富山湾沿岸では夏季における植物プランクトンの増加が, しばし水質悪化の原因とされてきた。そこで本研究では, 植物プランクトン濃度の指標とされ, 衛星観測によって推定が可能なクロロフィル
a濃度 (衛星クロロフィル
a濃度)と河川流量を比較し, 河川を通じて陸域から供給される栄養塩が富山湾内のクロロフィル
a濃度に与える影響を評価した。まず, 富山湾を衛星クロロフィル
a濃度のピークが出現するタイミングと富栄養化の可能性がある区域の分布によりサブエリアに分けた。湾沖合のサブエリアにおいて, 衛星クロロフィル
a濃度と河川流量に5月から10月にかけて有意な正の相関が認められたことから, 河川を通じて湾内に流入する栄養塩が, 沖合の海域にも運ばれていることが明らかとなった。湾奥部では, 衛星クロロフィル
a濃度が夏季にかけて増加し, 経年的に増加傾向がみられ, 河川流量, 栄養塩濃度との比較から, 神通川からの高い全窒素負荷が湾奥部の富栄養化に寄与している可能性が高いことが示唆された。本研究では, 富栄養化に影響する要因のひとつである河川流量が, 富山湾沿岸と5月から10月の沖合のクロロフィル
a濃度の変動に寄与していることが示された。これらのことから, 衛星クロロフィル
a濃度のモニタリングは, 富山湾や他の沿岸海域の水質保全において, 有用な環境評価ツールであると考えられる。
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