La mer
Online ISSN : 2434-2882
Print ISSN : 0503-1540
52 巻, 3 号
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  • 中村 玄, 門脇 一郎, 永塚 翔佳, 藤瀬 良弘, 木白 俊哉, 加藤 秀弘
    2014 年 52 巻 3 号 p. 31-47
    発行日: 2014/09/25
    公開日: 2022/08/20
    ジャーナル フリー
    本研究はミンククジラ Balaenopt eraacutorostrata 胸鰭における白斑形状が系群識別標識としての有用性の評価を目的として,北太平洋産個体の胸鰭白斑の成長に伴う変化や雌雄差,変異を詳細に分析するとともに,北大西洋産個体との予備的比較を行った。北太平洋産個体については第二期北西太平洋鯨類捕獲調査 (JARPNII) において日本沿岸域および沖合域で捕獲された240 個体(雄: 体長 3.70-8.16 m, n = 151, 雌: 体長 3.84-8.68 m, n = 89),北大西洋産個体については既報の写真 (n =13) を用いた。北太平洋産個体の胸鰭長に対する白斑長の相対値は成長依存的変化が認められなかったが,雄 (33.8%) は雌 (31.8%) に比べ相対値が大きく,雌雄差が認められた。 胸鰭に対する白斑面積比は成長に伴い減少し,雄は雌に比べ大きい傾向が認められた。北太平洋産個体の白斑長 (33.4%), 白斑の面積比 (38.8%) はともに北大西洋産個体 (白斑長: 40.7%, 面積比: 55.5%) に比べて有意に小さいことが示された。胸鰭基部における白黒境界線の形状は成長依存的変化,性差がなく,北太平洋産個体の全個体で蛇行型である一方,北大西洋産個体では直線型であった。胸鰭白斑は系群指標として有望であるだけでなく,ミンククジラの種分化過程の解明への貢献も期待される。
  • 寺内 元基, 辻本 良, 石坂 丞二, 中田 英昭
    2014 年 52 巻 3 号 p. 49-60
    発行日: 2014/09/25
    公開日: 2024/04/16
    ジャーナル フリー
    富山湾沿岸では夏季における植物プランクトンの増加が, しばし水質悪化の原因とされてきた。そこで本研究では, 植物プランクトン濃度の指標とされ, 衛星観測によって推定が可能なクロロフィルa濃度 (衛星クロロフィルa濃度)と河川流量を比較し, 河川を通じて陸域から供給される栄養塩が富山湾内のクロロフィルa濃度に与える影響を評価した。まず, 富山湾を衛星クロロフィルa濃度のピークが出現するタイミングと富栄養化の可能性がある区域の分布によりサブエリアに分けた。湾沖合のサブエリアにおいて, 衛星クロロフィルa濃度と河川流量に5月から10月にかけて有意な正の相関が認められたことから, 河川を通じて湾内に流入する栄養塩が, 沖合の海域にも運ばれていることが明らかとなった。湾奥部では, 衛星クロロフィルa濃度が夏季にかけて増加し, 経年的に増加傾向がみられ, 河川流量, 栄養塩濃度との比較から, 神通川からの高い全窒素負荷が湾奥部の富栄養化に寄与している可能性が高いことが示唆された。本研究では, 富栄養化に影響する要因のひとつである河川流量が, 富山湾沿岸と5月から10月の沖合のクロロフィルa濃度の変動に寄与していることが示された。これらのことから, 衛星クロロフィルa濃度のモニタリングは, 富山湾や他の沿岸海域の水質保全において, 有用な環境評価ツールであると考えられる。
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