二等分試験、線分抹消試験、絵画模写試験、かな拾い試験を実施した。また、パソコン上に20.5cmの線分を提示し、自身が右手でマウスを操作した場合と、口頭指示に従い検者がマウスを操作した場合の線分二等分試験を2回ずつ行い比較した。
    【結果】
    検査の結果、消去現象は認められなかった。半側空間無視の机上の4試験では、いずれも明らかな左半側空間無視が認められた。パソコン上の線分二等分試験では、中点認知点の平均は、マウス操作の場合線分の右端から9.2cm、口頭指示の場合は同じく11.4cmであり、右手でマウスを操作した場合よりも口頭指示で行った場合の方が右への偏倚が軽減する傾向(実際は中点を越えて左に若干偏倚してしまった)が見られた。
    【考察】
    症例は重度の半側空間無視を呈するにも関わらず、消去現象を呈していない。一般的には半側空間無視の症状が軽症化することで消去現象を呈すると考えらえているようであるが、本症例はその説に反する興味深い症状を呈している。また、パソコンを使用した線分二等分試験の結果からは、右手の使用が半側空間無視の症状を増幅させる場合がある可能性も示唆された。半側空間無視症状の出現に左右大脳半球間抑制のバランス等が関与していることもこのような現象の要因として推測されうる。本症例が左右の大脳半球に脳血管障害の既往があることがこのような特異的な症候を示す一因となったとも考えられる。
  • ADLの自己評価による検討
    高宮 尚美, 井元 淳, 中野 吉英, 甲斐 尚仁, 沖田 一彦
    セッションID: 337
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/01/15
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】
    自己意識性(self-awareness)とは,主観性を維持しながら客観的に自己を知覚する能力である.近年,この自己意識性と半側空間無視(unilateral spatial neglect:USN)の関係性について報告されてきている.今回の研究では,脳血管障害患者が有する自己のADL能力に対する認識を通して,自己意識性と半側空間無視の病態の関連性を統計学的に検討することを目的とした.
    【対象】
    脳血管障害で当院入院中の患者17例(USN群8例,USNを呈さない左片麻痺群4例,右片麻痺群5例)であった.調査は当院の施設長および当科責任者の許可を得たうえで,患者あるいはその家族にあらかじめ研究の主旨や手順等に関する説明を行い,書面にて同意を得た.
    【方法】
    ADL能力の指標としてFIM(認知項目を除く)を患者本人と担当セラピストに評価してもらい,患者採点から担当セラピスト採点を減算した値を「FIM見積もり誤差」として算出した.さらに,USNの机上検査であるBIT行動性無視検査日本版の通常検査と,行動検査のうち電話,音読,時計,書写の4項目を実施した.
    統計処理は,FIM見積り誤差とBIT総計得点,通常検査得点,行動検査得点間について,母集団を全群,USN群+左片麻痺群,USN群の3つに分類した各群でSpearmanの相関係数で算出するとともに, USN群,USNを呈さない左片麻痺群,右片麻痺群間におけるFIM見積り誤差をKruskal Wallis testとSteel Dawas検定を用いて多重比較した.統計処理にはエクセル統計2008(株式会社エミス)ソフトを使用した.
    【結果】
    順位相関について検討した結果,母集団を全群にした場合でのみ,BIT総計,通常検査,行動検査の各得点とFIM見積り誤差に有意な負の相関が認められた.また,FIM見積り誤差を多重比較した結果,USN群と右片麻痺群との間に有意差が確認された(p<0.05).
    【考察】
    上述した結果から,全群においてBIT総計,通常検査,行動検査とFIM見積り誤差に有意な負の相関が見られた.これはBIT得点が低い,つまりUSN症状が強いほど,自己のADL能力を過大評価している可能性を示している.しかしながら,USN群+左片麻痺群やUSN群ではBIT総計,通常検査,行動検査とFIM見積り誤差に相関を示さなかった.これは右片麻痺群がUSN群とは対照的に,自己のADL能力について過小評価している可能性がある.また多重比較した結果,USN群と右片麻痺群間に有意差が確認されたことからも,USN群は右片麻痺群に比べ自己を過大評価していることが示唆される.
    今回の研究では,半側空間無視の病態と自己意識性の関連性が検証されるとともに,自己意識性について大脳側性化が示唆された.
  • 児玉 陽子, 宮本 一樹, 長 綾子, 斎藤 弘道, 志波 直人, 重森 稔, 岩佐 親宏
    セッションID: 338
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/01/15
    会議録・要旨集 フリー
    【はじめに】
     Paced Auditory Serial Addition Task(以下PASAT)は、脳損傷例における情報処理速度低下などの評価に用い、課題成績は高次の注意機能を反映すると言われている。しかし、難易度が高く対象者のストレスを伴うことがある。FosらはPASATの変法として、パソコン画面で視覚的に数字を提示することで難易度を減じたPVSATを報告している。
    今回、PASATがTrail Making Test(以下TMT)-Bの注意機能と類似していることに着目し、上肢麻痺や半側空間無視(以下USN)などによりTMTが施行困難な場合の代用としてPVSATを用いることができるか、症例を通して検討を行ったので報告する。
    【症例紹介】
    (症例1)53歳女性、クモ膜下出血。自宅にて歩行中のふらつきで発症。頭部CT上は左シルビウス裂に強いクモ膜下出血を認め、ネッククリッピング施行。ADLは自立していた。
    (症例2)51歳男性、右被殻出血。帰宅途中、全身に脱力感を認め発症となる。左上下肢麻痺及び感覚障害があり、運動維持困難やUSNがみられた。ADLは食事・整容が自立で他は要介助であった。
    【検査方法】
    PVSATはPower Pointにて作成した画面にPASATと同様に1秒間隔、2秒間隔で数字を提示するように設定した。他の神経心理学的検査としてHDS-R、MMSE、Wisconsin Card Sorting Test(以下WCST)、TMT-A・B、PASAT-1秒用・2秒用を本人の同意を得た後、検査についての説明を十分に行った上で施行した。
    【結果】
    症例1はHDS-R・MMSEともに30点、WCST達成カテゴリー4、TMT-Aは97秒でBは123秒、PASAT-1秒用は正解数17個で2秒用は15個。PVSAT-1秒用は正解数32個で2秒用は56個であった。
    症例2はHDS-R26点、MMSE27点、WCSTは達成カテゴリー5、TMTはUSNの影響で施行困難、PASAT-1秒用は11個で2秒用は16個。PVSAT-1秒用は17個で2秒用は28個であった。
    【考察とまとめ】
    今回、PVSATと他の神経心理学的検査を2名の脳損傷者に対し施行した。2症例とも検査上、知的水準や前頭葉機能面の著しい問題はみられず、検査の意図を十分理解できる状態であると考えられた。PVSATの結果としては、2症例ともPASATよりも正当率が増しており、Fosらの報告通り難易度が低い課題であると考えられる。また、症例2においてはUSNの影響でTMTが施行困難であったがPVSATは可能であったため、TMTが使用できない場合にPVSATを代用とすることが可能ではないかと考えられる。今後、症例数を重ね検討をしていく必要があると考える。
  • 深迫 千秋, 久木野 智子, 梅本 昭英, 西木場 美美, 益山 真紀, 中村 美穂, 馬場 博己, 中村 浩一郎
    セッションID: 339
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/01/15
    会議録・要旨集 フリー
    【はじめに】
     今回、失語症・軽度注意障害の患者の在宅復帰後の自動車運転に備えて、施設内実車訓練及び自動車学校と協力し運転適正評価・自動車学校教習を行ったので報告する。
    【患者概要】
     症例は70歳代男性。Wernicke失語、Br.-Stageは上下肢・手指ともにVI。
    ADL:自立 FIM:118点(減点項目:理解、表出、問題解決、記憶)
    ニード:自動車運転をしたい(入院前の移動手段は自動車が主体)
    高次脳機能評価: かなひろいテスト、TMT-A・B、コース立方体テスト、Rey複雑図形テストの各項目を評価し、加藤らによる運転能力に関する研究に基づいて判定した。
    【敷地内実車訓練】
     机上における評価を基に、自動車運転上の注意点を口答で説明し,入院後4週目で作業療法士(以下、OT)が助手席に同乗し、前進、右左折、車庫入れ、坂道発進と段階的に施設内実車訓練を開始した。
     施設内実車訓練の評価としては、「運転操作」、「対向車への注意」を注目動作とした。開始約4週間は片手運転や接触、後方車の確認不足とギア・ハンドル操作の間違いが認められた。また、急な対向車や後方車に対する対応が遅く、複数の判断を要する状況時の対応に口答指示が必要であった。
     施設内実車訓練6週頃より、指摘項目が次第に減少し、施設内実車訓練開始後11週の時点で自動車学校での評価・実車教習を実施した。
    【自動車学校】
     自動車学校での評価としては、運転適性検査を行った。
     結果は、信号や注意の標識に反応が遅く、不慣れな状況では対応にムラがあるといった注意の配分や複数作業にやや注意が必要と判定された。
     次に、教官が同乗しての判定と教習を実施した。
    運転技術については、指摘項目はなく、複数作業時の注意・確認の不足が指摘されたが、その程度は年齢相応で、自動車の操作・危険回避において問題とならず、公道においても運転問題なしと判断された。
    【まとめ】
     高次脳機能障害者における自動車運転は、運転の適否を含めその判断は困難を伴う。
     今回の症例においては、施設内実車訓練実施後に自動車学校での評価・教習を実施した。
     自動車学校と連携したことで運転技術の再確認や運転中の細かい注意点がわかり、さらに詳細点までフィードバックできたと考える。
     高次脳機能障害者の自動車運転に向けて、短時間で実施、評価される机上検査のみでなく、長時間の行動評価を加えたことで症例の動作・注意力等の再確認へとつながった。
     今後も自動車学校等との連携を図り、在宅復帰及び復帰後の活動範囲拡大につなげる活動を継続していきたい。
  • 松野 浩二, 遠藤 千冬
    セッションID: 340
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/01/15
    会議録・要旨集 フリー
    【はじめに】
    脳卒中に合併する高次脳機能障害(失語、失行、失認)のリハビリテーションは、障害像を理解した対応を長期間必要とする。しかし、入院期間の短縮やその後の介護保険制度の制約により、十分な対応がなされにくい状況下にある。福岡市立心身障がい福祉センター(以下、当センターとする)では、高次脳機能障害者に対して平成15年より高次脳機能障害リハビリ教室(以下、リハビリ教室とする)として地域活動の場を提供し、地域生活への移行に取り組んできた。その経過と課題について報告する。
    【対象者】
     平成15年から平成20年までの参加者数は男性157名、女性126名計283名であった。年齢は29歳から85歳で平均61歳であった。疾患別では、脳卒中後遺症者86.4%、その他の疾患が13.6%であり、その他の疾患は脳外傷、脳腫瘍、筋ジストロフィーなどであった。
    【リハビリ教室の内容】
     福岡市立障がい者スポーツセンター(以下、スポーツセンター)を利用して、リハビリ教室は週1回、午前10時から午後3時までの時間で、午前中の前半では全員でのストレッチを中心に準備運動を行い、後半は卓球、風船バレー、ボッチャを行った。夏季は希望者に対して水泳も取り入れた。休憩1時間を挟み午後は言語聴覚士を中心に失語症者のグループ活動、作業療法士を中心とした作業療法、マクラメグループ、スポーツの中から、各自希望する内容の活動に参加することとした。
    【経過】
     原則2年間を1クールとして、参加者にはリハビリ教室だけの活動ではなく、市内で開催される障害者の競技大会や記録会などへも積極的に参加を促した。その結果として治療目的のリハビリテーションから地域生活へ、治療スポーツから生涯スポーツや競技スポーツへと目を向けるきっかけとなり、その後の個人やサークルでの大会などへの参加につながってきた。
    リハビリ教室終了後は、スタッフとの協同で立ち上げたサークル活動、個人でのスポーツセンターの利用や他の教室への参加を促した。また、現在ではリハビリ教室以外に同じ経営母体の法人が運営する福岡市内4施設で同様の教室を開催し、市内全域から参加しやすい環境となっている。
    【まとめ】
     比較的年齢の若い脳卒中者は介護保険施設の利用になじめない人も多く、地域社会での自立した生活に結びつくまでのリハビリテーションを受けづらい状況にある。リハビリ教室への参加を通じて、体力の強化やスポーツの習得はもちろんであるが、同じ疾患を抱えた人が集まって行うことによる本人や家族の障害受容や仲間作り、サークルの立ち上げや大会への参加など自発的な活動へのきっかけ作りとして成果が見られている。今後の課題としては、高次脳機能障害者のグループ対応において、障害程度による個別の支援が必要な場合が多いため高次脳機能障害に理解のあるボランティア等の養成が必要と考える。
  • 中島 大輔, 安野 敦子, 原野 光弘, 野田 美津子, 野上 千夏, 冨山 みのり, 奥田 勝也, 田上 綾子
    セッションID: 341
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/01/15
    会議録・要旨集 フリー
    【はじめに】
    我々が関わってきた脳性まひ児の座位保持装置のシーティングにおいては、上下肢のベルト固定による痙性の増悪、骨盤の前方すべりを股パッドで止めている等の問題が課題となっている。
    今回、座位保持装置にて、日常生活場面で支障が生じている脳性麻痺を伴う6症例にシーティングを行い、一定の成果を得たので報告する。
    【対象】
    対象は5~15才の脳性まひ児6症例。いずれも日常的に使用している座位保持装置において、常に顔が上方を向いている、骨盤の前方すべりを股パッドで止めている、下腿部をベルト固定するため下腿前面に傷ができる、手足をバタつかせて落ち着かない、座位保持装置に座らせても降りたがる等の問題を抱えている。
    【方法】
    今回のシーティングにおいて、2症例は工房により座面と背もたれを作製し、4症例はJAY fit back、JAY GSクッションを用いた。
    シーティングは、坐骨部前方に高さ20~35_mm_のアンカーサポートを用いた硬質の座面と股ベルトによって骨盤を安定させ、股関節内転に対してのみ股パッドを用いた。さらに、体幹は胸ベルトと硬質のラテラルサポートによって体幹の安定と側彎への対応を図った。
    【結果】
    骨盤、体幹が安定することで、上下肢の痙性低下、体幹の低緊張に対する支持の向上が得られた。さらに、日常生活場面において、母の呼びかけに対して頚部回旋して追視した、股パッドや下腿ベルトが必要なくなった、ベルトによる傷がなくなった、頭を自力で起こすことがでた、声かけに反応するようになった、座位保持装置に座ることを嫌がらなくなった等の成果を得た。
    【考察】
    今回の6症例については、座面の改良(硬質の素材、アンカーサポートの高さ)と背もたれの改良(ラテラルサポート、硬質の素材)を行うことで、痙性の抑制や頚部の随意運動を引き出せた。これらの変化による最も大きな成果は、日常生活場面で生じていた様々な支障が改善したことである。
    今回行ったシーティングは一定の成果が得られた。今後、成長していく身体と起こりうる変形に対して、今回の取り組み以外の方法も含めて継続して検討し、経過を追って対応していきたい。
  • 岩元 祐太, 古川 晃郁
    セッションID: 342
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/01/15
    会議録・要旨集 フリー
    【はじめに】
    肘外側側副靭帯(以下LCL)の機能的意味づけについては多くの議論があるが、主に筋膜も含めた全靭帯組織が肘の安定性について重要であると考えられている。今回、上腕骨開放性脱臼骨折・LCL断裂を呈し靭帯再建術・植皮術を行った症例を経験したため、実践した術後のセラピィと経過について考察を加えて報告する。尚、報告に際し症例には同意を得ている。
    【症例紹介】
     59歳、男性、右利き。職業は調理師。バイク走行中にトラックに衝突し右上腕部受傷。受傷部位は右上腕骨内側上顆骨折、橈骨頭・肘頭は内側亜脱臼。右LCLの全断裂。腫脹強く、受傷後4週目で靭帯再建術施行。6週目植皮術施行。
    【術中所見】
     術中肘関節屈曲は120°前腕回内外にて容易に橈骨頭の脱臼を認めた。長掌筋腱を橈骨頚に埋込み、上腕鈎突窩上方に骨孔を作成し背面から肘頭の骨孔にて縫合。縫合時の緊張は前腕中間位で肘関節屈曲90°シーネ固定とした。
    【術後セラピィ】
    術後翌日より肩・手及び手指の可動域訓練、浮腫コントロール開始。術後4週目より前腕筋力強化訓練と装具装着下にて肘関節屈曲・伸展動作のみ可動域訓練を開始。開始時肘関節屈曲65°伸展-10°。また、皮膚伸張性低下、三頭筋付着部の癒着が認められた。6週目にて前腕の可動域訓練開始。9週目より前腕不安定性出現、前腕屈筋・伸筋の筋群に過剰努力による疼痛が認められた。11週目にて肘使用時の過剰努力と手・肩関節の代償運動認められ、肘内側への疼痛増強。筋力増強運動を中止し分離運動訓練・ADL訓練開始。3カ月での可動域は右肘関節屈曲120°伸展0°回外90°回内55°左内反20°日本整形外科学会肘機能評価法(以下JOAスコア)47点、QuickDASHスコア65点だった。
    【考察】
     加藤らによると、術後不安定感の残存した1例は内側側副靭帯(以下MCL)の機能不全があったがLCLの再建のみを行った場合では、日常生活範囲での脱臼不安感は無かったと述べている。本症例も内側不安定性が強いことからMCL損傷が疑われ、ゴールを日常生活範囲内での上肢使用とした。しかし、3ヶ月経過時点でJOAスコア47点、QuickDASHスコア65点。ADLでは箸操作等が可能になったが、安静時の前腕不安定性強く装具装着下での動作となっている。また、動作時の肘痛も強い。これは肘不安定性によって前腕屈筋群の過剰努力が発生していたこと、努力的に肘運動を行う事で肘関節動作に伴った肩甲帯挙上等の代償運動が習慣化していたことが考えられた。現在は肩の代償を抑える様に再教育訓練を行い、動作時に上肢を楽に動かすように指導している。今後の方向と課題としては肘屈曲可動域の改善を進めるとともに動作時の不安定感を改善するようにセラピィを進めていき、その経過も含め報告したい。
  • 大堀 洋平, 今泉 拓也, 小城 真貴子, 金子 秀雄, 黒田 良
    セッションID: 343
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/01/15
    会議録・要旨集 フリー
    【はじめに】
     運動器疾患(特に足関節・足部)の保存療法において、ヒールパッドを踵部に用いて疼痛軽減を図ることがある。ヒールパッドを挿入することで、各関節のアライメントは変化をきたし、各部位にメカニカルストレスが生じる可能性がある。ヒールパッドが姿勢にどのような影響を及ぼすかを解明していくことは、臨床において有用であると考える。今回、ヒールパッドを挿入すること、またその高さが骨盤の移動と傾斜に関連があるかを検討した。
    【対象と方法】
     対象は、本研究に同意の得られた健常者12名(男性9名、女性3名)、平均年齢26±10歳とした。対象者の上前腸骨棘(以下ASIS)、上後腸骨棘(以下PSIS)にマーキングし、ヒールパッド無しでの自然立位を基準とし、踵部を支持する4つの高さのヒールパッド(ソルボ素材、1枚の高さ0.8cm;1、2、3、4枚)を挿入し、各条件での立位をデジタルビデオカメラで矢状面より3秒間撮影した。静止画変換ソフトにて、9枚(1秒間に3枚)の静止画を抽出し、ImageJ(NIH)にて、ASISの前後への移動距離、ASISとPSISを結んだ線と水平線のなす角度を骨盤傾斜として計測した。
     ASISの移動距離と骨盤傾斜をヒールパッド無しと各条件で比較するために、Dunnett法による多重比較を行った。また、各条件でのASISの前後への移動距離と骨盤傾斜との関連には、Pearsonの相関係数を用いた。
    【結果】
     自然立位におけるヒールパッド無しと各条件での比較では、ヒールパッド3、4枚においてASISが前方に移動した(p<0.05)が、骨盤傾斜には有意差はみられなかった。また、各パッドにおけるASISの移動距離と骨盤傾斜には、有意な正の相関がみられた(r=0.638)。
    【考察】
     今回の結果より、ASISの移動距離と骨盤傾斜には正の相関を認めたことから、ヒールを高くした場合では骨盤の前方移動が大きくなると骨盤は前傾しやすいことが考えられる。骨盤前方移動⇔骨盤前傾、骨盤後方移動⇔骨盤後傾、といった運動連鎖が生じる傾向にあることが示唆された。園部らによると、ヒールパッド無しでの自然立位で骨盤を随意的に前方移動させると骨盤は後傾するという報告がある。骨盤の移動方向は同じだが、足底の環境が異なると骨盤傾斜が逆に動く傾向にあることは興味深い結果であった。今後、得られた結果を臨床の中で応用していきたいと考える。
     臨床において、骨盤帯のアライメントは様々な対応をしている。ヒールを高くすることで骨盤は前方移動するが、骨盤傾斜には明らかな差はなく、対象者によっては反応が異なっていることから、上部体幹を含めてヒールパッドの影響を更に検討する必要があると思われた。
  • 軽量型簡易装具作成の試み
    大里 浩之, 高山 法吏, 松崎 秀隆
    セッションID: 344
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/01/15
    会議録・要旨集 フリー
    【はじめに】
    下腿には4つのコンパートメントがあり、下腿筋膜、下腿骨間膜、下腿筋間中隔や結合性隔壁、脛骨や腓骨で区画されている。各コンパートメントは柔軟性に乏しく、その容量に限界があることは既存の知である。今回スポーツ活動中、非接触にもかかわらず急性阻血性拘縮を呈し、筋膜切開および植皮術を呈した症例を担当した。
    【目的】
    症例は若年男性であり問診にて、以前より過度の筋活動状態にて慢性的コンパートメント症候群を示していたことが確認された。今後の日常生活およびスポーツ活動継続も含め考慮した結果、目立ちにくく、耐久性に優れた軽量型装具作製の必要性が示された。そこで今回、装具作製に関して若干の知見を得たので報告する。
    【対象】
    20歳の男性、身長172cm、体重62kg。本疾患以外に特記する合併症および既往歴はない。スポーツ歴として、中学時代よりフットサルのクラブチームに所属し7年間競技を継続している。対象者には倫理面への配慮として、任意性と同意撤回の自由について口頭および文章にて承諾を得て実施した。
    【装具詳細】
    軽量カーボン繊維複合素材と高強度と柔軟性をもつ特殊プラスチックロッドで出来たダイナミック背屈補助機能付短下肢装具を作製した。重さは110gと超軽量であり、一般的な靴に簡単にフィット、目立つことのないよう作製した。また、オープンヒールを採用し、日常生活を妨げず活発な動きにも対応できる特徴を有している。
    【結果】
    初期装具装着時の筋力は徒手筋力検査において足関節底屈および背屈が0~2レベルであり、10m歩行スピードは8.4秒であった(裸足10.1秒)。その後、3ヶ月間理学療法を実施し、筋力は2~3レベルへと向上、歩行スピードも7.2秒(裸足8秒)と改善傾向を示し、装具装着下での軽度のランニングも可能となった。
    【考察】
    今回、理学療法開始後も分層植皮術などを施行した、若年男性の慢性下腿コンパートメント症候群を呈する症例を担当した。日常生活に影響がないよう努めるのはもちろんであるが、余暇活動としての活動性向上も目標に掲げアプローチを実施する必要を認め、特殊装具の作製を試みた。作製において苦慮した点は、腓骨神経麻痺の経過を把握すること、創傷清拭などの影響で筋力改善が可能なのかを評価し、医師を含め装具作製会議を何度も実施した。結果、「筋力」および「耐久性」、「目立ちにくさ」に配慮し作製した。装具装着時初期より適応は良く、歩行スピードにおいても裸足歩行と比較し、約2秒の違いを得ることが出来た。主観ではあるが、「足の運びが楽になった」と症例も述べている。残存筋に対する賦活効果を踏まえ筋力強化練習も並行して取り入れており、徐々にではあるが改善傾向を認めている。一方、3ヶ月経過後も装具の耐久性および適応に違和感は認めていない。学会では装具および病態経過など、より詳細な分析を加えて報告させていただく。
  • 川崎 洋平, 今村 純平
    セッションID: 345
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/01/15
    会議録・要旨集 フリー
    【はじめに】
    今回,交通事故による頭部外傷のため右片麻痺を呈した10歳の男児を担当した.当院入院時には受傷から130日経過していたが,精神・身体的に復学レベルまで回復した.これら入院から復学までの経過を報告する.尚,個人情報についてはヘルシンキ宣言に基づいた規定を遵守し,保護者に説明し同意を得た.
    【症例紹介】
    年齢:10歳4ヶ月.身長:134cm.体重:32.5kg.傷病名:びまん性脳損傷(右片麻痺,高次脳機能障害).現病歴:自宅近くの路上で車に撥ねられ受傷.
    【初期評価】
    受傷から130日経過.コース立方体組み合わせテスト(以下,コース):2問目で拒否.Brunnstrom stage(以下,BRS)右:V-V-III.筋緊張検査:右足関節背屈軽度亢進.感覚検査:右下肢表在・深部軽度鈍麻.関節可動域検査(以下,ROM-t):足関節背屈10p/20.筋力検査:体幹屈曲4伸展2,下肢屈曲4/4伸展3/4.Barthel Index(以下,BI):35/100点.WeeFIM:70/126点.起立・立位:右足底接地せず,左下肢一脚で動作し,両腋窩から介助を要す.歩行:装具装着嫌がり,裸脚で両腋窩から介助を要す.右足底が接地すると右下肢は病的な屈曲共同運動を呈す.
    【経過及びアプローチ】
    前院でリハに対する理解得られなかったとの情報から,まずは入院生活・リハの定着を目標とし徐々にすすめた.運動療法では右下肢支持性獲得を目的に腹臥位での匍匐前進,四つ這い.立位での相撲と遊びを取り入れた.また受傷後140日目に長下肢装具を作成し,抵抗感を減らすために本人の好みのキャラクターを表面にプリントした.受傷後187日目に短下肢装具へカットダウン.受傷後245日目に独歩見守りとなった.その後試験外泊,登校を繰り返し,自宅退院,復学を達成した.
    【結果】
    コース:IQ33.BRS右:VI-VI-V.筋緊張検査:正常.感覚検査:正常.ROM-t: 足関節背屈20/20.筋力検査:体幹屈曲5伸展4,下肢屈曲4/5伸展4/5.BI:90/100点.WeeFIM:116/126点.基本動作:自立.移動:独歩見守り.
    【考察】
    症例は受傷から130日経過していた.失語, ROM制限,病的な下肢屈曲共同運動など,受傷時の重さが伺え回復予後が懸念された.事故の後遺症,病院という大多数が大人という環境において本能的な行動・言動も観られ,訓練に対する理解を得ることは困難であった.運動療法では臥位練習から立位練習へと段階的に難易度を設定した.これらはリハへの興味を向けることに有効であり,BRS向上から随意的な下肢伸展獲得に有効であったと考える.また装具を用いたことはROM改善,実用的な立位・歩行の獲得に有効であったと考える.これらの改善が試験外泊,登校を可能とし,更なる精神・身体的回復を促したと考える.
  • ~脊柱後弯姿勢に着目して~
    藤田 有加
    セッションID: 346
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/01/15
    会議録・要旨集 フリー
    【はじめに】
    高齢者に多くみられるアライメントの変化として、脊柱後弯姿勢(円背)が挙げられる。脊柱後弯姿勢とは、脊柱の矢状面の弯曲異常のことであり、主として胸椎部の後弯が増加したものを言う。曾田らは「円背を有する80歳以上の高齢者では%肺活量と最大吸気筋力が低下する」とし、脊柱後弯姿勢と呼吸機能の関係性について述べている。このことから、脊柱後弯姿勢から脊柱を伸展させ、姿勢を変化させると、呼吸機能にも変化が出ると予想される。しかし、姿勢の変化と呼吸機能の関連性について調べた報告はみられていない。そこで本研究は、座位姿勢における脊柱後弯姿勢を伸展方向に矯正した時の呼吸機能の変化を調査し、姿勢の変化が呼吸機能に及ぼす影響を明らかにすることを目的とした。
    【対象】
    年齢65歳以上の高齢者女性30名を対象とした。なお、被検者には研究の目的と方法を十分に説明し、同意を得た上で研究を開始した。
    【方法】
    安楽座位と努力伸展座位の2つの姿勢で、円背指数・胸郭拡張度・肺活量の測定を行った。脊柱後弯の程度を評価するために、形を自在に変形できる自在曲線定規を用いて円背指数の測定を行った。座位にてC7からL4までの脊柱後弯に沿って棘突起に定規を合わせた後、紙上にトレースした。弯曲のC7とL4を結ぶ直線距離をLcm、直線Lから弯曲の頂点までの距離をHcmとし、その割合を円背指数(H/L×100)として算出した。胸郭拡張度は腋窩部、剣状突起部第10肋骨部を測定した。肺活量の測定はフクダ電子株式会社製、電子スパイロメーターを用いた。統計処理として、対応のあるt検定を用いて、安楽座位と努力伸展座位での円背指数と肺活量を比較し、さらに円背指数と肺活量のそれぞれの変化率の相関をピアソンの相関係数を用いて行った。
    【結果】
    円背指数,肺活量ともに努力伸展座位において有意差がみられた(p<0.01)。また、安静座位から姿勢を矯正したときの円背指数の変化率と肺活量の変化率の間に相関が認められた(r=0.58、p<0.0001)。胸郭拡張度は剣状突起部のみ努力伸展座位で有意差がみられた。
    【考察】
    本研究の結果から脊柱後弯姿勢を有していても、脊柱を伸展させ、姿勢を変化させることができれば、呼吸機能は改善できることが示唆された。さらに姿勢の変化が大きいほど、呼吸機能の改善も大きくなるといえる。これは、体幹のアライメント不良が一時的でも改善された事で、胸郭で押しつぶされていた横隔膜が働きやすい状態になったと考えられる。また、短縮していた腹筋群の筋長が延長し、収縮が得られやすくなったためであると考えられる。今後は,この脊柱を伸展させた姿勢を日常生活の中でも持続できるよう、アプローチしていく必要があると考える。
  • 井上 仁, 木許 かんな, 兒玉 吏弘, 兒玉 慶司, 川上 健二, 松本 裕美, 片岡 晶志, 津村 弘
    セッションID: 347
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/01/15
    会議録・要旨集 フリー
    【はじめに】
     今回,急性心筋梗塞を発症し左室補助人工心臓(LVAS)を装着した症例を担当する機会を得た.理学療法を行う上での問題点や転院・社会復帰等の問題点をふまえ考察を行ったので報告する.
    【症例】
     60歳代前半・男性.関東地方出身.旅行先で急性心筋梗塞を発症した.梗塞部位は左冠動脈主幹部で,左心は前側壁の広範な梗塞で左室駆出率は20%以下であった.近医にて大動脈内バルーンパンピング・経皮的心肺補助装置による治療を開始した.発症より12日後に当院に転院し,転院より1週間後にLVAS装着・冠動脈バイパス術の治療を行った.
    【理学療法経過】
     術後3週目よりベッドサイドにて理学療法を開始した.当初,意識レベルはJCS_II_-20で自発的な運動はほとんどみられず,筋力はMMTで1~2,Barthel-index(BI)は0点であった.意識レベルが徐々に改善し,術後4週目から端坐位保持練習を開始した.術後6週目より起立運動,術後8週目で歩行器を使用して歩行練習を開始し,術後6ヶ月目で独歩にて100mの歩行が可能となった.
     術後7ヶ月目に送・脱血管刺入部に感染を認めリハビリが一時中止となった.10日後にリハビリを再開し,術後9ヶ月目に転院となった.転院時の筋力はMMTで3~4,BIは70点であった.
    【考察】
     LVAS装着後の理学療法では,可及的早期より離床を促し廃用症候群を予防する必要がある.また,心筋梗塞等により機能低下した運動耐容能の改善もADLの向上を図る上では重要である.運動耐容能の評価としては心肺運動負荷試験を用いることが多く報告されている.しかし,本症例の場合は重度の心筋梗塞・長期臥床による身体機能の低下により使用できる状態ではなかったため,嫌気性代謝閾値に相当する主観的運動強度Borg指数で11~13を指標とし,血圧や酸素飽和度の値,呼吸状態を確認しながら運動を行った.また,運動中のLVASの管理を行うにあたり,ポンプ内の血栓の有無や姿勢変換時の送・脱血管の屈曲,流量の低下に注意を払う必要があった.
     開始当初は起立運動を数回行う程度で疲労の訴えが聞かれたが,徐々に運動量は増大し,術後8週目で歩行練習を開始し,血圧の変動や呼吸苦等の訴えはなく独歩での歩行距離は100mまで延長した.その結果,病室内の移動は自立し,トイレ等への移動が可能となった.他の報告に比べ回復過程に遅延があったが,身体的な問題に加え,出身地から遠距離の施設に入院しており家族と頻繁に面会できなかったこと,今後に対する不安等で精神的な問題も影響していたと考えられる.
    【まとめ】
     今回の症例において感染症や稀な疾患ということもあり,受け入れ施設が限られており入院期間が延長した.ADLの向上はもちろん,転院先までの移動を行う必要もあり,運動耐容能の改善を必要とされる症例であった.
  • ~入院から外来リハを継続して行った低心機能の1症例~
    青木 尚子, 渡邊 恵都子, ハーランド 泰代, 植野 拓, 由川 明生
    セッションID: 348
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/01/15
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    【はじめに】
    心臓リハビリテーション(以下、心リハ)は退院後の患者教育と運動療法が継続できれば効果的とされている。当院での外来心リハ通院患者の継続・非継続因子の調査では、非継続因子として統計学的に有意差はないものの1、男性が継続しにくい2、遠方の方が継続しにくい3、自己負担が高い方が継続しにくい傾向にあった。今回は、低心機能にもかかわらず自覚症状が軽度なため過負荷に陥り易い男性の症例に着目した。仕事帰りに利用することができる自宅近辺の非医療施設であるスポーツジムへの利用に繋げることが出来たので、今後の課題と共に報告する。今回の報告は、本症例に対して説明し同意が得られている。
    【症例紹介】
    70歳台、男性、既往に狭心症や急性心筋梗塞(以下、AMI)など繰り返しており、今回4度目の入院となる。2009年12月に胸痛ありAMI(2枝病変)と診断され経皮的冠動脈形成術を施行した。PeakCK3039U/L。心エコー結果より、左室駆出率40%、後壁、心室中隔・前壁の壁運動低下、中等度の大動脈弁狭窄症みられた。当院のMIパス2週間コースを用い心リハを開始した。5病日目から個別運動療法介入し、その後大動脈弁狭窄症から心不全を合併し、MIパスが停滞したものの19病日目から集団リハを開始し、自転車エルゴメーターにて旧Borg指数11レベルの負荷設定とした。4週間入院リハを行い、退院時には近隣スポーツジムに週3回、当院の外来心リハを週1回継続することとした。その際にスポーツジムには運動許可を示す主治医からの文責と併せて担当セラピストより情報提供目的の心リハ連携シートを渡し、持参して頂いた。内容は、疾患の状態、安全に出来る運動内容、リスク管理チェック項目を記載した。症例にもスポーツジムスタッフにも分かりやすい言葉を用い、定期的に評価を行い運動内容の変更も記載出来るようにし、安全でスムーズな連携を図った。1ヶ月後、歩行時の呼吸苦あり外来心リハ時に受診し、心不全増悪(左室駆出率30%)がみられたため利尿剤の追加あり。その後、スポーツジム利用を週3回から1回に、外来リハを週1回から3回に変更し、医学的管理を中心に心リハを継続した。
    【まとめ】
    今回、心リハ連携シートを用い患者宅近隣スポーツジムへの紹介と運動指導を行った。本人への運動管理意識の向上と外来心リハも併用したことで症状に応じた運動指導を即座に変更・実施することが出来た。また、症状悪化に伴い循環器の外来受診を薦めることで医学的管理も可能となり、外来での症状コントロールが可能となった。今後の課題として1、症状に合わせた医療施設と非医療施設との役割分担の明確化2、使用料金や場所を考慮した連携施設の選択と拡大3、心リハ連携シートの見直しなどを行っていく必要がある。
  • 島袋 公史, 平山 史朗, 山田 博文, 高橋 文子, 東 未都美, 渡邉 英夫, 久保田 健治
    セッションID: 349
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/01/15
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    【はじめに】
    大腿骨近位部骨折患者は高齢者に多く、種々の併存疾患を有していることが多い。その中で呼吸器疾患は生命予後に直接的に影響する疾患とされる為、術後のリハビリテーションを実施する上でも特に留意すべき疾患である。現在、慢性閉塞性肺疾患(以下、COPD)は罹患人数が推定500万人に上るとされている。近年、当院でもCOPDを有する大腿骨近位部骨折患者が散見されるようになった。そこで今回、術後リハビリテーションにおけるCOPDの影響について調査・検討したので報告する。
    【方法】
    対象は2005年4月から2009年3月の期間当院で手術を受けた大腿骨近位部骨折患者315名の内、受傷前は自宅生活し移動能力が杖歩行以上の条件を満たす43名とした。その中でCOPDを有した群(COPD群)8例とCOPDを有しない群(対照群)35例に区分した。なお重度認知症、他科へ転科例は除いた。
    調査方法は診療記録より後方視的に1:年齢、2:BMI、3:術前待機日数、4:術後PT介入開始日数、5:術後リハ室への移行に有した日数、6:歩行獲得(平行棒、歩行器、杖それぞれの獲得日数とし、術後から算定した)に有した日数、7:PT実施日数、8:在院日数、9:転帰とした。以上のパラメーターについて調査・検討した。統計学的処理は対応のないt検定(有意水準5%)とした。なお、今回の調査において当院の倫理委員会より承認を受けている。
    【結果】
    年齢:COPD群85.1±5、対照群84.2±6.4 BMI:以下同様に18.3±1.4、20.8±4.6 術前待機日数:4±2.8、4.6±2.8 術後PT介入開始日数:3.3±2.6、3.1±2.6 術後リハ室への移行に有した日数:5.9±2.8、5.5±3 歩行獲得へ有した日数:平行棒5.9±2.8、8.4±6.6、歩行器17±10.6、18.4±10.2、杖33.6±14.2、28.5±13.6 PT実施日数:41.9±17.8、54.6±24.1 在院日数:60.9±26.4(死亡した一例を除く)、80.9±30であり、いずれも有意差は無かった。転帰はCOPD群自宅5例(62%)、転院2例(25%)、死亡1例(13%)、対照群自宅28例(80%)、転院7例(20%)であった。
    【考察】
    COPD患者は呼吸機能低下や低栄養状態に陥りやすく、全身状態の悪化が起こりやすいとされている。その為術後リハビリテーションへの影響が考えられた。しかし、今回の調査ではCOPD群、対象群間で有意差は得られなかった。現在COPDを有する大腿骨近位部骨折患者についての報告は多くはない。今後さらに増加していくことが予想される為、症例数を増やし調査・検討していく必要があると考える。
  • 山城 真里子, 西原 裕明, 宮丸 美貴子
    セッションID: 350
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/01/15
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    【目的】
    循環器疾患では、退院後も生涯にわたる冠危険因子の是正を目的とした運動療法、及び生活習慣の是正が心血管イベント再発予防、生命予後改善のためには重要といわれている。そこで今回、入院中に心臓リハビリテーション(以下心リハ)を実施し自宅退院した患者に対し、非監視型運動療法が実施できているかを確認すると共に、運動継続困難因子について調査する。
    【方法】
    対象は、H21年1月~H22年2月の間に心リハを行った循環器疾患患者98例より、死亡退院、転院した患者を除き、調査の協力を得た自宅退院患者45例(男性23例、女性22例、平均年齢77.2歳)とした。調査はアンケート記入法で行い、内容は(1)退院後、運動を継続しているか(2)発症前に運動習慣があったか(3)継続している運動内容について(4)運動の頻度について(5)運動を継続できない理由について、の5つとした。
    【結果】
    (1)退院後運動継続例は28例(62.2%)、運動非継続が17例(37.7%)であった。(2)発症前運動習慣がある例は全体45例中19例(42.2%)であった。運動継続群では28例中15例(53.3%)、運動非継続群では17例中4例(23.5%)であった。(3)運動継続群の運動内容として、ウォーキング19例(67.8%)、サイクリング7例(25%)、筋力訓練1例(3.5%)、足踏み11例(39.2%)、体操9例(32.1%)、その他1例(3.5%)であった。(4)運動継続群の運動頻度として、週1回が2例(7.1%)、週2~4回が15例(53.5%)、毎日が10例(35.7%)、月1~2回が1例(3.5%)であった。(5)運動非継続群の運動継続できない理由として、仕事が忙しい2例(11.7%)、家事が忙しい2例(11.7%)、運動嫌い3例(17.6%)、気分がのらない3例(17.6%)、何をしていいのかわからない1例(5.8%)、腰や膝が痛い10例(58.8%)、その他4例(23.8%)であった。
    【考察】
    調査結果から、非監視型運動療法を継続できていない患者は約4割であり、継続できない理由として、運動器の問題が約6割という結果であった。当院では入院中の心リハとして、歩行、自転車エルゴメーターでの運動療法を中心に行い、心臓病教室でもウォーキングの継続を推奨している。また、腰痛や膝痛がある患者には、体操や筋力訓練等を指導している。しかし、今後は運動方法の指導だけでなく、患者の生活スタイルを充分に把握し生活のどこに運動を組み込んでいくのか、運動しやすい状況を考えることも重要になると考える。当院は外来心リハを実施していないため、退院後の運動実施状況を把握することが困難であるため、今後も入院中にしっかりと他職種での患者教育を行っていく必要がある。
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