カンボジア王国の沿岸小規模漁業を対象とした学術的報告はこれまでなされていない。そこで， Kampot 州Tuek Chhou 地区にある Trapeang Ropov と Trapeang Sangkae という２つの村を対象に，合計で544世帯ある中からランダムに抽出した60世帯を対象に，小規模漁業活動と生活に関して，質問票を用いたインタビュー調査とグループディスカッションによる情報収集を行った。この2つの村は，同じ地区に含まれるものの Trapeang Ropov 村では56.4％の世帯が，Trapeang Sangkae 村では16.7％の世帯が小規模漁業を主な生業としていた。この2つの村で行われている漁具は11種類であり，その中には5つの異なる刺し網が含まれていた。主な対象種は14種であり，漁具と漁場によって対象種が決まっていることが判明した。沖合を漁場とする漁業では，1回の出漁で大量の漁獲可能性があるものの，漁獲量の変動性が高い。一方で，極めて沿岸の浅い海域で行われる漁業では，1回の漁獲量は少ないものの，年間を通じて安定的な漁獲がある。また，沖合漁業には女性や子供の参加は難しく，ほとんどの女性や年少者は浅い海域での漁業のみ行っていた。

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